そもそもデジタル人材とは?DX人材との違い
デジタル人材不足を考えるうえで、まず整理しておきたいのが「デジタル人材」と「DX人材」の違いです。
これらは混同されやすい言葉ですが、役割や求められるスキルには明確な違いがあります。違いを正しく理解しないまま取り組みを進めると、「必要な人材が定義できない」「育成や採用の方向性が定まらない」といった課題につながりやすくなります。
ここでは、それぞれの定義と役割を整理しながら、どのように使い分けるべきかを分かりやすく解説します。
デジタル人材とは?DX人材との違いと役割を整理
デジタル人材とは、デジタル技術やデータを活用して業務を改善し、効率化や品質向上といった成果につなげる人材です。単にツールを扱えるだけでなく、現場の業務を理解したうえで運用に定着させ、継続的に改善できることが求められます。
デジタルは導入して終わりではなく、“使われ続けてこそ価値が出るもの”であり、この点でデジタル人材は実行・運用の中核を担う存在です。
一方で混同されやすいのが「DX人材」です。DX人材は、デジタル技術が事業や行政サービスに与える影響を踏まえ、変革の方向性を描き、全体設計や意思決定をリードする“戦略側”の役割を担います。
つまり、DX人材が「どう変えるか」を設計し、デジタル人材が「どう実行するか」を担う関係にあります。両者は対立するものではなく、相互に補完する存在であり、どちらか一方が欠けるとDXは進みません。したがって、DXを前に進めるためには、「戦略(DX人材)」と「実行(デジタル人材)」の両輪が不可欠です。
日本は深刻なDX/デジタル人材不足に陥っている
近年、日本企業のDXへの取り組みは着実に進んでいます。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「 DX動向2025 」でも、DXの取組はこの数年で着実に拡大していることが裏付けとして示されています。
一方で、その成果については依然として課題が残っています。同調査では、日本企業のDXは十分な成果創出に至っておらず、特にビジネスモデル変革などのデジタルトランスフォーメーション領域では、多くの企業が成果を出せていないことが指摘されています。
その背景として、日本のDXが業務効率化を目的とした「内向き」の取り組みに偏り、個別業務の改善にとどまる「部分最適」の傾向が強い点が挙げられます。また、目的・成果ともにコスト削減や効率化に偏重しており、売上向上や価値創出といった本質的な成果につながっていない状況です。
このように、日本におけるDXの課題は「取り組み不足」ではなく、「成果につながらない構造」にあります。そして、その構造の中で、デジタル人材不足は重要なボトルネックとして顕在化しているといえるでしょう。
デジタル人材不足が企業・自治体にもたらす影響
デジタル人材が不足すると、現場では下記のようなさまざまな課題が生じやすくなります。
- 業務が回らない:定型処理が積み上がり、繁忙期に対応しきれなくなる
- DXが“導入止まり”になる:ツールは入ったものの、運用設計が弱く現場に定着しない
- 例外処理が増えて複雑化する:運用の抜け漏れにより、手作業や属人対応が残り続ける
- サービス品質が下がる:問い合わせ対応の遅延や窓口の混雑、処理の遅延が発生する
こうした課題は、単なる効率低下にとどまらず、現場の負荷増大やミスの発生にもつながります。特に自治体・公共分野では、これらの影響が住民サービスに直結します。そのため、「職員の負担」だけでなく、「待ち時間の長さ」や「申請のしやすさ」といった利用者の体験にも影響が及びます。
実際にパーソルビジネスプロセスデザインのBPOサービスを導入した福岡市の事例でも、繁忙期の窓口混雑や大量処理が職員の負荷増加やミスリスクにつながっていたことが報告されています。
日本でデジタル人材不足が起きている主な原因
デジタル人材不足は、単に「人が足りない」だけの問題ではありません。デジタル化の加速や業務の複雑化など、複数の要因が重なって発生しています。ここでは、デジタル人材不足が起きている主な原因について、構造的な観点から整理します。
