人的資本経営とは?注目される背景と企業が取り組むべき施策・実践ステップを解説

人的資本経営とは?注目される背景と企業が取り組むべき施策・実践ステップを解説

人的資本経営は、人材をコストではなく「企業価値を生む資本」として捉え、戦略的に投資・活用していく経営手法です。人材不足や離職の増加、DXによる業務の変化、そして人的資本開示の拡大により、企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、事業戦略と連動した人事施策を設計・実行することが一段と重要になっています。

本記事では、人的資本経営の定義と目的、注目される背景を整理したうえで、企業が取り組むべき具体施策や直面しやすい課題、実践ステップを体系的に解説します。あわせて、推進を加速するポイントと、運用基盤づくりを支援するサービス活用の方向性も紹介します。

【パーソルの人事BPO】のご紹介

【パーソルの人事BPO】のご紹介

「パーソルの人事BPO」では、人事戦略策定から運用体制構築までを一気通貫でご支援します。単なる業務代行ではなく、運用設計と実務支援を組み合わせ、人的資本経営を実現。本資料では、「パーソルの人事BPO」について詳細をご紹介しています。

目次

    もっと見る▼

    人的資本経営とは

    人的資本経営とは

    人的資本経営は、人事施策の寄せ集めではなく、事業戦略を実現するために人材への投資を設計し、成果を検証して改善する経営手法です。採用や研修を増やすことがゴールではありません。企業としての価値創造につながる能力と行動が、組織に積み上がる状態を作ることが主目的とされます。

    経済産業省は人的資本経営について『人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方』と示しており、日本国内における標準的な定義となっています。

    引用|経済産業省|人的資本経営とは


    人的資本経営の目的と観点

    人的資本経営の目的と観点

    人的資本経営の目的は、中長期的な企業価値を高めることです。短期的な人員充足や場当たり的な施策ではなく、将来の収益力を生む能力を組織に蓄積し、環境の変化に適応できる状態をつくることに狙いがあります。

    そのために、人的資本経営では、次のような観点から人材への取り組みを設計・運用していきます。

    • 企業価値の向上
    • スキル確保・リスキリング
    • 生産性・パフォーマンス向上
    • リーダー育成・サクセッションプラン

    企業価値の向上

    人的資本経営では、人への投資を経営ストーリーの中心に位置づけます。人材への取り組みを非財務情報として切り離すのではなく、事業戦略や財務とのつながりの中で整理することで、中長期の価値創造を説明しやすくなります。

    統合報告書や有価証券報告書での開示、投資家との対話を通じて、人材への投資がどのように企業価値につながるのかを明確にすることも、この目的の一部です。


    スキル確保・リスキリング

    事業環境が変化する中で、将来に必要なスキルをあらかじめ捉え、計画的に備えることが重要になります。人的資本経営では、現状と目標の差を可視化し、その結果を育成・採用・配置に反映させます。

    採用だけに頼らず、学び直しや再配置を組み合わせ、戦略の実行に必要な人材と能力を継続的に確保していくことが目的です。


    生産性・パフォーマンス向上

    人的資本経営は、人材を保有すること自体ではなく、その力を成果につなげることを重視します。スキル、評価、配置履歴、エンゲージメントなどの情報を整理し、適材適所の判断や仕事の質の向上に活かします。

    データに基づいて人材の配置や育成を見直すことで、組織全体の生産性やパフォーマンスを高めていくことが、この目的にあたります。


    リーダー育成・サクセッションプラン

    中長期の企業価値を支えるためには、将来を担うリーダーを計画的に育てることが欠かせません。人的資本経営では、重要なポジションに必要な人材像を明確にし、後継者の育成と任用を継続的に行います。

    リーダーの供給力を高めることで、事業の継続性と変革の両立を図ることが、この目的です。


    なぜ今「人的資本経営」が求められるのか

    なぜ今「人的資本経営」が求められるのか

    人的資本経営が注目される背景には、制度設計にとどまらず、企業価値の生み出し方や企業の評価のされ方が変化していることがあります。人材を単なる人事施策としてではなく、経営戦略と結びつけて管理・説明する枠組みが必要になっています。

    ここでは、その理由を3つのポイントで整理します。


    人材投資を経営として説明する必要性の高まり

    人的資本経営が求められる背景には、人材への投資が企業の将来価値を左右するにもかかわらず、その内容や成果が、事業戦略との関係も含めて経営として十分に説明されてこなかったという課題があります。

