コールセンターでのカスハラ事例を紹介|よくある被害と対応の注意点を紹介

コールセンターでのカスハラ事例を紹介|よくある被害と対応の注意点を紹介

コールセンターにおけるカスタマーハラスメント(カスハラ)は、近年深刻な社会問題となっています。
特にコールセンターでは、顔が見えない匿名性や電話口での感情的な行動により、従業員が理不尽な要求や暴言にさらされるケースが急増しています。

本記事では、コールセンターで実際に発生している具体的なカスハラ事例を詳しく紹介し、その背景や原因、被害の実態について解説します。さらに、現場での適切な初期対応方法から企業として取り組むべき包括的な対策まで、実践的な情報をお伝えします。


目次

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    コールセンターにおけるカスハラの実態

    コールセンターでのカスハラ被害は、他の業種と比較しても特に深刻な状況にあります。最新の調査結果によると、コールセンターを含む電話業務ではたらく従業員の多くがカスハラを経験しており、その割合は他業種よりも高い水準にあるとされています。


    カスハラの発生状況

    UAゼンセン調査によると、直近2年間で56.7%が迷惑行為の被害に遭ったと回答しており、さらに全体の6%以上は10件以上の被害を経験したとしたとされています。こうした結果からも、迷惑行為が深刻な問題となっていることがわかります。特に繁忙期や新サービス開始直後には、この数値がさらに高くなる傾向があります。


    また、カスハラの発生時間帯についても特徴的な傾向が見られます。平日の午後から夕方にかけて(14時〜17時)が最も多く、全体の約30%を占めています。これは顧客の仕事終わりのストレスや疲労が影響していると考えられています。



    業種別カスハラ発生率の比較データ

    コールセンターにおけるカスハラの深刻さを理解するため、業種ごとの比較データを見てみましょう。パーソル総合研究所の「カスタマーハラスメントに関する定量調査」によると、過去3年以内にカスハラを経験した割合は、医療・福祉業界が29.9%で最も高く、次いで国家公務員・地方公務員が29.4%、運輸業・郵便業が26.5%、複合サービス事業(郵便局や協同組合など)が25.5%となっています。


            
    業種
    カスハラ発生率
    医療・福祉業界 29.9%
    国家公務員・地方公務員 29.4%
    運輸業・サービス業 26.5%
    複合サービス事業(郵便局や協同組合など)
    25.5%



    カスハラが企業に与える経済的影響

    カスハラによる企業への経済的損失も無視できません。カスタマーハラスメント(カスハラ)は従業員の精神的被害や休職・離職を引き起こし、対応に要する人件費や精神的ケア費用、代替要員の確保や採用・教育コストなど企業側にも複合的な負担を生むことが報告されています。


    コールセンターで多発するカスハラ事例の詳細分析

    コールセンターで実際に発生しているカスハラ事例を詳しく分析することで、被害の実態と対策の重要性を理解できます。ここでは、最も多く報告されている代表的な事例を具体的に紹介し、それぞれの特徴や対応の難しさについて解説します。


    暴言・怒声によるカスハラ事例

    コールセンターにおけるカスハラの多くは、暴言・怒声による精神的攻撃です。典型的な事例として、顧客が「お前には理解できないのか」「上司を出せ、今すぐだ」などの暴言を浴びせ続けるケースがあります。さらに深刻な場合では、人格否定や家族への言及まで行われることもあります。


    このような暴言・怒声は、オペレーターの自尊心を傷つけ、長期的な精神的ダメージを与えます。特に新人オペレーターの場合、最初の暴言体験がトラウマとなり、早期離職につながるケースも多く報告されています。また、周囲の同僚にも緊張感が伝わり、職場全体の雰囲気悪化を招く二次的影響も深刻な問題となっています。


    長時間拘束による業務妨害事例

    長時間拘束は、顧客が意図的に通話を長引かせることで発生するカスハラの一形態です。具体的な事例では、簡単な住所変更手続きについて3時間以上も同じ内容を繰り返し質問し続け、オペレーターを電話口から離れられなくする行為などがあります。


    この長時間拘束により、他の顧客への対応が滞り、コールセンター全体の業務効率が大幅に低下します。また、拘束されたオペレーターは休憩時間を削られ、肉体的・精神的疲労が蓄積していきます。結果として、サービス品質の低下や従業員の健康被害につながる深刻な問題となっています。


