カスハラ対策の義務化で何が変わる?企業が今すぐ取り組むべき対処法を解説

カスハラ対策の義務化で何が変わる?企業が今すぐ取り組むべき対処法を解説

近年、顧客や取引先からの理不尽な要求や悪質な言動が社会問題となっています。

こうした中で、労働施策総合推進法の改正により、カスタマーハラスメント対策は企業の義務として成立しました。義務化により企業はどのような対応が求められ、何を準備すべきなのでしょうか。

本記事では、カスハラ対策義務化の背景と法改正内容、企業が今すぐ実践すべき具体的な対処法について詳しく解説します。


目次

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    カスハラ対策義務化に向けた定義の理解

    まずは、カスタマーハラスメントの正確な定義を理解しましょう。ここでは、厚生労働省の定義を基に、カスタマーハラスメントに該当する具体的な行為を紹介します。

    カスタマーハラスメントの定義

    厚生労働省は、カスタマーハラスメントを「顧客等からの言動で、要求内容の妥当性に対して手段・態様が社会通念上不相当なものであって、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。この定義には、①要求の妥当性、②手段の相当性、③労働者への影響という3つの要素が含まれており、企業が対策を講じる際の重要な判断基準となります。


    令和5年度の厚生労働省調査によると、27.9%の企業が過去3年間に従業員から「顧客等からの著しい迷惑行為」の相談を受けています。報告された迷惑行為の内容としては、継続的・執拗な言動、威圧的な言動、精神的な攻撃、拘束的な言動などが挙げられます。また、企業が被った損害や被害の主な内容として、通常業務の遂行への悪影響や労働者の意欲低下などが報告されています。



    具体的なカスハラ行為の類型

    カスハラに該当する具体的な行為は多岐にわたります。時間拘束型では、長時間にわたって従業員を拘束したり店舗に居座ったりする行為が該当します。リピート型は、頻繁な来店や電話によるクレームを繰り返す行為です。
    暴言型では、執拗に対応者を責めたり、大声での恫喝や罵声、暴言を繰り返したりする行為が含まれます。威嚇・脅迫型では、脅迫的な発言をするなどして従業員を怖がらせるような行為が含まれます。権威型では、正当な理由なく権威を振りかざして要求を通そうとする行為があります。


    カスハラ対策義務化の法改正内容

    カスタマーハラスメント対策の義務化は、従業員を守り安全な職場環境を実現するための重要な法改正です。ここでは、政府による改正の動きと具体的な内容を確認していきます。


    労働施策総合推進法改正の具体的な内容

    政府は「経済財政運営と改革の基本方針2024」において、カスタマーハラスメントを含む職場のハラスメント対策強化を明記しました。改正対象となる労働施策総合推進法は、2019年にパワハラ防止措置を義務化した法律で、今回の改正でカスハラ対策も追加される予定です。


    改正法では、従業員数に関係なく全事業者がカスハラ対策の実施を義務付けられ、基本方針の策定、相談体制の整備、従業員教育の実施などが求められます。また、東京都では全国初となる「東京都カスタマーハラスメント防止条例」が2025年4月1日から施行開始されており、企業対策の後押しとなっています。



    義務化による企業への影響

    これまでカスハラ対策は努力義務でしたが、義務化により企業の法的責任が明確化されます。違反した場合には報告徴求命令、助言・指導・勧告、企業名の公表などの行政措置が想定されており、企業は積極的な対策実施が不可欠となります。


    また、義務化によって企業の取り組み姿勢は採用活動や企業イメージにも直結します。カスハラ対策が不十分な企業は、従業員の離職リスクが高まるだけでなく、社会的評価の低下や取引先からの信頼喪失につながる可能性があります。


    企業が今すぐ実践すべきカスハラ対策

    カスハラ対策の義務化に向けて、企業は段階的かつ体系的な取り組みを進める必要があります。厚生労働省ガイドラインに基づく実践的な対策を確認していきましょう。


    基本方針の策定と従業員への周知

    企業はまず、カスハラに対する明確な基本方針を策定する必要があります。「従業員をカスタマーハラスメントから守る」という組織トップの姿勢を明文化し、どのような行為をカスハラと判断するかの基準を設定します。


    基本方針では、正当なクレームとカスハラの境界線を明確化することが重要です。これにより、企業が従業員を守り尊重しながら業務を進めるという安心感が、従業員にもたらされます。また、従業員がカスタマーハラスメントを受けた際に安心して相談できるよう相談対応の体制を整えることも重要です。策定した方針は社内規程への反映、掲示板への掲載、研修での説明などを通じて全従業員に周知します。


    相談窓口の設置

    カスハラ被害を早期発見し適切に対処するため、専用の相談窓口を設置します。相談窓口は人事部門、総務部門、または外部の専門機関と連携して運営し、相談者のプライバシーを保護するための措置を講じることが重要です。


    相談対応者は、明らかなカスハラ事案だけでなく、判断が困難なケースや発生リスクがある状況にも幅広く対応できるよう、定期的な研修を受講し対応スキルを向上させる必要があります。また、迅速かつ適切な対応を取るために、他部署との連携体制も整備しましょう。


