デジタル化とは?なぜ多くの組織でうまく進まないのか
人手不足や業務の複雑化が進むなか、多くの企業や自治体でデジタル化の必要性が高まっています。
一方で、デジタル化に取り組んでいても、「思うように成果が出ない」「現場の負担がむしろ増えた」「一部の業務だけがデジタル化されて全体最適につながらない」といった悩みを抱える組織も少なくありません。
ここではまず、なぜ今デジタル化が求められているのか、そしてなぜ多くの組織でうまく進まないのかを整理します。
デジタル化が求められる背景(人手不足・業務高度化)
デジタル化が求められる背景として、まず挙げられるのが人手不足です。日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており(※)、今後は限られた人員で業務を回すことが前提になると考えられています。また、IT人材についても需給ギャップが拡大する見込みであり、企業・自治体を問わず人材確保はますます難しくなっています。
こうした状況のなかで、業務量が大きく減ることは期待しづらいほか、近年は業務そのものが高度化・複雑化しています。単に事務をこなすだけでなく、データ活用、顧客対応の個別最適化、法制度への迅速な対応、複数部門にまたがる連携など、求められるレベルは上がっています。こうした状況では、紙やExcel、属人的な運用に依存したままでは業務品質を維持し続けることが難しくなります。
つまり、デジタル化は「便利だから行うもの」ではなく、限られた人員で業務を継続し、サービス品質を保つために不可欠な取り組みへと変わっています。
(※)出典| 総務省|情報通信白書(生産年齢人口の減少)
進めているのに成果が出ないケースが多い理由
では、なぜデジタル化に取り組んでいても、思うように成果が出ないケースが多いのでしょうか。大きな要因の一つは、デジタル化の目的やゴールが曖昧なまま進んでしまうことです。
ツール導入そのものが目的化してしまうと、「何を改善したいのか」「どの業務をどう変えるのか」が整理されないまま施策が進み、結果として現場の負担が増えてしまうことがあります。 また、既存業務との二重運用が発生したり、業務フローが整理されないまま部分的なデジタル化にとどまったりすることで、期待していた効果につながらないケースも少なくありません。
さらに、日本企業ではDXの成果指標が十分に設定されていない場合も多く、「成果が出ているか判断できない」という状況が発生しやすい点も課題です。実際にIPAの「 DX動向2025 」でも、DXの成果指標を設定している企業は3割以下にとどまっており、「成果が出ているか分からない」とする回答も一定数存在しています。
つまり、デジタル化がうまく進まない理由は、単に技術や人材の問題ではなく、成果につながる進め方や設計そのものに課題があるためといえます。
デジタル化でよくある課題・問題
デジタル化を進めるうえでよく挙がる課題には、いくつか共通点があります。ここでは、多くの企業や組織で見られる代表的な課題を整理します。
デジタル人材の不足
代表的な課題の一つが、デジタル化を推進できる人材の不足です。IPAの「 DX動向2025 」では、日本企業の8割超でDXを推進する人材が不足しているとされています。
ここでいう人材不足は、単にエンジニアが足りないという意味ではありません。業務を理解したうえで改善ポイントを整理できる人、ツール選定や要件定義ができる人、部門横断で調整できる人、そして定着まで見据えて推進できる人など、デジタル化を進めるには複数の役割が求められます。こうした人材を社内だけで確保・育成するのは容易ではないでしょう。
関連記事|デジタル人材が不足する原因と対策|DX人材も併せて解説
レガシーシステム・アナログ業務の存在
古いシステムや紙中心の業務が残っていることも、デジタル化を妨げる大きな要因です。経済産業省は、レガシーシステムが最新のデジタル技術導入の足かせになっていることを指摘しており、技術の老朽化、システムの複雑化、ブラックボックス化がDXの障害になるとしています(※)。
既存システムが複雑で改修しづらい、業務フローが紙と手作業を前提としている、過去の運用が継ぎ足しで残っている――こうした状態では、一部に新しいツールを入れても全体最適にはつながりません。結果として、アナログ業務とデジタル業務が混在し、現場の負担だけが増えることもあります。
(※)出典| レガシーシステムモダン化委員会総括レポート |経済産業省
コスト・投資対効果の不透明さ
デジタル化を進めるうえでは、コストに対する不安も大きな障壁になります。システム導入費に加え、運用費や教育コスト、業務移行コストなど、さまざまな投資が発生するため、「本当に効果が出るのか分からない」「費用対効果を説明できない」といった声も少なくありません。
特に、短期的なコスト削減だけで投資判断をすると、本来必要な業務設計や定着支援に十分なリソースを割けず、結果として中途半端な導入に終わることがあります。デジタル化は単なるコスト削減施策ではなく、将来的な業務継続性や生産性向上のための基盤整備として捉えることが重要です。
セキュリティ・リスクへの不安
デジタル化が進むほど、情報漏えいや不正アクセスなどのリスクへの不安も高まります。特に個人情報や機微情報を扱う業務では、セキュリティ面の慎重な検討が欠かせません。
