CXとデータ活用による全体最適化でコンタクトセンターを利益創出部門へ
CXとデータ活用による全体最適化でコンタクトセンターを利益創出部門へ
カスタマーサポートの要となるコンタクトセンターは、CXを支える重要な部署でありながら、直接的な利益を生み出さない「コストセンター」として捉えられてきました。しかし、ナレッジマネジメントとDXの活用によって、そんな既成概念は過去のものになろうとしています。今回は、宮崎県を拠点にデジタル技術と地域愛を融合させ、コンタクトセンターを「プロフィットセンター」に転換するとともに、地域に根ざした大規模な雇用創出を実現しているスペシャリストにお話を伺いました。
ーー仕事の内容を教えてください
ーー仕事の内容を教えてください
私の現在の役割は、B2CやB2Bのヘルプデスク、コンタクトセンターの運用部門と宮崎センター管理部門の責任者です。所属している宮崎拠点にはヘルプデスク関連のさまざまな部署がありますが、私はCSカスタマーサクセスソリューション1部に属していて、元々は運用専門の部署でしたが、今期から宮崎センターの管理も担当しています。
私たちのミッションは、お客様の生産性を高めると同時に、データを有効活用して他では得られない「質の高い顧客体験(CX)」を提供することです。かつてコンタクトセンターは「コストセンター(費用ばかりかかる場所)」と見なされがちでしたが、私たちはそれを「プロフィットセンター(利益を生む場所)」へと変革させて次世代のコンタクトセンターを作る、そんな強い思いで日々の業務にあたっています。
私の専門性は、お客様の課題を「部分最適」ではなく「全体最適」で解決できるという点です。自分自身が、運用から人事、採用、教育、バックオフィスまでいろいろな業務を担当してきました。そうした経験に加えて、国際スタンダードを取り入れたコンタクトセンター運営のルールブックである「SCC」(※1)に則った運用を行うことで、人を増やさなくても成果が出る仕組みを構築することができます。
地方創生や雇用創出に関わるようになったのは、この仕事に携わってから地域が抱える課題を肌で感じるようになったことがきっかけです。自分の役割がスーパーバイザー、マネージャー、部長、と変わっていく中で社会課題に向き合うことも多くなり、地元のリーダーシップのあり方や、通勤環境の違いといった社会的な側面に目が向くようになりました。
たとえば関東では電車通勤が当たり前ですが、宮崎は完全な車社会です。そうすると、通勤中の読書による知識習得といった部分でも差が出てきます。こうした地域特性を理解し、宮崎という地域を良くしていくには、それこそ労働人口が減っている中でスキルに依存しない雇用を創出していくことが必要だと実感したのです。
地域とのつながりを深めるために意識しているのは、地域の企業間の勉強会や誘致企業の集まりに「顔を出すこと」と「コミュニケーションを絶やさないこと」です。誘致企業連絡協議会の理事も務めていて、IT業界の集まりや地域の連合会など、さまざまなコミュニティに参加し、地道に関係を築いていく。そこでの学びや出会いが、新しいクライアントの獲得や、困りごとの相談を受けるきっかけになっています。
※1 SCC:Support Center Certificationの略称で、HDI(Help Desk Institute)が提供するサポートセンター/コンタクトセンター向けの国際認証制度
スタッフの満足度が顧客の満足度にもつながる
ーー宮崎での取り組みは、どのようなものですか?
宮崎のお客様は、住宅関連から医療関連、IT関連など非常に幅広く、上場企業が大半を占めています。1つのPJTの規模は1人から多くて30人くらいになります。それらのお客様が抱える課題は、「コスト」「スピード」「人材の質」の3つに集約され、世の中の変化のスピードに合わせたサービスの提供や、技術の進化についていける人材を確保する必要があります。しかしそのためにはどうしてもお金が必要となるのですが、それほどコストをかけられないこともあり、どうしてもジレンマが発生します。また、多くのお客様が、ナレッジマネジメントができずに業務が属人化している状況も発生しています。
こうした状況に対して、労働人口の母集団が非常に少なくなっていることもあり、KCS(※2)を適用してナレッジを管理し、いかに情報を共有して、誰でもできる仕事を増やすかが大事だと思っています。かつてはタイピングのスピードが要求された仕事でも、今はITの力で文字起こしができますし、コンタクトセンターで応対にあたるスタッフに問い合わせ項目に関する専門知識がなくてもシステム(AI)が理解して回答が画面に表示されます。一番工夫しているのは、これまでスキルやノウハウの属人化によって生じていた課題を、ITソリューションの組み合わせで解決をするというところです。宮崎の運用チームメンバーは、大半がKCSの資格を持っているため、それが他には真似のできない私たちだけの強みだと考えています。
※2 KCS:Knowledge-Centered Serviceの略で、問い合わせ対応の過程そのものをナレッジ化し、組織全体で再利用・改善し続けることで、サービス品質と生産性を同時に高める運用手法
雇用創出の面で転機となったのは、新型コロナウイルスの流行です。その時点で急速に在宅ワークが促進され、業界的には、まだ遠い将来のはたらき方だと考えていたものが10年早く実現したという思いでした。センターまで来てはたらく必要があるとなかなか人が集まらなかったものが、在宅の全国採用ならば2名の募集に対して90名が応募してくるようになり、採用もサービス設計もセンターレスの運用を前提にすることが多くなりました。
一方で、ヘルプデスクやコンタクトセンターではたらく方々は、ほがらかで優しいという宮崎県民らしい気質をお持ちです。先輩が後輩に物を教える文化もあり、言いたいことが言えて、聞きたいことが聞けるという環境が、宮崎センターの強みになっています。センター運営そのものが、そうした地域に深く根ざしているなど、私たちが大切にしているのは「ES(従業員満足度)なくしてCS(顧客満足度)なし」という考え方です。良い雰囲気を作ってスタッフが気持ちよくはたらける環境を整えることが、巡り巡ってお客様への質の高いサービスにつながります。
そのための具体的な取り組みとして、ビル周りの清掃を行ったり、青島太平洋マラソンという大きなマラソン大会にボランティアとして参加して観光客にアピールしたり、「ITプラス」というIT企業の業界団体の集まりで盆踊りを一緒に踊る際にパーソルのTシャツや横断幕を作って100人規模で参加したりすることで、地域とのエンゲージメントも深めています。
さらにメンバーの教育という面で重視しているのは、正解を教えることよりも、自分でしっかり考えて説明できる力を育てることです。そして、再現性のある取り組みのあり方を意識させ、失敗してもそこから何を学び、どう再発を防ぐかという視点を持たせるようにしています。そのうえで、自分の役割をこなすだけでなく、全体を俯瞰できる広い視野を持つことの重要性を説いています。自ら優先順位をつけて、管理職なしでも仕事ができるような状態を作ることが理想ですね。
ーーお客様を支援するうえで気をつけていることは何ですか?