デジタル化需要の急拡大と人材供給のギャップ
民間を問わず、デジタル化の対象は年々広がっています。業務のオンライン化に加え、データ活用や生成AIの活用も進む中で、求められるスキルは多様化しました。
一方で、人材の育成や採用は短期間で増やせるものではありません。その結果、「やりたいこと(需要)」に対して「実行できる人(供給)」が追いつかず、人材ギャップが拡大しているのが現状です。
リスキリングだけでは埋まらない構造的な課題
近年はリスキリングが注目され、社内教育に取り組む企業も増えています。しかし現場では、「学んだが使いどころがない」「業務が整理されておらず活かせない」「教育する時間が確保できない」といった課題が生じやすいのが実情です。
実際に経済産業省の DXレポート でも、DXは単なるITシステムの刷新にとどまらず、業務プロセスや企業文化の変革と一体で進める必要があると指摘されています
つまり、デジタル人材不足は人材の問題に見えて、実は業務設計(プロセス)とセットで解決しなければ成果につながらないという構造的な難しさを持っているといえます。
人口減少と高度人材の偏在がもたらす影響
人口減少の影響により、労働力の母数そのものが減少しています。その中でデジタル人材は、都市部や特定業界に偏りやすい傾向があり、企業・自治体によって確保難易度に差が生じています。
また、経済産業省の「 IT人材需給に関する調査 」でも、人口減少に伴い労働人口が減少することで、IT・デジタル人材の確保は中長期的に難しくなることが指摘されています。
そのため、今後は人材の量の確保だけでなく、「少人数でも回る仕組み」と「育成した人材が成果を出せる業務設計」の両立がより重要になるといえるでしょう。
関連記事|デジタル化推進にあたっての課題とは?懸念点と解決するための方法
特に自治体・公共分野でデジタル人材不足が深刻な理由
デジタル人材不足は、民間企業だけでなく自治体・公共分野においても共通の課題ですが、その深刻度や背景には特有の構造があります。異動前提の組織構造や業務特性により、人材の蓄積や改善活動が継続しにくい環境にあることが大きな要因です。
ここでは、自治体・公共分野でデジタル人材不足がより深刻化しやすい理由について、その構造的な特性から整理します。
異動前提の組織構造と専門人材を蓄積しにくい環境
自治体では、定期的な異動によって担当者が入れ替わることが一般的です。そのため、特定の人にノウハウが紐づくと、異動とともに知見が継承されず、散逸しやすくなります。
結果として、運用が属人化する・改善が継続しない・引継ぎコストが高まるといった課題が積み重なり、現場では慢性的な人材不足として認識されやすくなります。
また、制度対応や住民対応など公共性の高い業務ほど「止められない業務」が多く、改善のための時間を確保しづらいのも特徴です。人材育成を進めようとしても、実務の中で経験を積むための改善プロジェクト自体に着手できないというジレンマが生まれやすい状況にあります。
業務量が減らない中で進められる自治体DX
自治体DXは、単なる業務効率化にとどまらず、窓口対応・申請受付・審査・交付といった住民接点を含む幅広い業務が対象となります。
一方で、多様化するニーズや制度拡充の影響により、業務量そのものは減りにくく、「既存業務を抱えたままDXを進める」状況が常態化しやすいのが実情です。例えば、繁忙期に大量の申請処理が集中し、限られた人員で対応せざるを得ない中で、窓口の混雑や手作業による処理負荷が課題となっているケースが見られます。
このように、業務量の制約と人材の制約が同時に存在するため、自治体・公共分野では「人を増やす」だけでは解決が難しく、業務の進め方そのものの見直しが不可欠となります。
関連記事|いま、自治体DXが抱える課題とは?新たなフェーズを乗り越える現実的アプローチ
デジタル人材不足への対策選択肢とその限界
デジタル人材不足に対しては、採用・育成・ツール活用など、さまざまな対策が検討されています。
