ヘルプデスクアウトソーシングとは
ヘルプデスクアウトソーシングとは、企業の社内外から寄せられるITシステムに関する問い合わせやトラブル対応を、外部の専門事業者に委託する手法です。
単なる「電話を取る人の外注」ではなく、ITサポート体制の抜本的な改善策として位置づけられています。
| 期待される効果 | 内容 |
|---|---|
| 情シスの負荷軽減 | 問い合わせ対応から情報システム部門を解放 |
| 応対品質の標準化 | 専門事業者のノウハウで対応レベルを均一化 |
| 問い合わせ削減 | ナレッジ蓄積により根本的な問い合わせ数を低減 |
具体的に委託できる業務は、以下のように多岐にわたります。
| カテゴリ | 業務内容 |
|---|---|
| 問い合わせ対応 | PC操作・ネットワーク接続に関する従業員からの問い合わせ |
| SaaS操作案内 | Microsoft 365をはじめとする各種SaaSの操作サポート |
| アカウント管理 | アカウント発行・権限の付与や変更 |
| キッティング | PC・スマートフォンの初期設定 |
| IT資産管理 | IT資産管理台帳の更新・メンテナンス |
| ナレッジ運用 | FAQ・ナレッジベースの構築・運用 |
ヘルプデスクとカスタマーサポート、サービスデスクの違い
ヘルプデスクと混同されやすい言葉に「カスタマーサポート」や「サービスデスク」があります。カスタマーサポートは広い意味で「顧客の困りごと」全般に対応し、ヘルプデスクは顧客のほか社内を対象として「緊急性や重要度の高いトラブル」に対応しています。
サービスデスクはより包括的で戦略的な概念で、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)ではユーザーとITサービスプロバイダ間の「単一の窓口(SPOC:Single Point of Contact)」として定義されており、ヘルプデスクの機能を包含した上で広範な業務を能動的に担います。
| - | ヘルプデスク | サービスデスク | カスタマーサポート |
|---|---|---|---|
| 対象 | 社内+顧客 | 社内+顧客 | 顧客 |
| 主な役割 | 問い合わせ・トラブルの事後対応 | ITサービス全体の統合管理・改善 | 「顧客の困った」全般への対応 |
| 対応範囲 | インシデント対応が中心 | インシデント+サービス要求+変更管理+改善 | 製品・サービスに関する問い合わせ全般 |
| 姿勢 | 受動的 (問い合わせが来てから対応) |
能動的 (傾向分析から予防・改善まで) |
受動的 (問い合わせが来てから対応) |
| 品質管理 | 個別対応の品質を確保 | SLAに基づく組織的な品質統制 | 個別対応の品質を確保 |
ヘルプデスクとサービスデスクの役割
ヘルプデスクという名称を使っていない場合もありますが、企業の情報システム部門には、ファックスやプリンタの複合機の整備から、パソコン、ネットワーク機器、業務アプリケーションなどの故障やトラブル、使い方の問い合わせ対応まで、さまざまなIT機器をサポートする業務があります。
ヘルプデスクは主に「発生したトラブルの迅速な解決」や「個別の問い合わせへの回答」を中心とする受動的な窓口です。PCが起動しない、特定のアプリケーションでエラーが出た、といったインシデントを速やかに切り分け、ユーザーの業務停止時間を最小限に抑えることに特化しています。
社内のシステムが故障などによって使用できない状態になってしまうと、業務が滞るだけでなく顧客対応にも影響を与えてしまいます。ビジネスチャンスを失ってしまうばかりか、顧客の信頼までも失いかねません。したがってヘルプデスクは、単に故障や修理の担当部署ではなく、間接的に企業の信頼性を維持している業務ともいえるのです。
一方、サービスデスクはこうしたヘルプデスクの機能を包含した上で、インシデントの傾向分析に基づく再発防止策の立案や、SLA(サービスレベル合意)に基づく応答時間・解決率の継続的なモニタリングなど、ITサービス全体の品質を組織的に統制する役割を担います。
サービスデスクが担う業務領域
| 業務領域 | 内容 |
|---|---|
| サービス要求管理 | 新規システムの利用申請やアカウント発行の受付 |
| インシデント管理 | 障害発生時の記録・追跡・エスカレーション |
| SLA監視 | 応答時間や解決率の継続的なモニタリング |
| 改善活動 | インシデントの傾向分析に基づく再発防止策の立案 |
ヘルプデスクアウトソーシングの業務範囲
IT関連のヘルプデスクは、以下の2つの領域で契約を交わし、アウトソーシング(外注)されています。
