アルコールチェックは運転後になぜ必要?義務化の理由と効率的な対応方法

アルコールチェックは運転後になぜ必要?義務化の理由と効率的な対応方法

道路交通法改正により、企業は運転前だけでなく運転後のアルコールチェックも義務化されました。しかし、なぜ運転後にもチェックが必要なのか、その理由を正しく理解している企業は少ないのが現状です。運転後のアルコールチェックは、単なる形式的な手続きではなく、業務中の飲酒運転を根本的に防ぐ重要な安全対策です。

本記事では、運転後のアルコールチェックの必要性と法的根拠を解説し、企業が効率的に運用できる具体的な方法をご紹介します。


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    義務化に伴う安全運転管理者が抱えるお悩みや、アルコールチェックの運用事例についてご紹介!

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    アルコールチェック義務化の背景

    アルコールチェック義務化は、2021年に千葉県で発生した重大事故を契機として社会的要請が高まり、段階的に導入されました。当時、企業の業務用車両による飲酒運転事故が相次いで発生し、企業の安全管理体制の見直しが急務となったのです。


    飲酒運転による重大事故をきっかけとした制度見直し

    2021年の千葉県での事故では、業務中の飲酒運転により複数の死傷者が発生し、企業の安全管理責任が厳しく問われました。この事故を受けて、従来の運転前チェックのみでは業務中の飲酒を完全に防げないことが明らかとなり、運転後チェックの必要性が認識されました。事故後の調査では、業務時間中の飲酒や前日の飲酒が翌日まで影響するケースなど、従来の対策では不十分な実態が浮き彫りになったのです。


    段階的な法改正の経緯

    道路交通法改正は、企業の対応準備期間を考慮して段階的に実施されました。まず2022年4月から運転前後の目視による酒気帯び確認が義務化され、2023年12月からアルコール検知器を使用したチェックが完全義務化されています。この段階的な導入により、企業は運用体制を整備する時間を確保でき、現在はすべての要件が適用されています。


    白ナンバー事業者への適用拡大

    従来、アルコールチェックは運送業などの事業用自動車(緑ナンバー)を保有する企業が対象でしたが、改正により一般企業の白ナンバー車両も対象となりました。乗用車5台以上または定員11人以上の車両1台以上を保有する事業所では、安全運転管理者の選任とアルコールチェック実施が義務付けられています。これにより、営業車両を持つほぼすべての企業が対象となりました。


    運転後のアルコールチェックが必要な理由

    運転後のアルコールチェックは、運転前チェックでは防げないさまざまなリスクを未然に防ぐ重要な役割を担っています。業務中の飲酒防止だけでなく、従業員の安全運転意識向上にも大きく貢献する制度です。


    業務中飲酒の抑止効果

    運転後チェックの最も重要な目的は、業務時間中の飲酒を防ぐことです。昼食時の飲酒や取引先での接待飲酒など、業務中に飲酒する機会は多く存在します。運転後に必ずアルコールチェックが実施されることを従業員が認識していれば、業務中の飲酒を事前に抑制する強い抑止効果が期待できます。この抑止効果により、企業は飲酒運転事故のリスクを大幅に軽減できるのです。


    日飲酒の翌日への影響確認

    アルコールの分解には個人差が大きく、体重や体質によって大きく異なります。前日の深夜まで飲酒した場合、翌朝の出勤時には体内にアルコールが残存している可能性があります。運転前後にアルコールチェックを実施することで、従業員の体調管理や飲酒習慣の見直しにもつながります。


    安全運転意識の向上

    運転前後のダブルチェック体制は、従業員の安全運転に対する意識を大きく向上させます。毎日のチェック実施により、飲酒運転は絶対に許されないという組織文化が形成され、従業員一人ひとりの責任感も高まります。また、チェック結果の記録保存により、企業として安全管理に真剣に取り組んでいることを内外に示すことができます。


