外注工賃とは?
外注工賃とは、外部の事業者に業務を委託し、成果物に対して支払う費用を指す勘定科目です。
たとえば、外部業者または個人事業主に対して、以下のような業務委託をした場合は外注工賃に該当します。
- 営業代行
- 動画制作
- Webサービスの開発
- デザイン
- 事務代行
外注工賃は、外注先が提供したサービスに対する対価であるため、社内の従業員が対応した作業費用は含まれないという点には注意が必要です。
また、専門性の高い業務を弁護士や税理士などに外注する場合は外注工賃ではなく「支払手数料」に該当するため、事前に委託した内容がどちらに分類されるか確認しておきましょう。
外注工賃と類似した費用との違い
ここでは、外注工賃と類似した以下の勘定科目との違いを解説します。
- 外注費との違い
- 給与との違い
- 支払手数料との違い
- 販売促進費との違い
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外注費との違い
外注工賃と外注費は、会計実務上ほぼ同じ意味で扱われることが多い勘定科目です。なお、所得税の青色申告決算書では「外注工賃」という項目が独立して設けられています。
基本的には、どちらの勘定科目を使用しても会計処理上の問題はありませんが、一般的には以下のような使い分けがされています。
| 項目 | 概要 | 具体例 |
|---|---|---|
| 外注工賃 | 製品の加工や製造など、特定の「作業」に対する対価 |
|
| 外注費 | 外部への業務委託全般 |
|
外注費が広範な業務委託を表すのに対し、外注工賃は製造業などにおける加工賃や手間賃という限定的なニュアンスを持ちます。
給与との違い
給与とは、雇用契約に基づいて労働者に支払われる報酬のことを指します。
外注工賃と給与の違いは、契約形態と支払いの基準です。具体的な違いは以下の通りです。
| 項目 | 概要 | 支払いの対象 |
|---|---|---|
| 外注工賃 | 業務委託契約や請負契約に基づいて支払われる費用 | 仕事の完成や成果物 |
| 給与 | 雇用契約に基づいて労働者に支払われる報酬 | 労働時間 |
また、給与を支払う場合、雇用主は労働者に対して作業の指揮命令権を持ちます。一方、外注の場合は委託先に指揮命令することはできません。
もし外注先に対して直接的な指示や管理を行うと、偽装請負として労働法上の問題が発生する可能性があるため注意が必要です。
支払手数料との違い
支払手数料は、特定の専門知識や資格を要する業務への対価として支払われる費用を指します。
外注工賃が主に作業を外部に委託した際の対価である一方、支払手数料は専門家への報酬や金融機関への手数料などに用いられます。
たとえば、以下のような項目は、外注工賃ではなく支払手数料として処理するのが一般的です。
- 弁護士への法律相談料
- 税理士への顧問料
- 司法書士への登記依頼費用
委託する業務の内容が専門的な知見を必要とするかどうかで、外注工賃と支払手数料は区別されます。
販売促進費との違い
販売促進費は、自社の製品やサービスの販売を促進する目的で発生する費用を計上するための勘定科目です。
外注工賃は業務の委託や制作物への対価ですが、販売促進費は売上を伸ばすための活動に直接関連する費用であるという点で明確に異なります。
たとえば、外部業者にノベルティグッズの制作や広告宣伝を依頼した場合、それが販売を増やすための活動であれば販売促進費に分類されます。
同じ外部業者への支払いであっても、費用の目的が「業務の遂行」なのか「販売の促進」なのかによって、勘定科目は異なるため注意しましょう。
外注工賃に源泉徴収が必要なケース
外注工賃の支払いにおいて、源泉徴収が必要かどうかは、支払う相手が法人か個人かによって異なります。
相手先が法人の場合は、原則として源泉徴収は不要です。
一方で、個人事業主やフリーランスに対して、所得税法で定められた報酬を支払う場合は、支払い側が源泉徴収を行う義務があります。もし、自身が源泉徴収義務者でない場合は、源泉徴収せずに全額を支払う必要があります。
源泉徴収が必要な場合は、以下のように報酬額に応じて計算を実施し、差し引いた金額を支払います。
| 報酬額のケース | 税率 |
|---|---|
| 支払い金額が100万円以下の場合 |
|
| 支払い金額が100万円を超える場合 |
|
支払いの翌月10日までには、源泉徴収を税務署へ納付する必要があるため、正しく手続きを実施しましょう。
外注工賃を仕訳する際の例
ここでは、実務でよく発生する2つのパターンについて、具体的な仕訳例とともに解説します。
- 個人宛の場合
- 法人宛の場合
なお、外注工賃などの経費精算作業を効率化させたい場合は、BPOの活用がおすすめです。「サービス比較検討時の参考資料が必要な方」や「社内稟議時の補足資料が必要な方」は以下の資料もあわせてご確認ください。