- 社内向け:IT関連の問い合わせやトラブルなどへの障害対応
- 社外向け:ユーザー向けのカスタマーサポート
社内の問い合わせやトラブル発生などの障害対応としては、ベンダーが設置しているヘルプデスクを利用する方法が代表的です。これは、一般的にはシステム導入・運用・保守を行っているシステムインテグレーターの窓口に問い合わせるケースが多いでしょう。ただし、緊急時の対応や頻度によっては、情シス部門内に常駐スタッフを配置したほうが安心といえます。
具体的に委託できる業務として、主に以下が挙げられます。
| インシデント対応 | 問い合わせ対応、各種申請対応、ナレッジやFAQの管理、障害情報・ユーザーへのアナウンス、ドキュメントの作成 |
|---|---|
| リクエスト対応 | アカウントやパスワードの作成・更新・削除、各種機器のキッティング作業や設置 |
| 資産管理 | ハード・ソフトウェア管理、アカウントやライセンスの管理 |
| 機器管理 | ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークの動作確認 |
| 各種イベント対応 | 館内停電時の対応、PC・モバイル機器準備 |
| 監視 | ネットワーク監視、サーバーの動的・静的監視 |
テレワークの浸透や、個人の端末を会社の業務で利用する、いわゆる「BYOD(Bring Your Own Device)」の拡大により、セキュリティが以前にも増して重視されるようになりました。高いレベルのセキュリティを徹底する企業では、セキュリティ対応の専門組織を設けているほどです。このような組織自体をアウトソーシングして、ヘルプデスクとして外部に設置する場合も見受けられます。
社外ユーザー向けのカスタマーサポート業務の例としては、製品やソリューションを提供している企業がユーザー向けに開設している窓口を社外にアウトソーシングするケースです。総合的な問い合わせ受付やテクニカルサポートといった業務があり、以下のようなさまざまな形式でサービスが提供されています。
- 24時間365日対応
- 夜間対応
- 休日対応
- ハードウェアの修理や点検の受付 など
ヘルプデスクの設置形態には、発注先の企業に常駐して社内に開設するオンサイト型と、外部のコンタクトセンターなどを利用するオフサイト型、オンサイトとオフサイトを組み合わせたハイブリッド型の3種類があります。
オンサイト型
オンサイト型の業務委託は情報共有がしやすく、緊急時にも迅速かつ適切に対応することが可能です。既に企業内にヘルプデスクがあって増員する場合や、少人数のサポート要員を部署に配置するときなどに向いています。
オフサイト型
オフサイト型の場合は、ヘルプデスクの座席などのスペースや機材を確保する必要がありません。頻繁に問い合わせがあり、常時複数のオペレーターが対応しなければならないヘルプデスクのアウトソーシングとして適しています。
ハイブリッド型
ハイブリッド型は、顧客先で対応するメンバーと外部のオフサイト拠点で対応するメンバーに分かれて業務を行う形式です。一部の業務はアウトソーシング事業者の拠点でコストを抑えながら運営し、急を要する場合は常駐している担当者が対応するため、コストパフォーマンスの高い業務委託が実現できます。
自社の状況に合わせてオンサイトとオフサイトを柔軟に組み合わせ、最適なコストパフォーマンスと高品質なサポートを実現する専門的なサービスも多数提供されています 。
ヘルプデスクをアウトソーシングするメリット
社内のヘルプデスクをアウトソーシングするメリットとして、情報システム部門の担当者の負荷軽減・問題解決スピードの向上・業務の属人化解消があります。業務委託により得られるメリットについてそれぞれ解説します。
メリット(1)担当者の負荷軽減
社員からの問い合わせや発生したトラブルには、「ID/パスワードを忘れた」などの初歩的なものから、新規採用や異動の際におけるPCのキッティング、サイバー攻撃への対応、内部からの情報漏えいなどリスクの高いものまで、さまざまなものがあります。さらに24時間365日対応、あるいは夜間の対応まで社内情シス部門のスタッフで行おうとすると、確実にその他の業務を圧迫してしまいます。
ヘルプデスクアウトソーシングを活用してこのような負荷を軽減することによって、社内の情報システム部門のスタッフはインフラ整備・セキュリティ対策・システム開発などのコア業務や戦略的なDX推進に集中して、生産性を向上させることが可能になります。