ただし、セキュリティへの不安を理由に何も変えられない状態が続くと、結果的に古いシステムや属人的運用を温存することになり、別のリスクを抱えることにもなります。重要なのは、リスクをゼロにすることではなく、適切なルールと運用体制のもとで管理可能な状態をつくることです。
現場への定着・運用が進まない
デジタル化はツールを導入するだけでは完了しません。現場で継続的に使われ、業務として定着してはじめて成果につながります。
よくあるのは、導入時の説明だけで終わり、業務フローや役割分担が見直されないまま「では使ってみてください」と現場に委ねてしまうケースです。
その結果、「従来のやり方のほうが早い」「結局、紙やExcelも残る」「担当者しか使えない」といった状態になり、運用が定着しません。デジタル化の成否は、導入時点ではなく、その後の日常業務のなかで無理なく回るかどうかで決まります。
デジタル化が進まない本当の原因とよくある失敗パターン
ここまで見てきた課題は、多くの組織で共通して見られるものです。しかし、そうした課題が長く解消されない背景には、さらに根本的な原因があります。ここでは、その原因について詳しく見ていきます。
なぜ課題は解決されないのか(本質は「業務設計×運用体制の不在」)
デジタル化が進まない本当の原因は、個別の課題そのものではなく、業務設計と運用体制が整っていないことにあります。
たとえば、人材不足が課題だとしても、「どの業務を誰が担うのか」「どこを標準化するのか」「どこをデジタルで補完するのか」といった設計がなければ、採用や育成だけでは解決しません。レガシーシステムの問題も、業務全体を見直さずに部分的な置き換えだけを進めれば、かえって複雑化することがあります。
つまり、課題の本質は「ツールが足りない」「人が足りない」ことではなく、業務の回し方を定義した設計と、それを支える運用体制が存在していないことにあります。
関連記事| DXはなぜ失敗するのか?よくある失敗事例から読み解く原因と解決策
ツール導入が目的化してしまう
デジタル化の失敗パターンとしてよく見られるのが、ツール導入そのものが目的になってしまうことです。新しいシステムやサービスを導入すれば課題は解決するはずだと考え、現場の業務や運用負荷を十分に整理しないまま進めてしまうと、導入後に「思ったほど使われない」「かえって手間が増えた」といった結果になりがちです。
ツールはあくまで手段であり、目的は業務の効率化やサービス品質の向上です。この順番を取り違えないことが重要といえるでしょう。
業務設計が曖昧なまま進んでしまう
デジタル化がうまくいかない要因として、現行業務の棚卸しや可視化が不十分なまま進めてしまうケースも多く見られます。業務フローが曖昧な状態では、どの工程をデジタル化すべきか、どこにムダや重複があるのかを正しく把握できません。
その結果、非効率な業務をそのままデジタルに置き換えるだけになり、かえって業務が複雑化するなど、根本的な改善につながらないケースも少なくありません。
部門ごとに分断され全体最適にならない
デジタル化は一部門だけで完結するものではありません。組織全体で最適化する取り組みですが、実際には部門ごとに個別最適で進み、データや業務フローが分断されたままになるケースが少なくありません。
IPAの「 DX動向2025 」でも、日本企業は個別の業務プロセス最適化に取り組む割合が高く、全社最適化の傾向が相対的に弱いことが示されています。
部門単位では改善していても、組織全体で見ると連携コストが増えている――こうした状態では、本来の成果は生まれにくくなってしまうでしょう。
運用体制がなく定着しない
デジタル化は導入して終わりではなく、その後の運用で成果が決まります。しかし実際には、「誰が運用を担うのか」「トラブル時にどう対応するのか」「業務変更にどう追従するのか」といった体制が設計されていないまま導入されるケースも多く見られます。
その結果、現場に定着せず、一時的な取り組みで終わってしまいます。デジタル化を継続的な成果につなげるためには、運用を前提とした体制設計が不可欠です。
内製にこだわりすぎて進まない
デジタル化においては、「まずは自分たちで進めるべき」と考えるケースも多く見られます。しかし、リソースやノウハウが限られる中で内製だけにこだわると、検討に時間がかかり、実行に移せないまま停滞してしまうことがあります。
特に、業務設計・制度理解・現場運用・システム連携など複数の要素が関わるテーマでは、外部の知見や実行支援を活用したほうが、結果的に早く・確実に進められるケースも少なくありません。
デジタル化を成功させるための考え方と進め方
ここまで見てきた考え方は、企業・自治体を問わず共通するものです。しかし、特に自治体においては、民間企業とは異なる前提条件が存在するため、同じアプローチではうまくいかないケースも少なくありません。
例えば、法令や制度に基づく業務の多さ、住民対応における公共性・公平性の担保、部門横断での合意形成の必要性など、デジタル化を進めるうえでのハードルはより高くなりがちです。
では、こうした前提を踏まえたうえで、デジタル化を実行につなげるためにはどのような考え方と進め方が求められるのでしょうか。ここから具体的に見ていきましょう。
BPRによる業務の可視化・整理