    こうした課題に対し、人材版伊藤レポート2.0では、経営戦略と連動した人材戦略の実践と、情報を可視化して投資家に伝える両輪での取組が重要であると示されました。


    CEO・CHROは、企業価値全体及び事業ごとの価値のそれぞれの向上を両立させるため、人事と事業の両部門の役割分担の在り方を検証し、 取締役会に報告すべきである。

    引用|経済産業省(2022). 「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~」エグゼクティブサマリー(4)


    この考え方を実務・開示の観点から整理したのが、人的資本可視化指針です。同指針では、人的資本を単なる人事情報としてではなく、戦略、目標、ガバナンス、リスク管理と結びつけて一貫したストーリーとして示すことが求められています。

    参考|非財務情報可視化研究会. 「人的資本可視化指針」2.人的資本の可視化の方法


    人的資本を経営の言葉で説明している具体事例

    上記を具体的に示している例として、パーソルグループが発行している「 パーソルグループ人的資本レポート2026 」があります。同レポートでは、人的資本への投資と価値創造の関係を整理し、戦略に基づく人材投資が、どのような指標を通じて企業価値につながるのかを一連の流れで示しています。単なる施策紹介にとどまらず、「なぜその人材投資を行うのか」「どの指標で進捗を捉えるのか」を経営の言葉で説明している点が特徴です。

    つまり、人的資本経営が求められているのは、開示対応のためではなく、人材への投資を経営として説明し、意思決定に活かせる状態をつくる必要が高まっているためだといえます。


    競争環境の変化に対応するための「戦略×人材」の連動

    DXの進展や事業モデルの転換が進む中で、企業が必要とする職務やスキルは短い周期で変化しています。過去の実績を基準にした配置や、画一的な育成だけでは、成長領域に人材が十分に行き渡らず、戦略の実行スピードが落ちやすくなるでしょう。

    このような環境では、人材を「今いる部署に当てはめるもの」として管理するのではなく、事業戦略から逆算して、どの分野にどの能力が必要かを定義し、採用・育成・配置を一体で動かすことが求められます。

    人的資本経営を用いて職種やスキルの定義をそろえ、人材の状況を全社横断で見える化することで、異動やプロジェクトへの起用を迅速に判断できるようになります。戦略と人材を連動させるためには、人を動かす判断を部門単位から経営単位へ引き上げることが、実務上の重要なポイントです。

    関連記事|なぜ今、人材戦略が企業成長の鍵になるのか|導入メリットと成功ステップを徹底解説


    株主・投資家の評価軸が人材力に広がっている

    資本市場においても、企業を評価する視点が広がりを見せています。投資家は、短期的な利益だけでなく、将来にわたって収益を生み続けられるかどうかを重視するようになっており、その判断材料として人的資本に注目しています。

    人材育成への投資状況、離職や定着の傾向、従業員エンゲージメント、多様性、リーダー候補の厚みといった要素は、組織がどれだけ持続的に成長できるかを測る手がかりになります。そのため、企業には数値を示すだけでなく、その数値が事業にどのような影響を与えるのかを説明することが求められています。

    この評価軸の変化は、人的資本が人事部門だけのテーマではなく、経営企画やIRと連動して管理すべき経営指標であることを意味します。

    人的資本を事業戦略と結びつけて説明できる企業では、投資家との対話も変わりやすくなります。「なぜこの数値を重視しているのか」「どの事業の成長にどう関係するのか」といった建設的な議論になることで、中長期の成長ストーリーを前提とした対話が行われやすくなります。


    人的資本経営の具体的な施策

    人的資本経営の具体的な施策

    人的資本経営は、考え方を示すだけでは成果につながりません。データ、制度、育成、配置、マネジメントをばらばらに進めるのではなく、相互に連動させて運用することが重要です。

    ここでは、人的資本経営を実務として定着させるために、企業が取り組む代表的な施策を整理します。


    人材データ基盤の整備(スキル・経験・評価・配置履歴)

    人的資本経営の出発点は、人に関する情報を全社で把握できる状態をつくることです。スキル、職務経験、研修履歴、評価、配置や異動の履歴、資格などを、経営や人事の意思決定に使える形でまとめて扱います。

    重要なのは、情報の量を増やすことではなく、社内で同じ意味として使えるように人材データとしてそろえることです。たとえば職種名や等級、部門名の呼び方がシステムごとに異なると、数字を集めても比較や判断に使えません。まずは「社内で共通に使う呼び方・区分・数え方」を決めることが土台になります。

