「AI BPO」とは
AI BPOとは、AI技術を活用したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスのことです。
従来のBPOは、人間が行なっていた業務プロセスを外部に委託することで、効率化を図っていました。AI BPOでは、そのプロセスの一部にAIを導入することで、さらに高度な業務効率化やコスト削減を目指します。
例えば、顧客対応やデータ入力などをAIに任せれば、チャットボットやAI OCRによって作業の大部分の自動化が可能です。その結果、社員はより一層コア業務に集中できるようになるでしょう。
こうした仕組みによって、生産性がさらに高まり、企業の競争力強化につながります。
AI BPOが求められる理由
AI BPOが求められる背景にあるのが、AI技術の急速な進化やリソース不足です。
近年では、これまで人間にしかできなかった判断や意思決定の一部をAIが対応できるようになり、AIが扱える業務の範囲が広がってきました。
さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により業務が複雑化・大規模化するなか、従来の労働力だけでは処理しきれないケースも増えています。
このような背景から、AIを活用したBPOサービスは、今後ますます欠かせない存在となっていくでしょう。
DXについては、以下の記事で詳しく解説しています。
従来のBPOやデジタルBPOとの違い
従来のBPOとは人材不足の解消や生産性向上を図るために、企業が特定の業務プロセスを専門業者に委託する手法です。
そしてデジタルBPOでは、BPOをさらに効率的に進めるために、クラウドシステムやRPAツールなどのデジタル技術を活用し、作業の自動化などを進めます。
AI BPOは、このようなデジタルBPOのなかでも、特にAI技術を活用する形態です。AIによるデータ分析や意思決定が可能になったことで、従来の自動化がさらに進化し、業務の効率化や精度向上をより一層実現できるようになりました。
つまり、AI BPOはデジタルBPOの一種であり、そのなかでもAIに特化した最先端の仕組みといえます。
BPOについては以下の記事で詳しく解説しています。
AI BPOの種類
AI BPOは、活用する仕組みによって大きく2つのタイプに分けられます。
ワークフローにAIを取り入れる
AIを業務のワークフローに活用する運用方法です。各業務プロセスにAIを取り入れることで、人の介在を最小限に抑えながら効率化を実現します。
従来のBPOでは、処理の各段階で人による判断や確認が必要でした。一方、この方法ではあらかじめ設定されたルールに基づき、AIが進捗管理や判断を行ないます。そのため、連続した自動処理が可能です。
この運用方法は、従来同様、定型的な作業や反復作業に適しています。
AIワークフローには学習機能が備わっているため、より柔軟な判断ができる点も特徴です。これにより、業務全体の適応力が向上します。
完全な自動化ではないため人の管理は必要ですが、AIのアシストによって生産性を大幅に高められる点が大きなメリットです。
自律型AIエージェントを活用する
人間の代わりにAIエージェントが自ら判断し、業務を進める運用方法です。AIエージェントは、あらかじめ設定された目的やルールに基づき、必要な情報を取得しながら意思決定を行ない、業務プロセスを最後まで完了させます。
従来の「人間の指示に従って判断するAI」とは異なり、AIエージェントは自ら状況を分析し、判断する点が大きな特徴です。判断が難しい場合には、人間に確認や質問もできるため、柔軟に連携しながら業務を進められます。
複数のAIエージェントで意見を出し合い、より質の高い解決策を導き出したり、リソース配分やスケジュール調整を自動で行なったりすることも可能です。
また、AIエージェントが自律的に判断し、その指示に従ってRPAが作業を実行するといった、高度かつ複雑な自動化もできます。
このようにAIエージェントの活用で、従来は人間に頼らざるを得なかった領域でも、より効率的で柔軟な業務運営が可能になるでしょう。
AIエージェントの導入でお困りの方はぜひ弊社にご相談ください。
AI BPOの活用シーンと事例
ここからは、AI BPOが実際にどのような場面で活用されているのか、具体的な活用シーンを紹介します。
カスタマーサポート
カスタマーサポートの分野では、AIチャットボットや音声認識、感情分析といった機能を活用できます。
例えば、AIチャットボットを使えば、複数の顧客に同時対応できるうえ、24時間365日体制のサポート提供が可能です。従来のチャットボットがあらかじめ設定されたとおりの回答しかできないのに対し、AIチャットボットはデータ学習によって複雑な質問にも適切な回答を与えられます。
