スマート自治体とは、デジタル技術によりサービスを効率化させた自治体
スマート自治体とは、AIやRPAなどの先進技術を活用し、行政業務の効率化と住民満足度を向上させる次世代の自治体像を指します。
総務省が公表しているスマート自治体研究会の報告書では、目指す姿として以下の3つを挙げています。
・人口減少が深刻化しても、自治体が持続可能な形で行政サービスを提供し続け、住民福祉の水準を維持
・職員を事務作業から解放 ⇒ 職員は、職員でなければできない、より価値のある業務に注力
・ベテラン職員の経験をAI等に蓄積・代替 ⇒ 団体の規模・能力や職員の経験年数に関わらず、ミスなく事務処理を行う
引用: スマート自治体研究会(※)報告書 ~「Society 5.0時代の地方」を実現するスマート自治体への転換~ 概要|総務省
デジタル技術による効率化を進めることで、書類作成や窓口対応といった定型作業を自動化し、職員はより付加価値の高い業務に注力できるようになるでしょう。
スマート自治体が注目されている背景や実際の問題点
ここでは、スマート自治体が注目されている背景や、自治体が実際に抱えている問題点について解説します。
スマート自治体への注目が高まる背景には、日本の自治体が直面する深刻な構造的課題があります。これらの課題を解決するためには、現在自治体が抱えている課題を理解しておくことが大切です。
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スマート自治体が注目されている背景
スマート自治体が注目されている背景は、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
- 少子高齢化にともなう地方自治体の労働力の減少
- 社会におけるIT化の加速とデジタル化の必要性
近年、日本では少子高齢化の影響により労働力が減っていることが問題視されています。 総務省 によると1995年に8,726万人いた生産年齢人口が、2040年には6,000万人未満まで減少すると予測されており、人材不足に対する早急な対応が必要です。
また、社会におけるIT化は急速に加速しており、グローバルなデジタル化の波に日本が追いつくためには、行政の業務効率化やデジタル化に向けた社会制度の構築が求められています。
このような背景から、スマート自治体が注目を集めています。
自治体が実際に抱えている問題点
現在、自治体では少子高齢化の影響により多岐にわたる問題を抱えています。
たとえば、人口減少による経済規模の縮小の結果、若年層の都心部への移住といった悪循環を招く自治体も少なくありません。
また、超高齢社会となった今、医療費や介護費の負担が増加し、自治体の財政を圧迫する要因となっています。
その結果、人材不足によるサービスの低下といった影響が出てしまうため、まずは自治体の機能を維持するためにも、業務の効率化が求められています。
スマート自治体実現のために掲げている三原則
ここではスマート自治体の実現に向け、総務省が掲げている三原則を解説します。
- 行政手続きを紙から電子へ
- 行政アプリケーションを自前調達式からサービス利用式へ
- 自治体もベンダも守りの分野から攻めの分野へ
3つの原則は総務省が公表しており、参考にすることで行政としての認識を統一し、より効果的な施策へと移行できるでしょう。
原則1:行政手続きを紙から電子へ
行政手続きを紙媒体から電子媒体へ移行することは、スマート自治体を実現するための必須項目です。
従来の自治体業務では、住民から紙媒体で受け取った書類のデータをまとめるために、パソコンへの入力作業が必要でした。対応する書類の数が多いとデータ入力作業に多くの時間を割く必要があり、職員に大きな負担がかかります。
しかし、紙媒体の申請をデジタル化することで、データ入力作業やファイリングに要する時間を大幅に削減することが可能です。
原則2:行政アプリケーションを自前調達式からサービス利用式へ
従来の行政アプリケーションは、各自治体が独自にカスタマイズしたシステムを構築・運用する「自前調達式」が主流でした。しかし、システムの選定や契約の締結、調達仕様書の作成などが必要となるため、各自治体の担当者には業務負担がかかってしまいます。
全国的に使用されているクラウドサービスを利用することで、導入やシステム構築・保守にかかる費用、時間を大幅に削減することが可能となりました。また、共同利用によって自治体同士でのノウハウ共有も促進されるため、DXの推進が加速しやすくなります。