    あわせて、更新の頻度や担当、権限を明確にし、日常業務の流れの中で自然に最新情報が反映される運用に落とし込みます。最初からすべてを網羅するのではなく、重要な指標に必要な最小限の項目から始めると、定着と改善が進みやすくなります。

    関連記事|タレントマネジメントとは|企業がいま取り組むべき理由と具体施策をわかりやすく解説


    スキル可視化とリスキリングプログラム

    次に取り組むのが、事業に必要なスキルを明らかにし、現状との違いを把握することです。将来の事業で求められる力と、従業員が今持っている力を比べることで、どこを強化すべきかが見えてきます。

    この差を埋める手段が、研修やOJT、外部学習などのリスキリングです。ポイントは、学ぶこと自体を目的にしないことです。学習の成果が評価や配属、処遇に反映され、学んだ後に新しい仕事に挑戦できる機会が用意されているかどうかで、投資の効果は大きく変わります。

    対象者の選び方、学習内容、学ぶ時間の確保、学習を後押しする仕組み、配置の見直しまでを一体で設計し、進捗を定期的に確認しながら調整していくことが重要です。

    関連記事|リスキリングで何を学ぶ?推進のメリットからおすすめ資格まで詳しく解説


    従業員エンゲージメントの継続的な測定

    従業員エンゲージメントとは、従業員が仕事や組織にどれだけ前向きに関わっているかを示す状態を指します。人的資本経営では、この状態を継続的に把握し、改善につなげることが求められます。

    年1回の大規模調査に加えて、四半期など短い間隔で簡易的に状況を確認することで、変化を早めに捉えられます。結果をもとに要因を整理し、打ち手を講じ、効果を確認する流れを定例化すると、改善が積み上がります。

    エンゲージメントは戦略との結びつきが説明しやすい指標でもあります。経営会議の議題として扱い、目標とあわせて管理することで、情報開示にもそのまま活用しやすくなります。

    関連記事|従業員エンゲージメント向上施策とは?7つの施策と測定指標を解説!


    評価制度の見直し(役割・仕事内容を基準にした評価)

    人的資本経営では、評価制度も重要な要素になります。人材への投資を成果につなげるためには、仕事の内容や役割に応じて、何を期待しているのか、どの水準を目指すのかを明確にすることが欠かせません。

    この考え方を整理する際に用いられるのが「ジョブ型」という言葉です。ここでいうジョブ型とは、雇用形態を切り替えることではなく、仕事内容や役割を軸に、評価の基準をはっきりさせるという意味です。

    何ができることを期待しているのか、その達成度をどのように評価し、処遇にどう反映するのかを明確にすることで、必要な力を身につける学びや、新しい仕事への挑戦が進みやすくなります。

    あわせて、社内公募や異動の仕組みも整え、人材が固定しない状態をつくることが重要です。評価の考え方と、社外に説明する方針や指標をそろえておくことで、社内運用と社外説明のずれも小さくできるでしょう。


    リーダー育成とサクセッションプラン

    将来の経営や事業を担う人材を計画的に育てることも、人的資本経営の重要な施策です。重要なポジションごとに、どのような人材が望ましいかを定め、候補者、育成の進め方、次に任せる時期の見立てまでを明確にします。

    進捗を定期的に確認し、「選ぶ」「育てる」「任せる」を計画的に回すことで、属人的にならない後継者育成が可能になります。トップや取締役会の関与の仕方、経営会議での報告内容、指標の置き方まで決めておくと、継続しやすくなります。


    人材ポートフォリオ分析による戦略的配置

    人材ポートフォリオ分析は、事業戦略に必要な人材像を起点に、現在の人材構成を整理し、不足や偏りを把握する考え方です。スキル、人員数、コスト、年齢構成などを組み合わせて見ることで、どの領域を強化すべきかが分かります。

    不足への対応は、採用、育成、配置転換、外部人材の活用などを組み合わせて考えます。短期は外部の力で補い、中期以降は育成で内製化するといった、時間軸を踏まえた設計が現実的です。

    配置はゴールではありません。受け入れ側の体制や役割が整っていないと成果は出にくいため、仕事の切り出しや支援体制まで含めて設計することで、人的資本への投資効果が表れやすくなります。