ITシステム(ツール)のヘルプデスクは、アプリケーション、ネットワーク、データベースなど扱う内容に合わせて、特定の認定技術者や有資格者を担当者として採用するのが理想といえます。しかし、社内で人材育成しようとすると時間もコストもかかります。そのため、高度なスキルを持つスタッフで対応することができる企業にアウトソーシングすることで、難しい課題の解決が可能になり、ヘルプデスクの信頼性を高めることにもつながるのです。
メリット(2)問題解決スピードの向上
専門的な知識を持つ業者に自社のヘルプデスクを業務委託することで、ユーザーの問題解決スピードを速めることができます。経験豊富な担当者がヘルプデスク対応するのはもちろん、ナレッジマネジメントやFAQサイトの公開など、他社の業務で培ったノウハウを活用できるため、問題解決の時間短縮が期待できるでしょう。
ナレッジマネジメントとは、組織内の知識や情報を効率的に収集、整理、共有、活用するプロセスを指します。特にヘルプデスクでは、過去のトラブルシューティングや解決方法、FAQなどの情報を持つことは、迅速かつ正確な対応に不可欠です。
ヘルプデスクでは、日常業務の中でさまざまな問題に対応し、多くの情報や知識が生成されます。これらの知識や情報を体系的に管理し、活用する方法として、ナレッジマネジメントが非常に重要となります。ナレッジマネジメントの効果的な活用により、ヘルプデスクのパフォーマンス向上が期待できます。
ナレッジマネジメントの実践において、特に注目される方法論にKCS(Knowledge-Centered Service)があります。KCSは、問題解決の各ステップでナレッジを活用し、解決と同時にナレッジを更新・改善していく手法です。KCSの導入により、ナレッジが常に最新かつ正確な状態を保ちやすくなります。
昨今ではバックオフィス業務のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を得意とするアウトソーシング企業も多く、ヘルプデスクの企画・設計・運用から品質改善までのプロセスを一貫して任せることが可能になってきました。単なる効率化や生産性の向上だけでなく、競争力を高めることや企業の提供する価値を向上させることに貢献できる委託業者も増えています。よりアウトソーシングの効果を高めたい場合は、KCS運用を得意とするアウトソーシング企業に運用してもらうのがおすすめです。
メリット(3)業務の属人化解消
情シス部門ではソフトウェアやネットワークなど専門的な知識が求められるため、難易度の高い質問を受けた際に新人では回答できない場合も多くあります。そのため、問い合わせ対応がベテランに偏ってしまう”属人化”が起こりやすくなっています。
業務が属人化しているとベテランの退職や異動があった場合に、難易度の高い質問へ回答できる人がいないという状況になりかねません。業務委託をすればヘルプデスク対応を任せられるため、属人化は解消できるでしょう。
安定した運用体制の整備や業務フローの構築、マニュアルの整備をしてもらうことで、委託業者へのブラックボックス化も防ぐことができます。
また、属人化を解消しブラックボックス化を防ぐためには、委託先との連携に加えて 、自社側でもITサポートの適切な役割分担や体制構築の基本を理解しておくことも大切です 。
メリット(4)専門知識・対応ノウハウの蓄積
外部のプロフェッショナルチームが運営するヘルプデスクには、幅広い業界知識と深い専門的知識が蓄積されています。これにより、複雑な問題に対しても効果的な解決策を提供でき、企業内で共有されるノウハウの蓄積が進みます。例えば、迅速な対応が求められるITトラブルでは、技術に詳しい専門家が効率的に対応し、その知識を企業内に共有・蓄積しやすくなります。
また、アウトソーシング事業者は、さまざまな企業からの問い合わせ対応を通じて、膨大な対応ノウハウを蓄積しています。これにより、企業は同じ問題に直面した際に迅速に対応できるようになり、新たな問題に対する柔軟な対応力も高めることが期待できます。この対応ノウハウが企業内に蓄積されることで、問題解決能力が向上します。
メリット(5)コスト削減
ヘルプデスクを自社運営する場合、インフラの整備や人材の雇用など多額の固定費が発生します。アウトソーシングを利用することで、これらの固定費を変動費化できる可能性があります。これにより、必要なサポートの規模に応じてコストを調整することができ、無駄な出費を抑えることが期待できます。
また、ヘルプデスクの運営には専門知識を持つスタッフの雇用が必要ですが、これには多大な人件費がかかります。
アウトソーシングを利用することで、外部の専門チームが対応するため、自社の人員コストを大幅に削減し、さらに繁閑に合わせて人員を配置することで、人件費の最適化が図れます。また、採用やトレーニングにかかる費用も抑えることができます。これらにより、コストの最適化が見込めます。
