BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業界とは
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、社内の業務プロセスを一括で外部企業に委託する仕組みのことです。
ビジネスにおいては、利益に直結するコア業務ではないものの、業務上必要不可欠だったり専門知識が必要だったりする業務があります。
そのような業務をBPOで外部の企業に委託すれば、社外の専門家の力を借りてよりスムーズにビジネスを進めたり、空いた分の社内リソースを自社の利益につながるコア業務に充てたりできます。
したがって、企業の競合優位性を高めるために大きく寄与するでしょう。
こうしたBPOの仕組みは欧米において積極的に活用されており、近年日本国内でも注目が集まっています。
BPOと一般的なアウトソーシングとの違い
一般的な意味でのアウトソーシングでは、業務の一部を外部に委託しますが、業務計画や効率改善案の作成、業務の分析などは自社で行わなければなりません。
一方、BPOは業務プロセスを一括で外部に委託します。
そのため、委託した業務の計画や効率改善策の作成、業務の分析などは、業務委託先の企業が行います。つまり、委託する業務の範囲が異なるわけです。
アウトソーシングについては以下の記事でも詳しく解説しています。
>>業務のアウトソーシング(外部委託)とは?増加傾向の理由や実施のメリット・注意点を解説
なぜ今BPOが重要視されているのか?
「令和5年版高齢社会白書」によると、2022年10月1日現在で65歳以上人口は3,624万人です。これは総人口のうち29%の割合を占めることになります。
それだけ高齢者が多いということは、労働に従事する現役世代が少ない、ということでもあります。
さらに問題なのは、労働人口不足がIT業界をはじめとする国内のあらゆる業界で起きている、ということです。
一般社団法人日本BPO協会も、「JBPO 将来ビジョン2030」において、このことを現在の課題として述べています。
また、同ビジョンでは少子高齢化に加え、専門的な業務の増加も課題として挙げています。
全体的な人口が減少しているだけでなく、ITスキルなど、ビジネスに必要な専門知識を有する人材の不足も同時に発生すると予想しているのです。
このこともまた、BPOが大きな注目を集めている大きな理由だといえるでしょう。
参考:令和5年版高齢社会白書
参考:JBPO 将来ビジョン2030
企業が積極的にBPOするメリット
それでは、BPOの活用がなぜこうした全体的な人材不足や専門知識を持つ人材の不足を解決する手段になるのでしょうか。以下で理由を詳しく解説します。
人材不足の解消が期待できる
利益に直結しない「ノンコア業務」に会社のリソースが割かれると、会社の成長は鈍化してしまいがちです。
全体のリソースが減少傾向にあるならなおのこと、限られたリソースを効率的に活用しなければなりません。
BPOでノンコア業務を外部に委託すれば、自社のリソースが増えることになります。
そのため、企業は自社の社員を、利益につながるコア業務に集中して活用できるようになります。
人材不足を解消して、生産性をあげる方法については以下の記事でも解説しています。
>>生産性向上とは?生産性をあげる取り組み例や実際に生産性向上に成功した事例を解説
専門的な人材の活用ができる
先述したように、昨今のIT業界に代表されるビジネス環境では多くの専門的な知識やスキルを持つ人材が必要です。
例えば、プログラミングやWeb制作といったIT系の知識やスキルがその代表的なものとして挙げられます。
こうした知識やスキルを持つ人材は、どこの業界でも不足しているため、採用したいと思っても簡単には採用できません。
また、こうした人材を雇うために人件費をかけることができるかは企業によって議論の余地があるでしょう。
BPOを活用すれば、専門的な知識やスキルを持つ外部の人材を自社のために活用できるため、そうした人材の不足が解消されます。
教育リソースの圧縮
採用した人材は教育しなければ有用な存在にはなりません。
とはいえ、社内のあらゆる業務に対して人材教育を行っていては、そのためのリソースが大きな負担となります。
BPOのなかには、そうした採用や教育のプロセスを委託できるサービスがあります。そのようなサービスを利用すれば、教育リソースの圧縮が期待できます。
BPOはどのような業界・業務で導入されているのか【IT・経理・マーケティング・人事】
