コールセンターが直面する主な問題
コールセンターの問題は、大きく分けると「人」「日々の運用」「顧客との接点」「運営を支える基盤」に表れます。ここでは対策を急いで考える前に、現場で何が起きているのかを一つずつ見ていきましょう。
問題(1)人が集まらず、育てる余裕もなくなる
採用しても、独り立ちする前に辞めてしまう。欠員を埋めるために採用を続ける一方で、研修やフォローを担うSVの負担は増えていく。人手不足が続く現場では、この循環が起こりがちです。
新人に任せられる範囲が曖昧だと、本人は判断に迷い、SVへの相談も増えます。ベテランの経験で何とか回している間は問題が見えにくいものの、退職や異動が重なると、応対品質まで揺らぎかねません。
数字からも、採用とSV不足の重さが見える
CCAJの2025年度調査(回答68社)では、非公開を除く67社の82.1%が、採用に「苦労している」または「やや苦労している」と回答しています。
職種別では、非公開を除く66社の87.9%がSVに不足感を示し、オペレーターの72.7%を上回りました。なお、対象はCCAJのエージェンシー会員であり、すべてのコールセンターを代表する調査ではありません。
※参考:一般社団法人 日本コンタクトセンター協会(CCAJ)「『2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査』報告」
問題(2)電話が集中すると、待ち時間と応対品質が揺れる
キャンペーンの開始直後や月曜日の午前中など、問い合わせが一気に増える時間があります。入電の波とシフトが合っていなければ、待ち時間が伸び、つながる前に電話を切る人も増えてしまいます。
一方、現場が処理時間を意識しすぎると、説明を急いだり、後処理を後回しにしたりすることがあります。その場では早く終わっても、案内が足りずに再問い合わせが発生すれば、センター全体の仕事は減りません。
人によって回答が違う、ベテランでなければ解決できない、といった属人化も同じ問題を深くします。数字だけを見ると原因を取り違えやすいのが、運用課題の難しいところです。
問題(3)問い合わせ履歴と顧客の声が社内で分断される
電話では一度説明したのに、メール窓口では最初から話し直さなければならない。こうした体験は、チャネルごとに履歴が分かれていると起こります。担当者側も過去の経緯を追えず、同じ確認を繰り返すことになります。
さらに、問い合わせ内容が「対応件数」として処理されるだけでは、商品や手続きの改善にはつながりません。現場には顧客の困りごとが集まっていても、分類の仕方や共有先が決まっていなければ、貴重な声がセンター内にとどまってしまいます。
問題(4)古いシステムと属人的な運用が、変化への対応を遅らせる
顧客情報を確認する画面と、対応履歴を入力する画面が別々になっている。障害が起きると、どの手順へ切り替えるのか分からない。長く使われてきたシステムや運用には、こうした小さな不便が積み重なっています。
在宅勤務や複数拠点での運営を始めると、課題はさらに広がります。端末や認証の準備だけでなく、画面や音声をどう扱うか、トラブルを誰へ報告するかもそろっていなければなりません。
平常時には何とか回っていても、災害やシステム障害で担当者が集まれなくなったとき、代わりの手段がないと重要な窓口まで止まります。日々の効率と、非常時の備えは切り離せないテーマです。
コールセンターの課題を解決する対策
問題の姿が見えてきたら、次は運用をどう変えるかです。大がかりなシステム刷新から始めなくても、業務の分け方や記録の残し方を整えるだけで、現場の動きが変わることがあります。
ここでは、先ほど挙げた4つの問題に対応する形で、取り組みの方向を紹介します。
対策(1)採用・定着・育成をひと続きで見直す
採用数を増やす前に、新人が無理なく仕事を覚えられる流れがあるかを見直します。業務を「定型的なもの」「判断が必要なもの」「専門部署へ渡すもの」に分けると、任せる範囲がはっきりします。
独り立ちの基準も、研修担当者だけが知っている状態では不十分です。必要なスキルや評価方法、SVへ相談する条件をチームで共有し、研修後も短い振り返りを続けます。新人がつまずいた箇所をFAQや研修内容へ戻せば、次の育成にも生かせます。
また、新人の定着を促すためには、業務の切り分けやルール整備だけでなく、日々の不安を取り除き、前向きに働けるようなメンタル面のフォローも欠かせません。