ヘルプデスクをアウトソーシングするデメリット
社内および社外のヘルプデスクともにアウトソーシングのデメリットとしては「社内に知識(ナレッジ)が蓄積されないこと」や「情報漏えいのリスクがあること」「期待する効果が得られないこと」などが挙げられます。
これらのデメリットは、委託先の選定を誤ってしまった場合に起こり得ます。デメリットを正しく理解し、自社に合った委託先を選定する際の参考にしてください。
デメリット(1)ナレッジの蓄積がされない
委託業者を利用する場合、契約状況によっては、企業内にナレッジが適切に蓄積されない可能性があります。業務の多くが外部にアウトソースされると、日々の対応で得られた重要な知識や情報が企業内に戻ってこないことがあり、その結果、企業内での知識蓄積が不足し、将来的な問題解決能力が低下するリスクがあります。
ナレッジ蓄積の不足を防ぐためには、どのような問い合わせが発生しどう解決されたのか、社内でも一元的に把握・管理する仕組みを取り入れることが有効な対策となります 。
デメリット(2)情報漏えいのリスクがある
特に情報漏えいには十分に注意する必要があります。ポイントとしては、社内から外部にヘルプデスクのプロセス全体をアウトソーシングしている場合でも、委託先企業の実態を把握しながら役割を明確に分けておくことです。加えて、外注先の技術と業務を把握し、管理すべき要点を明確に定め、外部に開示する必要のない機密情報はシステム上で外部からのアクセスを遮断するなどの対応も必要です。
また、業務委託契約書の内容や品質管理についても十分な検討が必要です。
デメリット(3)品質低下の恐れがある
ヘルプデスクを外部委託する場合、かえって応対品質が低下するリスクがあります。主な要因として、コミュニケーション不足や外部業者の経験不足が挙げられます。外部スタッフが企業特有の業務内容や製品について十分な知識を持たない場合、対応が不一致になり、サービス品質が低下する可能性があります。また、緊急時の対応が遅れることで、顧客満足度が低下するリスクもあります。さらに、一貫した対応の欠如や企業のブランド理解不足により、顧客体験が損なわれることがあります。
これらのリスクを軽減するためには、定期的なコミュニケーション、外部業者へのトレーニング、パフォーマンスのモニタリングが重要です。適切な対策を講じることで、品質低下を防ぎやすくなります。
アウトソーシングを選択する以上、コア業務に注力することが先決です。外部のプロフェッショナルに業務委託して社内をスリム化することに意義があるのです。ただ丸投げして放置してしまうのではなく、常に委託先事業者と緊密に連絡を取るようにしましょう。
業務委託のデメリットとして重視すべきは知識が蓄積されないことよりもリスクマネジメントであり、人的要因による漏えいを防ぐための対策としてシステム上で役割と権限を設定して物理的に個人情報を守ることも重要です。
ヘルプデスクのアウトソーシングの費用相場と料金体系
ヘルプデスクをアウトソーシング・業務委託する際にかかる費用は、問い合わせ件数、内容、技術的な難易度などによって大きく変わります。一般的に一時的な問い合わせ対応とテクニカルサポートであれば、月間の費用相場はおよそ10万~150万程度が目安とされています。故障した機材の修理が必要になる場合には、別途追加費用も必要になる可能性があります。
月額費用も固定制や従量課金制などの料金体系によって異なります。業務の繁忙期、製品やサービスのリリース時期によって問い合わせ件数やサポート需要が大きく変動する場合は、従量課金制のヘルプデスクのアウトソーシングを利用すると良いでしょう。
また、費用を左右する主な要因として、月額固定制・従量課金制といった基本体系の違いに加え、専任体制の有無や対応時間帯(24時間365日か否か)の設計が挙げられます。以下では、それぞれの料金体系と費用変動の構造を解説します。
料金体系(1)固定制
固定制の料金体系では、ヘルプデスクのサービスに対して一定の月額料金が設定されます。この方式の主な利点は、コストが予測しやすく、企業の予算計画が立てやすいことです。定額料金により、予期しない費用が発生するリスクが少なく、財務管理が容易になります。
また、一定の料金でサービスを利用できるため、使用量が多い月でも追加料金を心配する必要がありません。
しかし、一方で、利用量が少ない場合でも固定料金を支払わなければならないため、コスト効率が悪くなる場合があります。固定制は、ヘルプデスクの利用頻度が高い企業や、安定したサポートを必要とする企業に特に適しています。業者と事前に範囲やサービスレベルを明確にしておくことが重要です。
