少人数チームでも回る情シスの作り方とは? 属人化を解消する標準運用の考え方【イベントレポート】

少人数チームでも回る情シスの作り方とは? 属人化を解消する標準運用の考え方【イベントレポート】

※本記事は、2026年5月15日に開催したウェビナー

少人数チームでも回る情シスに:属人化を解消する標準運用のつくり方

で紹介した内容をもとに再構成しています。


目次

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    なぜ少人数の情シスは属人化してしまうのか

    少人数で運営する情報システム部門(情シス)では、「特定の担当者しか対応できない業務が増えている」「担当者が休むと問い合わせが滞る」といった課題が発生しがちです。

    その結果、「人を増やしたいが増やせない」「引き継ぎがうまくいかない」「新人がなかなか育たない」といった悩みにつながるケースも少なくありません。

    しかし、こうした問題は本当に人手不足だけが原因なのでしょうか。

     

    本記事では、属人化の本質を「人の能力」ではなく、「判断が個人に依存する運用構造」にあると整理しています。少人数でも安定して回る情シスを実現するためには、人に頼るのではなく、判断が組織に残る仕組みを作ることが重要です。

    最初に負荷が集中するのはヘルプデスク

    少人数体制の情シスで、最初に負荷が集中しやすいのが入口であるヘルプデスクです。

    ヘルプデスクは、問い合わせ対応や障害対応、各種申請受付など、あらゆる業務の入口にあたります。そのため、最も問い合わせが集まり、最も多くの判断が発生する場所でもあります。

     

    一方で、現場では日々の問い合わせ対応に追われ、運用改善やナレッジ整備まで手が回らないことも少なくありません。その結果、その都度判断する対応が増え、属人化が進みやすい状態になってしまいます。

    つまり、多くの組織では「最も負荷が高い場所」で「最も属人化しやすい運用」が行われているのです。

    「できる人がいること」ではなく「判断が人に残ること」が問題

    属人化というと、「特定の担当者が優秀だから起こるもの」と考えられがちです。

    しかし、本質的な問題はそこではありません。

    本当に問題なのは、問い合わせ対応の中で行われた判断が、その担当者の経験として終わってしまうことです。

     

    例えば、例外対応の可否や優先順位の判断を行ったとしても、その判断理由や背景が残されていなければ、次回も同じように担当者へ確認しなければなりません。

    過去の対応履歴があったとしても、「なぜそう判断したのか」が共有されていなければ、組織のノウハウにはなりません。その結果、「わかる人に聞く」という運用が繰り返され、属人化が再生産されてしまいます。

    担当者が休むと止まる運用が生まれる理由

    属人化した組織では、担当者がいる間は大きな問題が表面化しないこともあります。

    しかし、休暇や異動、退職といったタイミングで課題は一気に顕在化します。

    なぜなら、判断基準が人に紐づいているためです。担当者の頭の中にしかない知識や経験に依存している状態では、本人が不在になった瞬間に対応品質が下がり、業務が滞ってしまいます。

     

    特に少人数体制では、一人ひとりが担う業務範囲が広いため、その影響はさらに大きくなります。引き継ぎに時間がかかる、新人教育の負荷が増える、対応品質が安定しないといった問題も発生しやすくなります。

    だからこそ必要なのは、「できる人」を増やすことではなく、「誰が対応しても同じ判断ができる状態」を作ることです。

     

    属人化の解消は、人の問題を解決することではありません。判断の置き場を個人から組織へ移し、運用として再現できる仕組みを整えることから始まるのです。

    属人化を解消する鍵は「運用の入口設計」にある

    属人化を解消しようとしたとき、多くの企業がまず取り組むのがFAQやマニュアルの整備です。しかし、ドキュメントを増やしただけでは属人化が解消されないケースも少なくありません。

    その理由は、属人化の原因が情報不足ではなく、「判断が個人に依存していること」にあるためです。

     

    特に少人数の情シスでは、問い合わせ対応の入口であるヘルプデスクに業務や判断が集中しやすくなります。その場の経験や知識を頼りに対応する状態が続くと、判断基準は担当者ごとに異なり、対応品質にもばらつきが生まれます。

    属人化を解消するために重要なのは、ナレッジを増やすことそのものではなく、問い合わせ対応の入口で発生する判断を標準化し、運用として再現できる状態を作ることです。

    FAQがあっても属人化がなくならない理由

    「FAQは整備しているのに問い合わせが減らない」

    「ナレッジはあるのに活用されない」。

    こうした悩みは、多くの情シスで共通して見られます。

    その背景には、判断の基準が依然として担当者の中に残っているという問題があります。過去の対応履歴やFAQが存在していても、「どの情報を参照すればよいのか」「このケースに当てはまるのか」を毎回人が判断している状態では、結局“わかる人”への相談が発生します。

     

    さらに、「検索して探すより聞いた方が早い」という認識が定着すると、ナレッジは参照されなくなり、更新も進まなくなります。その結果、同じ問い合わせが何度も発生し、同じ担当者へ相談が集中するという悪循環が生まれてしまいます。

