シェアードサービスとは
シェアードサービスとは、グループ会社や複数拠点でそれぞれ実施している共通業務を集約し、標準化された体制で運営する仕組みです。
経理・人事・総務といった管理部門業務は、各社・各拠点で似た業務を重複して行っているケースが少なくありません。その結果、業務プロセスやルール、使用システムがばらつき、業務効率や品質に差が生じることがあります。
シェアードサービスでは、こうした共通業務を一元化することで、業務品質の向上や運営効率の改善を図ります。また、業務の可視化やデータの一元管理を実現しやすくなるため、グループ全体のガバナンス強化にもつながります。
近年では単なるコスト削減施策としてではなく、人材不足への対応やグループ経営の高度化を支える管理基盤として導入する企業が増えています。
シェアードサービスの目的
シェアードサービスの目的は、単に業務を集約することではありません。グループ全体の管理部門機能を最適化し、より効率的で持続可能な運営体制を構築することにあります。
主な目的は次の4つです。
業務効率化
各社で重複して行っている業務を集約することで、業務負荷を軽減します。また、業務プロセスを統一することで生産性向上も期待できます。
業務品質の向上
業務ルールや運用方法を標準化することで、拠点や担当者による品質のばらつきを抑えられます。ナレッジも集約しやすくなり、安定した運営を実現できます。
ガバナンス強化
グループ全体で統一された業務プロセスや管理ルールを整備することで、内部統制やコンプライアンス体制を強化できます。
データ活用基盤の構築
業務やシステムを標準化することで、グループ横断でデータを収集・分析しやすくなります。経営判断や人的資本経営を支える基盤づくりにもつながります。
シェアードサービスセンター(SSC)との違い
シェアードサービスを調べていると、「SSC(シェアードサービスセンター)」という言葉を見かけることがあります。シェアードサービスとSSCは似た意味で使われることもありますが、厳密には異なります。
シェアードサービスが「管理部門業務を集約・標準化する考え方や仕組み」を指すのに対し、SSCは「シェアードサービスを実際に運営する組織や部門」を指します。例えば、グループ内の経理業務や人事業務を集約し、それらを専門的に運営する組織を設置した場合、その組織がSSCです。
つまり、下記のような違いがあります。
- シェアードサービス=管理部門改革の考え方・仕組み
- SSC(シェアードサービスセンター)=それを実行する組織
シェアードサービスを導入する際は、単にSSCを立ち上げることが目的ではありません。業務プロセスや役割分担を見直し、グループ全体で最適な運営モデルを実現することが重要です。
なぜ今シェアードサービスが求められるのか
シェアードサービスは以前から存在する考え方ですが、近年あらためて注目が高まっています。
背景にあるのは、単なる業務効率化やコスト削減ではありません。グループ経営の複雑化や人材不足、ガバナンス強化への対応など、管理部門を取り巻く環境が大きく変化しているためです。
ここでは、シェアードサービスが求められる主な理由を解説します。
グループ経営の複雑化
企業の成長に伴い、グループ会社や事業拠点が増加すると、管理部門業務も複雑化します。
例えば、各社が独自の業務プロセスやルールを採用している場合、同じ業務であっても対応方法や品質にばらつきが生じます。また、本社がグループ全体の状況を把握しにくくなるため、迅速な意思決定や統制が難しくなることもあります。
シェアードサービスによって業務プロセスや運営ルールを標準化・集約することで、グループ全体を横断した管理体制を構築しやすくなります。
管理部門の人材不足
少子高齢化や労働人口減少により、多くの企業で人材確保が課題となっています。
特に経理・人事・総務といった管理部門では、専門知識を持つ人材の採用や育成が難しくなっており、限られた人員で業務を運営しなければならないケースも少なくありません。
各社・各拠点に人員を分散配置する運営では、人材不足の影響を受けやすくなります。一方、シェアードサービスによって業務を集約すれば、人材やノウハウを集中させることができ、より効率的な運営体制を構築できます。また、属人化の解消や業務継続性の向上にもつながるでしょう。
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M&A後の統合課題
近年は事業拡大や事業承継などを目的としたM&Aが活発化しています。
しかし、M&Aによってグループ会社が増えると、業務プロセスやシステム、管理ルールが統一されていない状態になりやすく、統合作業が大きな負担となります。
管理部門業務の統合が進まなければ、業務の重複、情報管理の非効率化、ガバナンス上のリスクなどが発生する可能性があります。