しかし実際には、いずれの施策も一部の課題には有効である一方、それだけで根本的な解決につながるケースは多くありません。人材の確保やスキル習得を進めても、業務構造が変わらなければ現場の負荷が解消されない、といった状況も起きやすいためです。
ここでは、代表的な対策とその限界を整理しながら、なぜ従来のアプローチだけでは対応しきれないのかを明らかにしていきます。
デジタル人材の新規採用|競争激化と採用難
新規採用は代表的な解決策ですが、デジタル人材は民間企業との獲得競争が激しく、自治体・公共分野では採用難が起きやすい状況です。待遇や勤務地、職務内容の制約もあり、そもそも応募が集まりにくいケースも少なくありません。
また、採用できたとしても、業務理解や関係者調整に時間がかかるため、短期的な解決策として機能しにくい点も課題です。
既存人材の育成・リスキリングの課題
既存人材の育成は中長期的には有効な施策です。しかし、「学びを業務に活かせる環境」が整っていなければ、効果は限定的になりがちです。
特に、業務が複雑で例外処理が多い状態のままでは、育成した人材も日々の対応に追われ、改善に時間を割けません。結果として、リスキリングが“学んで終わり”になってしまうケースも見られます。育成を成果につなげるためには、教育だけでなく、業務の棚卸しや標準化といった運用基盤の整備が不可欠です。
ツール・AIで補える範囲と限界
RPAやAI-OCR、問い合わせ対応の自動化など、ツールによる省力化も有効な手段のひとつです。実際に、入力作業の削減や処理の自動化といった効果が出ている事例もあります。
一方で、業務が整理されていない状態で導入すると、例外処理や手戻り対応が増え、かえって現場負荷が高まることもあります。ツール活用の成否を分けるのは、導入の有無ではなく、その前提となる業務設計と運用設計です。
業務の見直し(BPR)が重要となる理由
こうした背景から重要になるのが、BPR(業務プロセスの再設計)です。デジタル人材不足の本質は「人が足りない」ことだけではなく、「少ない人数でも回る業務の形になっていない」ことにあります。既存システムの課題を解決するには、データ活用だけでなく業務自体の見直しが重要となります。
BPRによって業務の分岐や例外処理を減らし、判断基準やデータの持ち方を整理することで、少人数でも運用できる体制が整います。その結果、デジタル人材は日々の対応ではなく改善に時間を使えるようになり、育成やツール活用の効果も発揮されやすくなるでしょう。
ただし、こうした業務改革は現場の負荷や専門性の観点から、自組織だけで完結させるのが難しいケースも少なくありません。
デジタル人材不足を補う現実的な選択肢としてのBPO活用
ここまで見てきた通り、デジタル人材不足は単なる採用や育成だけで解決できる問題ではなく、業務構造そのものと密接に関係しています。そのため、内部リソースだけで対応しようとすると、改善に着手できないまま課題が長期化してしまうケースも少なくありません。
そこで近年注目されているのが、BPO(Business Process Outsourcing|業務プロセスの外部委託)の活用です。BPOは単なる業務の代行ではなく、業務の棚卸しや標準化、デジタル活用までを含めて運用を設計・実行する手段として位置づけることが重要です。
BPRを進めるうえでBPOが有効なケース
BPRは有効なアプローチですが、現場が忙しいほど「見直す時間がない」「棚卸しできる人がいない」という壁に直面します。こうした状況で有効なのが、BPOを“BPRをやり切るための実行手段”として活用する考え方です。
特に、次のようなケースではBPOの効果が出やすい傾向があります。
- 繁忙期に処理が集中し、恒常的に人手が不足している
- 例外処理が多く、業務の標準化や運用設計が進んでいない
- ツール導入を検討しているが、運用設計や改善に割く時間がない
- 担当者の異動により、ナレッジが属人化しやすい