    執拗で理不尽な要求事例

    執拗で理不尽な要求も、コールセンターで頻発するカスハラの典型例です。例えば、既に終了したキャンペーン価格での契約を強要したり、規約上不可能なサービス変更を何度も要求したりするケースがあります。「他の会社では対応してくれた」「特別扱いしろ」といった根拠のない主張を繰り返し、オペレーターを困惑させる手法が使われます。


    このような理不尽な要求に対して、オペレーターは会社の規定を説明しながらも、顧客満足度を下げたくないという板挟みの状況に置かれます。結果として、長時間の対応を余儀なくされ、精神的ストレスが高まることになります。


    脅迫・威嚇行為の深刻事例

    最も深刻なカスハラ事例の一つが、脅迫や威嚇行為です。「お前の名前と住所を調べてやる」「会社に乗り込んでやる」「ネットに悪評を書き込んでやる」「SNSで拡散する」など、脅迫の手口は多岐にわたります。


    これらの脅迫行為は、オペレーター個人の安全への不安を煽り、深刻な精神的トラウマを引き起こします。実際に、強い心理的負担から勤務を続けることが困難になり、離職につながるケースも報告されており、企業としても看過できない重大な問題となっています。


    コールセンターでカスハラが発生する背景要因

    コールセンターでカスハラが多発する背景には、構造的な要因と顧客の心理的要因が複雑に絡み合っています。これらの要因を理解することで、より効果的な予防策と対応策を立てることができます。


    コールセンター特有の構造的リスク要因

    コールセンターでは顔が見えないため匿名性が高く、顧客の抑制が働きにくい環境が形成されています。対面接客と異なり、相手の表情や雰囲気を読み取れないため、顧客は普段以上に攻撃的になりやすい傾向があります。さらに、非対面型のコミュニケーションでは相互の理解が深まりにくく、誤解や不信感がエスカレートしやすい点も、カスハラを助長する要因となります。


    さらに、コールセンターでは従業員として女性が多い現場もあり、性別に基づく偏見や差別意識から、女性オペレーターが顧客から強い言動を受けるケースが報告されることがあります。このような構造的な脆弱性が、カスハラ発生を助長する一因になり得ます。


    カスハラを行う顧客側の心理状態

    カスハラを行う顧客の心理状態を分析すると、いくつかの共通パターンが見えてきます。代表的なのは、サービスや商品に対する不満が適切に解決されない状況で、フラストレーションが蓄積し爆発するケースです。また、期待と現実のギャップに失望することが引き金となることもあります。


    一方で、意図的にカスハラ行為を行う顧客も存在します。これらの顧客は、威圧的な態度により特別扱いを受けられると認識しており、意図的に攻撃的な行動を選択します。こうした常習的なカスハラ顧客は、企業にとって特に深刻な脅威となっています。


    ストレス社会の影響

    現代社会におけるストレスの増大も、カスハラ発生の背景要因として無視できません。経済的不安、仕事や家庭でのプレッシャー、社会全体の閉塞感などが複合的に作用し、些細なトラブルでも過剰な反応を示す顧客が増加しています。


    また、SNSの普及により「お客様は神様」という価値観が過度に増幅され、サービス提供者に対する要求水準が非現実的なレベルまで高まっていることも問題となっています。これらの社会的変化により、コールセンターは従来以上に困難な対応を迫られる状況が続いています。


    カスハラ被害が従業員と組織に与える深刻な影響

    カスハラによる被害は、直接的な被害者である従業員だけでなく、組織全体に広範囲かつ長期的な悪影響をもたらします。これらの影響を正確に把握し、適切な対策を講じることが企業経営において極めて重要です。


    従業員への精神的・身体的健康被害

    カスハラを経験した従業員には、動悸などの身体症状や不安、集中力低下などの精神症状まで、多岐にわたる影響が報告されています。こうした症状は、メンタルヘルスや仕事の持続性に影響を及ぼすことがあります。


    特に深刻なのは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような症状が現れるケースです。電話の着信音に過度に反応したり、特定の顧客対応時にフラッシュバックが起こったりするなど、業務継続が困難になる症例も報告されています。これらの症状は短期間では改善せず、長期的な治療やケアが必要となる場合も少なくありません。