    人的資本経営の課題

    人的資本経営の課題

    人的資本経営を進める際には、データ、制度、運用、組織横断といった複数の要素が同時に関わるため、つまずきやすいポイントがいくつかあります。多くの場合、問題の原因は意欲の不足ではなく、構造の複雑さにあります。

    人事だけで完結せず、事業部門、情報システム、経営企画など多くの関係者が関わる中で、全体像を描かないまま進めると、部分的な最適化にとどまり、成果につながりにくくなります。ここでは、特に起こりやすい課題を整理します。


    部門ごとに散在する人材データの統合の難しさ

    人事・労務・各事業部門に人材データが分かれて管理されていると、項目名や意味、更新の頻度や粒度がそろわず、同じ基準での集計や比較が難しくなります。

    この状態を放置すると、データは存在していても意思決定に使えません。まずは「どの項目を、どの意味で、誰が、いつ更新するのか」を社内でそろえ、あわせて品質管理や確認の手順まで含めて整えることが重要です。人材データの統合は、システムの問題というより、使い方の共通理解をつくることが出発点になります。


    大量データを扱うための運用フローが整備されていない

    人的資本のデータは、一度集めて終わりではありません。採用や異動、評価、育成のたびに更新が発生するため、運用の仕組みがないと情報はすぐに実態とずれていきます。

    収集、更新、確認、承認といった流れを決めずに進めると、分析や開示のタイミングで慌てて修正が必要になり、負担が増えます。四半期ごとの更新予定や確認の手順をあらかじめ決め、経営報告や有価証券報告書、統合報告書で使う情報が食い違わないよう、段取りをそろえておくことが重要です。


    既存制度との整合性調整に時間が取られる

    人的資本経営を進めると、等級、評価、報酬、配置、教育、労務といった既存制度とのずれが見えやすくなります。これらの制度は、長年の運用や合意の積み重ねによって成り立っているため、変更には時間と調整が必要です。

    一度にすべてを変えようとすると、現場の混乱や反発を招きやすく、取り組みが停滞することもあります。現実的には、対象となる職種や部門を絞って小さく試し、運用を通じて得られた学びを整理しながら段階的に広げていく方が定着しやすくなります。

    また、制度変更では設計以上に、現場への移行が難所になりがちです。評価や賃金改定のタイミングに合わせて、背景や狙いを丁寧に説明し、研修や問い合わせ対応まで含めた移行計画を用意することで、現場の不安を抑えながら進めやすくなります。


    経営層向けレポーティングの高度化に工数がかかる

    経営層が求めるのは、数字の一覧ではなく、戦略とのつながりが分かる情報です。どの施策が、どの指標の変化を通じて成果につながっているのかを、仮説と結果の流れで示す必要があります。

    そのためには、指標の意味づけや集計の考え方、見せ方、全体のストーリー設計が欠かせません。担当者の工夫に頼った集計を続けると負荷が高まり、継続が難しくなります。定例の会議体に合わせて更新のリズムを決め、データの取り込みから集計・表示までの手順をそろえることで、工数を抑えながら意思決定に使えるレポートを安定して提供できます。


    グループ企業間での基準統一が難しい

    グループ経営を行っている企業では、グループ企業ごとに制度や用語、システムが異なると、同じ指標でも意味がそろわず、比較や開示が難しくなります。特に職種や等級の呼び方が違うと、数字の解釈に差が生まれます。

    統一を進める際は、最初からすべてを合わせるのではなく、開示や経営管理で必ず使う指標を中心に、共通の最小セットを決めることが現実的です。その上で、各社固有の項目は追加として残します。統一の水準を段階的に高めることで、現場の運用を止めずに比較しやすさを向上させられます。


    運用の属人化やプロジェクトの長期化

    人的資本経営は関係者が多く、担当者の経験や工夫に頼り過ぎると、引き継ぎのたびに止まりやすくなります。特定の人しか分からない手順や判断が残ると、異動や退職のたびに立て直しが必要になります。

    これを防ぐためには、手順や判断の基準を文書化し、役割と責任を明確にして、誰が担当しても同じように回る形をつくることが重要です。あわせて、達成時期を区切った計画と進捗を確認する指標を用意すると、取り組みが長期化しにくくなります。

    日常的に発生する定型業務については、外部の力を活用することも選択肢です。人事は制度設計や説明、現場との対話といった付加価値の高い業務に時間を配分し、運用は品質と継続性を重視して仕組みとして定着させることで、全体のスピードが上がります。