    つまり、FAQが機能しないのは量が足りないからではありません。判断の置き場が人のままになっていることこそが、本質的な課題なのです。

    判断の置き場を人からプロセスへ移す

    属人化を防ぐためには、判断を担当者の経験や勘に委ねるのではなく、業務プロセスの中に組み込む必要があります。

    「これは例外対応なのか」という判断はエスカレーション条件として定義し、「どの問い合わせを優先するのか」は分類や影響度に基づいて判断する。「対応してよいかどうか」は承認フローで決めるなど、判断基準をルールや手順として整理する考え方です。

    こうした状態が実現できれば、担当者が変わったとしても同じ基準で対応できるようになります。誰が対応するかによって結果が変わるのではなく、プロセスに従って判断できるようになるためです。

    属人化を解消する第一歩は、「誰が判断するか」ではなく、「どう判断するか」を設計することにあります。

    問い合わせを型化することで誰でも対応できる状態を作る

    判断を標準化するためには、問い合わせ対応そのものを型として整理することも重要です。

    属人化が進んでいる現場では、問い合わせのたびに担当者がゼロから考えています。しかし実際には、多くの問い合わせは一定のパターンに分類することが可能です。

     

    例えば、「VPNにつながらない」という問い合わせであれば、

    ①    ネットワーク関連の問い合わせとして分類する

    ②    初期確認を行う

    ③    再接続を試す

    ④    条件に応じてエスカレーションする

    といった対応フローを事前に決めておくことができます。

     

    こうした型が整備されることで、担当者は毎回ゼロから考える必要がなくなります。

    また、対応方法だけではなく判断基準もあわせて整理されるため、経験の浅い担当者でも一定品質の対応ができるようになります。

    少人数で運営する情シスに必要なのは、一部の担当者へ依存することではありません。問い合わせ対応を型化し、判断を仕組みとして残すことこそが、止まらない運用を実現するための土台になるのです。

    完璧を目指さず「回る運用」を作ることが重要

    属人化を解消しようとすると、多くの企業がまずナレッジ整備に取り組みます。しかし、「完璧なナレッジを作ろう」とするあまり、運用そのものが定着しないケースは少なくありません。

     

    実際の現場では、問い合わせ対応に追われる中で詳細な記録を残すことは難しく、ナレッジ登録が担当者の負担になってしまうこともあります。その結果、「あとで整理しよう」と思ったまま何も残らず、同じ問い合わせが発生するたびに再び人へ確認する状態が繰り返されます。

    属人化を防ぐために必要なのは、最初から完璧な仕組みを作ることではありません。まずは無理なく運用を続けられる状態を作り、その中で改善を積み重ねていくことが重要です。

    ナレッジは完成品ではなく下書きから始める

    ナレッジというと、整理されたFAQや完成度の高いマニュアルをイメージする方も多いでしょう。

    しかし、現場で本当に必要なのは「完成された資料」ではなく、「次の対応に活かせる情報」です。

     

    問い合わせ対応のたびに、問題の内容や対応方法、原因などを簡単に残していくだけでも、次回以降の対応は大きく変わります。すべてを完璧に整理する必要はありません。まずは下書きレベルでも残すことが重要です。

    何も残らない状態よりも、不完全でも蓄積される状態の方が、組織にとってははるかに価値があります。

    ユーザーの言葉をそのまま残すという考え方

    ナレッジを作成する際、担当者目線で専門用語に置き換えてしまうことがあります。

    しかし、実際に情報を探すのは利用者や現場担当者です。

     

    例えば「VPN認証エラー」と整理するよりも、「VPNにつながらない」「朝から社内システムが使えない」といった利用者の言葉をそのまま残しておく方が、検索性が高まるケースが多いでしょう。

    また、現場で使用された表現や状況を記録しておくことで、単なる回答だけではなく、どのような条件で発生した事象なのかも把握しやすくなります。

    ナレッジを作ることが目的ではなく、必要な人が必要な時に使えることが重要です。

    パーソルビジネスプロセスデザインでは、このように「エピソードベース」でナレッジを蓄積していくことを推奨しています。

    改善を積み重ねることで運用は育つ

    運用設計は、一度作れば完成するものではありません。

    問い合わせ内容や利用環境は日々変化しており、それに合わせてナレッジや運用も更新し続ける必要があります。

    だからこそ、「最初から完璧を目指す」のではなく、「まずは回してみる」という考え方が重要になります。

    問い合わせ対応の中で得られた知見を蓄積し、足りない情報を補い、検索しやすい形へ改善する。このサイクルが定着すると、判断が個人に依存しない状態が少しずつ作られていきます。

     

    少人数の情シスに求められるのは、完璧なナレッジベースを作ることではありません。問い合わせ対応の中で生まれた知見を継続的に蓄積し、誰でも活用できる状態へ育てていくことです。その積み重ねが、結果として属人化しない運用につながっていくのです。

