自治体BPOとは?
自治体BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、業務の一部を外部に任せることを目的とするのではなく、業務プロセス全体を外部の専門事業者と連携しながら運用する考え方です。
自治体は、住民サービスの提供や各種行政手続きなど、幅広く多様な業務を担っています。その 一方で、限られた人員や予算の中で、すべての業務を職員のみで担い続けることは難しくなりつつあります。
そうした中で自治体BPOは、外部の専門ノウハウを活用しながら業務体制を再設計し、行政サービスを安定的に提供し続けるための選択肢として位置づけられています。
自治体BPOの基本的な考え方
自治体BPOの基本的な考え方は、「すべての業務を自治体内で完結させる」という前提から一歩進み、外部と役割を分担しながら行政運営を支えることにあります。
自治体業務の中には、日々安定した対応が求められる定型業務や、特定の時期に業務量が集中しやすい分野が存在します。こうした業務については、外部と連携して担うことで、業務の負荷を平準化しやすくなります。一方、自治体職員は、企画立案や制度運用、関係部署との調整といった、自治体ならではの判断や責任を伴う業務に注力することが可能になります。
この役割分担によって、業務の安定運営と持続可能な体制づくりを目指すこと、それが自治体BPOの基本的な考え方です。
自治体BPOは、人員不足への一時的な対処にとどまらず、業務体制そのものを支えるための選択肢の一つとして活用されています。
業務委託・アウトソーシングとの違い
自治体BPOは、一般的な業務委託やアウトソーシングと混同されることがありますが、目的や委託範囲には違いがあります。
業務委託・アウトソーシングの場合、特定の作業工程のみを切り出して外部に委託するケースが多く、主な目的は業務負担の軽減やコスト削減です。
一方、BPOは、業務プロセス全体を俯瞰し、改善や効率化まで含めて委託できる点に特徴があります。たとえば、繁忙期対応や期間限定事業において、受付から事務処理、問い合わせ対応までを一括して委託するケースは、BPO的な活用といえます。
自治体BPOでは、単に「業務を外に出す」のではなく、「業務の進め方そのものを見直す」視点が重要になります。
公共BPOとの違い
公共BPOとは、官公庁や自治体など、公共分野全体を対象としたBPOを指す言葉です。
自治体BPOは、公共BPOの中でも市区町村業務に特化した形態と位置づけられます。
行政機関全般を対象とする公共BPOと比べ、自治体BPOでは、住民との接点が多く、地域や制度ごとの特性を踏まえた対応が求められます。
そのため、自治体業務への理解や、現場運用を踏まえた支援ができるかどうかが、重要なポイントとなります。
民間企業のBPOとの違い(目的・制約・責任範囲)
民間企業におけるBPOは、コスト削減や生産性向上といった経営効率の改善を主な目的として導入されるケースが一般的です。
業務の成果や効率が重視され、契約条件や評価指標に基づいて柔軟に運用される点が特徴です。その一方、自治体BPOでは、公共性・公平性・継続性を前提とした運営が求められます。
業務の最終的な責任や判断権限が発注側に残る点は民間企業のBPOと共通していますが、自治体の場合は住民サービスへの影響や行政としての説明責任が直接問われるという違いがあります。
そのため、単に成果や効率のみを重視した運用にはなじみにくく、住民対応の品質を維持しながら、安定的かつ継続的に業務を運営できる体制づくりが重要になります。
自治体特有の配慮点(制度・繁閑差・個人情報)
自治体業務には、法令や制度改正の影響を受けやすい分野が多く、その内容や運用が年度途中で変更されることも少なくありません。
また、申請受付や各種手続きにおいて、繁忙期と閑散期で業務量に大きな差が生じやすいという特性もあります。そのため、自治体BPOを導入する際には、業務内容の変化や業務量の増減に対して、柔軟に対応できる体制設計が欠かせません。
加えて、住民情報や特定個人情報など、機微な情報を日常的に扱う点も自治体業務の大きな特徴です。情報セキュリティや個人情報保護への配慮は、前提条件として十分に確保されている必要があります。
自治体BPOを検討する際は、こうした自治体特有の事情を理解したうえで、実績や運用体制を備えたパートナーかどうかを見極めることが重要でしょう。
自治体でBPOが注目される背景
自治体業務を取り巻く環境変化(人手不足・業務増大)
多くの自治体では、人口減少や高齢化の進行により、職員数の確保が年々難しくなっています。一方で、住民サービスに求められる内容は多様化・高度化しており、自治体業務全体の負荷は増加傾向にあります。