    人的資本経営を自社で強化するステップ

    人的資本経営を自社で強化するステップ

    人的資本経営は、一度に完成させるものではありません。目的の整理からデータ基盤、運用、制度、レポートまでを段階的に整え、運用しながら改善を重ねていく取り組みです。

    重要なのは、やりたい施策から始めるのではなく、何のために取り組むのかを起点に設計することです。小さく始めて回し、成果と課題を見ながら対象範囲と精度を広げていくことで、開示と実態づくりを両立しやすくなります。

    ここでは、人的資本経営の効果的な進め方を以下のステップ順に解説します。


    STEP1:目的・期待効果の整理(事業戦略との紐づけ)

    最初に、事業戦略や経営課題を起点に、人的資本で解くべきテーマを明確にします。たとえば、重点事業に必要なスキルが足りない、若手の離職が続いている、管理職層が十分に育っていないといった、経営への影響が大きい論点に絞ります。

    次に、何が改善されれば成功といえるのかを整理します。中長期で目指す成果と、四半期など短いスパンで確認できる進捗を分けて考えると、運用しやすくなります。対象範囲は全社一律ではなく、部門や職種、等級など、変化が見えやすい単位から始めることがポイントです。


    STEP2:必要データの洗い出しと統合基盤づくり

    目的が定まったら、その判断に必要なデータを逆算します。どの情報を、どの意味で使うのか、どこから取得し、誰が更新するのかを整理します。集められるデータを広く集約するのではなく、意思決定に使うものに絞ることが重要です。

    統合はシステム連携を基本とし、手入力はできるだけ減らします。業務の流れの中で自然にデータが更新される設計にすると、品質が安定します。あわせて、個人情報やセキュリティの扱い、アクセス権限、利用目的を明確にし、安心して使える環境を整えます。


    STEP3:データ活用プロセスの設計(収集→分析→意思決定)

    データは集めるだけでは意味がありません。どの指標を、どの頻度で確認し、誰が読み取り、どの会議で判断し、誰が実行するのかまでを一連の流れとして設計します。

    役割と責任を明確にすることで、分析結果が資料で止まらず、具体的な施策につながります。あわせて、仮説、打ち手、確認指標、結果、見直し案をセットで振り返る型をつくると、人的資本の取り組みを経営管理として回しやすくなります。


    STEP4:制度・ツールの見直しとガバナンス強化

    データ活用を前提に、評価、配置、育成などの制度を整合させます。制度がばらばらなままだと、データが集まっても行動が変わらず、投資が成果につながりにくくなります。

    ツールを導入する場合は、目的に対して必要な機能を見極め、導入後の運用負荷まで含めて設計します。あわせて、ルールや権限、変更の手続きを定めておくことで、指標や定義を見直す際も混乱を防ぎ、継続運用が安定します。


    STEP5:人事だけでなく部門も巻き込む運用体制

    人的資本経営は、人事部門だけでは完結しません。事業部門、経営企画、情報システム、広報やIRなど、意思決定とデータに関わる組織を巻き込むことが欠かせません。

    現場の協力を得るには、入力や更新を日常業務の中に組み込み、負荷を下げる工夫が必要です。評価面談や異動のタイミングに合わせて確認するなど、自然に回るリズムをつくると定着しやすくなります。目的やメリットを丁寧に共有し、納得感を持って使われる状態をつくることが重要です。


    STEP6:効果指標(KPI)設定と経営層レポート作成

    最後に、成果指標と進捗指標を整理し、経営戦略との関係が説明できる形に整えます。育成投資を増やした結果、どのスキルが補われ、どの配置や成果につながったのかまで示せると、意思決定に活かしやすくなります。

    経営層向けのレポートは、重要指標の変化、主な要因、判断が必要な論点、次のアクションを簡潔にまとめるのが効果的です。定例化し、報告で終わらせず次回までの対応を決める運用にすることで、人的資本経営が自然と経営管理の一部になります。


    人的資本経営を推進するためのポイント

    人的資本経営を推進するためのポイント

    人的資本経営は、制度対応、データ整備、現場運用、グループでのそろえ方といった複数の要素が同時に関わるため、進め方を誤ると複雑になりがちです。重要なのは、完璧な設計を最初から目指すことではなく、成果が出やすい順序で進め、続けられる運用を先につくることです。

    全社でそろえる部分と現場に任せる部分のバランスを取り、運用の負荷まで見込んだ設計にすることで、実務と集計の両立がしやすくなります。


    短期・中期・長期のロードマップで段階的に進める

    人的資本経営は、一気に完成させようとすると行き詰まりやすくなります。短期では、まず「回る状態」をつくることに集中します。主要な指標の定義をそろえ、更新の運用を立ち上げ、現状を把握できるところまでを目指します。