デジタル化を成功させる第一歩は、ツール選定ではなく、現行業務の可視化です。どの業務が本当に必要なのか、どこにムダや重複があるのか、誰に負荷が集中しているのかを整理しなければ、適切な打ち手は見えてきません。
ここで重要になるのが、業務プロセスを根本から見直す「BPR(Business Process Re-engineering)」の考え方です。
特に自治体では、制度や運用が複雑に絡み合っているため、既存業務のままツールを導入しても十分な効果は得られないケースが多く見られます。デジタル庁も窓口DXの前提としてBPRの重要性を示しており、システムだけ導入しても期待した成果にはつながらないとしています。
デジタル化は「今ある業務を置き換える」のではなく、業務そのものを見直すことから始める必要があります。
出典| 自治体DXの推進について |デジタル庁
業務・人・ツールを一体で設計する
次に重要なのは、業務・人・ツールを一体で設計することです。デジタル化では、業務だけ、ツールだけ、人材だけを個別に最適化しても、全体としての成果にはつながりにくくなります。
たとえば、一部の作業を自動化しても、その前後の確認や判断が属人的なままであれば、全体の負荷は下がりません。重要なのは、「業務をどう変えるか」「誰がどの役割を担うか」「ツールをどう活用するか」を一体の運用として設計することです。
実行・運用まで見据えた体制づくり
さらに、デジタル化は導入して終わりではなく、運用が始まってからが本番です。制度改正への対応や業務変更、問い合わせ対応、改善要望への対応など、日常業務のなかで継続的に回せる体制がなければ定着しません。
そのため、導入段階から「誰が運用を担うのか」「改善をどう回すのか」といった役割と仕組みを設計しておくことが重要です。継続的な見直しができる運用体制まで含めて設計することで、デジタル化は成果につながる取り組みになるでしょう。
内製だけに頼らない進め方(外部活用の考え方)
こうした設計と運用をすべて内製で進めるには、相応のリソースとノウハウが求められます。特に、短期間での立ち上げや、業務設計と運用改善を同時に進める必要がある場合は、社内リソースだけでは対応が難しいケースも少なくありません。
外部の知見を活用することで、第三者視点で業務を整理できるほか、他組織の実績やノウハウを取り入れながら、立ち上げから運用までをスムーズに進めることが可能になります。
関連記事|自治体アウトソーシングとは?委託できる業務内容とメリット・導入事例を解説
アウトソーシングとBPOの違い
外部活用を検討するうえで整理しておきたいのが、アウトソーシングとBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の違いです。
アウトソーシングは特定業務の外部委託を指すことが多い一方、BPOは業務プロセス全体を見直し、設計・運用・改善まで含めて支援する考え方です。
そのため、デジタル化のように「業務をどう変えるか」まで含めて考える場合は、単なる外注ではなく、BPOという視点が有効になります。
関連記事|自治体BPOとは?委託できる業務内容とメリット・導入事例を解説
課題解決の選択肢としての公共BPO
ここまで見てきたように、自治体におけるデジタル化は、「ツール導入」や「内製の工夫」だけで解決できるものではありません。業務設計や運用体制まで含めて見直す必要があり、ときには外部の知見や体制を組み合わせることが現実的な選択肢となります。
総務省の「 自治体DX推進計画 」でも、フロントヤード改革やシステム標準化、AI活用、セキュリティ対策など、取り組むべきテーマは多岐にわたるとされています。限られた人員の中でこれらを同時に進めるためには、業務の切り分けや優先順位付けだけでなく、継続的に運用できる体制づくりが不可欠です。
こうした背景に対して、公共BPOは、業務設計から実行・運用までを一体で支援し、自治体が本来注力すべき企画・判断業務に集中できる環境づくりを後押しする手段の一つといえます。
デジタル化を“実行できる状態”へ|パーソルビジネスプロセスデザインの公共BPO
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社の公共BPOは、単なる業務委託ではなく、業務の可視化・整理から運用体制の構築、継続的な改善までを支援するパートナーです。
自治体業務では、制度理解や繁閑差への対応、住民接点の品質維持、バックヤードとの連携など、民間とは異なる特有の難しさが存在します。そのため、個別業務の最適化だけでなく、フロントヤードとバックヤードを一体で捉え、限られた人員でも継続的に運用できる仕組みを設計することが重要になります。
- デジタル化を進めたいが、何から着手すべきか分からない
- 現場の負担を増やさずに改善したい
- 制度変更にも対応できる運用体制を整えたい
こうした課題を感じている場合は、業務単位ではなく、業務プロセス全体の見直しから検討することが重要です。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、公共BPOの対象範囲や対応業務、導入から運用までのステップ、活用事例などをまとめた資料をご用意しています。デジタル化を一時的な施策で終わらせず、業務として定着させたい方は、ぜひご活用ください。
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