SOP(標準作業手順書)とは?
SOPとは、業務や作業の標準的かつ詳細な手順を記載した文書のことです。「Standard Operating Procedures」の略称であり、製造業や医療、農業などさまざまな業界で広く活用されています。
SOPを導入する最大の理由は、業務の属人化を防ぎ、誰が実施しても同じ品質の作業を実現することにあります。再現性や効率性、安全性の確保につながる点が重要です。
未習熟者でも迷わずに作業を進められるように構成されており、教育時間の短縮や業務ミスの防止、品質の安定化といった効果が期待されています。そのため、SOPは簡潔で視覚的にわかりやすく設計され、初心者にも理解しやすい内容になっている点が特徴です。
SOPとマニュアルの違い
SOPとマニュアルの違いは、以下のとおりです。
- SOP:「何をどうやるか」といった手順を記載した文書
- マニュアル:「なぜそれをやるのか」など知っておくべき情報や知識の共有までを含めて記載した文書
SOPは特定の業務に対する標準的な手順を詳細に記載することに特化しており、未習熟者が迷わずに作業を遂行するための実行指示書として機能します。
一方、マニュアルは業務全体の流れや背景、ノウハウまでを網羅的にまとめた文書であり、より高度な理解や応用力を必要とする熟練者向けの資料です。
実際の現場では、SOPがマニュアルの一部として内包されているケースも多いですが、それぞれの目的に応じて使いわけることが重要です。
SOPの作成・導入を行う5つのメリット
ここでは、SOPの作成・導入を行う5つのメリットについて解説します。
- 業務の効率化
- 属人化の防止
- 教育・トレーニング効率の向上
- 安全性の向上・リスク低減
- 信頼性・組織力の向上
SOP(標準作業手順書)を導入することで、次のメリットにつながります。メリットを理解した上で、自社でSOPの作成・導入を行うべきか検討しましょう。
業務の効率化
SOPを導入することで業務フローが明確になり、手順に迷うことがなくなるため、業務の効率化を実現できます。
たとえば、無駄な試行錯誤や判断ミスが減り、時間のロスを削減可能です。また、担当者が正確に作業を遂行できることで手戻りが防止され、成果物の品質も安定します。
結果として、作業全体のスピードと質が向上し、業務が標準化されることで組織全体の効率も高まります。業務をスムーズに進めたい場合に、SOPの導入は有効な手段といえるでしょう。
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属人化の防止
SOPを導入することで業務手順が明文化され、特定の担当者に依存する必要がなくなるため、業務の属人化を防ぐことが可能です。
たとえば、異動や退職が発生してもスムーズに引き継ぎができ、業務の継続性が確保されます。また、「ベテランがいないと業務が回らない」といった不安を解消でき、心理的な負担も軽減可能です。
さらに、ブラックボックス化されていたノウハウも組織全体で共有可能となり、誰が担当しても一定の成果が出せる体制を構築できます。
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教育・トレーニング効率の向上
新人や異動者がSOPを読むことで、短期間で業務に適応できるようになるため、教育やトレーニングの効率も大幅に向上します。
たとえば、教育担当者の説明負担が軽減され、教育にかかる時間も削減可能です。さらに、繁忙期であってもSOPに沿って引き継ぎを行うことが可能で、スムーズな対応を実現できます。
加えて、SOPは教育資料としても活用でき、業務内容の復習や応用にも役立つため、理解が深まりやすくなります。
安全性の向上・リスク低減
注意が必要な作業でもSOPによって手順が明確であれば、事故やミスを防止できるため、安全性の向上とリスクの低減につながります。
たとえば、未習熟者でも正しい手順で作業できるようになり、安心して業務を進行可能です。医療や製造といった命に関わる現場でも、SOPが安全管理に大きく貢献します。
また、作業中のリスクが可視化されるため、事前に対策を講じやすくなります。品質や安全性を担保する手段として、業界の監査・検査対応にも有効な手段といえるでしょう。
信頼性・組織力の向上
SOPによって業務が明確に文書化されることで、外部監査やISOといった信頼性評価への対応が行いやすくなるため、組織の信頼性と対応力の向上につながります。
たとえば、法規制や業界基準にも準拠した業務遂行が可能になり、顧客からの信頼度が高まります。また、社内全体で業務に対する共通認識を持てるため、組織としての対応力強化も可能です。
SOPを定期的に見直し・改善することによって、組織の成長基盤を構築できるでしょう。