料金体系(2)従量課金制
従量課金制の料金体系では、ヘルプデスクのサービス利用量に応じて料金が変動します。この方式の利点は、使用量に応じて正確に料金が反映されるため、コストを効率的に管理できることです。実際に利用した分だけ支払うため、サービスの利用が少ない場合に大幅なコスト削減が期待できます。また、企業の成長や季節変動に対応しやすいため、柔軟な料金管理が可能です。
しかし、利用が集中する月には予期せぬ高額な料金が発生するリスクがあるため、予算管理が難しくなることがあります。従量課金制は、ヘルプデスクの利用が変動する企業や、経費を厳密に管理したい企業に特に適しています。利用前に詳細な料金体系を確認し、上限設定や予算管理ツールを併用すると良いでしょう。
比較検討として多いパターンは「アルバイトや派遣社員を雇用してヘルプデスクを運用できないか」というケースです。情報システム部門の空席に3人程度のヘルプデスク要員を追加し、問い合わせがないときはバックアップや解析、メンテナンスなどの業務を兼務させる程度の状況であれば検討の余地があるかもしれません。
しかし、アルバイトや派遣社員を採用するためのコストや時間、教育の負担を考慮すると、アウトソーシングを利用したほうが効率的であり、高品質なサポートを実現できるでしょう。このあたりはケース・バイ・ケースで検討を進めていく必要があるといえます。
専任体制型の費用相場
ヘルプデスクの運用体制は大きく「シェアード(共有)型」と「専任(デディケイテッド)型」の2つに分かれます。
| 専任体制型 | ・自社専用のオペレーター・SV(スーパーバイザー)・管理者を配置する方式 ・自社固有の基幹システムや独自ワークフローに完全に適合した、きめ細かい対応が可能 |
|---|---|
| シェアード型 | ・ベンダーの同一チームが複数企業の問い合わせを兼務する方式 ・待機時間を他社対応で埋められるためコストを抑えやすい反面、対応可能な業務は汎用的な内容に限られることが多くなる |
専任体制型では、業務の引き継ぎ・要件定義・ナレッジ文書化のための初期構築費用(イニシャルコスト)が発生し、月額の運用費用も人員数に応じて数百万円規模に及ぶケースが一般的です。
専任体制型は、コスト削減を主目的とするアプローチではなく、高品質なITサポート基盤を構築して社内エンジニアをコア業務へ振り向けるための「戦略的投資」として位置づけるべきでしょう。
24時間365日対応で費用が変わる理由
グローバル展開企業や夜間シフトを伴う製造業・医療機関などでは、24時間365日対応が必須要件となります。
平日日中(例:9時〜18時)の標準対応と比較して費用が大幅に上昇するのは、単に「営業時間が延びる」からではなく、運用体制そのものを根本から再設計する必要があるためです。
主な理由は以下のとおりです。
| 深夜割増賃金・休日出勤手当 | 労働基準法に基づく人件費の上乗せ |
|---|---|
| 複数シフト体制の構築 | 長時間連続勤務を防ぐための交代制により、必要な総要員数が増加 |
| 高スキル管理者の夜間配置 | 深夜帯は問い合わせ数が少ない反面、システム障害発生時の影響が大きく、一次切り分けから緊急エスカレーションまで対応できる管理者が必要 |
| BCP(事業継続計画)体制の維持コスト | 自然災害時にも対応を継続するための冗長化構成 |
24時間対応は「受付時間の延長」ではなく、シフト・監視・エスカレーション設計を含む運用構造の変革であり、それに伴って固定費が構造的に引き上がるものと理解しておく必要があります。
費用が変わる主な要因
ヘルプデスクアウトソーシングの見積もり額は、以下の変数の掛け合わせで決まります。相見積もりを取得した際にベンダー間で金額に開きが出た場合は、どの項目で要件解釈に差分があるかを確認しましょう。
| 費用変動要因 | 内容(例) | 費用への影響 |
|---|---|---|
| コールボリューム | 月間の想定入電数・メール数・チャット数 | 件数増で人員・ライセンスが増加 |
| 対応時間と曜日 | 平日日中のみ/夜間延長/24時間365日 | 時間帯拡大で人件費・シフト管理費増 |
| 対応チャネルの多様性 | 電話+メールのみ/チャット・ITSMツール含む | マルチタスク対応で単価上昇 |
| 対応範囲の深さ | FAQ読み上げ(Tier 1)/リモート操作・監視(Tier 2) | 高度対応はスキル単価が上昇 |
| SLAの水準 | 応答率80%/20秒以内、一次解決率70%以上 など | 厳格なSLAは人員の余裕配置が必要 |
| オンサイト対応の有無 | リモートのみ/現地駆けつけ・キッティング含む | 物理対応は交通費・常駐費が加算 |