特に、申請件数が多い手続きや、制度改正の影響を受けやすい業務、繁忙期と閑散期で業務量に大きな差が出る分野では、従来の人員配置や運用方法だけでは対応しきれないケースも増えています。
こうした状況の中、限られた人員で行政サービスの質を維持・向上させるためには、「業務のやり方そのもの」を見直す必要があり、その選択肢の一つとしてBPOが検討されるようになっています。
DXだけでは解決しきれない業務課題
業務効率化の手段として、自治体DXを推進する動きも広がっていますが、DXだけで全ての業務課題を解決できるわけではありません。
システム導入や電子申請の普及により効率化できる業務がある一方で、
- 書類の確認や審査
- 制度内容を踏まえた判断が必要な業務
- 住民からの問い合わせ・相談対応
など、人による対応や運用が不可欠な業務は依然として残ります。
また、DXの推進そのものにも、企画・設計・運用を担う人的リソースが必要となるため、現場の負担が一時的に増えるケースも少なくありません。
こうした背景から、DXと並行して業務体制を支える手段として、業務プロセスの設計から運用までを外部と連携できるBPOが注目されるようになっています。BPOはDXの代替ではなく、DXだけでは対応しきれない業務を補完する手段といえるでしょう。
BPOの市場規模と自治体への広がり
株式会社矢野経済研究所 が2025年に実施した最新調査によると、自治体向けBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)市場は、引き続き安定した拡大傾向にあります(※)。
同調査では、2024年度の自治体向けBPOサービス市場規模は約5兆1,827億円(事業者売上高ベース)とされており、2028年度には約5兆5,985億円まで成長すると予測されています。
この背景には、自治体職員数の減少や業務量の増加に加え、住民向け業務や事務処理業務を中心とした業務の外部委託ニーズの高まりがあります。
特に近年は、窓口業務や申請処理といった分野で、行政サービスの安定運営を目的としたBPO活用が広がっており、自治体にとってBPOは一時的な対策ではなく、中長期的な業務運営を支える手段の一つとして位置づけられつつあります。
(※)出典:株式会社矢野経済研究所 「 自治体向けBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2025年) 」
自治体向けBPOに依頼できる業務の内容
ここでは、自治体向けBPOに依頼できる業務内容を紹介していきます。
- フロントヤード業務
- バックヤード業務
- 繁忙期スポット対応・臨時業務
なお、各社の提供内容によりBPOサービスの業務範囲は異なるため、今回はパーソルビジネスプロセスデザインが対応している業務を選定しております。
関連リンク|パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社公共ソリューションのご紹介|フロントヤード・バックヤード改革
フロントヤード業務(窓口・コールセンター)
住民対応が発生するフロントヤード業務では、一次対応をBPOで担うことで、業務の中断を防ぎ、対応品質の平準化が期待できます。
マイナンバー関連業務
マイナンバー関連業務は、繁忙期に業務量が急増しやすい分野です。BPOでは、マイナンバーカードの窓口業務や出張イベントの企画から運営などの業務も委託範囲に含まれています。
具体的には以下の項目での対応が可能です。
- マイナンバーカード窓口業務、コールセンター業務、バックヤード業務
- 出張申請における会場手配、広報物作成、当日運営
- マイナポータル登録、マイナポイント申込支援、制度に関する問い合わせ対応
- ホームページ開設、広報物の企画・作成・手配などの広報活動
通報一次コールセンター業務
市民からの通報問い合わせの受付窓口もBPOでの一括管理が可能です。一次受付をBPOで一括管理することで、個別対応の負担を軽減し、業務を円滑に進めやすくなります。
具体的には以下の項目での対応が可能です。
- 道路の陥没、公園設備の破損、食中毒の疑いなどに関する通報受付
- 通報内容の整理・要約、関係部署への連携
バックヤード業務(申請処理・事務作業)
書類処理や申請対応などのバックヤード業務は、件数が多く、繁閑差も生じやすいため、自治体BPOと親和性の高い分野です。定型業務を外部に委託することで、職員の事務負担軽減につながります。
住基・戸籍関連業務
住基・戸籍関連業務をBPOへ委託することで、ノンコア作業の負担を減らし、窓口や企画業務へ注力しやすくなります。
具体的には以下の項目での対応が可能です。
