「人事に課題があるのは分かっている。ただ、何から手をつければいいのか分からない」組織が巨大化するほど、また、製造部門などの独立性の高いセクションを抱えた大規模メーカーほど、人事課題は複雑に絡み合い、相談先すら定まりません。そうした難易度の高い課題に対し、運用現場での豊富な経験と、事業本部の壁を越えたフラットな提案力を武器に、経営層の想いを現場の「動く仕組み」に翻訳して解決に導く戦略人事実現のスペシャリストにお話を伺いました。
「何から手をつけるべきか」が定まらない段階から
「何から手をつけるべきか」が定まらない段階から
ーーどのような課題を持ったお客様が多いですか?
細野:現在、特にコーポレート部門、中でも人事領域でのご相談が非常に増えています。大きなテーマとしては「戦略人事への転換」ですね。人的資本経営や戦略人事という言葉は数年前からありましたが、最近では株主からの見られ方が大きく変わり、人への投資を資本としてどう捉えているかを具体的に示すことが、企業価値に直結するようになってきました。 しかし、現場の実態は非常に厳しいものです。社会情勢や法改正等、人事に求められる役割がどんどん増え、やるべきことは山積みになっているのに、コスト部門の位置づけから間接部門の人数は増えません。そのため、効率化を徹底しないと仕事が回らないという状態が顕著になっています。そこで、社員でなくてもできるノンコア業務は外部に任せて、変化に対応するためのコア業務にリソースを集中させたいというご相談が入ってくるわけです。 また、メーカーのお客様特有の課題として「本社のガバナンスが工場に効いていない」という点も挙げられます。たとえば、各工場の独自判断で通勤交通費の払い方が異なっていたり、工場の人事組織が組織長の下にあって本社人事と連動していなかったりと、業務が断絶しているケースが多く見られるのです。こうした歪みにメスを入れ、いかに標準化していくかという点に頭を悩ませているお客様が、とても多いと感じています。
ーーそうしたご相談を、どのような立場で受けているのでしょうか?
細野:私が所属するアカウントエグゼクティブ(AE)本部は、特定の事業本部の売り上げに縛られることなく、フラットな立場から本当の意味でお客様にとって最適なサービスが何かを考えられる組織です。お客様のご要望に対して「BPOのこの部分とCXのこの部分を組み合わせるのが一番良い」といった発想が自由にできる。ここがAE本部の醍醐味ですね。 背景には、2024年10月に3社が統合して今の会社になったときに、事業が縦割りのままでは期待する変化が起きにくいという事情がありました。社内及びグループ内の組織との交流を図り、各組織のケイパビリティを理解したうえで、BPO(事務)、CX(問い合わせ対応)、PWS(システム運用)といった各事業の知見や能力を横断的に活用し、相乗効果を最大化させる。加えて、大手のお客様の経営アジェンダという、より高いレイヤーの課題に向き合い、大きなテーマに基づくプロジェクトを丸ごと受けていく。それがAE本部の役割です。
「絵に描いた餅」で終わらせない
「絵に描いた餅」で終わらせない
ーーご自身の強みはどこにありますか?
細野:私の専門性は、ひと言でいえば「組織と人のつながりを強化し、抽象的な課題を具体実運用へ落とし込む力」です。単に「戦略を立てる」だけではなく、それをどうやって現場で動かしていくかという「実装」の部分に強いこだわりを持っています。
私たちが提供するのは、単一のシステム導入ではありません。①組織・人、②業務、③システム、④規定・制度という4つの観点で、お客様にとって何が最適かを俯瞰的に見て、トータルなソリューションを設計することに価値を置いています。世の中には、システムだけ、あるいは制度作りだけを行うような会社はたくさんありますが、私たちは、これら4つの領域をまたいで最適な解を出すことができるのです。だからこそ、まだ課題が言葉になりきっていない、ぼんやりとしたご相談の段階からお引き受けできる。「これは制度の話なのか、システムの話なのか」という切り分けからご一緒できることが、私の立ち位置だと思っています。
ーープロジェクトはどのように進めていますか?
細野:私たちのプロジェクトの進め方は、抽象的なオーダーを一度具体案に落とし込み、経営層が判断できる形に戻すというプロセスを大切にしています。たとえば、「社員が何をやっているかわからないが、リソースをシフトしたい」という抽象的な課題に対しては、地道に詳細調査を行い、組織の構造や業務時間の使い方を可視化します。そのうえで、具体的なシステム導入やリソースシフトのロードマップを作り、本部長が経営会議で話せるようなドキュメントとしてレポーティングしていきます。
ここで、いわゆる「絵に描いた餅で終わる提案」と「実装できる提案」の分かれ道になるのが、業務移管のプロセスをどこまで責任を持って見ているかという点です。コンサルティング会社は「あるべき姿」を描くところまではできますが、実際に運用する人はスキルも前提知識も異なるため、それを実現できるとは限りません。マニュアル一つとっても、社員なら暗黙知で分かっていたことが外部スタッフには伝わらないといった壁が必ず現れます。そこを掘り起こし、実際に運用が回る検証までを責任を持って契約に含めることが、私の考える「実装できる提案」です。
また、プロジェクトを成功させるために、私はあえてお客様に「嫌なこと」もストレートに伝えるようにしています。様々な理由から納期が遅れそうなときには「このままでは無理です」とはっきり申し上げます。これは私がお付き合いしているお客様の担当者が、その先に関わる多くの関係組織に対して同じ温度感で説明し続けられるようにするための準備でもあるのです。
そして、何より重要なのは「目的を見失わないこと」ですね。様々な局面で判断に迷った時、ステークホルダー全員を見て最短でゴールにたどり着ける方法は何かを考えます。ときには「これはお客様にやっていただいた方が早いです」と踏み込んだお願いをすることもありますが、それもすべては目的を完遂させるためなのです。
大規模プロジェクトを成功へ導く、お客様との長期的な信頼
大規模プロジェクトを成功へ導く、お客様との長期的な信頼
ーーキャリアの礎となった出来事はありましたか?