BPOを活用することで、外部の運用ノウハウや改善の型を取り入れながら、業務の可視化・整理・標準化を進めることができます。そのうえでデジタル活用まで含めて運用を設計・実行することで、限られた人員でも持続可能な業務体制を構築しやすくなります。
関連記事|自治体BPOとは?委託できる業務内容とメリット・導入事例を解説
公共BPOで実現できるフロントヤード・バックヤード改革
公共分野の業務は、住民と接するフロントヤード(窓口・申請・問い合わせ)と、内部処理を担うバックヤード(審査・入力・交付・進捗管理)が密接に連動しています。そのため、どちらか一方だけを改善しても、もう一方がボトルネックとなり、全体としての成果が出にくい構造になります。
公共BPOでは、業務の一部を切り出して委託するだけでなく、フロントヤードとバックヤードを一体で捉え、業務プロセスの見直しとデジタル活用を組み合わせながら、全体最適を図っていきます。
これにより、窓口の混雑緩和や処理スピードの向上といった利用者体験の改善だけでなく、内部業務の負荷軽減や標準化も同時に実現することが可能になります。
フロントヤード・バックヤード改革のご紹介
パーソルビジネスプロセスデザインでは、自治体のフロントヤード改革・バックヤード改革を総合的にサポートします。業務再設計(BPR)の重要性をはじめ、構想から自走までの具体的なステップや成功事例まで、パーソルならではのノウハウを分かりやすくご紹介します。
自治体における公共BPO活用事例(福岡市の事例)
福岡市福祉局の「高齢者乗車券交付事業」では、年間約16万件の申請処理が発生し、繁忙期には窓口の混雑や職員の負担増、手入力作業の多さによるミスリスクが課題となっていました。
この課題に対し、同市はパーソルビジネスプロセスデザインのBPOサービスを導入。窓口中心の運用から郵送・オンライン申請へと移行し、AI-OCRとRPAを組み合わせた体制を構築しました。単なる事務代行ではなく、手書き書類のデータ化精度向上や電子交付の自動化など、デジタル技術を前提とした業務プロセスの再設計まで踏み込んでいます。
その結果、来庁不要で申請・交付が完結する環境が整備され、利便性が向上。オンライン申請者の約7割が電子交付を利用するなど、住民接点のデジタル化も進みました。また、職員は定型処理から解放され、より付加価値の高い業務へとリソースをシフトできたと報告されています。
この事例が示しているのは、デジタル人材を大量に確保できなくても、「BPR × デジタル × 運用(BPO)」を組み合わせることで、住民サービスの向上と職員負荷の軽減を両立できるという点です。
BPO活用事例|福岡市福祉局さま
年間16万件の申請処理を刷新。福岡市がBPOとAI活用で実現した市民サービスの向上
デジタル人材不足の中でもDXを実行まで支える、パーソルビジネスプロセスデザインの公共BPO
デジタル人材不足は、採用や育成の問題にとどまらず、「業務が整理されないままデジタル化を進めている」ことで、より深刻化しやすい課題です。そのため、ツール導入やリスキリングだけでなく、BPRによって業務を軽量化し、少人数でも回る運用へと再設計することが重要になります。
そして、そのBPRを現実に推進する手段として、BPOを「単なる代行」ではなく「業務改革の実行基盤」として活用することは、自治体・公共分野において特に有効です。
パーソルビジネスプロセスデザインの公共BPOは、自治体・行政機関向けに、フロントヤード改革とバックヤード改革を一体で支援するサービスです。
単なる業務委託にとどまらず、業務の棚卸しや標準化、デジタル活用を含めた業務設計から運用までを支援し、「職員負担の軽減」「住民サービスの向上」「業務の持続可能性の確保」といった課題解決に対応しています。
より具体的な導入ステップや対象業務、活用事例については、下記の資料をぜひご覧ください。
【無料資料】人材不足でも公共DXを進めるためのBPO活用ガイド
- どこまで業務を切り出せるのか(対象範囲)
- 具体的な対応業務例(フロント/バックヤード)
- 導入から運用までの進め方
- 自治体・官公庁での導入事例(3事例)