また、音声認識技術は通話内容の自動データ化に役立ちます。さらに、感情分析を用いることで顧客の不満やオペレーターのストレスを検知し、対応品質の向上につなげることもできる可能性があります。
ただし、AIだけでは対応が難しい複雑な問い合わせもあるため、AIと人による対応をうまく組み合わせることが重要です。このようなハイブリッドな仕組みを取り入れることによって、業務効率の向上と顧客満足度の両立を実現できるでしょう。
カスタマーサポートの体制強化を検討している方は、パーソルビジネスプロセスデザインの「ヘルプデスク・コンタクトセンター」サービスをご参考にしてください。
財務・会計処理
AI BPOは、財務・会計処理の分野でも大きな効果を発揮します。
例えば、自動請求処理や財務データの分析といった機能を活用することで、請求書の作成や支払い状況の管理、請求書データの抽出といった業務をAIに任せられます。
これにより、社員は手間のかかる定型業務から解放され、本来注力すべきコア業務に専念できるでしょう。
さらに、AIによる財務データ分析は、市場動向やリスク要因の把握に役立ち、経営判断の精度向上にもつながります。
データエントリー
AIによってデータ入力業務を効率化するには、「AI-OCR」と「インテリジェントドキュメント処理」という2つの方法があります。
AI-OCRを活用することで、手書き文字やPDF文書を簡単にテキストデータに変換でき、入力時間の大幅な短縮が可能です。
また、インテリジェントドキュメント処理を利用すれば、文書内容をAIが理解し、書式が異なる請求書なども正確に分類できます。
これらにより、従来手作業で行なっていた入力や仕分け作業の負担が大幅に軽減されるでしょう。
人事管理
人事管理の分野では、AIによる採用プロセスの自動化や、従業員エンゲージメントの向上が注目されています。
例えば、応募者の履歴書をAIで解析することで、適性の高い人材を効率的に抽出できるようになります。また、従業員の行動や感情データを分析して、モチベーションの低下をいち早く察知し、離職防止につなげることも可能です。
これにより、採用業務の効率化や離職率の低下が実現し、優秀な人材の確保につながります。
人事管理の効率化を検討している方は、パーソルビジネスプロセスデザインのHRソリューション/ヘルスケアソリューションを参考にしてください。
保険金算定
AIが請求データや医療記録の解析を行なうことで、保険金のスピーディーかつ正確な算定が可能です。これにより、査定時間の短縮はもちろん、ヒューマンエラーの削減や不正請求の見逃し防止にもつながります。
マーケティング
AIは、膨大なデータを活用した市場分析や顧客行動の分析を得意とします。そのため、マーケティング分野でも大きな効果を発揮します。
AIによる精度の高いデータ分析によって、顧客のニーズや傾向を詳しく把握できるようになります。その結果、より的確で成果につながるマーケティング戦略の立案が可能になるでしょう。
マーケティング業務の効率化や精度向上を目指す方は、パーソルビジネスプロセスデザインのセールスマーケティングをぜひご活用ください。
AI BPOを導入する4つのメリット
AI BPOを導入することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、代表的な4つのメリットをご紹介します。
- 業務効率の向上
- 業務精度の向上
- コストの削減
- スケーラビリティの向上
1.業務効率の向上
AI BPOを導入することで得られる大きなメリットの一つが、業務効率の大幅な向上です。
AIエージェントの活用により、これまで人が担当していた複雑な判断を要する業務もAIが担えるようになりました。その結果、短時間で大量のタスクを正確かつ迅速に処理できるようになります。
さらにAIとBPOサービスが連携することで、BPOで効率化できる業務範囲も拡大しています。AI BPOの付加価値はこれまで以上に高まっているといえるでしょう。
なお、パーソルビジネスプロセスデザインの「Microsoft365 Copilot BPOサービス」では、業務プロセスの効率化と最適化をサポートしています。ぜひ業務効率化の参考にしてください。
業務効率化については、以下の記事で詳しく解説しています。
2.業務精度の向上
AIはデータ入力のような単純作業を正確にこなすだけでなく、業務のなかで蓄積されたデータをもとに継続的に学習し、より精度の高い処理を可能にします。
同じ作業を繰り返すとミスが発生しやすくなる人間と比べ、AIは高い精度を維持できるため、AI BPOの活用は企業の信頼性向上にも大いに貢献するでしょう。
3.コストの削減