細野:これまでのキャリアを振り返ると、運用マネージャーとして現場の立ち上げや業務改善に深く携わってきた経験が現在の土台になっています。事業部をまたぐ400人規模のプロジェクトを統括したり、リカバリーが必要なプロジェクトでは現場に降りてリーダーを務めたりと、かなり大掛かりで大変な現場を経験してきました。
この経験があるからこそ、AEとなって、受注後にPMとして現場の部隊にタスクを割り振る際にも、受け手が何を気にするか、どう伝えればスムーズに動いてくれるかが肌感覚で分かるのです。社内のメンバーからも「細野さんは運用のことが分かっているから安心だ」と信頼を得ており、組織間の「接着剤」として機能できていると感じています。
ー特に印象に残っているプロジェクトは、どのようなものですか?
ー特に印象に残っているプロジェクトは、どのようなものですか?
細野:印象に残っているのは、大手自動車メーカー様における従業員約2万人規模の人事BPOプロジェクトです。この案件では、BPO、CX、PWSCの3つの事業が連携する非常に大掛かりな体制を構築しました。
このプロジェクトを進める際に、私は「プロジェクト憲章」というルールブックの作成に時間をかけたのですが、その理由は、関係者が非常に多く、数年にわたるプロジェクトでは必ず担当者の交代が発生するからです。「なぜこのプロジェクトが始まったのか」「何か問題が起きたときは誰が決めるのか」となったときに、立ち戻れる拠り所が必要でした。これを一緒に作り上げる過程で、お客様が大切にしているこだわりや潜在的なリスクも共有でき、今では何か問題が起きた際も憲章に立ち戻って判断できる安定した体制が築けています。
お客様と向き合う際に心掛けていることはありますか?
細野:大手のご担当者が経営層に上申して決裁を取ったような大きな案件では、社内に向けて何をコミットしたのかを深く理解して動くことを心がけています。たとえば、「運用開始が1ヶ月遅れる」という事態が発生したとしましょう。それをお客様に説明する際には、単なるスケジュールの遅れではなく、その先で働く社員の方々の異動ができなくなるなど、経営的にどんな影響を及ぼすかを自分事として捉えて発言するようにしています。お客様と同じ目的・目標を共有し、会社の中でのコミットメントを実現するために動く。そうした姿勢に期待を寄せていただいていると感じています。
お客様からいただいて嬉しかった言葉はありますか?
お客様からは、よく「親近感と安心感がある」と言っていただけます。私はビジネスの場であっても、早い段階で距離を縮め、何でも話しやすい関係を作ることを意識してきました。お客様が思っているより二つ先回りして課題を解決したり、1週間かかるものを3日で仕上げたりといった地道な成果の積み重ねが深い信頼につながり、最終的には「細野さんがいうなら間違いない」といっていただけるような関係が、大型プロジェクトの成功へと繋がっているのだと感じています。
また、最近では、新規のお客様から「ChatGPTに相談したら、パーソルビジネスプロセスデザインに相談するといいよと言われた」という理由でお問い合わせをいただくこともあります。これまでの私たちの実績が、AIにも推奨されるほどの信頼を積み重ねてきた結果だと思いますね。
今後、どのようなことに挑戦していきたいですか?
これからは、今取り組んでいる人事領域だけでなく、経理や情報システム、法務といったコーポレート全般をパーソルに任せたいと言っていただける状態を作っていきたいです。組織の縦割りによって生じている無駄を、私たちが俯瞰的に見ることで解決し、より付加価値を高めていけるものと考えています。
また、人事のアクションが会社の生産性向上や業績といった経営指標(KGI)にどう直結しているのかを、社内でも証明できるような世界を作っていきたいですね。人事が取り組んだことによって人の定着が高まり、モチベーションが向上し、現場が活性化する。そうした事業戦略と人事が連動している状態を、私たちの支援を通じて実現していければと思っています。
AI時代には、時間を生み出すだけでなく、その空いた時間で社員の方々が本来のコア業務に向き合えるよう、リスキリングや業務の体系化までを伴走支援することが私たちの役割であり、構想策定から実装までを一貫して伴走できるパートナーであり続けたいですね。システムに業務を合わせるのではなく、お客様の現状や守るべきものを理解した上で、制約なく「あるべき姿」への実装を支援できる。それが、今後とも私たちの最大の価値になると自負しています。