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地域産業とは?現状の課題や活性化策、自治体の取り組み事例を解説
地域産業は、その地域に雇用や所得を生み出し、人々の暮らしを支える地域経済の基盤です。農林水産業や製造業だけでなく、小売業、観光業、建設業、運輸業、医療・福祉、各種サービス業など、地域で営まれる幅広い産業が含まれます。
一方、人口減少に伴う人手不足や後継者不足、デジタル化の遅れ、地域外への販路開拓の難しさなど、地域企業を取り巻く課題は複雑化しています。自治体には、個々の企業への支援にとどまらず、地域の産業構造と人材の状況を把握し、企業支援と就労支援を一体で進める視点が求められます。
本記事では、地域産業の意味や地場産業との違い、地域にもたらすメリット、主な課題を整理したうえで、自治体が取り組める活性化策や事例、雇用と産業振興を一体で進める方法を解説します。
雇用・産業振興支援サービスのご紹介
行政機関や自治体のご担当者さまへ、雇用・産業振興支援サービスをご紹介します。地域企業の人材確保や多様な人材の就労促進など、地域の課題に応じた事業をご支援します。
目次
地域産業とは
地域産業とは、特定の地域で営まれている産業の総称です。地域内の企業や人材、技術、自然、文化などが結び付き、相互に取引しながら雇用や所得、消費を生み出しています。
例えば、農産物を生産する事業者、加工する企業、商品を販売する小売店、地域外へ運ぶ物流事業者、観光資源として発信する観光事業者は、それぞれ異なる業種です。しかし、地域内では一つの産業のつながりを形成しています。自治体が産業振興を考える際には、特定の企業だけでなく、取引や雇用、消費が地域内でどのように循環しているかを捉えることが重要です。
内閣官房の「地域未来戦略の政策パッケージの概要」でも、個々の企業の育成だけでなく、共同施設の整備やサプライチェーン上の機能補完を通じて地域全体の産業を強化し、産業政策と人材戦略を一体的に進める方向性が示されています。
地域産業と地場産業・地域経済の関係
地域産業と混同されやすい言葉に「地場産業」と「地域経済」があります。地域産業は、地域で営まれる産業全般を指す広い概念です。一方、地場産業は、地域固有の原材料や技術、文化などを生かし、一定の地域に集積して発展してきた産業を指します。伝統工芸や繊維、陶磁器、食品加工などが代表例で、地場産業は地域産業の一部と位置付けられます。
地域経済は、地域内で行われる生産、取引、雇用、所得、消費などの経済活動全体を示す言葉です。地域産業が商品やサービス、雇用を生み出し、住民の消費や企業間取引につながることで地域経済が動きます。地域産業の活性化とは、企業の売上を伸ばすだけでなく、地域で働く場をつくり、所得と消費を循環させる取り組みといえます。
地域産業が地域にもたらすメリット
地域産業が安定して成長すると、企業、住民、自治体のそれぞれに好循環が生まれます。企業の投資と採用が働く場を増やし、住民の所得と消費が地域企業の売上を支え、その結果として自治体の税収や公共サービスの基盤が強まります。産業振興では、個々の事業成果だけでなく、この循環が地域に生まれているかを確認することが大切です。
地域産業の活性化は、地域企業の成長だけでなく、雇用や所得、地域ブランド、行政サービスなど、地域社会全体に効果をもたらします。
地域内の雇用を生み出す
企業活動が活発になれば、新たな人材需要が生まれ、既存従業員の雇用維持にもつながります。また、製造業の設備投資が物流や部品、メンテナンスの需要を生み、観光業の成長が宿泊業や飲食業、小売業へ波及するように、関連産業にも雇用機会が広がります。多様な働く場が生まれることは、若年層の流出抑制やUIJターン人材の受け皿づくりにも有効です。
所得と消費の地域内循環を強める
地域企業の利益が給与や設備投資、地域事業者との取引に使われると、従業員の消費や新たな企業間取引を通じて地域内にお金が循環します。例えば、地域の農産物を地域内で加工・販売し、観光にも活用すれば、生産から販売までの付加価値を地域に残しやすくなります。自治体には、支援先企業の成長だけでなく、施策によって生まれる地域内の資金の流れを捉える視点が必要です。
地域ブランドを形成し、交流人口を増やす
特産品や伝統工芸、観光資源、独自技術は、他地域との差別化につながります。商品販売に加え、工場見学やものづくり体験、地元食材を活用した観光コンテンツなどを組み合わせることで、地域の認知度向上や来訪者の増加が期待できます。交流人口の拡大は消費を生むだけでなく、関係人口の創出や将来的な移住、企業誘致の可能性も広げます。