これまで人間が担当していた定型業務をAIに任せることで、長期的にみれば人件費を大幅に抑えることも可能です。さらに、AIは24時間365日稼働できるため、人材不足の解消につながります。
また、AIが多くの業務を担うことで、従来必要だった作業スペースや設備も最小限で済みます。その結果、オフィススペースにかかる費用もカットでき、経費削減に大きく貢献するでしょう。
AI BPOの導入にともなうコストはかかりますが、長期的視点では業務に付随する全体コストの削減が期待できます。
4.スケーラビリティの向上
AI BPOを導入することで得られるメリットに、スケーラビリティ(業務規模の柔軟な拡張・縮小)の向上があります。
企業の業務量は時期や需要によって大きく変動します。そのため、従来は業務が増えるたびに新たな人員を確保し、教育する必要がありました。
AI BPOなら、AIの処理能力を必要に応じて拡張できるため、業務量の増減に柔軟に対応できます。
新規事業立ち上げ時や繁忙期にもスムーズに適応でき、効率的な業務運営が可能です。
AI BPOを活用すべき企業の特徴
AI BPOの活用が特に効果的なのは、カスタマーサポートなど顧客対応の機会が多い企業です。
AIは24時間365日稼働するため、顧客からの問い合わせに迅速に対応します。その結果、業務効率が上がるだけでなく、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
AIによる効率的な初期対応と、人間によるきめ細やかなサポートを組み合わせれば、顧客にとってさらに利便性の高いサービスを実現することも可能です。
また、定型的で単純な作業が多い企業にも、AI BPOの導入はおすすめです。単純作業をAIに任せることで、社員はより付加価値の高いコア業務に集中でき、組織全体の生産性が向上するでしょう。
AI BPOを導入する際の注意点
AI BPOを導入する際の注意点を紹介します。
- 情報セキュリティ対策が求められる
- 導入に時間やコストがかかる
- AIリテラシー教育が必要になる
情報セキュリティ対策が求められる
AI BPOを導入する際には、情報セキュリティ対策が非常に重要なポイントとなります。
業務プロセスを外部に委託する場合、機密情報を委託先と共有する必要があります。そのため、信頼性の高いBPOサービスを選定することが不可欠です。
特にAI BPOでは大量のデータを扱うため、そのなかに個人情報や財務情報などの重要な情報が含まれることもあります。
導入前には自社のセキュリティ体制をあらためて見直し、適切なアクセス管理やデータの暗号化などの対策を講じることで、リスクを最小限に抑えることが必要です。
導入に時間やコストがかかる
AI BPOを導入する際に必要になるのが、AIに学習させるための大量かつ高品質なデータです。また、併せて業務プロセス自体の見直しにも時間やコストがかかります。
また、AI BPOで利用するシステムと既存システムの連携が難しい場合、追加開発や調整作業が発生する可能性もあります。
導入前には、技術的な適合性やシステム間の連携が可能かどうかを十分に確認し、想定外のコストが発生しないように注意しましょう。
AIリテラシー教育が必要になる
AI BPOの導入にともない、社員へのAIリテラシー教育が欠かせません。
AIには、事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション」のリスクがあります。誤った情報をそのまま外部に公開すると、炎上や企業の信頼低下につながる恐れもあるでしょう。
そのため、社員がAIの仕組みを理解し、出力内容を正しく判断できるよう、リテラシー向上のための研修やスキルアップ教育の実施が求められます。
生成AI研修については、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
AI BPOは、従来のBPOやデジタルBPOと比べて、さらなる業務の効率化や精度の向上、長期的なコスト削減、柔軟なスケーラビリティの実現など、さまざまなメリットがあります。AIワークフローやAIエージェントの活用によって、カスタマーサポート、財務処理、データ入力など、幅広い業務の自動化が可能です。
一方で、導入には情報セキュリティへの配慮や、社員のAIリテラシー向上といった課題にも取り組む必要があります。
これらの点に注意しながら進めることで、AI BPOは業務効率化や長期的なコスト削減、人材不足問題の解決を目指す企業にとって、力強い成長エンジンとなるはずです。自社の成長戦略の一環として、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
AIを活用したBPOサービスについて詳しく知りたい方は、パーソルビジネスプロセスデザインのサービスページをご覧ください。