それでは実際、どのような企業でどのようなBPOが活用されているのでしょうか。
2017年に厚生労働省が行った「アウトソーシングの活用に関するアンケート調査」によると、外部に委託されているのはおもに「アプリやシステム設計・開発、プログラミング」や「Webサイト制作」、「Webデザイン・グラフィック」といったIT系の業務です。
また、経理のようなデータ入力も外部に委託する企業が多い傾向にあります。
さらに、一般社団法人日本コールセンター協会が行った『2022年度 コールセンター企業 実態調査』報告では、コールセンターの売上高が年々増加傾向にあります。
このことからわかるように、顧客などからの電話応対業務において、BPOやアウトソーシングの活用は増加傾向にあります。
そのほか、最近では人事や経理、総務といった管理部門でBPOを活用する企業も増えています。
AIを活用する自動化省人化がどうなるか
比較的BPOを実施しやすい業務は、おもに次の9つです。
- 経理業務
- 人事・採用業務
- コールセンター
- プログラミング業務
- Web制作業務
- 物流業務
- 営業業務
- 翻訳業務
- ライティング業務
BPOの導入事例
ここでは、BPOの具体的な導入事例を2つ紹介します。
<導入事例1>営業事務のプロセスにBPOを導入
通信機器・OA機器の販売・保守事業を行っているT社では、BtoB(企業間取引)の訪問営業が業務の中心でした。
コロナ禍をきっかけとして営業モデルの改革に着手、営業事務のプロセスにBPOを導入しました。
その結果、可視化された営業プロセスをもとに非対面営業モデルを構築したほか、指標の共通化や営業スキルの平準化といったメリットを得ることができました。
<導入事例2>新規サービス立ち上げ業務を外部に委託
その結果、可視化された営業プロセスをもとに非対面営業モデルを構築したほか、指標の共通化や営業スキルの平準化といったメリットを得ることができました。
ある大手金融企業では、新規サービスの立ち上げを検討していたものの分析基盤の構築ノウハウがない、という課題を抱えていました。
そのため、同社はこの新規サービス立ち上げ業務を、ITスキルを有する企業に外部委託しました。基盤の構築やプロセス・サービスの設計、マニュアル整備などが提案され、同社は新規サービスを無事立ち上げることに成功しました。
BPOを依頼する前に気を付けるべき点
メリットの多いBPOですが、どのような業務・企業でも委託して良いわけではありません。最後に、BPOを依頼する前に気を付けるべきポイントを解説します。
自社でノウハウを蓄積したい業務はBPOしない
BPOは一般的な意味でのアウトソーシングとは異なり、業務全体をそのまま外部に依頼します。
そのため、基本的に委託した業務のプロセスに関するノウハウが自社に蓄積されることはありません。よって自社にとって有力な武器となるようなコア業務はBPOすべきではないでしょう。
また、BPOにより業務プロセスを自社で把握できなくなる可能性があるため、ガバナンスが弱体化する危険性もあります。
BPOを外注する企業は吟味する
自社の業務プロセスを一括で外部に委託するBPOは、その関係性において業務提携に似ているといえます。したがって、委託先となる企業はしっかり吟味しましょう。
BPOを生業としている企業であっても、得意な分野は異なります。得意な業務を委託しなければ、期待した成果は得られないでしょう。
また、BPO企業のなかには幅広くさまざまな業務に対応しているところもあれば、一分野に特化しているところもあります。
どちらが良いのかは一概にはいえませんが、まずは自社でどの業務を外注するのかをしっかりと選定することが、自社が外注するべき企業を選ぶ際のポイントです。
同時に、機密情報をやりとりすることもあるため、十分なセキュリティ意識がある企業を選定することも重要です。
まとめ
特にIT業界においては、BPOを活用することで業務効率化が期待できます。
また、社内リソースに余裕ができるため、自社のコア業務にリソースを集中しやすくなるでしょう。今後のビジネス環境に不安をいだいているという方は、BPOの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
パーソルビジネスプロセスデザインではBPOサービスを行っております。
「自社に適したサービスとは何だろう」「BPOをどのように活用したらいいのかわからない」という方はお気軽にご相談ください。
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