交通費精算とは
交通費精算とは、従業員が業務上の移動で一時的に立て替えた交通費を、会社が規定に基づいて払い戻す一連の会計処理のことです。従業員が提出した精算書をもとに行われ、企業の経費を適切に管理するために重要な業務と言えます。
交通費精算の対象となるのは、主に営業活動や打ち合わせなどで発生した近距離移動の電車やバス、タクシーなどにかかる費用です。また、社用車や自家用車を使用して移動した際の駐車場代なども含まれます。
なお、一度の取引金額が3万円を超える場合には、原則として領収書の保管が必要となることが多いため注意が必要です。
交通費と類似した費用との違い
交通費精算を正確に行うためには、他の類似した費用との違いを明確に理解しておくことが重要です。
ここでは、交通費と類似した費用との違いについて解説します。
- 交通費と旅費交通費の違い
- 交通費と通勤手当の違い
交通費と旅費交通費の違い
交通費は主に勤務地周辺での日常的な業務移動にかかる運賃を指します。一方、旅費交通費は、仕事の関係で遠方に出張に行く際にかかる費用のことです。
具体的に異なる点は、以下のとおりです。
交通費 | 旅費交通費 | |
---|---|---|
目的 | 日常業務における近距離の移動 | 出張や研修など、遠隔地への移動 |
主な費用 | 電車代/バス代/タクシー代 など | 飛行機・新幹線代/宿泊費/出張手当 など |
また、旅費交通費の場合は事前の承認が必要なケースが多く、交通費の精算とは申請フローが異なります。
業務内容によってどちらの費用に該当するかが変わるため、社内規程で明確な基準を設けておくことが重要です。
交通費と通勤手当の違い
交通費は、業務命令に基づいて発生する一時的な移動経費です。一方、通勤手当は従業員の自宅から職場までの通勤にかかる費用を補助する福利厚生として扱われます。
通勤手当では、給与の一部として定期代やガソリン代相当額が定額で支給されるのが一般的です。
一方、交通費は業務遂行のための一時的な移動に使われる費用であり、実際に発生した金額をその都度精算、または給与にあわせて支給されます。
2つの違いを理解していない場合、通勤手当でカバーされている区間の交通費を誤って二重に支払ってしまうといった問題につながる可能性があります。
交通費精算書に記載する項目とは
正確な交通費精算を行うためには、精算書に必要な項目を漏れなく記載することが重要です。
具体的に交通費精算書に記載するべき項目は、以下のとおりです。
項目 | 記載内容 |
---|---|
利用日 | 実際に交通機関を利用した年月日 |
訪問先 | 取引先の会社名や店舗名などの名称 |
目的 | 今回の移動目的を明確に記載 |
交通機関種別 | 今回利用した交通機関 |
区間 | 出発駅から到着駅までの区間 |
経路 | 出発駅から到着駅までの具体的な移動ルート |
運賃 | 片道または往復の正確な金額 |
交通費精算に必要な情報が正確に記載されていることで、経理担当者は迅速かつ適切に精算処理を進められます。
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経理部門が交通費精算を実施する流れ
経理部門が交通費精算を実施する際、いくつかの流れが存在します。
実施の流れを標準化し、各ステップで適切なチェックをすることで、ミスや不正を防ぎ、スムーズな業務遂行ができるでしょう。
ここでは、経理担当者が交通費精算を行う際の流れを、以下の3つのステップに分けて解説します。
- 交通費精算書の内容に誤りがないか確認する
- 会計ソフトや仕訳帳に記入する
- 交通費を支払う
また、交通費精算だけでなく経理業務を幅広く改善し、効率化させたい方は以下の資料もあわせてご覧ください。
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交通費精算書の内容に誤りがないか確認する
まず、経理担当者は、提出された交通費精算書の内容に誤りがないか確認します。
確認すべき主要なポイントは、以下のとおりです。
- 記載内容の整合性
- 金額の正確性
- 経路の妥当性
- 必要書類の添付状況
不備や疑問点が発見された場合は、申請者に差し戻しを行い、修正を依頼する必要があります。確認の段階で誤りを発見できずに進めてしまうと後々のトラブルにつながりやすくなるため、丁寧にチェックしましょう。
会計ソフトや仕訳帳に記入する
