コールセンターにおける課題
そもそも、なぜコールセンター研修がこれほどまでに重要視されるのでしょうか。それは、多くのコールセンターが共通して抱える、以下のような「悩み」や「課題」があるからです。
【コールセンターの悩みや課題】
- オペレーターの言葉遣いや対応に問題がある:
不適切な敬語の使用、一方的な話し方、顧客の感情に寄り添えない対応などは、顧客に不快感を与え、企業のブランドイメージを損なう可能性があります。 -
顧客ファーストの電話応対を身につける必要性がある:
顧客のニーズを的確に把握し、期待を超えるサービスを提供するためのスキルが不足している場合、顧客満足度の低下に直結します。 -
クレーム対応力が弱い:
顧客からのクレームに適切に対応できないと、二次クレームに発展したり、企業の信頼を失ったりするリスクが高まります。
これらの課題は、規模や業種を問わず、どんなコールセンターでも発生している課題であり、オペレーターとして働く人がこれらの課題に直面し、育成や改善の必要性を感じているケースも少なくありません。しかし、これらの課題は、内容に応じた適切な研修を行うことで、着実に改善することが可能です。
ただし、改善するためには、漠然と研修を行うのではなく、「研修を行う目的」を明確にしなくてはなりません。
次からは、その「研修の目的」について解説していきます。
コールセンター研修の目的:効果を最大化する3つの柱
コールセンター研修を効果的にするには「研修の目的」を明確にする必要がありますが、目的は大きく3つに集約されます。その3つについて、詳しく見ていきましょう。
顧客ファーストの対応を身につける
コールセンターは顧客との接点が多い組織であり、企業の顔ともいえる重要な業務です。企業の顔として機能するためには、『顧客ファースト』の対応を身につけなくてはなりません。
顧客ファーストの電話対応として、具体的には以下の要素を最低限、身につける必要があるでしょう。
【コールセンターのオペレーターが身につけるべき要素】
-
正しい敬語:
顧客との信頼関係を築く上で、適切な敬語の使用は基本です。 -
丁寧な言葉遣いや口調:
顧客に安心感と好印象を与えるためには、言葉遣いや声のトーン、話し方まで細部にわたる配慮が求められます。 -
印象のよい声のトーンやボリューム:
明るく聞き取りやすい声のトーンと適切なボリュームは、顧客に快適なコミュニケーションを提供するために不可欠です。 聴力と共感力:
顧客の話に耳を傾け、その感情に寄り添うことで、真のニーズを理解し、適切な解決策を提示することができます。的確な質問力:
顧客の状況を正確に把握するために、必要な情報を引き出すための質問スキルも重要です。
コールセンター研修でマナーや顧客対応力を鍛えるものが多いのは、顧客への対応に必要な要素を身につけ、顧客ファーストの姿勢を整えるためといえます。
顧客満足度向上
コールセンターの役割は多岐にわたりますが、その中の大きな役割として『顧客満足度の向上』を通して会社や組織の利益を生み出すという点があります。
これを達成するには、問い合わせへの適切な対応だけでなく、クレームや顧客の意見に対して適切かつ真摯な姿勢で向き合うことが必要です。顧客満足度の向上は、前述した『顧客ファーストの姿勢』に加えて的確な対応ができてはじめて成立するものです。
どのような問い合わせにも適切かつ真摯に対応する姿勢は、ただ電話を受けるだけのオペレーターとして業務をこなしていても身につきません。コールセンター研修は、「真摯な姿勢で向き合うための対応力」を鍛える場としても行われるのです。
顧客満足度向上において、コールセンター研修は重要な要素といえるでしょう。
利益の最大化
先ほど「クレームや顧客の意見に対して適切かつ真摯な姿勢で向き合う」と述べましたが、コールセンターで得られるクレームや意見は単なる苦情として処理されるべきものではありません。これらは、商品およびサービスの改善につながる貴重な情報ともいえます。
オペレーターがクレームや意見を正しく汲み取って情報を活用できれば企業の利益につながりますし、その際に質の高い顧客対応をすれば、コールセンターを起点として企業の評価を高めることもできるでしょう。
このように、コールセンターは顧客対応を通して企業の利益を最大化させる機能を有しています。ですから、その部分を磨いていくこともコールセンター研修の目的といえるのです。
コールセンターでの主な研修方法
コールセンター研修には様々なアプローチがありますが、ここでは主な研修方法とその特徴について詳しく見ていきましょう。これらの方法を適切に組み合わせることで、より効果的な研修プログラムを構築することができます。
【コールセンター研修の主な方法】
