コールセンターにおける品質とは何か
コールセンターの品質管理では、お客様から見た「クオリティ」と、企業から見た「パフォーマンス」の両面を評価します。
本記事では、クオリティを「応対品質」と「接続品質」、パフォーマンスを「処理品質」と「運営品質」に分け、それぞれの管理方法と評価基準を解説します。
クオリティ(1)応対品質
応対品質とは、オペレーターの言葉遣い、傾聴姿勢、説明の分かりやすさ、正確性、問題解決力など、電話応対を通じてお客様が受ける体験の質です。
応対品質は単一の数値だけでは判断しにくいため、モニタリングスコア、顧客満足度、一次解決率、クレーム率など、複数の評価基準を組み合わせて管理します。
コールセンターごとに重視する評価基準は異なりますが、代表的な評価項目には次のようなものがあります。
- お客様の話を遮らず、適切に傾聴できているか
- お客様の用件や意向を正しく把握できているか
- お客様に正確な情報を提供できているか
- 説明が簡潔で分かりやすいか
- 一般的なビジネスマナーを守れているか
- 適切な言葉遣いができているか
- お客様の状況や感情に配慮できているか
- 適切な声量や話すスピードで案内できているか
- 問い合わせの解決や次の行動につなげられているか
これらの観点を、センターの目的や業務内容に応じて複数の評価項目に分け、採点とコメントを組み合わせて評価します。
ただし、評価項目を増やしすぎると、評価者の負担が大きくなったり、採点にばらつきが生じたりする可能性があります。評価項目は、実際の改善行動につながる内容へ絞り込むことも重要です。
クオリティ(2)接続品質
接続品質は、電話のつながりやすさや、オペレーターが応答するまでの速さを表す品質です。
電話がなかなかつながらない状態は、お客様にとって大きなストレスになります。電話がつながらないことで企業に対する印象が悪くなるだけでなく、応答後の会話でも不満が顕在化し、クレームにつながりやすくなる可能性があります。
接続品質を改善するには、時間帯別、曜日別、問い合わせ内容別に入電傾向を分析し、予測に基づいて適切な人員を配置することが重要です。あわせて、回線やシステムの容量、IVRによる問い合わせの振り分け、折り返し予約、FAQやチャットなどの自己解決手段も含めて見直します。
ただし、接続品質を高めるために人員や回線を過剰に増やすと、コストや稼働率に影響します。後述するパフォーマンスとのバランスを見ながら、適切な目標値を設定することが大切です。
パフォーマンス(1)処理品質
処理品質は、オペレーターが問い合わせや手続きを正確かつ効率的に処理できているかを表す品質です。
一般的には、次のような観点で評価します。
- 無駄なく、正確にお客様へ回答できたか
- お客様の問い合わせを初回の応対で解決できたか
- 通話時間や保留時間は問い合わせ内容に対して適切だったか
- 応対後の記録や入力を正確に行えたか
- 後処理に過度な時間がかかっていないか
- 処理ミスや手続き漏れを発生させていないか
- 必要に応じて適切な部署や担当者へ引き継げたか
処理品質は、オペレーター個人の能力だけで決まるものではありません。
業務システムの操作性、FAQやマニュアルの分かりやすさ、承認フロー、入力項目の数、ナレッジの検索性など、業務を遂行するための環境が組織として整備されているかも重要なポイントです。
パフォーマンス(2)運営品質
運営品質は、コールセンターとして求められる役割を継続的に果たせているかを表す指標です。
応対品質、接続品質、処理品質は個々の応対やオペレーターに関連する要素が中心ですが、運営品質では、組織や管理者によるマネジメントの状態も評価対象となります。
オペレーターは、継続的に多くの問い合わせへ対応するだけでなく、難易度の高い相談やクレームに対応することもあります。そのため、心理的な負担が大きくなりやすく、欠勤や離職、人材不足がセンター運営上の課題になることがあります。
人材不足に陥ると、1人あたりの負担が増え、接続品質や応対品質が低下する可能性があります。さらに、既存メンバーの疲労や離職につながるという悪循環が生じることもあります。
そのため、欠勤率や離職率だけでなく、研修の受講状況、スキル保有状況、管理者の配置、業務量の偏り、従業員満足度なども含めて、持続可能な運営ができているかを確認する必要があります。
コールセンターにおける品質管理がなぜ重要なのか
現在は、商品やサービスを利用する前後の問い合わせが、電話だけでなくメールやチャット、Webフォームなど、複数のチャネルから寄せられます。
その中でも、複雑な相談や緊急性の高い問い合わせでは、オペレーターによる応対が企業に対する印象を大きく左右します。
コールセンターは「企業の顔」ともいえる存在であり、コールセンターでのお客様体験が企業への評価や信頼に直結することがあります。
