経費精算の効率化が必要な理由
経費精算の効率化は、企業全体の生産性向上に欠かせません。手作業中心の運用では、主に以下のような課題が生じます。
- 申請・承認に時間がかかり、担当者の負担が大きい
- 紙やExcelでは、記入ミス・紛失・承認遅延が発生しやすい
- 出張やテレワーク時に申請が滞り、業務スピードが低下する
- 電子帳簿保存法・インボイス制度への対応が煩雑になる
そのため、経費精算をシステム化することで、申請~承認がスムーズになり、ミスを防ぎながら業務負担を軽減できます。結果として、コスト削減や働き方改革にもつながり、企業運営において必須の取り組みと言えます。
経費精算の非効率を生む4つの原因
経費精算はどの企業でも必要な業務ですが、非効率の原因となる4つのポイントが存在します。
- 属人的な処理・チェック体制の未整備
- 紙やExcelに依存したアナログ処理
- ルール・承認フローの複雑化
- 領収書やレシートの管理が煩雑
ここでは、経費精算の非効率を生む4つの原因を詳しく解説します。
属人的な処理・チェック体制の未整備
経費精算における確認作業が担当者の経験や判断に依存している場合、属人化が進みやすくなります。この状況では、承認者ごとに判断基準が異なり、差し戻しや承認遅延が発生しやすくなります。
また、ルールが曖昧なままだと申請者が迷い、処理の標準化が進まない点も課題です。手作業中心でミスや不正防止のためのチェックに時間がかかり、生産性が低下します。
紙やExcelに依存したアナログ処理
紙やExcelを前提とした経費精算は、記入・押印・提出などに時間がかかり、効率が悪くなりがちです。Excel管理ではフォーマットの乱れや関数ミスが起きやすく、データの一元管理が困難です。
リモートワークにも対応しづらく、申請が出社に依存するケースも見られます。さらに、紙の保管には紛失リスクやセキュリティの懸念があり、紙・印刷・保管コストも発生します。
ルール・承認フローの複雑化
部署や案件ごとに異なる承認ルートが存在すると、承認者が増え、処理が滞りやすくなります。ルールが細かすぎたり、周知が不十分だったりすると、誤申請や差し戻しの増加につながります。
また、ルール改定が経理主導で進むことで現場との乖離が生まれやすく、フローが属人化したままでは、異動や退職によってノウハウが失われやすい点も問題です。
領収書やレシートの管理が煩雑
領収書を紙のまま取り扱う運用では、紛失や破損のリスクが常に伴います。また、経理担当者が大量の領収書を一枚ずつ確認・仕訳する作業は大きな負担となります。
電子化がされていない場合、税法上の保存要件に対応しづらく、出張が多い従業員は提出が遅れがちです。そのほか、交通系ICカードや法人カードと連携がない場合、照合作業がさらに増え、業務が複雑になります。
経費精算の効率化で得られる3つのメリット
手作業や紙の運用を見直し、経費精算を効率化することで、全体の業務効率が大きく改善します。
- 経理部門の負担軽減と戦略業務へのシフト
- 従業員の満足度・モチベーション向上
- コスト削減とガバナンス強化
ここでは、経費精算の効率化で得られる3つのメリットを解説します。
経理部門の負担軽減と戦略業務へのシフト
経費精算を効率化することで、経理部門の手作業が大幅に削減されます。従来の紙やExcelによる運用では、記入漏れや差し戻しが多く、確認作業が経理担当者に集中していました。
しかし、ワークフローの整備やルールが明確化されることで、チェック作業が自動化され、承認プロセスがスムーズになります。これにより、経理担当者は数値分析や経営改善への提案といった付加価値の高い業務に時間を割けるのです。
特に月次決算の早期化や処理精度の向上が期待でき、さらにBPOと連携することで業務分散も進めやすくなります。
従業員の満足度・モチベーション向上
経費精算が複雑で時間がかかることも、従業員のストレスやモチベーション低下の原因です。そこで、申請ルールを明確化しフローを簡略化することで、従業員は本来の業務に集中しやすくなります。
また、申請から承認までの手順が標準化されることで、迷いや心理的負担が減少します。精算がスムーズに進み、ルールが明確であることは従業員の信頼感を高め、はたらきやすい環境づくりができるでしょう。
さらに、BPOを活用して経費処理や照合作業を外部に委託することで、社内の人的負荷を抑え、従業員体験(EX)の向上にもつながります。
コスト削減とガバナンス強化