暮らしと行政サービスの持続可能性を支える
地域産業の成長によって雇用や所得が増えれば、税収の安定にもつながります。これにより、教育、福祉、子育て、公共交通、防災などの行政サービスを維持しやすくなります。反対に、産業の衰退は雇用や消費の縮小、人口流出を招き、住民生活を支えるサービスにも影響を及ぼしかねません。地域産業振興は、地域で暮らし続けられる環境を守る基盤づくりでもあります。
地域産業が抱える主な課題
加えて、地域ごとに産業構造や労働市場は異なります。製造業が集積する地域と、観光や一次産業が中心の地域では、必要な人材や設備、販路、支援機関も変わります。他自治体の施策をそのまま導入するのではなく、自地域の企業数、職種別の求人・求職状況、事業者の声などをもとに優先順位を定める必要があります。
地域企業を取り巻く環境は、人口減少や消費行動の変化、デジタル技術の進展によって大きく変わっています。人材、事業承継、生産性といった課題は相互に関係するため、自治体には中長期的かつ横断的な支援が求められます。
生産年齢人口の減少と人手不足
少子高齢化と若年層の都市部流出により、必要な人材を確保できない地域企業が増えています。人手不足は従業員の負担や離職を招くだけでなく、受注の制限や新規事業の断念につながることもあります。介護・福祉、建設、運輸、観光など、地域生活を支える産業で不足が続けば、住民向けサービスの維持にも影響します。
採用支援だけではなく、女性、シニア、子育て世代、就職氷河期世代など、多様な人材が働きやすい環境を企業とともに整えることが重要です。
後継者不足と人材の定着難
経営者の高齢化が進む一方、親族や社内に後継者がいない企業もあります。事業承継ができずに廃業すれば、雇用だけでなく、地域に蓄積された技術やノウハウ、取引関係も失われます。
また、採用後の定着も課題です。働きやすさや成長機会、柔軟な働き方など、求職者が重視する要素は多様化しています。企業には人材育成やキャリア形成を含む「選ばれる職場づくり」が必要であり、自治体にも採用、育成、定着、事業承継を組み合わせた支援が求められます。
DX・販路開拓・生産性向上の遅れ
紙や手作業を中心とした業務が残る企業では、限られた人員を有効に活用できず、人手不足がさらに深刻化する場合があります。受発注、顧客、在庫などの管理をデジタル化すれば効率化が期待できますが、費用や専門人材、ノウハウの不足が導入の壁となります。
地域内の需要だけでは成長に限界があるため、地域外への販路開拓も欠かせません。しかし、営業人材やマーケティングの知見が不足し、新市場へ進めない企業もあります。DX支援、専門家派遣、販路開拓、人材育成を組み合わせ、企業が人材と投資を確保できない悪循環から抜け出せるよう後押しすることが重要です。
自治体による地域産業振興の成功事例
事例を参照する際は、成果だけでなく、地域の課題をどのように特定し、どの主体が連携し、どのように参加企業や人材を集めたのかを見ることが重要です。自地域との共通点と相違点を整理することで、施策の表面的な模倣を避け、応用できる仕組みを抽出しやすくなります。
地域産業振興に取り組む自治体では、補助金だけに頼らず、地域資源、人材育成、販路開拓、観光などを組み合わせています。ここでは、内閣府の地方創生事例集で取り上げられた事例を紹介します。
参考|内閣官房・内閣府「地方創生事例集」
北海道・小樽市「パ酒ポート」:道産酒と観光の連携
北海道小樽市の「パ酒ポート」は、北海道産の日本酒やワイン、クラフトビールなどを観光資源として活用した取り組みです。酒造メーカーに加え、飲食、宿泊、観光などの事業者が連携し、観光客の地域内回遊を促しました。地域産品を単体で販売するのではなく、複数業種が「北海道のお酒」を軸に価値を提供することで、消費を幅広い事業者へ波及させた好事例といえるでしょう。
北海道網走市「オホーツクものづくり・ビジネス地域創成塾」:人材育成から事業化へ
北海道網走市では、地域住民や事業者が商品企画、マーケティング、経営を学び、商品開発や事業化へつなげる仕組みを整えました。地域資源やアイデアがあっても、事業化や販路開拓の知識が不足すれば、新たな産業にはつながりません。学びと実践を一体化し、地域で挑戦する人材を育てた点は、人材育成を産業創出への投資として捉えた事例といえます。
栃木県那須烏山市:地域資源を生かして産業と雇用を創出