シェアードサービスは、グループ各社の業務を見直し、標準化・集約する仕組みであるため、M&A後のPMI(統合プロセス)の一環として導入されるケースも増えています。
人的資本経営・データ活用への対応
近年は人的資本経営やESG経営への関心が高まり、企業にはより高度な情報開示やデータ活用が求められています。
しかし、グループ各社で異なるシステムや運用ルールを採用している場合、必要なデータを収集・分析するだけでも多大な工数がかかります。
例えば、人材情報、労務関連データ、経理・財務データ、各種KPIなどが分散管理されていると、経営判断に必要な情報を迅速に把握することは困難です。
シェアードサービスによって業務やシステムを標準化することで、グループ横断でデータを収集しやすくなり、データに基づく経営判断を支える基盤づくりにつながります。
また、近年注目される人的資本経営を推進するうえでも、グループ全体で人材データを可視化・活用できる環境整備は欠かせません。人的資本経営の概要や企業に求められる取り組みについて詳しく知りたい方は、「人的資本経営とは?注目される背景と企業が取り組むべき施策・実践ステップを解説」もあわせてご覧ください。
シェアードサービス導入を検討すべき企業
シェアードサービスは、すべての企業に必要な取り組みではありません。しかし、グループ経営の拡大や組織の複雑化によって、従来の管理部門運営に限界を感じている企業にとっては有効な選択肢となります。
まずは、以下の項目に当てはまるものがないか確認してみましょう。
シェアードサービス適応チェックリスト
- グループ会社を複数保有している
- 管理部門業務が各社・各拠点で異なる
- 同じような業務を各社で重複して実施している
- 本社からグループ全体の状況を把握しづらい
- KPIや管理指標が統一されていない
- 管理部門の属人化が進んでいる
- M&A後の管理部門統合が進んでいない
- DXやAI活用を進めたいが、業務整理ができていない
複数当てはまる場合は、シェアードサービスによる業務標準化・集約を検討するタイミングかもしれません。
これらの課題を放置すると、業務の重複や属人化が進み、管理部門コストの増加やガバナンス低下につながる可能性があります。また、人的資本経営やデータ活用、DX推進といった取り組みも進めにくくなります。
そのため、グループ全体の運営体制を見直し、業務の標準化や集約を進める手段としてシェアードサービスが注目されています。
シェアードサービス・業務集約・BPOの違い
シェアードサービスを検討する際、「業務集約」や「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」との違いが分かりづらいと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、これらはそれぞれ目的や役割が異なります。
重要なのは、どれか一つを選ぶことではなく、自社の課題や目指す姿に合わせて最適な運営モデルを設計することです。
業務集約との違い
業務集約とは、各拠点やグループ企業に分散している業務を一か所にまとめることです。
例えば、各拠点で実施している経費精算業務や支払処理業務を本社へ集約するケースなどが該当します。
一方、シェアードサービスは業務を集約するだけではありません。業務プロセスやルール、役割分担を見直し、継続的に運営・改善できる仕組みを構築する取り組みです。
| 項目 | 業務集約 | シェアードサービス |
|---|---|---|
| 目的 | 業務を一か所に集める | グループ全体の運営最適化 |
| 対象 | 業務そのもの | 業務・組織・ルール・体制 |
| 標準化 | 必須ではない | 必須 |
| 継続改善 | 限定的 | 重視される |
業務集約が「業務を集めること」であるのに対し、シェアードサービスは「集約した業務を最適に運営する仕組みを構築すること」と言えるでしょう。
BPOとの違い
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、業務プロセスを外部の専門事業者へ委託することです。
シェアードサービスとBPOは比較されることもありますが、本来は競合する概念ではありません。 シェアードサービスが「管理部門の運営モデル」であるのに対し、BPOは「業務を遂行するための手段」の一つです。
例えば、シェアードサービスではグループ内に分散している業務を集約・標準化し、業務品質やガバナンスの向上を目指します。一方、BPOでは業務運営そのものを外部の専門事業者へ委託し、業務負荷の軽減や専門性の活用を図ります。
そのため、「シェアードサービスかBPOか」を選ぶのではなく、それぞれをどのように組み合わせるかが重要になります。
BPOについて詳しく知りたい方は、下記コラムもあわせてご覧ください。
関連コラム|BPOとは?