経費精算の効率化は、コスト削減と統制強化にも効果があります。ペーパーレス化によって紙・印刷・保管スペースなどのコストを削減できるほか、承認経路を統一することで不正経費の混入防止が可能です。
また、ワークフローや電子帳簿管理によって履歴が可視化されるため、内部統制が強化され、コンプライアンス遵守が徹底されます。さらに、外部BPOを活用することで定型業務を効率化でき、組織全体としてのガバナンスが取りやすくなります。
経費精算を効率化する流れ【6STEP】
経費精算を効率化するためには、段階的な取り組みが重要です。手順を整理することで、現場の負担を減らしながらスムーズな運用を実現できます。
- 経費精算ルールを整理・明確化する
- 現場の声を取り入れたルール設計を行う
- 申請・承認フローを最適化する
- 周知・定着のための教育とサポート体制を作る
- 不正・ミスを防ぐチェックの仕組みを整える
- 業務フローを見直す継続的な改善サイクルを準備する
ここでは、経費精算を効率化する流れを解説します。
1.経費精算ルールを整理・明確化する
経費精算を効率化するためには、ルールの整理が必要です。ルールが曖昧なままだと、申請者は迷い、差し戻しが発生しやすくなります。経費項目・上限額・申請期限などを明確に文書化し、部署ごとのルール差も統一しましょう。
また、不正防止のために金額上限や申請内容の自動チェックを設定します。ルール改定の際は現場の意見も取り入れ、形骸化しない実効性のある内容へ整えることが重要です。
2.現場の声を取り入れたルール設計を行う
実際に経費を利用するのは現場であるため、経理部門だけでルールを作成すると運用に無理が生じます。営業や管理部門などの利用者の意見を反映することで、不要な承認作業や複雑な手順を減らしましょう。
コンプライアンスは守りつつ、使いやすさとのバランスを取ることが重要です。また、外注やBPOを活用する場合も、委託先とルールを統一することで効率化の効果を最大化できます。
3.申請・承認フローを最適化する
ワークフローシステムを導入し、申請・承認を電子化することで、紙やExcel管理から脱却できます。スマホやPCから承認できれば、出張やリモート環境でも処理が止まりません。承認ルートの自動設定により、承認漏れや順序ミスを防止できます。
さらに、会計システムと連携することで仕訳・支払処理を自動化し、データが一元管理されます。履歴がクラウドに保存されるため、紛失防止や監査対応にも有効です。
4.周知・定着のための教育とサポート体制を作る
ルールやフローを整備しても、従業員が理解・定着していなければ効率化は実現しません。そのため、研修やガイドライン、FAQを整備し、利用者が迷わず申請できる環境を整えることが重要です。新入社員や異動者に向けた教育、動画マニュアルの提供も効果的です。
また、質問対応窓口を設けることで、従業員が安心して制度を利用でき、誤申請や差し戻しを減らせます。
5.不正・ミスを防ぐチェックの仕組みを整える
経費精算システムの自動照合やアラート機能を活用することで、二重申請や不正利用を抑制できます。領収書データをOCR(光学文字認識)で読み取ることで、入力ミスや金額の不一致を削減できます。法人カードの明細との自動突合も、不正防止に有効です。
さらに、経理担当者のチェックポイントを明文化することで属人化を防ぎます。承認履歴やログはシステム上に残るため、監査にも対応しやすくなります。
6.業務フローを見直す継続的な改善サイクルを準備する
経費精算は一度改善して終わりではなく、運用後の改善が重要です。運用データや現場の声をもとに、承認ルートや勘定科目を定期的に見直し、効率化の成果を数値で把握します。ボトルネックを特定し改善策を講じることで、業務全体の成熟度が高まります。
外注を活用している場合は、定期的なレポートや改善提案を受けながら最適化を進めましょう。PDCAサイクルを仕組み化し、経理部門が主導して継続的な向上を図ることが重要です。
経理担当者の負担を減らす「BPO」も選択肢の一つ
経費精算や記帳業務の負担が大きい場合、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用することは有効な選択肢です。
外部の専門パートナーに業務を委託することで、作業の標準化とミス削減が進み、経理担当者はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。また、インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正にもスムーズに対応できるため、コンプライアンス強化にもつながります。