- 証明書の発行・交付・手数料収受
- 転入・転出などの住民異動関連業務
- 出生・婚姻・死亡届の受付、審査、入力
- 館内総合案内
- 集計・統計業務
- コールセンター業務
介護業務
介護関連業務は制度が複雑で、申請件数も多いため、業務負荷が高くなりやすい分野です。BPOを導入することで、職員の業務負担を減らせるでしょう。
具体的には以下の項目での対応が可能です。
- 要介護認定の新規申請・更新手続き
- 要介護認定資格の再交付、送付先変更、納付証明の発行
- 死亡手続き
- 要介護者への給付関連業務(居宅介護予防サービス計画届、負担限度額認定、高額介護サービス、福祉用具購入費など)
国民健康保険・後期高齢者医療保険制度・国民年金業務
保険・年金業務も、継続的かつ正確な対応が求められる分野としてBPOが活用されています。
具体的には以下の項目での対応が可能です。
- 国民健康保険の資格賦課・給付・収納業務
- 後期高齢者医療保険制度に関する資格関連業務、給付、収納、問い合わせ対応
- 国民年金(第1号被保険者)の資格取得・喪失手続き、種別変更、住所変更
子ども・子育て業務
申請・審査・支給事務が密集しやすい子ども・子育て分野でも、BPOの活用が進んでいます。
具体的には以下の項目での対応が可能です。
- 支給事務(児童手当・児童育成手当・児童扶養手当・特別児童扶養手当)
- 子ども子育て支援制度1号支給認定・一部認定子ども園幼稚園等の入所申込手続き・2,3号認定支給認定
- 保育園への入園事務・利用者負担額の確認・管理
繁忙期スポット対応・臨時業務
自治体業務では、制度改正や期間限定施策などにより、一時的に業務量が急増するケースがあります。BPOは常設の委託に限らず、スポット的な活用も可能です。
具体的には以下の項目での対応が可能です。
- 給付金・支援金関連業務
- 制度改正に伴う申請・問い合わせ対応
- 短期間での事務センター運営
自治体の業務にBPOを導入する3つのメリット
自治体BPOを活用することで、業務負担の軽減だけでなく、業務体制そのものの安定化や質の向上が期待できます。 ここでは、自治体BPOの代表的なメリットを3つの観点で整理します。
職員がコア業務に集中できる
自治体業務の中には、申請受付や書類確認、入力作業など、一定のルールに沿って繰り返し発生するノンコア業務が数多く存在します。
これらをBPOで外部に委託することで、職員の業務負担を軽減し、限られた人的リソースを有効に活用できるようになります。
期待できる効果は下記の通りです。
- ノンコア業務の負担軽減による業務量の平準化
- 企画、判断、関係部署との調整など、コア業務への注力
- 人手不足下でも行政サービスを安定的に維持できる体制構築
BPOは単なる人手不足対策ではなく、「職員が本来担うべき役割に集中できる環境づくり」を支える手段として活用されています。
繁閑差に対応できる体制を構築できる
自治体業務は、繁忙期と閑散期で業務量に大きな差が出やすいという特徴があります。 申請集中時期や制度改正、期間限定施策などにより、一時的に業務が逼迫するケースも少なくありません。 BPOを活用することで、業務量の増減に応じた柔軟な体制を構築しやすくなります。
期待できる効果は下記の通りです。
- 繁忙期でも業務が滞りにくい運用体制
- 職員が突発対応に追われる状況の回避
- スポット対応や期間限定業務への柔軟な対応
常に最大負荷を想定した体制を維持する必要がなくなり、過度な人員調整や残業に依存しない運営につながるでしょう。
業務品質・標準化を推進できる
BPO導入の過程では、業務内容や手順の整理、マニュアル化が進められるため、業務の属人化を防ぐ効果も期待できます。
特定の職員に業務が集中している状態を解消し、誰が対応しても一定の品質を保てる体制を構築しやすくなります。
期待できる効果は下記の通りです。
- 業務プロセスの可視化・標準化
- 引き継ぎや担当変更時のリスク低減
- 業務品質のばらつき抑制
結果として、業務の安定運用と継続性の確保につながり、長期的な自治体運営を支える基盤づくりにも寄与します。
自治体BPOのデメリット・注意点
自治体BPOには多くのメリットがありますが、導入を成功させるためには、いくつか注意しておくべきポイントもあります。
ここでは、自治体BPOを検討する際に整理しておきたい代表的な注意点を紹介します。
委託範囲の切り分けが難しい
自治体BPOを検討する際、最初につまずきやすいのが「どの業務を、どこまで委託するのか」という切り分けです。 導入目的や課題が曖昧なまま検討を進めてしまうと、期待していた効果が得られないケースもあります。
自治体ごとに、業務量の偏りや抱えている課題は異なります。そのため、
