BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業界とは
そもそもBPOとは、社内の業務プロセスを一括で外部企業に委託する仕組みのことです。
自分たちの専門的な知識・技術を用いて他社のサービスをサポートするビジネスモデルがBPO業界です。
BPOできる業務の具体例をあげると、Web開発や総務、コールセンターなどのカスタマーサービスなどがあげられます。
BPOには大きく分けてIT系と非IT系の2種類に分類されています。
IT系の例
- プログラミング
- Web制作
- インフラ保守 など
非IT系の例
- コールセンター
- 営業
- 総務(事務) など
BPOについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスとは?企業がBPOに取り組むべき理由を解説」
BPO業界の市場規模と動向
BPO業界の市場規模は、年々増加傾向にあります。その理由としては、以下の2点が考えられるでしょう。
- 少子高齢化にともなう人材不足
- 専門知識が求められる事業の増加
現在の日本は少子高齢化によって労働人口が減少しつつあります。パーソル総合研究所の推測によると、2030年には7,073万人の労働需要に対して6,429万人しか労働力を供給できず、644万人の人材不足に陥るとされています。
さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)化や経営環境のグローバル化によって、IT技術の専門的な知識やスキルが必要になったことも、BPO業界の市場規模拡大に関係しています。
ここでのDXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスを変革し、日常生活をさらに豊かにしていくことです。
IT系BPOは非IT系BPOよりも専門性の高い業務が多いため、より増加率が高くなると考えられています。
今後のBPO業界の将来性とAIの可能性
人材不足だけでなく労働契約法の改正や働き方改革の推進による影響もあり、BPO業界の市場規模は今後も増加していくでしょう。
内閣府が公表している「令和5年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は令和52年には8,700万人にまで減少すると推測されています。
一方で65歳以上の人口は増加傾向が続き、令和52年には国民の2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上になるという推計が出ています。
つまり2023年現在では少子高齢化が改善される見込みはなく、これからさらに多くの業界で人材不足が課題となる可能性が高いのです。
また、2012年の労働契約法改正によって無期労働契約への転換が定められ、働き方改革では時間外労働の上限が設けられました。
そのためノンコア業務(直接利益を生まない業務)や専門知識が必要な業務を外部委託するBPOは、企業の業務効率化においてより重要視されると考えられます。
参考:令和5年版高齢社会白書
AIを活用する自動化省人化がどうなるか
AIの進化はすさまじく、すでに一部の業務はAIが実用化されています。
今後さらにAI技術が発展すれば、これまで不可能とされていた高度な業務にも対応できるようになるでしょう。
株式会社野村総合研究所が行った調査(2015年)によると、2025年~2035年には日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボットなどで代替可能となると推測されています。
国内にある601種類の職業のうち、代替できる可能性が高いものとして以下のような職業が挙げられています。
- IC生産オペレーター
- 会計監査係員
- CADオペレーター
- 警備員
- タクシー運転者
- 電車の車掌
- 事務員
など
参考:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に|株式会社野村総合研究所
世界・日本におけるBPO業界に対する認識の違い
経済産業省が発表している『ビジネス支援サービスの活用』によると、世界的に見ればBPO業界は年平均5.1%の成長が見込めるとされています。
その一方で、日本では年平均3.0%にとどまっています。
まだ日本におけるBPO業界の市場規模は小さく、成長を促すことが重要だといえるでしょう。
参考:「ビジネス支援サービスの活用」(経済産業省)
BPOに対する意識の違い
『ビジネス支援サービスの活用』(経済産業省)より、“BPOへ期待する効果”について注目してみると、アメリカに比べて日本は戦略的なBPO利用の意識が低いことがわかります。
日本は「経営資源のコア業務への集中」「業務拡大への柔軟な対応」と答えた割合が、アメリカよりも10%以上低くなっていました。その一方で「コスト削減」「業務の効率化」に関しては、アメリカよりも日本のほうが高くなっています。
多くの日本企業ではBPOをコスト削減の手段ととらえているため、戦略的なBPO利用の意識が低く、適切な活用ができていない可能性があるでしょう。
参考:「ビジネス支援サービスの活用」(経済産業省)
BPO業界の市場規模の違い
グローバルトップに位置するアウトソーシングサービスプロバイダーおよびアドバイザーを選出し評価した、「2022 Global Outsourcing 100」に選ばれた日本の事業者はごく少数でした。
それだけ他国ではBPO業界の規模が大きく、著しく成長しているといえます。日本の事業者が選ばれていない理由には、BPOを活用するメリットやBPO事業者に関する情報が国内であまり広まっていないことも関係していると考えられます。
参考:2022 Global Outsourcing 100|IAOP(International Association of Outsourcing Professionals)
日本におけるBPO業界の課題点
それでは最後に、現在の日本のBPO業界にはどのような課題があるのかについて解説します。
人材の処遇に対する対応の難しさ
日本は欧米よりも雇用・解雇に関する法律の制限が厳しいため、企業がBPOを実施したくても人材整理が思うようにできず、結果的にBPOの活用に至らないケースがあるのが現状です。
労働契約法第16条では、解雇に関して以下のように定めています。
第三章 労働契約の継続及び終了
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用:労働契約法|e-Gov法令検索
BPOを導入した場合、これまでその業務を担当していた社員の仕事が奪われることになります。社内で配置換えをすることは可能ですが、解雇理由としては不合理であるため人材の処遇が難しくなるのです。
BPO事業者への信頼の低さ
自社の業務プロセスの一部を外部へアウトソーシングするため、BPO事業者との信頼関係が重要です。しかしその一方で、BPO事業者を信頼できないと感じている企業が多いことが課題の一つになっています。
信頼できないと感じる理由は、BPO事業者に関する情報の不足。実際に日本企業の多くは、BPO事業者の能力を客観的に評価できるような仕組みを求めています。
まとめ
少子高齢化にともなう人材不足やIT技術の専門知識が求められる事業の増加などによって、BPO業界の市場規模は今後も増えていくと考えられます。AI技術が発展すれば、より多くの業務を外部へ委託できるようになり、事業拡大へとつなげられるでしょう。
弊社でも、BPOサービスを行っております。「自社に適したサービスとは何だろう」「BPOをどのように活用したらいいのかわからない」という方はお気軽にご相談ください。