SOPの作成方法・手順【5STEP】
ここでは、SOPの作成方法・手順を5STEPで解説します。
- 対象業務の選定・整理
- 目標設定と利用場面の明確化
- フォーマットや構成の決定
- 手順の詳細記載
- 運用・改善
SOPを作成・導入するためには、業務の選定から運用改善まで、段階的に進めることが重要です。以下の手順に沿って進めることで、現場に即した実用的なSOPを作成しましょう。
1.対象業務の選定・整理
まず対象とする業務を正確に選定・整理します。対象が不明確だとSOPの効果が限定されてしまうからです。
具体的には、基幹業務やミスが発生しやすい業務、今後重要性が高まると予想される業務を優先的に選びましょう。業務プロセスを洗い出し、現行のフローに課題がないかも確認します。
また、作業にばらつきが出やすい箇所やトラブルの多い業務を重点的に選定することも重要です。この段階で作成者と承認者を決定しておくことで、後の進行が円滑になります。
2.目標設定と利用場面の明確化
目的を明文化することで、作成の方向性を定めます。SOPは単なる手順書ではなく、明確な目的と成果物の品質基準を伴う文書であるべきです。
また、使用者の知識やスキルレベルを考慮することも大切です。たとえば、新人や未経験者が対象であれば、より丁寧でわかりやすい記述が求められます。
SOPを使用する具体的な場面(例:日常業務、トラブル発生時など)を想定し、それに応じた内容と表現を用いましょう。
3.フォーマットや構成の決定
SOPの作成において、最初にフォーマットや構成を明確にすることで、情報の抜け漏れを防げます。
主なフォーマットは次のとおりです。
- ステップ式(箇条書き)
- 段階的ステップ式(1、1-1などの階層構造)
- フローチャート式(判断分岐を可視化)
- チェックリスト式(確認項目付き)
業務内容に応じて最適な形式を選びましょう。また、表紙や目次・用語集・参考資料などを付属させることで、誰が見ても理解しやすいドキュメントに仕上がります。
4.手順の詳細記載
作業手順を誰でも再現できるように、手順の詳細を丁寧に記載します。「書かなくてもわかるだろう」という考えは避け、1ステップずつ具体的に記載しましょう。
理解を促進するために、必要に応じて図・写真・動画などの視覚的情報を活用することもおすすめです。初心者が読んでも実行できるように記載し、熟練者の感覚に頼った作業も、できるだけ数値化や具体化して表現しましょう。
5.運用・改善
SOPは作成して終わりではないため、継続的な運用と改善を行いましょう。まず、完成後には2週間程度の仮運用期間を設け、実際に使ってもらいながら検証します。
使用者からのフィードバックをもとに、必要な修正や改善を行いましょう。また、更新の頻度(例:半年ごと)や方法もあらかじめ決めておくことで、常に最新の情報を維持できます。
内容の変更があった場合は関係者に必ず周知し、全社的に最新版が浸透するように努めることが大切です。
SOPの作成・導入が失敗してしまうケース
SOPの作成・導入が失敗してしまう主な原因は、現場の実情を無視した手順設計にあります。
たとえば、手順が複雑すぎて実務で運用しづらくなると、従業員が守らなくなり、せっかく作成したSOPが形骸化してしまいます。また、業務内容が変化してもSOPを見直さなければ、現場との乖離が広がり、誤った作業手順が残り続けることも懸念です。
さらに、現場の従業員が作成に関与しないと、「やらされ感」が生まれ、SOPへの納得感や責任感が醸成されません。実行可能性を考慮せずに手順を定めた場合も、現場で機能せず導入が失敗に終わることがあります。
SOPを作成・導入を成功させるための7つのポイント
ここでは、SOPを作成・導入を成功させるための7つのポイントを解説します。
- 要点を記載して読みやすい文章でまとめる
- 画像・図を活用して見やすさを高める
- ベテラン・若手双方の意見を踏まえて作成する
- 成果測定・改善を繰り返す
- チーム全体に情報を共有する
- ツールを活用する
- アウトソーシングを活用する
SOP(標準作業手順書)を現場で確実に運用し、業務の品質や効率を向上させるためにも、作成段階から次の重要なポイントを押さえておきましょう。
要点を記載して読みやすい文章でまとめる
SOPは誰でも同じ結果を出せるようにするための文書であるため、読みやすい文章でまとめましょう。そのためには、文章は簡潔で一文が長くなりすぎないよう意識することが必要です。
また、専門用語を使う際は必ず注釈を加え、誰が読んでも理解できる表現を心がけてください。さらに、重要な情報を前半に配置し、読み飛ばされないように工夫します。判断基準や注意点は明確に要点を整理し、曖昧さを排除することで、業務遂行のミスを防止できます。
