安全運転管理者の罰則は?違反した場合の責任やアルコールチェックの運用ルールを解説

安全運転管理者の罰則は?違反した場合の責任やアルコールチェックの運用ルールを解説

一定台数以上の自家用自動車を使用する事業所では、安全運転管理者を選任し、使用台数が20台以上の場合は、さらに副安全運転管理者を選任しなければなりません。選任義務を怠った場合は、50万円以下の罰金が科される可能性があります。


安全運転管理者制度に関する主な罰則は、次のとおりです。



安全運転管理者等の選任義務違反 50万円以下の罰金
公安委員会による解任命令違反 50万円以下の罰金
公安委員会による是正措置命令違反 50万円以下の罰金
選任・解任時の届出義務違反 5万円以下の罰金

※参考:警視庁「罰則・その他」


なお、アルコールチェックを実施しなかったこと自体について、直ちに一律の罰金が科されるわけではありません。ただし、公安委員会は、自動車の使用者に対し、安全運転管理者等の解任や、安全運転確保のために必要な是正措置を命ずることがあります。


2022年4月1日からは目視等による運転前後の酒気帯び確認と記録の1年間保存が義務化され、2023年12月1日からはアルコール検知器を用いた確認と、検知器を常時有効に保持することが義務化されています。


本記事では、安全運転管理者制度の対象、業務内容、違反した場合の罰則や責任、アルコールチェックの正しい運用ルールを解説します。




目次

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    安全運転管理者制度とは

    安全運転管理者制度とは、事業所における安全運転の確保と交通事故の防止を目的とした制度です。


    一定台数以上の自家用自動車を使用する事業者は、自動車の使用の本拠となる事業所ごとに、安全運転管理者を選任する必要があります。


    対象となるのは、原則として次のいずれかに該当する事業所です。


    • 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している
    • その他の自動車を5台以上使用している

    大型自動二輪車および普通自動二輪車は、1台を0.5台として計算します。原動機付自転車は算定対象に含まれません。また、選任の要否は会社全体の保有台数ではなく、原則として支店や営業所などの「自動車の使用の本拠」ごとに判断します。


    一般に「白ナンバーの安全運転管理者制度」と表現されますが、法律上はナンバーの色だけで判断するものではありません。自動車運送事業者、第二種貨物利用運送事業者、自家用有償旅客運送事業者の事業所などは、法令上、安全運転管理者制度の対象外とされています。


    ただし、貨物軽自動車運送事業者など例外もあるため、単に運行管理者の有無だけで判断せず、事業区分を確認してください。


    安全運転管理者と運行管理者の違い

    安全運転管理者と運行管理者は、いずれも安全な運行を支える役割ですが、対象となる事業者や根拠法令が異なります。


    安全運転管理者は、主に一定台数以上の自家用自動車を使用する事業所で選任され、道路交通法に基づいて運転者の教育や点呼、酒気帯び確認などを行います。


    一方、運行管理者は、トラック、バス、タクシーなどの自動車運送事業者で選任され、道路運送法や貨物自動車運送事業法などに基づいて運行管理を行います。


    そのため、名称が似ていても同じ制度ではなく、運行管理者を置いているという理由だけで一律に判断せず、自社がどの制度の対象かを確認することが必要です。


    安全運転管理者と副安全運転管理者の選任基準

    安全運転管理者の選任義務がある事業所では、要件を満たす人を選任しなければなりません。


    また、自動車を20台以上使用している事業所では、副安全運転管理者の選任も必要です。副安全運転管理者は20台ごとに1人追加します。例えば、20台以上40台未満なら1人、40台以上60台未満なら2人です。


    安全運転管理者の主な要件
    • 年齢:20歳以上
    • 副安全運転管理者を置く事業所では30歳以上
    • 自動車の運転管理に関して2年以上の実務経験を有する者など
    副安全運転管理者の主な要件
    • 年齢:20歳以上
    • 自動車の運転管理に関して1年以上の実務経験を有する者、または3年以上の運転経験を有する者など
    安全運転管理者になれない主なケース 次のような欠格事由に該当する人は、安全運転管理者等に選任できません。
    • 公安委員会の解任命令により解任されてから2年を経過していない
    • 酒酔い運転、酒気帯び運転、無免許運転、妨害運転などの一定の違反から2年を経過していない
    • 飲酒運転、無免許運転、過労運転、速度違反などを下命・容認してから2年を経過していない

    したがって、安全運転管理者に交通違反歴があるだけで直ちに選任できなくなるわけではありません。違反の種類や時期が、法令上の欠格事由に該当するかどうかを確認する必要があります。


    安全運転管理者を変更した場合の届出

    安全運転管理者や副安全運転管理者を選任、解任または交代した場合、自動車の使用者は15日以内に、事業所を管轄する都道府県公安委員会へ届け出る必要があります。通常は、管轄警察署を経由して手続きします。


    安全運転管理者の氏名や事業所名など、届出事項に変更があった場合にも変更届の対象となります。必要書類やオンライン申請への対応は都道府県によって異なるため、管轄する警察の案内を確認してください。