品質の高いサービスを提供できれば、顧客満足度や企業への信頼を高められます。一方で、商品やサービスが優れていても、コールセンターの応対が不正確であったり、電話がつながりにくかったりすると、企業全体の評価を下げることになりかねません。そのため、コールセンターでは、クオリティとパフォーマンスの両方を管理する必要があります。
一見すると、丁寧な応対と処理時間の短縮は相反するように見えるかもしれません。しかし、どちらか一方だけを高めても、良いコールセンター運営にはつながりません。
たとえば、AHTを短縮しても、お客様の問題が解決せずに再入電が増えれば、結果として対応件数やコストが増加します。反対に、必要以上に長時間の応対を続ければ、他のお客様の待ち時間が長くなり、接続品質が低下します。
応対品質、接続品質、処理品質、運営品質の関係を確認しながら、センターの目的に合ったバランスを取ることが重要です。
コールセンターの品質管理で起こりやすい課題
コールセンターの品質管理では、評価を実施すること自体が目的となり、実際の改善につながらないケースがあります。
代表的な課題は次のとおりです。
- 評価者によって採点結果にばらつきが生じる
- 一部の通話だけではオペレーターの実態を把握しにくい
- 評価項目が多すぎて改善の優先順位が分からない
- 評価基準が抽象的で、評価理由を説明できない
- AHTやCPHなどの効率指標を重視しすぎて応対品質が低下する
- 評価結果がオペレーターへの指摘だけで終わる
- 研修、FAQ、マニュアル、業務フローの改善に反映されない
- 電話、メール、チャットなど、チャネルごとに評価基準が分断される
- モニタリングを行う品質担当者やSVの負担が大きい
- 品質管理の目的やKPIが現場に共有されていない
これらの課題を解消するには、評価基準を明文化するだけでなく、評価、フィードバック、研修、業務改善、効果測定を一連のサイクルとして運用することが重要です。
また、品質上の問題が見つかったときは、オペレーター個人だけに原因を求めないようにしましょう。FAQやマニュアルの不足、複雑な業務フロー、使いにくいシステム、不適切な人員配置など、組織側に原因がある可能性も確認する必要があります。
コールセンターにおける品質管理の評価基準
コールセンターの品質管理では、応対の丁寧さだけでなく、問題を解決できたか、正確に処理できたか、電話につながりやすかったか、持続可能な運営ができているかを複数の指標で評価します。
ここでは、処理品質、応対品質、接続品質、運営品質ごとに、代表的な評価基準を解説します。
基準(1)処理品質
CPH(Calls Per Hour)
1時間あたりに対応したコール数を表す指標です。処理件数を把握できますが、CPHだけを高めようとすると応対が雑になる可能性があるため、CSATやFCRなどと併せて確認します。
ATT(Average Talk Time)
1コールあたりの平均通話時間です。短ければよいとは限らないため、問い合わせ内容や難易度別に比較します。
ACW(After Call Work)
通話終了後の記録、入力、関連部署への連携などに要する平均後処理時間です。ACWが長い場合は、入力項目やシステム操作、記録ルールに改善の余地がないかを確認します。
AHT(Average Handling Time)
1件の応対に要した平均処理時間です。一般的には、通話時間、保留時間、後処理時間などを合計して算出します。過度な短縮は説明不足や再入電につながる可能性があるため、FCRや再入電率と併せて評価します。
FCR(First Contact Resolution)
最初の問い合わせで問題が解決した割合です。一次解決率または一次完結率とも呼ばれます。問題解決力とお客様の負担を確認するうえで重要な指標です。
再入電率
同一または関連する要件で、お客様から再度問い合わせがあった割合です。再入電率が高い場合は、説明不足、案内の誤り、未解決、後続処理の遅れなどが発生していないかを確認します。
処理ミス率
対応件数に対して、入力ミス、手続き漏れ、案内誤りなどが発生した割合です。ミスの件数だけでなく、原因や影響度も分けて分析します。
基準(2)応対品質
モニタリングスコア
録音音声やリアルタイムの応対を確認し、事前に策定した評価基準に基づいて採点します。言葉遣い、傾聴、説明の分かりやすさ、正確性、共感、問題解決などを評価します。
従来の評価者によるモニタリングに加え、音声認識やAIを活用し、発話内容、話速、発話の重なり、沈黙、声の印象などを自動評価する方法も活用されています。人による評価を補完し、確認できる応対件数を増やす方法として有効です。
顧客満足度(CSAT)
応対後のアンケートなどを用いて、オペレーターの応対や問題解決に対するお客様の満足度を測定します。質問内容や回答方法を統一し、継続的な推移を見ることが重要です。