原則3:自治体もベンダも守りの分野から攻めの分野へ
スマート自治体を加速させるためには、自治体だけでなくベンダ側も「守りの分野」から「攻めの分野」になる必要があります。
守りの分野とは、システム保守といった運用を維持するために必要な業務を指します。攻めの分野は、システムの成長のために変化を求める動き方のことです。
自治体とベンダの両者が、システムの構築・保守管理といった「守りの分野」をできるだけ効率化することが重要です。そのうえで、AI・RPA等のICT活用といった「攻めの分野」へ人的・財政的資源を投資することで、行政サービスにおける真の価値を作り出せます。
スマート自治体の具体的な方針
つづいて、総務省が公表しているスマート自治体の具体的な方針について解説します。
- 業務フローやプロセスの均一化
- AIやRPAの活用促進
- 電子化の促進
- セキュリティレベルを向上させるシステムの活用
- 人材育成の支援
方針を理解しておくことで、スマート自治体に向けた明確な方向性が見えてくるでしょう。
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業務フローやプロセスの均一化
業務フローやプロセスの均一化は、スマート自治体実現のための重要な基盤です。総務省は以下の手順を提案しています。
- 人口規模や組織を基準に、類似する条件の自治体が実際に適用している業務プロセスを確認
- 自治体間の業務プロセスにおいて、効率性に差がある箇所を洗い出す
- もっとも効率の良い方法に標準を合わせて業務フローを変更する
AIやRPAの活用促進
スマート自治体で業務効率化を目指す場合は、AIやRPAの戦略的な活用が不可欠です。
総務省はAIやRPAの導入に際して、以下の3つの領域における検討方法を提案しています。
住民や企業が便利になる領域 | AIの技術によって数値やニーズの予測が活用できるものは、自治体と企業・各府省が検討する |
---|---|
自治体に負担や非効率が生じている領域 | 業務プロセスやシステムの標準化、電子化を通じ、AIといった機能を安価に共有できる環境を整える |
自治体が着手しやすい領域 | 他団体の導入事例を参考にして導入する |
それぞれの業務特性にあわせた活用をすることがスマート自治体の成功の鍵といえるでしょう。
電子化の促進
2019年に公布された「デジタル手続法」を皮切りに、マイナポータルを活用したデジタル申請など、さまざまな施策が推進されています。
行政サービスの電子化は紙媒体への負担を軽減させ、申請や手続きのスピードアップ、コスト削減にも大きく貢献できるでしょう。
一方で、住民のITリテラシーやネット環境への対応も課題として浮上しやすいため、導入にあたっては徹底した周知やサポート体制を整える必要があります。
セキュリティレベルを向上させるシステムの活用
自治体の事務業務をスマート化することで利便性が向上する一方、サイバーセキュリティ対策の重要性も増大します。
各自治体は、総務省で作成されている「 地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン 」に沿って、高度な安全性を確保した状態で作業しなければなりません。
たとえば、クラウドサービスの利用時には、データの保存場所やアクセス権限の管理を適切にし、個人情報保護法に準拠した運用体制の構築が重要です。
DX人材育成の支援
DX人材育成の支援は、スマート自治体の改革を成功させるうえで欠かせない取り組みです。DX人材育成が不十分な場合、新しいシステム導入後にオペレーションが定着せず、結果的に紙媒体の運用に戻ってしまうケースもあるため、早期からの計画的な教育が求められます。
自治体では、情報リテラシー研修やRPA操作説明会、AI活用事例の共有など、職員の階層や専門分野に応じた学習機会を提供することが効果的です。
スマート自治体実現のために取り組むべき3つのこと
ここでは、スマート自治体実現のために取り組むべき3つのことについて解説します。
- 必要な予算の確保
- システムに合わせた人材の育成
- 自治体の住民の理解
それぞれの内容を理解し事前に準備を進めておくことで、スマート自治体への転換がよりスムーズに進められるでしょう。
必要な予算の確保
スマート自治体への転換には、初期投資として相当な予算確保が必要です。