    届出を怠った場合は、5万円以下の罰金が科される可能性があります。


    安全運転管理者の9つの業務内容

    安全運転管理者には、道路交通法施行規則第9条の10に基づき、主に次の9つの業務が求められています。

    (1)運転者の適性等の把握
    自動車の運転についての運転者の適性、知識、技能や運転者が道路交通法等の規定を守っているか把握するための措置をとること。

    (2)運行計画の作成
    運転者の過労運転の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成すること。

    (3)交代運転者の配置
    長距離運転または夜間運転となる場合、疲労等により安全な運転ができないおそれがあるときは交代するための運転者を配置すること。

    (4)異常気象時等の措置
    異常な気象・天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、安全確保に必要な指示や措置を講ずること。

    (5)点呼と日常点検
    運転しようとする従業員(運転者)に対して点呼等を行い、日常点検整備の実施及び過労、病気等により正常な運転ができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えること。

    (6)運転日誌の備え付け
    運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させること。

    (7)安全運転指導
    運転者に対し、「交通安全教育指針」に基づく教育のほか、自動車の運転に関する技能・知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行うこと。

    (8)酒気帯びの有無の確認
    運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器を用いて確認を行うこと。

    (9)酒気帯び確認結果の記録・1年間保存とアルコール検知器の常時有効保持
    酒気帯び確認の内容を記録し、その記録を1年間保存すること。併せて、アルコール検知器を取扱説明書に基づいて適切に使用・管理・保守し、定期的に故障の有無を確認して、正常に作動する状態に保つこと。

    本記事では、(8)の酒気帯び確認と、(9)の確認結果の記録・保存および検知器の管理を、便宜上『アルコールチェック関連業務』と呼びます。

    ※参考:道路交通法施行規則(e-gov法令検索)

    安全運転管理者の業務は点呼から記録の保存まで多岐にわたり、社内リソースのみで対応するのは大きな負担となります。特に早朝や深夜の確認業務が困難な場合は、24時間対応のアウトソーシングサービスを活用して負担を軽減することが可能です。


    安全運転管理者が違反した場合の責任とリスク

    「安全運転管理者が違反した場合、本人が罰金を支払うのか」と疑問に思う方もいるでしょう。


    安全運転管理者制度における選任や届出などの義務は、基本的に自動車の使用者である事業主や法人に課されています。そのため、未選任や届出漏れについては、まず使用者側の責任が問題になります。


    一方、安全運転管理者本人が飲酒運転、無免許運転、妨害運転などの一定の重大違反を行った場合、その交通違反について本人が刑事処分や行政処分を受ける可能性があります。さらに、安全運転管理者としての資格要件を欠くこととなり、都道府県公安委員会が自動車の使用者に対し、その安全運転管理者等の解任を命ずる場合があります。


    また、安全運転管理者が業務を適切に行わず、安全な運転が確保されていないと認められた場合にも、使用者に対して解任命令や是正措置命令が出される可能性があります。


    つまり、「安全運転管理者の罰則」は、すべてが安全運転管理者個人に直接科されるものではありません。違反内容により、次の責任を分けて考える必要があります。


    • 安全運転管理者本人の交通違反に対する責任
    • 事業者の選任義務や届出義務に対する責任
    • 会社としての安全運転管理体制に関する責任
    • 事故が起きた場合の民事上の損害賠償責任
    • 企業の信用低下や取引への影響

    安全運転管理者の選任に関する4つ主な罰則

    安全運転管理者の選任が正しく行われていない場合には、罰則の対象となります。具体的な罰則のケースを4つ挙げて解説しましょう。

    罰則ケース(1)安全運転管理者を選任していなかった場合

    安全運転管理者等の選任対象となる事業所であるにもかかわらず、必要な安全運転管理者または副安全運転管理者を選任していなかった場合は、『選任義務違反』となります。


    選任義務違反には50万円以下の罰金が定められています。法人の業務に関する違反では、違反行為者に加えて法人に両罰規定が適用される可能性があります。具体的な処罰対象は事案ごとに判断されます。


    罰則ケース(2)解任命令を受けた安全運転管理者の解任しなかった場合

    安全運転管理者等が資格要件を欠くこととなった場合や、安全運転管理者が業務を遵守せず安全運転が確保されていないと認められる場合、都道府県公安委員会から使用者に対して解任命令が出されることがあります。解任命令が下りると、使用者は新たに安全運転管理者を選任し直さなければなりません。