応答時間や就業率に基づくKPIではなく、顧客の体験によってサービスの質を評価するXLAという指標でユーザー満足度を計るという点です。そのためにも、データやナレッジマネジメントが重要であることを訴求し、ヘルプデスクやコンタクトセンターの運営品質を国際基準で認証するSCC制度も導入しています。
そして、期待値と現実の乖離をなくすことも円滑な運営には欠かせません。この観点から、お客様とのコミュニケーションを重視し、時間やコストの制約の中で何ができて、何ができないかを明確にしたうえで、パートナーとして伴走し、共にゴールを目指すというスタンスで臨んでいます。
また、人材が不足し、市場価値が高騰している状況下において、スキル未収得の方を育成していくための研修時間を確保できないのが課題です。だからこそAIを活用して、仕組みの整備を加速度的に進めていこうと考えています。そして、アルコールチェックのように法律により人が行うことが義務付けられている業務や、高度な判断を伴う業務は、AIでは代替えができずに人が対応します。そういう部分も充実させていきたいですね。
雇用の面で意識しているのは、「作り出す」という点で捉えるのではなく、「配属・定着・役割の変化」という一連の流れで捉えることです。採用して終わりではなく、半年後、一年後にその人がどうはたらいているかまでを想像して設計図として描き、それに基づいたフォローを行っています。
成果を地域と社員に還元することの喜び
成果を地域と社員に還元することの喜び
ーーどのようなときに、仕事のやり甲斐を感じますか?
ーーどのようなときに、仕事のやり甲斐を感じますか?
お客様の課題を通じて社会課題を解決できるという点が、この仕事の大きな魅力です。また、お客様の笑顔を見て、喜んでもらえていることにも充実感があります。最近も、ある企業様から個人情報関連のインシデントで緊急の窓口設置を求められたことがありました。私は頼まれたら基本的に「わかりました、やります」と応じるようにしているのですが、そのときも、1週間で20席の対応窓口を用意することができ、お客様から「いつお願いしても、すぐに対応してくれる」とお褒めの言葉をいただいたことがとても嬉しかったです。
一方で管理・監督する役割が増えた現在は、成果が出てスタッフに還元できたときや、楽しそうに仕事をしている様子が見られたときにも喜びを感じます。宮崎県が2027年の国民スポーツ大会にむけて整備したプールのネーミングライツを取得し、「パーソルアクアパーク宮崎」と命名しました。社員への還元のため、無料利用券を毎年2000枚確保しており、これは、地域・企業・人が一体となった象徴的な出来事です。ジムも併設されていて健康増進につながりますし、社名の認知度も上がり、社員のお子さんたちに「お父さん、お母さんは、あの施設の名前がついている会社ではたらいているのだ」と知っていただけることが非常に嬉しいですね。
ーー今後、どのようなことに挑戦していきたいですか?
ーー今後、どのようなことに挑戦していきたいですか?
やはりデータがすべての基礎なので、これからもデータの重要性をきちんと伝えていきたいと考えています。そのデータを有効に活用することで企業も良くなり、そこに関わるすべての人を幸せにできると思っています。そして、雇用を創出したいというのが私の1番の思いです。今後もDXを推進しながら誰でもできる仕事を増やして雇用につなげたいと考えています。
また、私たちは宮崎に拠点を構えていますが、実は宮崎の企業様の仕事は年1回くらいの限定的なものだけで、レギュラーの業務はないのです。というのは、製造業中心の宮崎の中小企業の方たちは、人材が枯渇していて専門スキルを持った人がおらず、DXを進めたくても予算的に厳しいところがあります。そこで、仕事を簡単なものにして部分的に支援することで、派遣でも委託でも、できるところからカバーしていこうと思っています。
さらに、大学でもIT人材が少なく、製造業に関わっている人たちのITの知見も多くはないので、私たちが企業連合会の勉強会でAIについてお話しするなど、宮崎全体の専門知識底上げにつながるアプローチも行っています。そんな風に専門性を高める取り組みもしながら、それだけでは限界がある部分を、業務の標準化によって補っていく。そうやってナレッジマネジメントといろいろなソリューションを組み合わせることで、今後も地方創生や活性化に挑戦していきます。