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個人宛の場合
個人事業主へデザイン作成を依頼し、報酬10万円を支払う場合の仕訳例をご紹介します。
個人への特定の報酬は、源泉所得税を差し引いた金額の支払いが必要です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注工賃 | 100,000円 | 普通預金 | 89,790円 |
| 預り金(源泉所得税) | 10,210円 | ||
| 合計 | 100,000円 | 合計 | 100,000円 |
今回の例では、10万円の報酬に対して10.21%の源泉所得税(10,210円)を差し引いた89,790円を実際に支払います。
預かった源泉所得税は、翌月10日までに税務署へ納付する義務があるため、「預り金」として計上しましょう。
法人宛の場合
法人であるデザイン会社にロゴ作成を依頼し、報酬として10万円(税込)を支払う場合の仕訳例を紹介します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注工賃 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
| 合計 | 100,000円 | 合計 | 100,000円 |
法人との取引では、源泉徴収の処理が不要です。普通預金口座で支払った場合、貸方には普通預金の勘定項目が入ります。
外注工賃を仕訳する際の注意点
ここでは、外注工賃を仕訳する際の注意点について解説します。
- 経費の判断基準を理解しておく
- 外注先から受け取る証憑管理を徹底する
- 適格請求書が必要なケースがある
経費の判断基準を理解しておく
外注費か給与かは、契約書の内容だけでなく、業務の実態に基づいて判断する必要があります。
もし、実態が雇用関係に近いにもかかわらず外注費として処理していた場合、税務調査で給与と認定される恐れがあります。給与と判断されると、源泉所得税の追徴課税など予期せぬ税金が発生するリスクがあるため注意が必要です。
国税庁には、外注費の判断基準として、以下の4つのポイントが示されています。
- 委託した業務の遂行が他の人でも代替が可能な状態
- 業務遂行において、発注者の指揮監督を受けていない
- 成果物が完成しない場合のリスクを受注者が負っている
- 業務に必要な材料や用具を受託側が用意している
これらの判断基準を総合的に考慮し、外注に該当するかを慎重に判断しましょう。
外注先から受け取る証憑管理を徹底する
外注費として適切に処理するには、取引の実態を示す証憑書類を確実に保存する必要があります。
たとえば、請求書には、以下の内容が記載要件を満たしているかを必ず確認しましょう。
- 取引日
- 金額
- 成果物の内容
- 相手方の名称
- 登録番号(適格請求書発行事業者の場合)
もし書類が不足していると、外注費として認められず給与と判定されるリスクが高まります。
また、電子帳簿保存法により、電子メールやクラウドサービスで受け取った請求書はデジタル形式での保存が必要です。この法律に対応したシステムを導入すると、証憑管理の効率化と監査や税務調査時のリスク軽減が実現できます。
適格請求書が必要なケースがある
2023年から開始されたインボイス制度により、消費税の仕入税額控除を受けるためには原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。
適格請求書とは、税務署に登録した適格請求書発行事業者が発行する、消費税額や登録番号などが記載された請求書のことです。
外注先が適格請求書発行事業者であれば、登録番号が記載された請求書を受け取ることで仕入税額控除を適用できます。
外注の契約前に、委託先が適格請求書発行事業者か確認しておくのがおすすめです。
税務調査で外注費が給与だと指摘された時のリスク
ここでは、税務調査で外注費が給与だと指摘された時のリスクについて解説します。
- 源泉所得税の申告漏れに当たる
- 延滞税・加算税を請求される
- 仕入税額控除が認められなくなる
外注工賃などの経費精算作業を正確に行うためには、BPOサービスの活用がおすすめです。
以下の記事では、経理アウトソーシングについて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
関連記事| 経理アウトソーシングとは?外注のメリット・デメリット、活用方法を徹底解説
源泉所得税の申告漏れに当たる
外注費が給与と認定された場合、源泉所得税の申告漏れに該当する恐れがあります。
従業員に給与を支払う際には、支払い側が源泉所得税を差し引いて税務署に納付する義務があるためです。