栃木県那須烏山市では、自然や農林水産資源、歴史、文化などを産業振興の核と位置付け、商品開発や情報発信、関連産業との連携を進めました。大規模な企業誘致だけを目指すのではなく、既存の地域資源を見直して新たな価値に転換することは、多くの自治体が応用しやすい考え方です。
3つの事例に共通するのは、地域資源の活用、異業種連携、人材育成、販路や交流人口の創出を組み合わせていることです。地域の特性と課題に応じて複数の施策を連動させることが、地域全体への波及につながります。
地域産業を活性化する方法
施策を検討する際には、支援メニューを先に決めるのではなく、解決したい課題と対象者を明確にします。例えば「人手不足」を扱う場合でも、採用母集団の不足、求人情報の伝わりにくさ、業務負荷、早期離職では必要な支援が異なります。企業への聞き取りやデータ分析を通じて原因を分解し、課題に合う手段を選ぶことが成果につながります。
地域産業の課題は複雑であり、単一の施策で解決することは困難です。地域の強みと課題を把握し、企業の成長と人材確保を中長期的に支える必要があります。
地域資源を再評価し、ブランドを磨き上げる
まず、農林水産物、伝統工芸、自然、歴史、文化、産業技術など、地域にある資源を洗い出します。地域では当たり前の食文化や景観、技術が、地域外の人にとって価値となることもあります。重要なのは、何を強みとして、誰に、どのような価値を提供するかを明確にすることです。
さらに、地元農産物と観光、地場産業と体験プログラム、伝統工芸とEC販売など、複数の資源や手法を組み合わせます。ブランド化はロゴやPRだけではありません。商品の品質、体験、販売方法、情報発信に一貫性を持たせ、地域ならではの価値を継続的に届ける取り組みです。
デジタル化・業務効率化と販路拡大を支援する
人材確保だけでなく、限られた人員で事業を継続・成長できる体制づくりが必要です。受発注や契約、顧客管理、在庫管理などのデジタル化、データを用いた需要予測、AIによる定型業務の効率化などは、生産性向上の選択肢になります。自治体は相談窓口や専門家派遣、補助制度などを通じて、企業が自社の課題に合う取り組みを選べるよう支援します。
販路拡大では、EC、SNS、商談会、地域外企業とのマッチングなど、商品特性と対象顧客に応じた手段を選びます。DXと販路開拓を別々に扱うのではなく、業務改善で生み出した余力を営業や商品開発に振り向けるなど、企業の成長につながる一体的な支援が重要です。
創業支援・雇用創出・人材育成・産学官連携を進める
既存企業への支援に加え、新しい事業が生まれる環境も必要です。起業相談、創業セミナー、資金支援、事業者同士の交流拠点、地域金融機関との連携などを組み合わせ、構想から事業化までを支援します。
また、経営人材やデジタル人材を地域内で育てるため、リスキリング、若手研修、女性やシニアの就業支援などを進めます。大学、研究機関、企業、金融機関と連携すれば、新商品開発や専門人材育成に外部の知見を取り込めます。自治体には、制度を提供するだけでなく、多様な主体を結び付けるコーディネーターとしての役割が求められます。
雇用と産業振興を一体で進めるには
両施策を一体化する際は、企業側の求人を求職者へ届けるだけでなく、仕事の切り出しや業務改善、受け入れ体制の整備まで踏み込むことが重要です。これにより、フルタイム勤務が難しい人材や未経験者も活躍できる業務を設計しやすくなります。求職者を既存の求人に合わせるだけでなく、企業側の仕事や職場も見直す双方向の支援が求められます。
人手不足は企業の成長を妨げ、生産性の低さは賃金向上や人材確保を難しくします。しかし、企業向けの産業振興と求職者向けの就労支援が別々に進められると、企業の人材ニーズと求職者の希望が結び付かず、十分な成果につながりません。企業が成長できる環境と、多様な人材が働ける仕組みを同時につくることが重要です。
企業支援:生産性向上と「選ばれる職場」づくり
業務プロセスの見直しやDXによって生産性を高め、限られた人員でも成長できる体制をつくります。同時に、柔軟な働き方、人材育成、キャリア形成、職場環境の改善、多様な人材の受け入れを進め、採用後も働き続けられる職場を増やすことが重要です。自治体は、DX、採用力強化、職場改善、定着支援を組み合わせて企業の変革を後押しします。
就労支援:多様な人材を育て、地域企業へつなぐ
子育て中の女性、シニア、就職氷河期世代、若者、移住希望者など、働く意欲があっても就業につながっていない人材は地域に存在します。求人情報を提供するだけでなく、キャリア相談、職業訓練、リスキリング、職場体験、企業説明会などを組み合わせ、就業まで伴走します。企業と求職者が相互理解を深める機会をつくることは、採用後のミスマッチ防止にもつながります。