| 多言語対応 | 日本語のみ/英語・中国語などのバイリンガル | 語学スキル人材は採用コスト高 |
| ナレッジ整備状況 | 既存FAQの移管のみ/ゼロからの構築・KCS運用 | 新規構築は初期費用・工数が増大 |
これらの要因を事前に整理しておくことで、ベンダーからの見積もり精度が格段に向上し、無駄なコストを省いた最適プランの策定につながります。
見積もり前に整理すべき項目
ベンダーへの問い合わせやRFP提示をスムーズに進め、精度の高い提案を引き出すには、以下の項目を事前に社内で整理しておくことが重要です。
| 対象ユーザーの範囲と規模 | サポート対象の従業員数、拠点数(国内外)、デバイス総数 |
|---|---|
| 対象ITシステム・機器のリスト | PCのOS比率、利用中のグループウェア(Microsoft 365・Google Workspaceなど)、業務用SaaS、社内独自システム |
| 現在の月間問い合わせ件数と繁閑の波 | 入社・異動の多い4月やシステム更新時期など、呼量が急増する時期の有無 |
| 希望する対応チャネルと対応時間帯 | 電話・メール・チャット・チケット管理のうち必要なもの |
| 社内の現状課題 | 情シスの残業常態化、対応の属人化、古いFAQの放置など、アウトソーシングで解決したい「ペインポイント」 |
| 責任分界点の想定 | 例)障害通知はベンダー、復旧判断は自社情シス/権限付与の承認は社内、システム上の作業はベンダー |
これらを整理しておけば、ベンダー側も「シェアード型で十分か」「専任型で独自SLAを組むべきか」を的確に判断でき、自社に最適な運用プランの策定につながります。まずは現状の棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。
自社に最適な委託先を選ぶポイント
ポイント(1)専門知識と経験
ヘルプデスクの委託先を選定する際、まず確認すべきポイントは、その業者が持つ専門知識と経験です。テクニカルサポートの分野において、十分な経験を有しているかどうか、業界特有の知識を持っているかを評価します。これは、問題解決のスピードと精度に大きく影響します。また、過去の実績やケーススタディを参考にし、同様の業種や規模の企業に対するサポート経験があるかを確認することも重要です。
専門知識と経験は、サポートの質を高めるだけでなく、効率的な問題解決と顧客満足度の向上にもつながります。依頼前に技術的なアセスメントやインタビューを実施し、ミスマッチのない選定を行いましょう。
ポイント(2)サービスレベルアグリーメント(SLA)
サービスレベルアグリーメント(SLA)は、委託先のパフォーマンス基準を明確に定義する契約です。
SLAには、応答時間、解決時間、稼働率、サポート品質などの基準が含まれます。委託先を選ぶ際に、このSLAを確認し、自社のニーズと一致しているかどうかを確かめることが重要です。SLAは、サポートの一貫性と品質を保証するためのものです。具体的な数値目標を設定し、それを業者と共有することで、期待するサービスのレベルを明確にします。もし基準が満たされない場合のペナルティや、定期的なレビューについても記載することが望ましいでしょう。
SLAをしっかりと整備することで、双方の期待値を合わせ、不満や誤解を回避することができます。
ポイント(3)コミュニケーションとレポーティング
効果的なコミュニケーションと定期的なレポーティングは、ヘルプデスクサービスの成功に不可欠です。連絡方法、応答時間、問題解決の進捗状況など、委託先がどのように情報を提供し、報告するかを確認します。定期的なミーティングやレビューセッションを設けて、サービスの状況を評価し、改善点を見つけることも重要です。効果的なレポートにより、サービスのパフォーマンスを評価しやすくなり、委託先との関係を強化することができます。契約前に、コミュニケーションとレポーティングのプロセスを明確にしておくことが重要です。
ポイント(4)セキュリティ対策
委託先のセキュリティ対策は、機密情報を扱う上で非常に重要な選定ポイントです。データ保護のためのポリシー、認証取得状況、ネットワークセキュリティ、物理的セキュリティ対策などを確認します。
また、委託先がどのようにデータ漏えいやサイバー攻撃から保護しているか、インシデント対応プロトコルがあるかも重要です。セキュリティインシデント発生時の報告体制や対応の速さについても確認しましょう。しっかりと監査を行い、セキュリティ対策を厳密に評価することで、安全な環境でのサービス提供を確保しやすくなります。
HDIサポートセンター国際認定・CMBOKは品質を見極める判断材料になる