    対応マニュアルの作成

    カスハラ発生時の具体的な対応手順をまとめたマニュアルを作成します。マニュアルには、初期対応の流れ、エスカレーション基準、記録の取り方、関係者への報告方法などを詳細に記載し、現場で実際に使用できる実践的な内容にします。


    対応は複数名で行うことを基本とし、状況に応じて現場管理者や上司への引き継ぎを迅速に実施できる体制を整えます。暴力的な行為や脅迫がある場合の警察通報基準も明確化しておくことが重要です。


    カスハラ対策義務化による企業へのリスクと対応策

    カスハラ対策の義務化によって企業には新たなリスクが生じます。しかし、適切な対応を取ることでリスクを軽減し、従業員の安心や企業の信頼性向上といった効果も期待できます。ここでは、想定されるリスクと具体的な対応策を確認しましょう。


    義務違反時の行政措置

    カスハラ対策義務に違反した場合、報告徴求命令、助言・指導・勧告、企業名の公表という重い措置が想定されています。企業名の公表は信用失墜などの悪影響をもたらし、長期的な企業価値の低下につながるリスクがあります。


    また、適切なカスハラ対策を怠ったことで従業員が精神的被害を受けた場合、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性もあります。このため企業は、法令遵守のために積極的な対策実施が必要不可欠となります。


    従業員と企業への影響

    カスハラは従業員の業務パフォーマンス低下や体調不良、恐怖感による休職・退職を引き起こし、企業の人材確保や育成コストの増大をもたらします。さらに、クレーム対応による本来業務の停滞、売上・利益の低下、ブランドイメージの悪化といった直接的な経営への影響も深刻です。


    他の顧客への影響も考慮する必要があります。カスハラ行為によって他の顧客の利用環境や雰囲気が悪化する可能性があります。そのため、適切な対策を取り、このような多面的なリスクを予防することが重要です。


    効果的なリスク軽減策

    リスク軽減のためには、カスハラの判断基準を明確化し、要求内容の妥当性と手段の相当性を客観的に評価する仕組みを構築します。一貫した対応を実現するために、事実関係の確認手順や証拠の収集方法、対応記録の作成ルールを標準化しましょう。


    また、従業員の安全確保のため、暴力や脅迫を伴う案件では即座に顧客との接触を断ち、必要に応じて躊躇なく警察へ通報する体制を整備します。被害を受けた従業員への精神的ケア、産業医との連携、医療機関の紹介なども重要な対策となります。


    カスハラ対策のための組織体制の構築

    カスハラ対策には、全従業員への効果的な教育研修と組織全体での取り組みが欠かせません。ここでは、実践的な研修プログラムと持続可能な組織体制の構築方法を解説します。



    従業員向け教育研修プログラムの設計

    教育研修プログラムでは、カスハラの定義と判断基準、パターン別の対応方法、初期対応のポイント、エスカレーション手順を体系的に指導しましょう。座学だけでなく、ロールプレイング形式での実践練習を組み込み、実際の場面で適切に対応できるスキルを身につけさせることが重要です。


    研修対象は正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣社員などを含めた顧客対応の可能性がある全従業員とし、定期的に研修を実施しましょう。管理職向けには、部下からの相談対応、事案発生時の判断、関係部署との連携などの管理者責務を明確化しておきます。


    組織における役割分担と連携体制

    効果的なカスハラ対策には、組織内での明確な役割分担と連携体制が必要です。現場対応者、現場監督者、人事・総務部門、経営陣のそれぞれの役割を明確化し、情報共有と意思決定のフローを整備しましょう。


    また、深刻なケースに備えて、弁護士、警察、医療機関などの外部専門機関との連携体制も構築しておくと安心です。「現場対応者から管理者への報告基準」「本部への連絡が必要なケース」「外部機関への相談・通報が必要な状況」などを事前に定めることで、迅速な対応が可能になります。


    継続的な改善の仕組み作り

    カスハラ対策は一度実施すれば完了するものではなく、継続的な改善が必要です。発生した事案の詳細な記録を作成し、対応の経過、結果、課題を整理して社内で共有することで、組織全体の対応力向上を図ります。


    対策は定期的に見直し、新たな手口への対応、業界動向の反映を継続的に実施します。また、従業員からのフィードバックを積極的に収集し、現場の実態に即した改善を進めることが重要です。


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    カスハラ対策の義務化により、企業は基本方針の策定、相談窓口の設置、従業員教育の実施など包括的な取り組みが求められます。適切な対策により、従業員の安全確保、企業リスクの回避、職場環境の改善を実現し、持続的な事業成長の基盤を構築することが重要です。


    パーソルビジネスプロセスデザインでは、カスタマーハラスメントに対応するための基本方針の策定やマニュアルの作成、従業員向けの研修などのサービスを提供しています。また、カスタマーハラスメントが発生した際に「内部的な相談窓口を設けたい」という場合にも対応が可能です。カスタマーハラスメントについて対策を講じたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。


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