経理担当者は、承認された精算書をもとに、会計システムへ正確な記録を行い、適切な勘定科目で仕訳を起票します。
また、会計ソフトに記録する際は、電子帳簿保存法の要件にあわせて、領収書や電子取引データなどの証憑書類を電子的に保存する必要があります。特に、証憑書類と仕訳データを適切にリンクさせ、後日の監査や税務調査に対応できる状態で保管することが大切です。
会計処理の際は、税法上の取り扱いも考慮し、消費税区分や源泉徴収の有無なども正確に反映させましょう。
交通費を支払う
会計処理が完了したら、従業員へ立て替えた交通費を支払います。
支払い方法は企業によって異なりますが、主に以下の3つに分かれます。
- 給与と一緒に振り込む方法
- 別途指定日に振り込む方法
- 小口現金で直接支払う方法
給与と同時に振り込む場合は、給与計算の締め日までに精算処理を完了させる必要があり、従業員にとっては受け取りの手間が省ける点がメリットです。
別途振り込む場合は、精算のタイミングを柔軟に設定できますが、振込手数料が発生する点に注意が必要です。
支払いのミスや遅れが発生しないように、事前に業務フローを整備しましょう。
交通費精算で発生しやすい問題
ここでは、交通費精算の現場で特に発生しやすい代表的なトラブルと原因について解説します。
- 通勤手当内の区間において二重申請が発生してしまう
- 法人カードで支払いをした後に交通費精算をしてしまう
- 申請したルートとは別の交通手段を利用していた
- 業務が煩雑なことによるトラブルが発生する
通勤手当内の区間において二重申請が発生してしまう
交通費精算で発生しやすいトラブルとして、通勤手当内の区間において二重申請が発生してしまうことが挙げられます。二重申請とは、通勤手当として支給している定期券の区間内での移動にもかかわらず、交通費として別途申請してしまうことです。
二重申請は、従業員が通勤定期の区間を正確に把握していない場合や、システム上でのチェック機能が不十分な場合に発生します。
問題を防ぐためには、従業員への教育の徹底と、システム上での自動チェック機能の導入が効果的です。
従業員に悪意がなくとも、確認ミスなどで発生してしまうと会社側が気づかずに重複して費用を支払ってしまうリスクがあるため注意が必要です。
法人カードで支払いをした後に交通費精算をしてしまう
法人カードで支払いをした後に従業員に対して交通費精算をしてしまうケースも発生しやすいトラブルです。
法人カードでの支払いは直接会社の経費として処理されるため、従業員が別途精算する必要はありません。しかし、カードの利用明細と従業員からの領収書付きの申請書を別々に管理していると、経理担当者が重複に気づかず処理してしまうことがあります。
トラブルを防ぐには、法人カードの利用ルールを明確にし、利用明細と経費精算申請を確認するフローを整備することが大切です。
申請したルートとは別の交通手段を利用していた
申請内容と実際の移動ルートや交通手段が異なるケースも発生しやすい問題です。
たとえば、タクシー利用で申請していたにもかかわらず、実際には電車を利用していた場合など、最短ルートと異なる経路を用いて差額を不正に受け取ろうとするケースです。
このような不正を防ぐためには、経理担当者が申請内容を鵜呑みにしないようにしましょう。具体的には、インターネットの乗り換え案内サービスなどを利用したり、利用の正当性を確認したりして、本当に最短・最安のルートであるかを確認する一手間が重要です。
業務が煩雑なことによるトラブルが発生する
交通費精算の業務自体の煩雑さが、さまざまなトラブルの原因になる場合があります。
従業員側では、手書きの精算書による記入漏れや計算ミスといった申請ミスが発生しやすくなります。
一方、経理担当者側では、提出された大量の書類の内容を目視で確認し、不備があれば差し戻すという非効率なやり取りが発生するのが課題です。
さらに、部署や拠点ごとに精算ルールが統一されていない場合、確認作業の増加や承認プロセスの非効率化により、月次の決算処理が遅延するでしょう。
根本的な解決には、業務フローの見直しとシステム化の推進が必要です。
交通費精算で効率化できるポイント
交通費精算業務の効率化は、経理部門の生産性向上を実現する重要な取り組みです。
ここでは、交通費精算で効率化できるポイントについて解説します。
- 交通系ICカードを利用する
- 経費精算システムを利用する
- 経理に特化したBPOを活用する
関連記事|経理にBPOを導入するメリットは?経費精算システムの導入とアウトソーシングの違う点を解説!