ヘルプデスクアウトソーシングで発注企業が抱く最大の懸念は、「外部委託による応対品質の低下」と「業務のブラックボックス化」です。
この懸念を客観的に検証する判断材料として、ITサポート業界の国際スタンダードに基づく認定制度「HDIサポートセンター国際認定」と、コンタクトセンターの知識スキル体系「CMBOK」が有効です。
ベンダーの提案書にある「高品質な対応」をそのまま受け取るのではなく、客観的指標を通じて実態を確認することで、導入後の品質リスクを大幅に低減できます。
HDIサポートセンター国際認定はサポート品質を確認する材料になる
HDIが提供する「HDIサポートセンター国際認定(七つ星)」は、サポートセンターの成熟度と品質を示す第三者認証制度です。EFQM(欧州品質管理財団)をベースに設計された国際スタンダードに基づき、以下の8つの要素を一定の基準を満たす必要があります。
効果的要因の5要素
- リーダーシップ
- 従業員管理
- サポート資源
- プロセスと手順
結果の3要素
- 従業員満足
- 顧客満足
- 実行結果
認定プロセスは厳格で、HDI認定を取得・更新し続けている企業は、一時的な応答率の達成にとどまらず、組織ビジョンに基づいた運営戦略とデータ駆動型の改善サイクルが恒常的に機能していることを、国際基準で示していると考えられます。
※参考:HDI-Japan「HDIサポートセンター国際認定(七つ星)」
CMBOKに基づく運営管理・人材育成の考え方
ヘルプデスクの安定稼働と品質向上を支えるもう一つの柱が、一般社団法人日本コンタクトセンター教育検定協会が策定する「CMBOK(コンタクトセンターマネジメント知識スキル体系)」です。
CMBOKは、コンタクトセンターの専門的な職能やコンピテンシーを体系化したもので、属人的な運用を避け、標準化されたプロセスを構築する基盤となります。オペレーター個人の「機転」や「職人技」に依存する運用は脆弱で、離職や異動が発生した途端にサポート品質が大きく低下するリスクを抱えています。CMBOKはこの課題に対する解決策として機能します。
CMBOK Ver.3.0コンピテンシー
| 分野 | 概要 |
|---|---|
| コンタクトセンター戦略(ST) | ビジョンに基づく戦略構築、年次計画、リスク管理 |
| サービスマネジメント(SM) | サービスの価値理解、苦情対応、サービス設計 |
| カスタマーエクスペリエンス(CX) | 顧客体験価値、オムニチャネル対応 |
| CRM戦略の実践(CR) | 顧客関係管理、データ活用 |
| オペレーションマネジメント(OP) | 業務量予測、要員計画、ナレッジ管理、BCP |
| ヒューマンリソースマネジメント(HR) | 採用、トレーニング、評価、定着促進 |
| センターアーキテクチャー(AR) | SLA作成・管理、プロジェクトマネジメント |
| ICTマネジメント(IC) | 情報通信システム選定、情報セキュリティ |
| コンタクトセンターの監査(AU) | プロセス監査、是正活動 |
| 職能スキル(PE) | 論理的思考、問題解決、リーダーシップ |
| PCスキルの基礎(PC) | システム操作、情報検索 |
| 職業人としての資質(PA) | モチベーション、共感力、柔軟性 |
※参考: 一般社団法人日本コンタクトセンター教育検定協会「CMBOKとは | コン検 CONKEN」
CMBOKに準拠した運用が行われている組織では、データに基づいた精緻な業務量予測が実施され、体系的な採用・トレーニングを経てスタッフが配置されます。さらに情報セキュリティマネジメントが確立され、定期的な監査でプロセスの逸脱が是正される仕組みが整っています。こうした標準化された運用基盤を持つ委託先であれば、スタッフの入れ替わりが発生しても品質が属人化せず、高いサービスレベルを長期にわたって維持することが期待できます。
品質を重視するなら認定・運用基準・改善体制を確認する
認定資格の取得は品質の証明の一つですが、それだけで「日々のトラブルが一切発生しない」ことを保証するものではありません。重要なのは、問題発生時の「根本原因の究明」と「再発防止の改善活動」が組織の仕組みとして機能しているかどうかです。
品質を最重要視して委託先を選定するなら、以下のポイントを事前に確認しましょう。
| 確認ポイント | 内容 |
|---|---|
| SLAの具体的な定義方法 | 応答時間・解決率・稼働率の数値目標と、未達時の対応 |
| 月次レポートに基づく改善会議 | 定例会の頻度と内容 |
| ナレッジ運用の実態 | KCS等を用いた未知インシデントのFAQ昇華プロセス |