    支援事例から見る属人化解消の効果

    属人化の解消というと、ナレッジ整備や運用ルールの見直しなど、取り組むべきことが多く感じられるかもしれません。

    しかし重要なのは、一つひとつの施策ではなく、「判断が個人に残らない仕組み」を作ることです。

    実際にパーソルビジネスプロセスデザインが支援した企業でも、人員を増やすのではなく、問い合わせ対応の入口設計やナレッジ活用の仕組みを見直すことで、問い合わせ削減や一次解決率向上といった成果につながっています。

    セルフサポート環境の整備で問い合わせを削減

    ある企業では、「社員自身が解決できる環境を整え、ヘルプデスクへの問い合わせを減らしたい」という課題を抱えていました。

    そこで行ったのが、問い合わせ対応の中で得られた知見を継続的にナレッジとして蓄積し、それらをFAQへ反映する運用です。単にFAQを増やすのではなく、実際に問い合わせが発生した内容や解決方法をもとに改善を繰り返すことで、社員が必要な情報へたどり着きやすいセルフサポート環境を整備しました。

     

    その結果、利用者による自己解決が進み、ヘルプデスクへの問い合わせ件数は大きく減少。問い合わせ対応に追われていた時間を、より付加価値の高い業務へ振り向けられるようになりました。

    ナレッジ活用で一次解決率91.7%を実現

    また別の社内ヘルプデスクでは、問い合わせ対応が担当者個人の経験やスキルに依存しており、対応品質にばらつきが生じていました。さらに、ナレッジも十分に蓄積されておらず、同じような問い合わせであっても都度判断が必要な状態になっていました。

     

    そこで、問い合わせ対応のプロセスを見直し、対応内容だけでなく判断の背景も含めて蓄積する運用へ転換。エスカレーションフローの整理や申請条件の標準化、自動化の推進によって、担当者ごとの判断差を抑える仕組みを整備しました。

     

    その結果、ナレッジ数は約1,600件から1万件超へ増加し、平均一次解決率も69.2%から91.7%へ向上しています。

    この成果を支えたのは、単純にナレッジを増やしたことではありません。問い合わせ対応で発生した判断を蓄積し、誰でも再利用できる状態を作ったことが大きなポイントです。

    人を増やさずに回る運用へ転換したポイント

    これらの事例に共通しているのは、「人を増やして解決した」のではなく、「運用を変えて解決した」という点です。

    問い合わせが発生するたびに担当者がゼロから判断する状態を見直し、判断基準を揃え、ナレッジが自然に蓄積される仕組みを整備することで、少人数でも運用が回り続ける状態を実現しています。

    実際にセルフサポート環境を整備した企業では、ヘルプデスク体制を30名から18名へ最適化しながらも、安定した運用を継続しています。

     

    属人化の解消とは、「できる人」を増やすことではありません。

    問い合わせ対応の中で生まれた判断や知見を組織全体で共有し、誰が担当しても同じ品質で対応できる状態を作ることです。こうした運用構造への転換こそが、少人数でも止まらない情シス運営を実現する鍵といえるでしょう。

    まとめ|少人数でも「回る情シス」は運用設計で実現できる

    少人数の情シスで属人化が発生する原因は、人手不足や担当者の能力だけにあるわけではありません。その多くは、問い合わせ対応や一次切り分けの中で発生する判断が個人の経験や記憶に依存し、組織に蓄積されていないことに起因しています。

    また、FAQやマニュアルを整備するだけでは属人化は解消できません。重要なのは、問い合わせ対応の入口で発生する判断を整理し、プロセスやナレッジとして残せる状態を作ることです。判断の置き場を人から運用へ移し、誰が対応しても同じ判断にたどり着ける仕組みを構築することで、少人数でも安定して回る情シス運用に近づけます。

     

    さらに、最初から完璧な運用を目指す必要はありません。まずは回る仕組みを作り、問い合わせ対応から得られた知見を蓄積しながら改善を続けることが重要です。その積み重ねが、担当者の異動や休暇、新人配属時にも止まらない運用につながります。

    少人数でも回る情シスを実現する鍵は、人に依存することではなく、判断を組織の資産として蓄積・再利用できる仕組みを作ることです。属人化を解消する第一歩は、問い合わせ対応の入口を見直すことから始まるのかもしれません。

    属人化しない情シス運用のご相談パーソルビジネスプロセスデザインへ

    「特定の担当者が休むと業務が止まる」「問い合わせ対応に追われて改善まで手が回らない」「FAQはあるのに活用されていない」。

    こうした課題は、人を増やすことだけで解決できるとは限りません。属人化の背景にある運用構造を見直し、判断が個人に依存しない仕組みを作ることで改善できるケースも多くあります。

     

    パーソルビジネスプロセスデザインでは、ヘルプデスク運用の設計・改善、ナレッジマネジメントの定着支援、セルフサポート環境の構築、情シス業務のアウトソーシングまで、お客様の状況に応じたご支援を行っています。

    属人化を解消し、少人数でも安定して回る情シス運用を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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