原則として法人に外注費として処理していた場合、源泉徴収が行われないため、過去に遡って源泉所得税の追徴課税が発生する恐れがあります。
たとえば、1年間にわたり月額30万円を外注費として支払っており、後から給与と認定されると360万円分に対する源泉所得税の納付が求められます。
追徴課税を発生させないためにも、事前に正しい判断基準を理解しましょう。
延滞税・加算税を請求される
源泉所得税の申告漏れが指摘された場合、本来納めるべきだった税額に加え、ペナルティとして、さらに税金が課されます。
主な追徴課税は以下の3つです。
- 延滞税|法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた利息額
- 不納付加算税|納税が適切に行われなかったこと自体への罰則
- 重加算税|意図的に事実を隠蔽していたなど、その行為が悪質であると判断された場合の罰金
追徴課税は企業の財務に影響を与えるため、外注費と給与の区別は慎重に行いましょう。もし、不安がある場合は税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
仕入税額控除が認められなくなる
外注費として処理していた際に、支払った消費税を仕入税額控除として申告していた場合、該当の控除が認められなくなる可能性があります。
外注費には消費税が含まれているため、支払側は仕入税額控除を適用して消費税の納税額を抑えられます。一方、給与は消費税の課税対象外です。
もし、外注費として処理していたものが給与と認定されると、該当の支払いに基づいて行っていた仕入税額控除がすべて否認される可能性があります。
過去の消費税申告が過少であったと見なされ、源泉所得税の追徴に加えて、消費税の追加納付も必要になる恐れがあります。
正しいルールで経費精算を行うならBPOの活用がおすすめ
外注工賃を含む経費精算業務は、税法などの専門知識が必要であり、判断を誤ると追徴課税といったリスクを伴います。
このような課題を解決する有効な手段が、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用です。BPOは、業務プロセスの一部、または全体を外部の専門企業に委託する方法です。
請求書の処理や仕訳、支払いデータ作成といった一連の作業を委託することで、社内の業務負担を削減できます。特に、外注工賃のように判断が難しい経費処理については、専門知識を持つBPOサービスを活用することで、誤った処理を防ぎ、税務リスクを軽減できます。
さらに、BPOを導入することで、業務負荷が軽減できるため経理担当者はコア業務に注力でき、企業全体の生産性向上にも繋げられるでしょう。
経理BPOサービスのご紹介
- 外部企業に委託できる経理業務の内容を知りたい
- 経理業務をBPO化した他社の事例を知りたい
- 経理部門のノンコア業務を外部へ切り出して、生産性UPや従業員エンゲージメントの向上に努めたい
BPOを活用した企業の実際の事例
医療用医薬品に特化し、研究開発型の製薬会社である中外製薬株式会社。同社では、派遣スタッフに経費処理をお願いしていましたが、担当者によって仕事の進め方が異なり、業務効率が悪い状態が続いていました。
さらに、業務プロセスが複雑なため、新しく入った担当者の教育に多くの時間と労力がかかっていたそうです。
同社は、業務の継続性や標準化を整えるためにパーソルビジネスプロセスデザインのBPOを導入。
導入後は業務プロセス全体が見直され、誰が担当しても同じ品質で業務を遂行できるシンプルな体制の構築が実現できました。現在、従業員が本来注力すべきコア業務に集中できる状況になったとお声をいただいています。
関連記事| コア業務とノンコア業務の仕分けができ、業務プロセスもシンプルに。「効率化に大きな効果がある」
外注工賃などの経費作業を効率化させたい場合はパーソルビジネスプロセスデザインにご相談ください
外注工賃の経費処理は、外注費や給与との違いを正確に理解し、適切な勘定科目で仕訳を行う知識が求められます。
もし、誤った会計処理を行ってしまうと、税務調査で指摘を受け、源泉所得税の追徴課税や延滞税といった厳しいペナルティにつながる可能性があるため注意が必要です。
このようなリスクを回避し、煩雑な経費精算業務の効率化を実現するためには、専門的な知見を持つBPOの活用がおすすめです。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、豊富な実績とノウハウをもとに、お客さまの要望にあわせたBPOを提供しています。
「経理のBPOについて詳しく知りたい」と興味をお持ちの方は、以下の資料で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。