BPOサービスとは何か?業務委託との関係性や導入メリット、業者を選択する際のポイントについて詳しく解説しています。
シェアードサービスとBPOを組み合わせる企業が増えている理由
近年は、シェアードサービスとBPOを組み合わせて管理部門改革を進める企業が増えています。その背景には、管理部門の人材不足や専門人材の確保、業務品質向上へのニーズがあります。
例えば、シェアードサービスによってグループ全体の運営ルールや業務プロセスを統一し、問合せ対応や定型業務などはBPO事業者へ委託するケースがあります。
こうすることで、下記のようなメリットが期待できます。
- グループ全体で統一された運営を実現できる
- 業務品質を維持しやすくなる
- 人材不足リスクを軽減できる
- 社内人材を企画・戦略業務へ集中できる
シェアードサービスとBPOは対立する選択肢ではありません。重要なのは「シェアードサービスかBPOか」を選ぶことではなく、「自社で担うべき業務」「グループで集約すべき業務」「BPO活用が有効な業務」を整理し、自社にとって最適な運営モデルを設計することです。また、近年は、シェアードサービスで業務プロセスや運営ルールを標準化し、グループ全体の運営方針を統一したうえで、定型業務の一部をBPOへ委託する運営モデルも増えています。
シェアードサービスのメリット
シェアードサービスは単なる業務効率化施策ではありません。グループ全体の管理部門を最適化し、経営基盤を強化するための取り組みです。
ここでは代表的なメリットを紹介します。
メリット1.グループ全体最適を実現できる
各社が独自に管理部門を運営している状態では、業務の重複や非効率が発生しやすくなります。そこで、シェアードサービスによって業務を集約・標準化することで、グループ全体の視点で人材やノウハウ、リソースを活用できるようになります。結果として、各社最適ではなくグループ全体最適の運営を実現できます。
メリット2.ガバナンスを強化できる
業務ルールや承認プロセスを統一することで、内部統制やコンプライアンスを強化できます。また、業務状況を一元的に把握できるようになるため、本社による管理やモニタリングもしやすくなります。グループ経営の高度化やM&A後の統合推進にも有効です。
メリット3.業務品質を標準化できる
業務手順や品質基準が統一されることで、担当者や拠点による品質のばらつきを抑えられます。さらに、ノウハウやナレッジを組織として蓄積しやすくなるため、継続的な品質向上にもつながります。
メリット4.管理部門コストを最適化できる
シェアードサービスは単純なコスト削減施策ではありません。重要なのは、重複業務の削減やリソースの適正配置によって、管理部門全体のコスト構造を見直すことです。
業務の集約や標準化により、限られた人材をより重要な業務へ配置できるようになり、結果として中長期的なコスト最適化につながるでしょう。
シェアードサービス導入で失敗しないためのポイント
シェアードサービスは、業務を集約するだけで成果が出るものではありません。進め方を誤ると、現場の混乱や運営負荷の増加につながり、期待した効果を得られないケースもあります。
シェアードサービスを成功させるには、グループ全体の運営モデルを見据えた設計と推進が重要です。ここでは、導入時に押さえておきたいポイントを紹介します。
業務標準化を先に行う
シェアードサービス導入で最も多い失敗の一つが、業務を標準化する前に集約を進めてしまうことです。
各社で異なる業務フローや申請ルール、帳票を使用したまま業務を集約すると、運営側の負荷が増加し、かえって効率が低下する可能性があります。
そのため、まずは業務内容を可視化し、下記を整理・統一することが重要です。
- 業務プロセス
- 申請・承認ルール
- 使用システム
- 品質基準
標準化された状態をつくってから集約することで、安定運営と継続的な改善を実現しやすくなります。
なお、業務標準化の具体的な進め方や、標準化がうまく進まない原因について詳しく知りたい方は、「業務標準化とは?メリットや進め方、うまくいかない原因・解決策を解説」もあわせてご覧ください。
全社を巻き込んで推進する
シェアードサービスは、経理や人事など一部門だけの取り組みではなく、グループ全体に影響する改革です。そのため、本社主導で進めるだけでなく、各社や各部門との合意形成を図りながら推進することが欠かせません。
現場の理解が得られないまま導入を進めると、
- 運用ルールが定着しない
- 独自ルールが残る
- 現場から協力を得られない
といった課題が発生する可能性があります。導入目的や期待効果を丁寧に共有し、関係者を巻き込みながら進めることが重要です。
KPIを統一する
グループ全体で業務状況を可視化するためには、共通の指標で管理することが重要です。
各社が異なるKPIや測定基準を採用している場合、業務量や品質だけでなく、人材活用状況や経営課題を横断的に把握することが難しくなります。その結果、グループ全体の最適化や改善活動も進めにくくなります。
シェアードサービス構築にあたっては、業務運営に関する指標だけでなく、下記経営視点での共通KPIを整備することが重要です。
- 管理部門の生産性
- 一人当たりの業務負荷
- 人材配置の最適化状況
- 人的資本に関する指標
- グループ横断でのデータ収集・活用状況
- 管理部門コストの推移