- 業務の効率化を重視したいのか
- 職員の負担軽減が主目的なのか
- 住民サービスの質向上を優先したいのか
といったBPO導入の目的をあらかじめ明確にしておくことが重要です。
目的が整理されていることで、委託範囲の設定やBPO事業者との打ち合わせもスムーズに進み、費用対効果を最大化しやすくなります。
業務のブラックボックス化リスク
BPO導入後に注意したい点の一つが、業務内容が見えにくくなる「ブラックボックス化」です。 外部に業務を委託したことで、「業務の進捗や課題が把握しづらい」と感じてしまうケースもあります。
このリスクを避けるためには、
- 業務フローや役割分担を事前に整理する
- 定期的な報告やレビューの仕組みを設ける
- 委託後も自治体側が業務の状況を把握できる体制をつくる
といった工夫が欠かせません。
BPOは任せきりにするものではなく、自治体と事業者が役割を分担しながら運用していく取り組みであることを前提に進めることが重要です。
情報セキュリティ・住民対応への配慮
自治体業務では、住民情報や特定個人情報など、機微な情報を扱うケースが多くあります。 そのため、BPOを導入する際は、情報セキュリティ体制や住民対応品質への配慮が不可欠です。
具体的には、
- 情報セキュリティ管理体制が整備されているか
- 個人情報の取り扱いに関するルールが明確か
- 窓口・コールセンター業務における対応品質を担保できるか
といった点を、事前に確認しておく必要があります。
セキュリティや対応品質は、導入後に取り返しがつかない問題につながることもあるため、自治体業務の特性を理解した事業者かどうかを見極めることが重要です。
自治体向けBPOの導入事例を紹介
ここでは、自治体向けBPOでパーソルビジネスプロセスデザインが実施した2つの導入事例を紹介していきます。
- 福岡市福祉局|高齢者乗車券交付事業におけるバックヤード業務改革
- 札幌市こども未来局|子育て支援業務における業務標準化から始めた自治体BPO
福岡市福祉局|高齢者乗車券交付事業におけるバックヤード業務改革
| 背景・課題 |
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|---|---|
| 取り組み内容 |
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| 成果 |
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BPO活用事例|福岡市福祉局さま
年間16万件の申請処理を刷新。福岡市がBPOとAI活用で実現した市民サービスの向上
札幌市こども未来局|子育て支援業務における業務標準化から始めた自治体BPO
| 背景・課題 |
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|---|---|
| 取り組み内容 |
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| 成果 |
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BPO活用事例:札幌市こども未来局さま
「10区10様」の業務プロセス標準化からBPOを推進。外部委託の障壁を乗り越え、継続的な業務改善サイクル創出を導く
自治体BPOならパーソルビジネスプロセスデザインにお任せください
自治体BPOは、単なる人手不足対策ではなく、フロントヤード・バックヤード両面から業務の進め方そのものを見直す手段として活用されています。
窓口対応や問い合わせ対応といったフロントヤード業務では、住民対応の品質を保ちながら職員の負担を軽減することが求められます。
一方で、申請処理や審査、事務作業などのバックヤード業務では、業務量の平準化や標準化を進めることで、安定した運営体制を構築することが重要になります。
こうしたフロントヤード・バックヤード改革を進めるにあたっては、「どの業務から着手すべきか」「どこまで外部に委ねられるのか」といった整理が欠かせません。
具体的な進め方や、自治体での取り組み事例をまとめた資料を活用することで、BPO活用のイメージをより明確にすることができます。ご検討の際はぜひ下記資料をご活用ください。
フロントヤード・バックヤード改革のご紹介
パーソルビジネスプロセスデザインでは、自治体のフロントヤード改革・バックヤード改革を総合的にサポートします。業務再設計(BPR)の重要性をはじめ、構想から自走までの具体的なステップや成功事例まで、パーソルならではのノウハウを分かりやすくご紹介します。