- 座学
- 端末操作
- ロールプレイング
- OJT
それぞれの研修方法について、どのように実施されているのか解説していきます。
座学
座学研修では、コールセンター業務における基礎知識を学びます。具体的には、以下の内容です。
【座学の主な内容】
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コールセンターで取り扱う商品やサービスの基礎知識:
提供している製品やサービスの詳細、特徴、利用方法などを理解することで、お客様からの様々な質問に正確かつ迅速に回答できるようにします。 -
業務における注意事項:
個人情報保護、セキュリティに関するルール、コンプライアンス遵守など、業務遂行上遵守すべき重要な事項を学びます。 -
正しい敬語や言葉遣い:
お客様に不快感を与えないための適切な言葉遣いや、ビジネスシーンにふさわしい丁寧な表現を習得します。
内容を見ると分かりますが、コールセンターのオペレーターとして働く際に必要な知識がほとんどです。
そのため、座学は研修期間中に実施される傾向が強いといえるでしょう。
端末操作
コールセンターでは、問い合わせを受けるための電話機や、問い合わせ内容を登録するための業務端末を扱うことが多くあります。これらの端末操作を学ぶための研修も非常に多く行われます。
研修内容は、実際に機器を操作しながら覚える形がほとんどでしょう。例えば、コールセンターの電話機は、スムーズに問い合わせに対応できるようにヘッドセット型を採用しているところが多いです。これは、通常の電話機とは異なりますので、操作に慣れていないと、受電から情報検索、顧客対応までの一連の流れが滞りスムーズな対応が難しくなってしまいます。また、コールセンターによって使用機器も違うため、「以前、コールセンターのオペレーターとして働いていた」という人でも、電話機の端末研修が必要になる場合が多いでしょう。
問い合わせを入力する業務端末も、パソコンやタブレットなど企業ごとに異なります。同じような機器を使っていても中のシステムは違う場合が多いため、スムーズな操作を習得するためにも端末操作をする研修は必要になります。さらに、コールセンターに配属された際だけでなく、端末や中のシステムに変更があった場合や新しく導入した際にも行われることが多いです。
ロールプレイング
コールセンターにおけるロールプレイング研修は、顧客とのやり取りを想定して行います。多くの場合、オペレーター役と顧客役に分かれ、実際のやり取りをもとに作成された「スクリプト」と呼ばれる台本や想定されるシナリオ(クレーム対応、商品説明など)を使って実施されます。
ロールプレイング研修は、以下の流れで進められることが多いでしょう
【ロールプレイング研修の主な流れ】
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スクリプトを繰り返し読みこむ:
まずは、想定される会話の流れや、顧客への説明内容を十分に理解し、自然に会話できるようになるまで練習します。 -
オペレーター役と顧客役に分かれて実践:
本番のような緊張感を持って会話をシミュレーションします。 -
フィードバック:
オペレーター役の対応について、よかった点や改善点があれば、具体的にフィードバックを行います。声のトーン、話し方、言葉遣い、質問の仕方、情報提供のタイミングなど、多角的な視点から確認・評価します。顧客役も、実際に顧客が感じるであろう違和感や疑問点を伝えることが重要です。 - ペレーター役と顧客役を入れ替えて実践:
双方の立場を経験することで、オペレーターは顧客の視点を理解し、より共感的な対応ができるようになります。
こうした流れを繰り返して行うことで、実際の問い合わせでもスムーズに対応できる力を鍛えていきます。
鍛えていきます。単に知識を詰め込むだけでなく、それを実践で使えるスキルとして定着させることがロールプレイングの最大の目的です。
また、ロールプレイング研修では端末操作の研修も兼ねる場合があります。実際の業務で使う電話機や業務端末をロールプレイングの中でも操作しながら研修することで、より実践に近い状態での練習が可能になります。
OJT
OJTは、「On the Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略で、「実際の現場で業務を通じて教育を行う訓練方法」を意味します。コールセンターの場合は、研修中のオペレーターの横に先輩社員や研修担当者が座った状態で実際の業務を行っていきます。