法律で求められることと、現場で決めることを分ける
2026年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメント防止措置が義務付けられます。方針の明確化と周知、相談体制の整備、発生後の事実確認や被害を受けた従業員への配慮、悪質な事案を抑止するための方針・体制づくりなどが、事業主に求められる措置です。
一方、上席へ交代する基準や記録の残し方は、こうした措置を現場で機能させるための運用ルールに当たります。法律が「上席交代」そのものを全事業主へ一律に義務付けているわけではありません。
なお、同日から求職者などへのセクシュアルハラスメント防止措置も義務化されるため、採用担当者の教育や相談体制も確認しておきたいところです。
※参考:厚生労働省「カスタマーハラスメントの防止対策の推進」
対策(2)KPIを一つに絞らず、問い合わせの流れで見る
運用を見直すときは、平均処理時間だけで良し悪しを決めないことが大切です。応答率や放棄呼率、一次解決率、再問い合わせ、品質評価を並べると、「早く終えた結果、別の負担が増えていないか」が見えてきます。
曜日や時間帯ごとの入電と配置人数を重ねれば、シフトのずれもつかみやすくなります。通話そのものではなく、情報検索や他部署への確認、後処理に時間がかかっているなら、FAQや引き継ぎ方を見直すほうが効果的かもしれません。
対策(3)VOCを現場の記録で終わらせない
顧客の声を生かすには、まず履歴を追える状態をつくります。受付番号、顧客情報、問い合わせ内容、対応状況がチャネルをまたいでつながれば、担当者が変わっても話の続きから対応できます。
VOCは、問い合わせ理由や対象商品、解決できたか、同じ問題が繰り返されているかを共通のルールで記録します。そのうえで、商品・営業・物流・ITなどの担当部門と期限を決め、改善後に問い合わせが減ったかまで追います。
件数を集計して報告するだけでなく、顧客がつまずく原因を取り除けたかを見る。そこまでつながって初めて、コールセンターに集まる声が事業の改善材料になります。
対策(4)システム・働き方・BCPを運用から設計する
システムを選ぶ前に、減らしたい作業と残したい判断を整理します。必要なデータや既存環境との連携、権限、ログ、障害時の代替手順まで決めておけば、導入後の二重入力や手戻りを避けやすくなります。
在宅勤務や複数拠点では、端末と認証に加え、画面・音声の取り扱い、接続トラブル、事故報告の流れも共通化します。BCPでは、止められない業務と復旧までの目標時間を定め、代替拠点や別の受付手段へ切り替えられるか実際に試しておきます。
公的な手引きは、目的に合わせて使い分ける
IPAの「テレワークを行う際のセキュリティ上の注意事項」は、勤務者が端末や通信環境を安全に使うための注意点をまとめた資料です。組織としてのインシデント対応には「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」、訓練には「セキュリティインシデント対応机上演習教材」が別に用意されています。
BCPについては、内閣府の事業継続ガイドラインで、重要業務や復旧目標、ボトルネック、代替戦略、継続的な見直しが示されています。
※参考:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「テレワークを行う際のセキュリティ上の注意事項」
※参考:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(付録8 中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き)」
※参考:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「セキュリティインシデント対応机上演習教材」
※参考:内閣府 防災担当「事業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―」
改善の優先順位を決める方法
課題も対策も見えているのに、なかなか動き出せないことがあります。多くの場合、やることが足りないのではなく、何から始めるかが決まっていません。