伝わりやすく整理された文章を作成することで、現場での確実な実行を支えましょう。
画像・図を活用して見やすさを高める
SOPの内容を正確に伝えるために、文章だけでなく画像や図を用いましょう。図や写真、フローチャートを用いることで理解しやすくなり、誤解のリスクが減少します。
複雑な操作や動きのある工程では、動画を取り入れることがおすすめです。また、表やレイアウトによって情報を整理することで、視線の流れをコントロールでき、閲覧者が迷わず必要な情報にたどり着けます。
視覚的な補助を加えることで、SOPの実用性と定着率を大きく高めましょう。
ベテラン・若手双方の意見を踏まえて作成する
SOPを実用的な内容にするために、経験豊富なベテランと、新人や若手の双方の視点を踏まえて作成しましょう。
ベテランの持つノウハウや判断基準を明文化することで属人化を防ぎ、若手が感じる疑問点やつまずきやすい部分を反映することで、誰もが理解できる内容に近づけます。
感覚的な判断に頼らず、数値や具体的手順として言語化・可視化することが重要です。実際に初稿を現場で使ってみて、改善点を反映しながら精度を高めましょう。
成果測定・改善を繰り返す
SOPは一度作成するだけでなく、継続的に改善しましょう。導入前後での成果を数値で測定し、効果を客観的に把握することが大切です。
成果測定の例
- SOP導入前に比べて、入力ミスや製作業務中のミスが「何件」減少したか?
- SOP導入により、作業時間が「何時間」短縮されたか?
また、仮運用の段階で現場からフィードバックを集め、実態と乖離している箇所を早期に修正します。定期的に見直しを行うとともに、更新作業が形骸化しないよう、効果の可視化や社内発信を継続することも有効です。
チーム全体に情報を共有する
SOPを活用するために、関係者全員がその存在と運用方法を理解できるよう情報共有しましょう。そのために、SOPの内容や変更点を速やかに全体へ共有し、旧版の誤用を防止する必要があります。
また、どの部署が対象か、どの場面で使用するかといった情報も記載し、利用者の意識を高めることが重要です。SOPの設置場所や配布方法にも配慮し、誰もがすぐにアクセスできる環境を整えることで、チーム全体の遵守率向上や運用の安定につなげましょう。
ツールを活用する
SOP作成時には、効率性と品質を両立するために専用のツールを活用しましょう。
たとえば、クラウド型の編集・管理ツールを用いれば、画像や図表の挿入、レイアウト調整も簡単に行えます。手順書やチェックリストなど多様な形式を一元管理できる機能があれば、運用がよりスムーズに行えるでしょう。
また、社外共有やアクセス制限といったセキュリティ対応が可能なシステムを選ぶことで、安心して運用できます。
アウトソーシングを活用する
アウトソーシングやBPOを導入することで、依頼した業務に合わせたSOPを、外部の専門家が業務遂行のために作成してくれます。外注に合わせてSOPの作成も行ってもらえるため、リソースが不足している場合には外部専門家の支援を活用するのもおすすめです。
外部パートナーに業務分析からマニュアル作成までを一括で依頼すれば、社内負担を軽減しつつ、第三者の視点から業務改善のヒントも得られます。また、継続的なフィードバックと運用設計まで含めたサービスを提供してもらえることも、外部活用のメリットです。
BPOを導入して依頼した業務のSOPを作成してもらおう!
SOP(標準作業手順書)には、業務の標準化や属人化の防止、教育の効率化、安全性の向上、組織の信頼性強化など、さまざまなメリットがあります。
作成・導入にあたっては、対象業務の整理や利用場面の明確化、詳細な手順記載、継続的な改善が重要です。また、現場の声を反映し、誰もが理解・実行できる内容に仕上げることが重要です。
BPOを導入することで、自社だけで対応が難しい業務のSOP作成まで対応してもらえます。
SOPの作成には業務分析から文章化、改善まで多くの工数がかかり、自社リソースだけでは対応が難しいケースもあります。
BPOを活用すれば、外部の専門家が客観的な視点で業務を整理し、実践的なSOPを効率的に作成可能です。また、継続的な改善提案や運用設計の支援も期待できるため、導入効果を最大化できます。
作成負担を軽減しつつ、高品質なSOPを構築するためにも、BPOの導入がおすすめです。BPOやアウトソーシングサービスの導入について、ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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独自に培った「ビジネスプロセスデザイン力」と「マネジメント力」を駆使し、幅広いスキルを持った人材と最先端のテクノロジーを組み合わせた高品質なBPOサービスを提供