ミステリーコール
お客様役の調査員がコールセンターへ電話をかけ、顧客視点でオペレーターの応対や案内プロセスを評価します。
クレーム率
全コール数または全応答数に対して、クレームが発生した割合です。クレーム件数だけでなく、発生理由、問い合わせ内容、担当部署、影響度などを分析します。
アンケート調査
Webサイト、メール、SMS、電話などを用いて、お客様から応対に対する評価や意見を取得します。自由記述も組み合わせると、数値だけでは分からない課題を把握できます。
サンキューコール発生件数
お客様から寄せられた謝意や感謝の言葉、手紙、メールなどの件数です。発生数が少ない場合は、割合ではなく件数や内容を確認します。
基準(3)接続品質
応答率
総入電数に対して、オペレーターが応答できたコール数の割合です。
放棄呼率
オペレーターが応答する前に、お客様が電話を切ったコールの割合です。待ち時間だけでなく、IVRの構成や案内内容が影響することもあります。
平均応答時間(ASA)
着信してからオペレーターが応答するまでの平均時間です。時間帯別や曜日別に確認すると、人員配置上の課題を把握しやすくなります。
サービスレベル
あらかじめ設定した目標時間内に応答できたコールの割合です。15秒や20秒など、目標時間はセンターの業務内容や顧客ニーズを踏まえて設定します。
話中率
入電数がコールセンターで用意している回線数などの上限を超え、話し中になったコールの割合です。
接続品質の指標は、月間平均だけでなく、時間帯別、曜日別、問い合わせ内容別に分析することが重要です。平均値に問題がなくても、特定の時間帯だけ電話がつながりにくくなっている可能性があります。
基準(4)運営品質
運営品質は、コールセンターが安定的かつ持続的に運営されているかを評価するものです。具体的な指標は各社の方針や業務内容によって異なりますが、一般的には次のような指標を確認します。
- オペレーターの欠勤率
- 一定期間における離職率
- 採用人数と充足率
- 新人オペレーターの定着率
- 研修の受講率と習熟度
- スキル保有者の人数
- 従業員満足度
- 業務量や応対件数の偏り
- SVや管理者の配置状況
- エスカレーションの発生率
- 研修後や改善施策後の品質スコア
欠勤率や離職率だけを確認するのではなく、オペレーターが安定して働ける業務量や支援体制が整っているかを確認することが重要です。
評価基準を設定するときの考え方
コールセンターの評価基準は、業界で使われている指標をそのまま導入するのではなく、センターの役割や顧客ニーズに合わせて設計する必要があります。
まず、「顧客満足度を高める」「一次解決率を改善する」「処理ミスを減らす」「待ち時間を短縮する」など、品質管理の目的を明確にします。
そのうえで、目的との関連性が高い指標を選び、次の項目を定めます。
- 評価する目的
- 評価対象とする応対
- 評価項目と配点
- 目標値
- 測定方法
- 測定頻度
- 評価を担当する人
- 結果を確認する責任者
- 改善が必要な場合の対応方法
たとえば、緊急性の高い問い合わせを扱うセンターでは、応答率やサービスレベルなどの接続品質を重視します。
専門的な相談を扱うセンターでは、AHTを短縮することよりも、FCR、説明の正確性、処理ミス率などを重視する必要があります。
すべての指標を一律に高めようとするのではなく、センターの役割に応じて優先順位をつけることが重要です。また、定量指標だけでなく、説明の分かりやすさ、共感、傾聴、適切な確認などの定性評価も組み合わせます。
評価者による判断のばらつきを抑えるため、評価基準には具体的な行動例や判定例を記載しましょう。同じ応対を複数の評価者が採点し、判断基準をすり合わせる「キャリブレーション」を定期的に行うことも有効です。
コールセンターにおける品質管理を行ううえでの注意点
続いて、コールセンターの品質管理を行ううえでの注意点を解説します。
注意点(1)品質管理に関する専任担当を決めておく
品質管理の責任者と役割分担を明確にしましょう。一定規模以上のセンターでは専任の品質担当者や部門を設け、小規模なセンターではSVや現場責任者が兼任する方法があります。
品質担当者の主な役割は、次のとおりです。
- 品質目標と評価基準の設定
- 通話や対応履歴のモニタリング
- オペレーターやSVへのフィードバック
- 研修、FAQ、マニュアルの改善
- KPIや改善施策の効果測定
応対品質には、説明の丁寧さや共感など、評価者の判断に左右されやすい項目もあります。評価のばらつきを抑えるため、同じ応対を複数の評価者が採点する「キャリブレーション」を定期的に行い、評価基準をすり合わせましょう。
また、品質担当者だけでは判断が難しい場合は、対象業務の責任者やSVと連携し、業務の正確性も確認することが重要です。