ハードウェア面では、職員用のパソコンやタブレット、住民向けのセルフサービス端末などのデバイス導入費用が発生します。一方でソフトウェア面では、クラウドサービスの利用料、セキュリティ対策ソフトのライセンス費用など継続的な費用が発生します。
国や都道府県の補助金制度を積極的に活用し、自治体の財政負担を軽減しながら段階的な導入を進めるのが効果的です。
システムに合わせた人材の育成
デジタル化の推進にともない、職員にはシステムの基本的な操作方法を習得するだけでなく、情報リテラシーの向上とセキュリティに対する意識が求められます。
職員に適切な教育を実施しない状態でシステムを運用すると、情報漏えいや誤操作によるシステム障害などのリスクが発生するおそれがあります。
階層別研修プログラムを策定し、管理職や一般職員にそれぞれの役割に応じた教育を体系的に実施することで、ITリテラシーの向上と安全で持続可能なスマート自治体を目指せるでしょう。
自治体の住民の理解
スマート自治体の推進には、自治体の住民の理解と協力が必要です。とくに高齢者の場合、デジタルデバイスの導入に対して抵抗感を持つ方も少なくありません。
定期的な説明会の開催により、デジタル化の目的と住民にとってのメリットを丁寧に説明することで、導入に対して良い理解を得られるでしょう。
また、自治体として高齢者向けのスマートフォン教室や、オンライン申請体験会などを開催し、実際に体験してもらうことも重要です。住民のデジタルデバイスに対して抵抗感が軽減され、導入しやすくなるでしょう。
スマート自治体を目指すために活用したいBPOとは
BPOとはビジネスプロセスアウトソーシングの略で、業務プロセスの一部や全体を外部企業に委託し、専門的なノウハウとリソースを活用する方法です。
単純な作業の外注とは異なり、業務プロセス全体の設計から運用まで、専門業者のノウハウと技術力を活用できる点が特徴です。
また、スマート自治体を推進したいものの、内部のリソースや専門知識が限られている自治体にとって、BPOは有効な手段といえます。データ入力といったノンコア業務にBPOを導入することで、住民サービスの向上に多くの時間と人材を確保できるでしょう。
スマート自治体への推進をしたいけれど、通常業務で時間がないと悩んでいる自治体の担当者におすすめのサービスです。
スマート自治体にBPOがおすすめな理由
ここでは、スマート自治体の推進にBPOがおすすめな理由を解説します。
- 業務フローの可視化ができるためスマート自治体の促進につながる
- 職員の業務負担軽減につながる
- 変化するニーズに合わせた対応ができる
BPOをうまく活用することで、自治体業務の効率化を図れるため、スマート自治体への転換をより円滑に進められるでしょう。
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業務フローの可視化ができるためスマート自治体の促進につながる
BPO導入の過程では、委託作業を適切に遂行するため、詳細な現状調査を通じて業務フローの可視化と標準化を実施します。
この可視化プロセスは、スマート自治体実現に向けたDX化においても不可欠な工程であり、BPO導入がDX推進のトリガーとしての役割を果たします。
これまで、特定の職員しか知らなかった業務ノウハウがあり属人化していましたが、明文化されることで、その業務は誰でも行うことが可能となりました。組織全体で業務が標準化されると、共有可能な「財産」となり、業務効率化の向上につながるでしょう。
BPO事業者の客観的な視点による業務分析は、内部では気づきにくかった改善点の発見にもつながり、効率的な業務基盤を構築できます。
職員の業務負担軽減につながる
厚生労働省の統計によると、平成6年に約328万人存在した地方自治体職員は、令和4年時点で約280万人まで減少しており、深刻な人材不足が発生しています。
この労働人口の減少により、個々の職員が担当する業務が増えてしまい、本来注力すべきコア業務に十分な時間を割けない状況が起きています。
BPOを導入すれば、定型的で大量処理が必要なノンコア業務を外部の専門チームへ委託でき、職員は住民対応や政策立案などの付加価値の高い業務へ集中して取り組むことが可能です。
参考: 図表1-2-8 地方公共団体の総職員数の推移|令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会-|厚生労働省
変化するニーズに合わせた対応ができる