最初に改善の目的をそろえ、現状を見える形にします。そのあとで、顧客や現場への影響、急ぐ理由、実行までの負担を比べると、着手する順番を話し合いやすくなります。
方法(1)改善目的と評価指標を決める
いきなりKPIを選ぶのではなく、「誰の、どんな状態を変えたいのか」から考えます。たとえば、待ち時間を減らしたいなら応答率や時間帯別の入電、配置人数、放棄呼が候補になります。
新人育成を安定させたい場合は、独り立ちまでの期間や評価結果、SVへの相談件数が手掛かりになります。問い合わせ自体を減らしたいなら、頻出理由や再問い合わせ、商品・手続きの改善件数を見るほうが目的に合います。
目標値は、現在の実績や顧客との約束、コスト、品質リスクを踏まえて決めます。他社の目安が、自社にとって無理のない基準とは限りません。
方法(2)現状を可視化してボトルネックを特定する
問い合わせの受付から完了までをたどり、どこで止まっているかを見ます。本人確認、情報検索、保留、他部署への確認、後処理と分けるだけでも、時間を使っている工程が見つかります。
十分なデータがなければ、代表的な曜日や繁忙時間に絞って測れば構いません。現場の声は大切な手掛かりですが、「おそらくここが原因」という感覚と、実際の履歴や数値は分けて扱います。
方法(3)影響度・緊急度・実行難易度で着手順を決める
候補を並べたら、顧客・従業員・事業への影響を比べます。法令や契約、安全に関わるものは、効果の大きさだけでなく、放置できる時間の短さも考えなければなりません。
一方で、システム変更や多部門の調整が必要な施策は、着手までに時間がかかります。すぐできる小さな改善と、準備が必要な施策を分けておくと、短期と中長期の計画を立てやすくなります。
点数で比べる場合も、採点理由と未確認事項は残します。今は見送る施策には、再検討する条件を付けておくと、単なる先送りになりません。
改善施策の選び方
改善方法は、内製か外部委託かの二択ではありません。顧客や商品に関する判断は社内に残し、定型作業にはシステムを使い、繁忙期だけ人員を補うなど、組み合わせ方はいくつもあります。
選ぶときの軸になるのは、「自社で持ち続けたい判断は何か」「どの業務なら外部へ任せられるか」です。
選び方(1)内製で改善する
商品や顧客に関する知識を社内へ残したい場合や、状況に応じた判断が多い業務は、内製を軸にするほうが動きやすいでしょう。現場と商品部門、営業部門が直接やり取りできる点も強みです。
ただし、内製はすべてを自前で抱えることではありません。採用・育成や品質管理の責任は社内に置きながら、定型作業の自動化や繁忙期の人員補強だけを外部へ頼む方法もあります。
選び方(2)システム・自動化を活用する
「AIを導入すること」自体を目標にすると、導入後の良し悪しを判断しにくくなります。先に決めたいのは、どの作業を減らし、例外が起きたときに誰へつなぐかです。
IVRやコールルーティングは、問い合わせを適切な窓口へ振り分けます。FAQやチャットボットは定型的な質問の自己解決を助け、音声認識や要約は記録・後処理の負担を軽くする用途があります。
試行では、削減できた時間だけでなく、解決率、再問い合わせ、誤案内も確認します。顧客が迷わず使えるか、オペレーターが手直しに追われていないかも見ておきたいところです。
選び方(3)人材派遣・アウトソーシングを活用する
必要な人員を自社の指揮命令の下で受け入れたい場合は人材派遣、業務の運営・管理を受託事業者に任せたい場合はアウトソーシングが候補になります。
人材派遣では派遣先が派遣労働者へ業務上の指示を行います。一方、アウトソーシングでは、受託事業者が自ら従業員を指揮命令し、業務を独立して処理する必要があります。契約名称ではなく実際の運用で判断されるため、法務・人事部門と確認します。
どちらの場合も、対象業務、KPI、エスカレーション、報告方法、費用、再委託、BCPを曖昧にしないことが大切です。外部へ任せる範囲が広いほど、自社が持つ方針と監督の役割は明確にしておく必要があります。
個人データを扱う場合の確認
個人情報保護委員会のガイドラインでは、適切な委託先の選定、委託契約、取扱状況の把握が示されています。再委託先の情報や安全管理、事故報告、データの返却・消去も確認対象です。
※参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