結果として、自社社員はコア業務に注力でき、生産性と組織全体のパフォーマンスを向上できるでしょう。
経理アウトソーシングの導入についてより詳しく知りたい方は、経理アウトソーシングの基本や外注のメリット・デメリット、活用方法もご確認ください。
経理の業務改善まるわかりBOOK
経費精算の効率化を実現した企業の成功事例
経費精算の効率化は、属人化の解消や残業時間削減、事業継続性の確保など、さまざまな効果につながります。
- 中外製薬株式会社
- 光洋マテリカ株式会社
- 株式会社中村屋
ここでは、実際にBPOやシステム活用により改善を実現した3社の事例を紹介します。
中外製薬株式会社|属人化解消とRPA活用で経費処理の安定運用を実現
中外製薬株式会社は、属人化していた経費処理業務の標準化と安定運用を目指してBPOを導入しました。病院や施設ごとに異なる伝票形式への対応など、業務の複雑性が高く、派遣労働者の教育や管理にも課題があったためです。
BPO導入後は、プロセスの可視化と改善により業務がシンプルになり処理効率が大幅に向上しました。また、独自に導入したRPAと人を組み合わせることで経費処理の一部を自動化し、業務時間の削減につながっています。
さらに、報告会や常駐対応により信頼関係を築き、コロナ禍でも安定した運用体制を維持しました。製薬業界の特性を踏まえた提案に加え、他業界の知見も活かした改善が可能になっています。
本事例についてより詳しく知りたい方は、中外製薬株式会社の導入事例もご確認ください。
光洋マテリカ株式会社|電子化とBPO連携で残業時間を約50%削減
光洋マテリカ株式会社では、紙ベースの請求書処理が負担となり、業務量の繁閑差に対応できない課題を抱えていました。担当者の業務負荷が高く、スキルアップが難しい状況にありました。
BPOを導入することで、請求書チェックから仕訳作成までを一括処理できる体制を構築し、業務負荷を大幅に軽減しています。その結果、担当者の残業時間は約50%削減され、他業務に時間を振り分けられるようになりました。
さらに、電子帳簿保存法への対応や在宅勤務体制にもスムーズに移行でき、専門知見を活用した改善提案も継続的に受けられるようになりました。
本事例についてより詳しく知りたい方は、光洋マテリカ株式会社の導入事例もご確認ください。
株式会社中村屋|会計業務の外部委託で照合作業を効率化、業務範囲を全国に展開
株式会社中村屋では、照合業務に多くの時間がかかり、全体効率が低下していたことが課題でした。BPOを初めて導入した目的は、東京事業所の移転をきっかけに、固定費を変動費へ転換するためです。
導入後は照合作業のスピードが大幅に向上し、人員が減っても業務を維持できる体制が整いました。一人あたりの対応範囲も2倍に拡大し、生産性が向上しています。さらに、毎月の定例会で課題を共有し、改善提案を継続的に受けられる体制が構築されました。
成果が評価され、西日本エリア(大阪・福岡)にも業務を展開し、全国的な業務集約を実現しました。
本事例についてより詳しく知りたい方は、株式会社中村屋の導入事例もご確認ください。
経費精算業務を効率化したいならBPOサービスの導入もおすすめ!
経費精算が非効率になる背景には、記入ミスや承認遅延だけでなく、属人化や紙・Excel依存といった業務フローや運用ルールの設計に課題があります。そのため、経費精算を効率化するには、ルールの整理やフローの標準化、電子化による仕組み改善が欠かせません。
しかし、社内だけで改善を進めることが難しい場合もあります。特に、法改正対応や繁忙期の負荷、担当者のスキル偏在など、経理部門の課題は多いです。
こうした背景から、経費精算や記帳業務を外部に委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用する企業が増えています。
中でも、パーソルビジネスプロセスデザインの経理BPOは、以下の理由から高く評価されています。
- 経験豊富な人材
- 高い業務品質と効率化
- 繁閑・スキルに応じたリソースデザイン
BPOを活用することで、属人化の解消・法制度対応の迅速化・コア業務への集中など、複数の課題を同時に解決できます。
経費精算の負担を軽減し、業務品質とスピードの両立を目指す企業は、BPO導入を一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。