| 教育・研修体制 | 新人研修の体系性とスキル検証の仕組み |
| 監査の実施状況 | 内部監査・外部監査の頻度と改善アクションの追跡 |
「認定があるか」だけでなく「運用にどう反映されているか」まで踏み込んで確認することです。 これが、品質の高いアウトソーシングを実現する重要なポイントです。
まとめ
ヘルプデスクは、IT関連のトラブル対応や問い合わせを受ける重要な窓口であり、企業の業務効率化と顧客満足度の向上に重要な役割を果たしています。しかし、24時間365日の対応が求められることが多く、内部リソースのみで対応するには大きな負担がかかります。加えて、社内でのナレッジの蓄積や高度な専門スキルの維持には多大な時間とコストが必要です。
そのため、ヘルプデスクの運営をアウトソーシングすることは有効な解決策となります。アウトソーシングによって、専門知識と豊富な経験を持つプロフェッショナルチームが迅速かつ効率的に対応することで、問題解決のスピードや質の向上が期待できます。また、コスト削減やスケーラビリティの向上といった経済的なメリットも享受できます。
アウトソーシングを検討する際は、委託先の専門知識、サービスレベル、柔軟性、コミュニケーション能力、セキュリティ対策などの重要なポイントを適切に評価し、自社のニーズに最も合うパートナーを選ぶことが不可欠です。このようにして、ヘルプデスク業務をアウトソーシングすることで、企業は本来のコア業務に集中し、さらなる成長を目指すことができるでしょう。
【HDI認定】ヘルプデスクのアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
ヘルプデスクのアウトソーシングなら、パーソルビジネスプロセスデザインにお任せください。
ヘルプデスク領域において20年以上の経験とノウハウを有しており、社内外のITヘルプデスクやサービスデスク対応はもちろん、夜間休日の24時間365日対応、英語対応、キッティング、KCSを活用したナレッジマネジメントの導入など、幅広い要望に対応できます。
単なる運用代行(人員の貸し出し)にとどまらず、体制の構築から継続的な改善までを伴走支援するパートナーとして、顧客のビジネスの発展に貢献します。
特徴(1)国際スタンダード(HDI・CMBOK)の高品質
当社はアウトソーシング企業として、HDIの最上位評価である『サポートセンター国際認定(七つ星)』を4期連続で取得しています(2024年9月更新)。
さらに、日々の運営管理や人材育成の基盤としてCMBOKのフレームワークを活用しています。日本コンタクトセンター教育検定協会の定める基準に基づく運営管理と育成体系により、専門スキルを身につけたSV・マネージャーによる安定したSLA達成を支援しています。
徹底した情報セキュリティ管理と業務の可視化による自律的な改善提案サイクルを実装しているため、「外注による品質のブレ」や「業務内容のブラックボックス化」に悩む企業にとって、安心して業務を委ねられるパートナーです。
特徴(2)ナレッジマネジメント(KCS)の実施
KCS(Knowledge Centered Service)により業務を標準化することで、問題解決率の向上や一次対応でのクロージングによるFCR(一次解決率)の向上、エスカレーション案件の削減による業務効率化などを支援します。当社ではこのナレッジマネジメント手法をいち早く取り入れ、2018年10月に国内初となるKCSアワードの認定を取得しており、KCSの先進活用企業として業界をリードしています。
ナレッジデータの蓄積により、問い合わせ対応の効率化だけでなく、利用者の問い合わせ傾向の分析なども可能です。また、人手不足や属人化などの根本的な問題の解決にもつながることが期待できます。
特徴(3)セルフサポートの推進
セルフサポート(チャットボットやFAQの導入)を推進することで、ユーザーの利便性を高め、満足度の向上・利用者の自己解決を支援しており、類似問い合わせの削減を支援しています。
特徴(4)お客様のニーズにあわせてサービスをカスタマイズ
平日のみ、夜間・休日のみ、24時間365日など、お客様のご要望にあわせサポート時間を柔軟にカスタマイズし支援します。
また、多くのバイリンガル案件への対応実績もあり、英語のみ対応や、日本語+英語なの相談にも対応可能です。
長年の運用サポートで培ったノウハウを生かし、お客様のご要望にあわせて、利用者や担当者の工数削減およびコストの低減を支援します。
ヘルプデスクのアウトソーシング活用によって情シス部門がコア業務に注力できた実績や人材研修・センターの運用改善などのご支援実績は多数ありますので、ぜひ下記のサービスページや資料でご覧ください。