注意点(2)評価基準本位にならず、お客様の気持ちに沿った応対をする
コールセンターでは、応対品質だけでなく、電話のつながりやすさを表す「接続品質」や、正確かつ効率的に処理する「処理品質」も管理します。
ただし、処理効率を重視して説明を急いだり、反対に丁寧さを意識して必要以上に会話を長引かせたりすると、お客様の状況に合わない応対になります。
重要なのは、評価項目を形式的に満たすことではなく、お客様の状況や要望を把握し、その方に適した応対を行うことです。
AHTやCPHなどの生産性指標だけで判断せず、FCR、CSAT、再入電率、モニタリングスコアなども組み合わせ、品質と効率のバランスが取れた評価基準を設定しましょう。
注意点(3)継続的な品質管理とフィードバックを実施する
品質管理は、一度の評価で終わらせず、継続的に実施することが重要です。
モニタリングの頻度や件数は、オペレーターの習熟度、問い合わせの難易度、業務上のリスクに応じて設定します。定期評価に加え、新人の立ち上がり時、業務内容の変更時、クレームの増加時などには、確認頻度を高めると効果的です。
評価後は、良かった点、改善点、評価理由、期待する行動をオペレーターへ具体的にフィードバックします。そのうえで、次の改善サイクルを継続的に回しましょう。
- 応対データやKPIから課題を特定する
- 原因を分析し、改善施策を決める
- フィードバックや研修を実施する
- 同じ指標で効果を測定する
- 評価基準や運用方法を見直す
評価結果は、オペレーター教育だけでなく、FAQ、マニュアル、業務フロー、システムの改善にも活用します。評価、フィードバック、改善、効果測定を一連の取り組みとして行うことが、コールセンターの品質向上につながります。
品質管理ソフトウェアやAIを活用する
コールセンターの品質管理ソフトウェアには、通話録音、音声認識、文字起こし、モニタリング対象の抽出、自動スコアリング、ダッシュボード、フィードバック管理などの機能があります。
大量の応対データから確認すべき通話を抽出し、品質担当者やSVの評価業務を効率化できることがメリットです。
AIを活用した自動モニタリングでは、発話内容だけでなく、話速、発話の重なり、沈黙、声のトーンや抑揚などを評価に利用する方法もあります。人による抜き取り評価を補完し、より多くの応対を確認できるようになります。
品質管理ソフトウェアを選ぶ際は、次の点を確認しましょう。
- 自社の評価項目に合わせて設定できるか
- 評価対象となる通話を効率的に抽出できるか
- 電話だけでなく、メールやチャットも評価できるか
- AIによる評価結果の根拠を確認できるか
- 個人情報や録音データを適切に管理できるか
- SVがフィードバックや研修に活用しやすいか
- 既存のCRMや録音システムと連携できるか
- 評価項目や判定条件を継続的に調整できるか
- 導入後の運用支援や効果測定を受けられるか
ただし、ソフトウェアを導入するだけで、コールセンターの品質が自動的に向上するわけではありません。
AIによる評価結果も最終的な判断として扱うのではなく、改善対象を発見するための情報として活用することが重要です。必要に応じて人が応対内容や背景を確認し、フィードバック、研修、業務改善につなげましょう。
コールセンターの品質管理をするならパーソルビジネスプロセスデザインへ
コールセンターの品質管理では、評価基準を設けて応対を確認するだけでなく、明らかになった課題をフィードバックや研修、業務改善につなげ、継続的に効果を測定することが重要です。
しかし、「応対品質の評価基準をどのように設計すればよいか分からない」「評価者によって採点にばらつきがある」「モニタリングを実施しているものの、具体的な改善につながらない」といった課題を抱えているコールセンターも少なくありません。
パーソルビジネスプロセスデザインの「応対品質向上コンサルティング」では、貴社のサービス方針や目的に合わせて評価基準を設計し、コールモニタリングやミステリーコール、インシデントモニタリング、自動モニタリング、チャットモニタリングなどを通じて、現在の応対品質と業務上の課題を可視化します。
当社は、国際的に認知されたサポート標準である「HDI国際スタンダード」に沿った評価基準と、スタッフ育成のノウハウを活用しています。HDI-Japan公認の専門審査員をはじめ、モニタリングに精通したスタッフが第三者の視点から応対を評価するため、公正かつ納得感のある品質診断が可能です。
診断結果を提示するだけでなく、センター全体の傾向やオペレーターごとの課題を分析し、改善策をご提案します。さらに、電話応対の基本研修やロールプレイングを取り入れた実践研修、改善後の効果測定まで一貫して支援します。
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