研修中のオペレーターは、先輩社員や研修担当者に指導・サポートしてもらいながら実際の業務のなかで顧客対応を覚えていきます。問い合わせ内容によっては、研修中のオペレーターだけでは対応が難しい複雑なケースもありますが、その際には先輩社員や研修担当者が臨機応変に対応を代わったり、適切な支援を行ったりすることで、新人オペレーターは安心して業務に取り組むことができます。実践を通して学べますので、ほかの研修方法よりも成長スピードが速いのが特徴です。
コールセンター研修でのポイント
ここまで、コールセンター研修の目的と主な方法について解説してきました。研修の目的を意識しながら、座学、端末操作、ロールプレイング、OJTといった適切な研修方法を組み合わせて実施していくことが必要です。
さらに、研修の効果を最大限引き出すには、コールセンターの現状を知ることが重要です。オペレーターの問題点を知ることで、どのような研修を行えばよいかがわかっていきます。研修をより効果的なものにするためには、まずはコールセンターやオペレーターの現状調査を念入りに行うようにしましょう。
加えて、研修を実施してオペレーターの実力を高めていくには、以下の3つのポイントを押さえなくてはなりません。
【コールセンター研修におけるポイント】
- モチベーションにフォーカスする
- オペレーターのスキルを均一化する
- オペレーターの役割を明確化する
これらのポイントについて、詳しく解説していきましょう。
モチベーションにフォーカスする
コールセンターのオペレーターは、一日中ずっと顧客対応を行い続けなくてはなりません。どんなに人と接するのが好きな人でも、一日中ずっと多くの人の問い合わせ対応をしていると精神的に疲れてしまいます。また、コールセンターはクレーム対応などの精神的なダメージが大きい側面もあります。こういったことから、コールセンター業務はモチベーションが低下しやすい環境にあるといえます。
モチベーションが下がってしまうと、誰でも顧客対応が難しくなってしまいます。ですから、コールセンターの品質を向上させるためには、オペレーターのモチベーション維持は重要な要素といえるでしょう。研修においても、モチベーションを保つための工夫や心構えなどにフォーカスして、しっかりと伝えられるようなものにしましょう。
オペレーターのスキルを均一化する
オペレーター数が多いコールセンターでは、個々のスキルや対応力にばらつきが生まれやすくなってしまいます。コールセンターでの対応にばらつきが生じると、顧客からの信頼を失ってしまうなど悪影響を及ぼす恐れがあります。
コールセンター研修では、コールセンターに所属するオペレーターのスキルを均一化できるような研修を行いましょう。
そのためにも、まずオペレーターのスキルレベルを細かく把握する必要があります。そのうえで、各オペレーターの足りない部分を補えるような研修を個々に実施して、スキルを均一化させていくと良いでしょう。
決して「全員同じ研修を受けているのだから同じスキルレベルになっているはずだ」と思い込んでしまうことがないよう、各オペレーターのスキルレベルを細かく定点観測していく必要があるのです。
オペレーターの役割を明確化する
コールセンターを利益向上のために貢献させるには、所属しているオペレーターが自分の役割を正しく理解しておく必要があります。
例えば、クレーム対応を行っているオペレーターがいたとして、このオペレーターがクレーム対応の意味や目的を知らなければ、マニュアルどおりの対応だけで終わってしまうでしょう。しかし、クレーム対応の意味や目的を理解したうえで対応できるオペレーターであれば、以下のような行動ができるはずです。
【役割を明確に理解しているオペレーターの行動】
- クレームの内容や顧客に合わせた対応を臨機応変に行う
- 顧客の意見や要望から、必要な情報を抜き出して整理しながら対応する
このように、役割を明確に理解したオペレーターの存在は、企業の利益向上に欠かせない要素といえます。
どのような研修であっても、この要素は必ず盛りこむようにしましょう。
まとめ
コールセンター研修は、ただ行えばよいというものではありません。
目的を明確にし、コールセンターで働くオペレーターのスキルや対応力を補えるような内容や方法を選択していく必要があります。
研修を実施する際には、コールセンターで働くオペレーターのスキルレベルをしっかりと把握し、何が足りないのかを明確にしたうえで内容を検討していきましょう。
また、コールセンター研修を効果的にするには、研修におけるポイントを押さえておかなくてはなりません。「モチベーションを保つための工夫や心構え」や「スキルの均一化」「オペレーターの役割の明確化」などは、必ず盛りこむようにしましょう。
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