キャリア支援:将来の地域産業を担う人材を育む
将来の担い手を育てるには、学校と企業が連携したキャリア教育、職場体験、インターンシップ、地域企業との交流などを通じて、若者が地域で働く選択肢を知る機会を増やす必要があります。社会人に対しても学び直しの機会を設け、産業構造の変化に対応できるスキル形成を支援します。目の前の就職者数だけでなく、中長期的な人材基盤を育てる視点が重要です。
現状把握から定着・効果測定までの4ステップ
各ステップを分断せず、調査結果を事業設計に反映し、実施中に得た企業・求職者の声を定着支援や翌年度の改善へつなげます。担当部署だけでなく、商工、労働、福祉、教育、移住などの関係部署が目的と指標を共有すれば、既存事業の重複を避けながら、対象者を必要な支援へつなぎやすくなります。
雇用と産業振興を一体で進める事業は、次の4ステップで設計します。
STEP1:地域の現状を把握する
企業へのヒアリングや求職者調査などを通じて、人手不足が深刻な業界、必要な職種・スキル、希望する働き方、企業の経営課題を整理します。既存の統計だけでなく、企業と住民の声を把握することが、実効性のある施策設計の土台になります。
STEP2:対象と成果目標を設計する
現状を踏まえ、女性の就業促進、シニア活躍、企業のDX、若年層の地元定着など、重点テーマと支援対象を明確にします。あわせて就職者数、定着率、企業満足度、生産性向上などの成果指標を設定し、何をもって事業の成果とするかを関係者で共有します。
STEP3:企業支援と就労支援を一体で実施する
DX支援とデジタル人材育成、採用支援とキャリア相談、合同説明会と職場見学など、企業側と求職者側の施策を連動させます。一方的に求人を紹介するのではなく、企業の業務や受け入れ環境も改善し、双方のニーズが合う仕組みを設計します。
STEP4:定着支援と効果測定を行う
就職や採用の実現後も、フォロー面談、企業向け定着支援、研修、職場改善などを行います。設定した成果指標を定期的に確認し、参加者が集まらない、採用後に定着しないといった要因を分析して事業を改善します。単発のイベントで終わらせず、検証と改善を繰り返すことが成果の継続につながります。
地域産業の活性化には、企業支援だけでも雇用支援だけでも十分ではありません。企業の生産性向上と人材確保、多様な人材の就労と定着を両輪で進め、自治体が企業、求職者、教育機関、支援機関をつなぐことが重要です。
持続可能な地域産業の実現は、パーソルビジネスプロセスデザインへご相談ください
地域産業は、地域の企業や人材、資源が結び付き、雇用や所得、消費を生み出す地域経済の基盤です。活性化によって雇用創出、地域内経済循環、ブランド形成、行政サービスの持続可能性向上が期待できる一方、人手不足、後継者不足、DXや販路開拓の遅れといった課題があります。
外部パートナーを活用する場合も、業務を委託すること自体を目的にするのではなく、自治体が目指す地域の姿、対象とする企業・人材、期待する成果を明確にすることが重要です。そのうえで、地域関係者との調整、事業運営、参加者フォロー、データ集計までの役割分担を定めると、継続的に改善できる運営体制を構築しやすくなります。
地域産業振興では、地域課題の調査、事業設計、企業への周知、求職者の集客、マッチング、定着支援、効果測定まで、多くの工程を継続して進める必要があります。庁内だけで専門性や運営リソースを確保することが難しい場合には、民間事業者との連携も選択肢となります。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、自治体の雇用・産業振興分野において、調査・企画から運営、効果測定までを支援しています。地域企業の人材確保、多様な人材の就労促進、リスキリング、企業向けDX支援、マッチングイベントの運営など、地域の課題に応じて事業を設計します。
地域企業の人手不足を解消したい、雇用創出と地域経済の活性化を両立したい、産業振興施策の企画・運営体制を強化したいとお考えの方は、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインにご相談ください。
雇用・産業振興支援サービスのご紹介
行政機関や自治体のご担当者さまへ、雇用・産業振興支援サービスをご紹介します。地域企業の人材確保や多様な人材の就労促進など、地域の課題に応じた事業をご支援します。