    離職率上昇による人材確保の困難化

    カスハラによる離職は、コールセンター業界における深刻な課題です。カスハラを経験した従業員は、そうでない従業員に比べて離職傾向が強く、早期に退職するケースも少なくありません。離職理由としては「精神的負担に耐えられない」「将来への不安」「職場環境への不信」などが多く挙げられています。


    この高い離職率により、人材確保がますます困難になる悪循環が生まれています。求人募集をかけても応募者が集まらず、採用できた人材も短期間で離職するため、常に人材不足の状態が続きます。結果として、残った従業員への負担が増大し、さらなる離職を招くという問題が発生しています。


    サービス品質への悪影響

    カスハラは個人の問題にとどまらず、組織全体の業務効率とサービス品質に深刻な影響を与えます。長時間拘束により他の顧客への対応が遅れる直接的な影響から、従業員のモチベーション低下による全体的なパフォーマンス低下まで、その影響は多方面にわたります。


    また、カスハラ対応に追われることで、本来注力すべき顧客サービスの向上やスキルアップの時間が削られ、組織の成長機会が失われることも大きな損失です。さらに、職場の雰囲気悪化により、チームワークの低下や情報共有の停滞なども発生し、組織力の弱体化を招く恐れがあります。


    効果的なカスハラ予防対策

    カスハラ対策は、予防から発生時の対応、事後のケアまで包括的なアプローチが必要です。企業として組織的に取り組むべき具体的な対策について、実践的な観点から詳しく解説します。


    基本方針とマニュアルの策定

    効果的なカスハラ対策の第一歩は、明確な基本方針の策定と実践的なマニュアルの整備です。基本方針では、カスハラを許さない企業姿勢を明確に示し、従業員の安全と尊厳を最優先とすることを宣言する必要があります。この方針は、社内外に広く公表し、顧客にも企業の姿勢を理解してもらうことが重要です。


    マニュアルには、カスハラの定義、具体的な対応手順、エスカレーション基準、記録方法、事後のケア手順などを詳細に記載します。特に重要なのは、オペレーターが一人で抱え込まないよう、明確な報告・相談体制を構築することです。また、法的措置を検討する際の基準や手続きについても、事前に明文化しておく必要があります。


    研修プログラムによる従業員教育

    カスハラ対策研修は、全従業員を対象として定期的に実施することが重要です。新人研修では、カスハラの基本的な知識から初期対応のスキルまでを体系的に教育します。具体的には、ロールプレイングを通じた実践的な対応訓練、適切な報告・相談方法などを習得させます。


    管理者向けの研修では、部下からの報告を受けた際の対応方法、適切な支援の提供方法、法的措置の判断基準などを学習します。また、カスハラが発生した際の迅速な対応と事後のフォローアップについても、具体的な手順を身につけることが必要です。継続的な研修により、組織全体のカスハラ対応能力を向上させることができます。


    システムを活用した技術的対策

    技術的な対策として、通話録音システムの導入が極めて効果的です。録音の存在を事前に告知することで、顧客の行動抑制効果が期待できます。また、実際にカスハラが発生した場合には、客観的な証拠として活用できるため、法的措置や社内処分の根拠となります。


    IVR(自動音声応答システム)の活用も有効な対策の一つです。顧客の用件を事前に整理し、適切な担当者に振り分けることで、不必要なトラブルを減少させることができます。また、待ち時間中に企業の方針や注意事項をアナウンスすることで、顧客への啓発効果も期待できます。


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    コールセンターにおけるカスハラは、従業員の健康と組織の持続的成長に深刻な影響を与える重大な問題です。暴言・怒声から長時間拘束、執拗な要求、脅迫行為まで、その形態は多様化し、被害の深刻さも増しています。効果的な対策には、予防から対応、事後ケアまでの包括的なアプローチが不可欠であり、企業として組織的な取り組みが求められています。


    パーソルビジネスプロセスデザインでは、カスタマーハラスメントに対応するための基本方針の策定やマニュアルの作成、従業員向けの研修などのサービスを提供しています。また、カスタマーハラスメントが発生した際に「内部的な相談窓口を設けたい」という場合にも対応が可能です。カスタマーハラスメントについて対策を講じたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。



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