経済産業省が「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」を発表して以降、自治体もDXを活用した業務効率化が課題となりました。
しかし、自治体の中にはDX導入のための時間や知識が不足している場合があります。専門性の高い人材の採用は容易ではなく、採用や育成にはコストと時間を要します。
BPOを活用することで、IT知識が豊富な専門家を必要なタイミングで、必要な人数を確保できるのが魅力です。また繁忙期で特定の期間だけ人材が必要な場合でも、ニーズにあわせた依頼が可能です。
自治体でBPOを導入した実際の事例を紹介
ここでは、実際にBPOを活用した官公庁の導入例を紹介します。
これまでは、行政の事務手続きを各自治体や部門が個別に対応していたため、現場職員への負荷増大が問題視されていました。
また、各区役所がそれぞれ異なるITサービスを導入しており、業務進捗の連携が困難であったため、パーソルビジネスプロセスデザインに改善の依頼をいただきました。
パーソルビジネスプロセスデザインは、解決策として以下の2点を実施します。
- 行政手続きの事務センターを立ち上げ、業務を一括管理
- オペレーションデザインチームの配置と適切なICT化の推進
取り組みの結果、職員の業務負担が削減され、業務効率化や住民サービスの満足度向上にもつながったと、喜ばしいご報告をいただきました。
公共BPOサービスについて、以下のリンクから資料がダウンロードできます。
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行政機関や自治体、学校法人のご担当者さまへ、公共BPOサービスをご紹介します。自治体のフロントヤード改革・バックヤード改革を総合的にサポートします。学校法人では奨学金対応をはじめとする大学事務・窓口対応でご支援しています。
スマート自治体でBPOを導入する際の注意点
ここでは、スマート自治体でBPOを導入する際の注意点について解説します。
- 導入目的を明確にする
- 現状の課題を明確にする
BPO導入の際の注意点を理解していないと、期待した効果が得られない可能性があります。
BPOを効果的に活用し、スマート自治体を成功させるには、注意点と対策をしっかりと把握しておくことが大切です。
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導入目的を明確にする
まずはBPOの導入目的を明確にしましょう。導入目的があいまいなまま進めると、適切な事業者を選定できないだけでなく、期待した効果が得られず、かえって業務の混乱や追加コストの発生につながるおそれがあります。
複数の目的が存在する場合は、優先順位を明確に設定してからBPO事業者との契約を検討することで、より効果を得やすくなるでしょう。
自治体が抱える課題や委託したい業務内容に応じて、BPOの条件を詳細に調整し、最適な事業者を選定することが重要です。
現状の課題を明確にする
効果的なBPO導入を実現するためには、自治体が現在直面している課題や問題点を詳細に洗い出し、整理することが大切です。課題を明確にすることで、BPO導入の目的もより定まりやすくなります。
課題の洗い出しでは、以下の観点で問題が起きていないかを確認しましょう。
- 業務フローの非効率性
- 職員のスキル不足
- システムの老朽化
- 住民からの苦情内容
問題点をしっかり見極めることが、スムーズなBPO導入とスマート自治体化の成功につながります。
スマート自治体の実現にはパーソルビジネスプロセスデザインにご相談ください
スマート自治体の実現には、デジタル技術の活用や業務改革だけでなく、住民の理解と職員の育成が重要です。
AIやRPAの導入を急ぐあまり、組織全体の準備が整っていないと、想定していた効果を十分に引き出せない可能性があります。BPOの活用は、自治体のリソース不足を補い、職員が本来の住民サービスに集中できる体制を整える有効な手段です。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、豊富な実績とノウハウをもとに、お客さまの要望にあわせた、公共BPOサービスを提供しております。自治体職員が担うべきコア業務を最大化するための支援を実施していますので、ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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