選び方(4)施策を比較表で判断する
候補は、同じ項目を横に並べると違いが分かります。費用や提案内容だけでなく、自社に残る役割と運用上の注意点も含めて比べてみましょう。
コールセンター改善施策の比較
| 選択肢 | 向いている状況 | 自社に必要な役割 | 主な確認点 |
|---|---|---|---|
| 内製 | 固有の判断や知識を残したい | 採用・育成・品質管理 | 繁閑、属人化、継続性 |
| システム・自動化 | 定型処理を効率化したい | 要件定義・更新・例外対応 | 精度、連携、ログ |
| 人材派遣 | 自社管理のまま補強したい | 指示・教育・受入体制 | スキル、期間、繁閑 |
| アウトソーシング | 運用単位で委託したい | 方針・責任分界・監督 | 範囲、KPI、再委託、BCP |
実際の比較表には、回答の根拠資料、未確認事項、確認する人、期限も加えます。「条件付きで可能」という回答を確認済みとして扱わず、契約前に詰める事項として残すためです。
改善を進める3ステップ
改善は、最初から大きく始めるより、範囲を絞って確かめるほうが失敗の理由をつかみやすくなります。基本の流れは、現在地を残す、試す、結果を次へつなぐ、の3段階です。
ステップ(1)ベースラインを設定する
施策を始める前に、いまの状態を記録します。対象期間と営業時間、チャネル、業務、集計方法、除外条件をそろえておけば、施策後の数字と比べられます。
データがない項目は、無理に埋めず「未計測」とします。必要な部分だけ、短期間の手作業計測やサンプル調査で補えば十分です。現場の負荷も一緒に残しておくと、数字には表れにくい変化を拾えます。
ステップ(2)小さく試して役割と判断基準を決める
試行は、問い合わせの種類や時間帯、チームなどを限定して始めます。開始前に責任者、成功と中止の条件、事故時の連絡先、元の運用へ戻す条件を決めておきます。
数値とともに、顧客やオペレーターの声、例外処理、他部署への影響も記録します。確認できた範囲と、まだ分からない範囲を分けておけば、試行結果を必要以上に広く解釈せずに済みます。
ステップ(3)効果を検証して次の改善につなげる
試行後は、ベースラインと同じ条件で結果を比べます。目標に届いたかに加えて、品質低下、再問い合わせ、残業の増加など、別の場所へ負担が移っていないかも見ます。
続ける、内容を変える、いったん止める。どの判断をした場合も、その理由と次の担当者、確認日を残します。結果をFAQやシフト、システム設定、委託範囲へ反映して、日々の運用に戻すところまでが一つの改善です。
まとめ|全体像を整理し、優先順位を決めて改善する
コールセンターの悩みは、人手不足、待ち時間、チャネルの分断、システムの使いにくさなど、さまざまな形で現れます。ただし、表面に見える問題へ一つずつ対処するだけでは、別の場所に負担が移ることもあります。
まず何が起きているかを整理し、変えたい状態を決める。そのうえで影響度・緊急度・実行難易度から順番を付け、小さく試して結果を確かめます。
内製、システム、人材派遣、アウトソーシングは、どれか一つに絞るものではありません。社内に残したい判断を軸に組み合わせることで、自社の現場に合う運営へ近づけます。
コールセンター運営の改善ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
コールセンター運営の改善ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
問題は見えているものの、どこから手を付けるべきか決められない。自社で続ける業務と、外部へ任せる業務を整理したい。そうした検討の初期段階からご相談いただけます。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、コールセンターの要件整理から体制構築、運用、実績報告、改善提案まで一貫して支援しています。対象業務や責任分界、KPI、情報管理、エスカレーション方法などを整理し、お客さまの課題や業務量に適した運営体制をご提案します。
「複数の課題があり、どこから改善すべきか分からない」「自社に残す業務と外部へ委託する業務を整理したい」「応対品質を維持しながら運営を効率化したい」といった場合は、パーソルビジネスプロセスデザインのコールセンターアウトソーシングをぜひご検討ください。