また、必要に応じて処理件数やエラー率、SLA達成率といった運営KPIも組み合わせることで、現場レベルから経営レベルまで一貫した管理体制を構築できます。
KPIが統一されることで、グループ全体の状況を可視化しやすくなり、人的資本経営やデータに基づく意思決定を支える基盤づくりにもつながるでしょう。
システム・BPO・AI活用を含めて運営モデルを設計する
シェアードサービスの目的は、SSCを構築することではありません。
重要なのは、管理部門全体をどのように運営するかを設計することです。
また、業務だけを集約しても、システムやデータ管理の方法が統一されていなければ十分な効果は得られません。
そのため、下記事項を整理するとともに、業務とシステムを一体で設計することが重要です。
- 自社で担うべき業務
- グループで集約すべき業務
- BPO活用が有効な業務
- AIや自動化の適用が可能な業務
さらに、立ち上げ後の運営ルールや改善体制まで見据えて設計することで、継続的に成果を生み出せるシェアードサービスを実現できます。
シェアードサービス構築の進め方
シェアードサービスの構築は、単に業務を一か所に集約するだけでは成功しません。業務の標準化や組織体制の見直し、システム整備などを段階的に進めながら、グループ全体で最適な運営モデルを設計することが重要です。
ここでは、シェアードサービス構築の一般的な進め方を5つのステップで解説します。
STEP1 目的整理・構想策定
まずは「なぜシェアードサービスを導入するのか」を明確にします。
シェアードサービスは業務効率化だけでなく、下記さまざまな経営課題の解決を目的として導入されます。
- ガバナンス強化
- 人材不足への対応
- M&A後の業務統合
- データ活用基盤の構築
そのため、現状の課題と目指す姿を整理し、シェアードサービスに期待する役割や対象範囲を明確にすることが重要です。目的が曖昧なまま進めてしまうと、業務を集約しただけで期待した効果が得られない可能性があります。
STEP2 業務可視化・課題整理
次に、各社・各拠点で実施している業務を可視化します。
具体的には、主に下記事項を整理して現状を把握します。
- 業務内容
- 業務量
- 工数
- 使用システム
- 申請・承認フロー
- 運用ルール
この段階では、業務の重複や属人化、拠点ごとの運用差異を洗い出し、どこに改善余地があるのかを明確にすることが重要です。シェアードサービスの対象業務を決定するうえでも、現状把握は欠かせません。
STEP3 業務・システム標準化
業務を集約する前に、業務プロセスやシステムを標準化します。各社で異なる業務フローやルールを残したまま集約すると、運営負荷が増え、期待した効率化効果を得られない可能性があります。
そのため、
- 業務プロセスの統一
- 帳票や申請書式の統一
- 承認ルールの整理
- システム運用ルールの統一
などを実施し、標準化された運営基盤を構築します。また、将来的なDX推進やデータ活用を見据え、システム統合や運用見直しを検討することも重要です。
STEP4 運営基盤構築
業務やシステムの標準化が完了したら、実際の運営体制を設計します。
シェアードサービスでは、本社・グループ会社・SSC・外部パートナー(BPO事業者)など、多くの関係者が関わります。
そのため、下記項目を明確に定義し、安定的に運営できる体制を整備する必要があります。
- 役割分担
- 問い合わせ対応フロー
- エスカレーションルール
- KPI
- サービスレベル
また、業務移管は一度に行うのではなく、優先度の高い業務から段階的に進めることが成功のポイントです。
STEP5 定着化・高度化
シェアードサービスは立ち上げて終わりではありません。
運用開始後も業務品質や生産性を継続的に改善しながら、さらなる高度化を目指していく必要があります。
例えば、
- KPI分析による改善活動
- 業務の追加標準化
- AIや自動化ツールの活用
- BPOの活用拡大
- データの利活用促進
などが挙げられます。
継続的な改善によって、管理部門を単なる業務処理部門ではなく、経営を支える基盤へと進化させることができます。
シェアードサービスは管理部門改革のスタート地点
シェアードサービスは、業務を一か所に集約することが目的ではありません。本来の目的は、グループ全体で管理部門をどのように運営していくかを見直し、経営を支える基盤を構築することです。
近年は、人材不足やグループ経営の複雑化、ガバナンス強化、人的資本経営への対応など、管理部門に求められる役割が大きく変化しています。
こうした環境変化に対応するためには、自社で担うべき業務、集約すべき業務、BPO活用が有効な業務を整理しながら、最適な運営モデルを構築することが重要です。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、シェアードサービス構想の策定から業務可視化・標準化、運営体制設計、BPO活用まで一気通貫で支援しています。「自社はシェアードサービスを導入すべきなのか知りたい」「何から着手すべきか相談したい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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