交通系ICカードを利用する
交通費精算を申請する際に、日付や金額、出発地点から到着地点までの場所といったあらゆる情報が必要となります。情報を記載する際には、情報を覚えておくか改めて調べる必要があり、申請書の作成に時間がかかってしまいます。
そこで、交通系ICカードの活用がおすすめです。
仕事での移動に交通系ICカードを利用することで、申請に必要な情報を一度に取得できます。結果として調べる時間が減り、正確な情報を効率的に手に入れられます。
また会社にICカードリーダーがあったり、スマートフォンの連携アプリを使ったりすることで、カードの利用履歴から必要なデータを自動でシステムに取り込むことも可能です。
経費精算システムを利用する
経費精算システムを導入することで交通費精算業務の効率化を促進できます。
経費精算システムには以下のような機能があり、作業の一部を自動化できるためです。
- 自動的な最短ルートの検索
- 料金計算
- 仕訳生成
- 承認ワークフローの実行
- 承認完了後の支払い処理
システム化により、申請から支払いまでの一連のプロセスが自動化されることで、結果として、手作業が大幅に削減され、担当者の負担も軽減されます。
導入時の初期コストはかかりますが、長期的な作業効率化や生産性の向上などが期待できるため、投資対効果が高い選択肢でしょう。
経理に特化したBPOを活用する
BPOとは、自社の業務プロセスの一部またはすべてを、専門的なノウハウを持つ外部の企業へ委託することです。
経理業務に特化したBPOを活用すれば、以下のような作業を専門家に任せられます。
- 領収書の整理
- 申請内容のチェック
- 会計ソフトへの仕訳入力
BPOを活用することにより、経理担当者は煩雑な業務から解放され、コア業務に集中できます。
さらに、専門家による業務プロセスの見直しを実施できるため、手順の非効率な箇所を洗い出し、適正化することも可能です。
交通費精算にBPOがおすすめの理由
交通費精算業務の効率化を目指す上で、BPOの活用はおすすめの方法の一つです。
BPOサービスは、専門的な知見と確立された業務フローによって、業務の正確性と効率性を向上させられます。
たとえば、BPOを活用することで、経理担当者が費やしていた申請内容の細かなチェックや、不備があった際の差し戻し対応といった定型的なタスクを外部に委託することが可能です。
結果として、経理担当者は付加価値の高いコア業務に注力できます。
また、経理業務を幅広く改善し、効率化させたい方は以下の資料もあわせてご覧ください。
経理の業務改善まるわかりBOOK
実際に経理部門にBPOを導入した事例をご紹介
実際にBPOを活用した企業として、光洋マテリカ株式会社様の事例を紹介します。同社の財務経理部では、紙ベースで毎月400件にも及ぶ請求書を手作業で処理しており、繁忙期には担当者の残業が膨大になるという課題を抱えていました。
請求書のチェックから会計システムへの仕訳入力までの一連の業務を、パーソルビジネスプロセスデザインにBPOのご依頼をいただきました。
業務をBPOに委託して効率化した結果、担当者の残業時間は実質半分以下まで削減されました。
これにより創出された時間の余裕で、担当者はこれまで手の回らなかった新しい業務にも着手できているそうです。
関連記事|膨大な業務量による残業が半分以下に!新しい分野にもトライできるようになり「すごく助かる」
交通費精算を効率化するにはパーソルビジネスプロセスデザインにご相談ください
交通費精算は、正確な処理が求められる一方で、非効率な手作業が多く残りやすい業務です。
本記事で解説したように、交通費精算の正しい知識を身につけ、社内ルールを整備することは、トラブルを未然に防ぐために重要でしょう。
また、根本的な業務効率化と精度の向上を両立させる場合、BPOサービスの活用は有効な解決策です。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、豊富な実績とノウハウをもとに、お客さまの要望にあわせたBPOサービスを提供しております。
BPOやアウトソーシングサービスについて、導入経験のないお客さまからはさまざまなお問い合わせをいただいております。なかでも代表的な「経理の業務改善について詳しく知りたい」という内容については、以下の資料にて補足説明しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。
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