    中期では、スキルの見える化や学び直し、評価や配置の見直しなど、事業に直接効く施策を実装し、効果検証のサイクルを回して定着させます。

    長期では、予測やシナリオといった高度な分析や、グループ全体での最適化へと広げていきます。最初から全社最適を狙わず、成果が見えやすい単位で前進させることが、結果として近道になります。


    部門間やグループ企業横断でのデータ標準化

    比較や集計を成り立たせるためには、データの標準化が欠かせません。指標の意味、コードの呼び方、職種や等級の区分、スキルの整理方法など、最低限そろえるべきものを決めておく必要があります。

    一方で、すべてを厳密に統一しすぎると、現場の運用が回らなくなることもあります。そのため、全社共通で使う最小限の項目は固定し、それ以外は各部門や各社の事情に応じて追加できる設計が現実的です。

    標準は一度決めて終わりではなく、事業や制度の変化に合わせて見直す前提で、影響範囲を管理しながら更新できる体制を整えておくと、長期的に安定します。


    現場が運用できるレベルに落とし込む仕組み

    人的資本経営を定着させるには、現場の負担を最小限に抑えることが重要です。分かりやすい画面設計や自動連携、選択式入力などを活用し、更新が負担にならない状態を目指します。

    更新のタイミングも業務に組み込み、評価面談や異動の際にまとめて確認するなど、運用のリズムを決めておくと回りやすくなります。あわせて、更新率や期限の遵守状況といった運用面の指標を見える化し、改善を続けることで、経営管理に耐えるデータ品質を保ちやすくなります。


    業務負荷の高い領域は外部リソースを活用する

    人的資本経営では、データ整備、定常的な更新、レポート作成など、工数のかかる業務が発生します。これらをすべて内製で抱えると、人事が疲弊し、戦略的な検討が後回しになりがちに。

    作業量が見えて手順を標準化できる業務は、外部リソース活用によって効率化や品質の安定が期待できます。属人的な運用から脱却できる点もメリットでしょう。

    その分、人事は事業戦略と連動した人材戦略の設計や制度の見直し、育成の企画、現場との対話といった付加価値の高い領域に集中できます。運用は標準化と継続性、人事は戦略とコミュニケーションに注力する役割分担ができるかどうかが、推進スピードと成果を左右します。


    「パーソルの人事BPO」が人的資本経営の基盤整備を支援します

    「パーソルの人事BPO」が人的資本経営の基盤整備を支援します

    人的資本経営は、採用・育成・評価・配置を、事業戦略と一体で再設計する取り組みです。最初は現状を数値で捉え、最大のボトルネックの解消に集中します。次に、短期のパイロットで手応えをつくり、中期の制度設計へ進めます。最後は、KPIを軸に学びを仕組みに残すことで、改善が続く状態を整えます。

    同時に、日々の人事オペレーションは確実に負担が増します。そこで、外部化・部分委託を賢く使い、社内リソースを戦略に振り向けることが、人的資本経営を前に進める最短ルートになります。

    「パーソルの人事BPO」サービスをご活用いただくと、人的資本経営の実現に向けた人事戦略の設計からBPO実装までを、以下のような形で継続的に支援します。

    • 給与・勤怠・社保・年末調整などの定型業務をBPO化し、安定した運用体制を構築
    • 採用・人材開発・人事管理といった人事施策の運用を、協業の形で伴走
    • 人材データの可視化やKPI設計を支援し、改善サイクルの定着をサポート

    戦略づくりだけ、運用だけに分けるのではなく、「設計→運用→改善」をつなげて成果に変えられる点が特長です。

    ご興味のある方は、まずは無料でダウンロードできる資料をご覧ください。また、自社の状況に合わせた進め方のご相談も可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

    【パーソルの人事BPO】のご紹介

    【パーソルの人事BPO】のご紹介

    「パーソルの人事BPO」では、人事戦略策定から運用体制構築までを一気通貫でご支援します。単なる業務代行ではなく、運用設計と実務支援を組み合わせ、人的資本経営を実現。本資料では、「パーソルの人事BPO」について詳細をご紹介しています。

    このページをシェアする

    • Xシェアボタン
    • Facebookシェアボタン
    • Linkedinシェアボタン