    しかし、ここで安全運転管理者を解任しなかった場合には罰則があり、50万円以下の罰金が科されることになります。


    罰則ケース(3)都道府県公安委員会の是正措置命令に従わなかった場合

    自動車の使用者が、安全運転を確保するために必要な措置を講じていないと認められる場合、都道府県公安委員会は、使用者に対して必要な是正措置を命ずることがあります。


    使用者がこの是正措置命令で求められた具体的な改善要求に応じなかった場合、『是正措置命令違反』となり、50万円以下の罰金が科されることになります。


    罰則ケース(4)選任や解任の届出をしなかった場合

    使用者が安全運転管理者や副安全運転管理者を選任や解任した場合は、15日以内に管轄する都道府県公安委員会に届け出なければなりません。

    しかし、この届出を怠ってしまった場合『選任解任届出義務違反』となり、5万円以下の罰金が科されることになります。


    選任や届出の義務を果たすことはもちろんですが、選任された管理者が実務に忙殺されてしまうのを防ぐために、毎日の確認業務やデータ管理を外部へ委託し、サポートを受ける方法もあります。


    安全運転管理者の選任違反が厳罰化された背景

    安全運転管理者等の選任義務違反に対する罰則は、2022年10月1日から、従来の5万円以下の罰金から50万円以下の罰金へ引き上げられました。また、是正措置命令に違反した場合の罰則も設けられました。


    飲酒運転防止対策が強化された背景には、2021年6月に千葉県八街市で、飲酒運転のトラックが下校中の児童の列に衝突し、児童5人が死傷した事故があります。


    この事故を契機として、安全運転管理者選任事業所で使用される自家用自動車についても、事業者による飲酒運転防止と安全運転管理を強化する必要性があらためて認識されました。


    ただし、罰則強化とアルコールチェック義務化は施行時期が異なります。


    2022年4月1日 目視等による運転前後の酒気帯び確認、記録の1年間保存
    2022年10月1日 選任義務違反に対する罰則の引き上げなど
    2023年12月1日 アルコール検知器を用いた確認、検知器の常時有効保持

    アルコールチェックの正しい運用ルール

    安全運転管理者は、次の3点を確実に実施する必要があります。


    1. 運転前後の運転者について、目視等に加えアルコール検知器を使用して酒気帯びの有無を確認する
    2. 確認した内容を記録し、1年間保存する
    3. アルコール検知器を常時有効に保持する

    ルール(1)安全運転管理者の選任

    対象事業所では、要件を満たす安全運転管理者を選任し、15日以内に届け出ます。


    また、管理者が不在の時間帯も含めて確認できるよう、補助者を指定するなど、実際に運用できる体制を整えることが重要です。


    ルール(2)アルコールチェック記録フォーマットの準備

    アルコールチェックの記録には、主に次の事項を残します。


    • 確認者名
    • 運転者名
    • 運転者が使用する自動車の識別情報
    • 確認日時
    • 確認方法
    • 酒気帯びの有無
    • 指示事項
    • その他必要な事項

    記録媒体は、紙、表計算ソフト、アプリ、クラウドシステムなどを利用できます。大切なのは、必要事項を漏れなく記録し、1年間確認できる状態で保存することです。


    ルール(3)アルコール検知器の設置、管理

    使用するアルコール検知器は、呼気中のアルコールを検知し、その有無または濃度を警告音、警告灯、数値などで示す機能を持つものが対象です。


    安全運転管理者は、製品の取扱説明書に従って、電源が入るか、損傷がないか、正常に作動するかなどを確認し、常時使用できる状態に保つ必要があります。


    アルコールチェックをしなかった場合、すぐに罰則を受ける?

    アルコールチェックの不実施それ自体に対し、直ちに一律50万円以下の罰金を科す直接罰則は設けられていません。


    ただし、不実施や記録漏れを放置すると、安全運転管理者が必要な業務を行っていないと判断される可能性があります。その結果、次のような対応につながることがあります。


    • 警察等による事実確認を受ける可能性がある
    • 使用者が、安全運転管理者等の解任命令を受ける
    • 使用者が是正措置命令を受ける命令に従わなかった場合、50万円以下の罰金対象となる
    • 飲酒運転事故が発生した場合、企業の管理体制が問題となる

    罰金の有無だけではなく、事故防止、従業員の安全、企業の信用を守る観点から、継続的に運用できる体制を整える必要があります。


    安全運転管理者の罰則を防ぐためのチェックリスト

    次の項目を定期的に確認しましょう。


    • 事業所ごとに使用車両台数を把握している
    • 選任基準を満たす管理者を選任している
    • 副安全運転管理者の必要人数を確認している
    • 選任、解任、変更の届出を期限内に行っている
    • 安全運転管理者の違反歴や欠格事由を確認している
    • 運転前後に目視等とアルコール検知器による確認を行っている
    • 確認結果を漏れなく記録している記録を1年間保存している
    • アルコール検知器を正常に使用できる状態で管理している
    • 早朝、深夜、直行直帰時の確認方法を定めている
    • 安全運転管理者が不在の場合の補助体制を決めている

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    安全運転管理者制度に関する罰則を防ぐためには、管理者を選任するだけでなく、アルコールチェックや記録保存を継続して適切に行える体制が必要です。


    しかし、安全運転管理者の業務は、点呼、酒気帯び確認、運転日誌の管理、安全運転指導など多岐にわたります。早朝や深夜に運転が発生する事業所では、社内の担当者だけで確認体制を維持することが負担になる場合もあります。


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