    道路交通法に基づく具体的なアルコールチェック義務内容

    アルコールチェックに関する法的義務は、道路交通法の改正により詳細に規定されています。企業は安全運転管理者を通じて、運転者の酒気帯び確認と記録保存を確実に実施する必要があります。


    運転前後チェックの実施タイミング

    アルコールチェックは「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者」について実施する必要があります。ここでいう「運転」とは一連の業務としての運転を指し、個々の運転の都度実施する必要はありません。運転を含む業務の開始前や出勤時に「運転前」の確認を、業務終了時や退勤時に「運転後」の確認を行うことで法的要件を満たします。1日に複数回運転する場合でも、業務開始時と終了時の2回で十分です。


    アルコール検知器使用の義務化内容

    2023年12月から、国家公安委員会が定めるアルコール検知器の使用が完全義務化されました。検知器は呼気中のアルコールを検知し、警告音・警告灯・数値などによりその有無や濃度を示すものであれば、特定の機種指定はありません。設置型・持ち運び型など、運転者数や業務内容に応じて必要数を準備し、常に正常に作動する状態で保持する必要があります。


    アルコールチェック記録の保存義務と管理のポイント

    アルコールチェック義務化では、実施するだけでなく適切な記録保存も重要な要件となっています。効率的な記録管理方法を確立しましょう。


    記録すべき必須項目

    アルコールチェックの記録には、確認者名、運転者名、使用車両、確認日時、確認方法、確認結果、指示事項などの項目を含める必要があります。指定された様式はありませんが、これらの項目を網羅した記録を作成し、1年間保存することが義務付けられています。記録は紙での保存だけでなく、データとしての保存も認められているため、クラウド型の管理システムやアプリを活用することで、効率的な記録管理が可能になります。


    アルコール検知器の管理要件

    アルコール検知器は常時有効に保持することが法的に求められています。これは、正常に作動し故障がない状態を維持することを意味しており、定期的な点検と適切な使用・管理が必要です。


    万が一アルコール検知器が故障した場合、補完措置は認められておらず、必ずアルコール検知器を使用したチェックが必要となります。そのため、予備の検知器を準備しておくなど、常時使用できる状態を維持する体制作りが重要です。


    ITシステム活用による効率化

    現在では、アルコール検知器と連動するクラウド型管理システムやスマートフォンアプリが多数提供されています。これらのシステムを活用することで、測定結果の自動記録、データの一元管理、改ざん防止機能などが利用でき、大幅な業務効率化が可能になります。


    クラウドベースの管理システムを導入すれば、リアルタイムでの記録確認・自動集計・法定保存期間の管理も可能です。また、スマートフォンアプリと連携した検知器を使用すれば、直行直帰時の確認もスムーズに行えます。ただし、システム導入時は対面確認の要件を満たすよう注意が必要です。


    効率的なアルコールチェック運用方法

    アルコールチェックを効率的に運用するためには、適切な機器選定・管理体制の整備・記録管理のデジタル化が重要です。企業の規模や業務形態に応じて、最適な運用方法を選択することで、法令遵守と業務効率を両立できます。


    直行直帰・出張時の対応方法

    直行直帰や出張で対面によるチェックが困難な場合は、「これに準ずる適宜の方法」で実施することが認められています。具体的には、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させ、カメラ・モニターによる確認や携帯電話での対話による確認が有効です。重要なのは、運転者と直接対話できる方法を取ることで、メールやFAXなどの一方的な連絡方法は認められていません。また、アルコール検知器から自動送信される結果のみでは、法的要件を満たしません。


    アルコール検知器選定と管理のポイント

    アルコール検知器の選定では、企業の規模・運転者数・業務形態を考慮することが重要です。大規模事業所では据え置き型、営業車中心の企業では携帯型、複数拠点を持つ企業では両方の組み合わせが効果的です。検知器は常時有効保持が義務付けられているため、定期的なメンテナンス・予備機の確保も必要です。故障時の補完措置はないため、複数台の準備が推奨されます。


    アルコールチェック義務違反時のリスク

    アルコールチェック義務を怠った場合、企業は重大なリスクに直面します。法的な罰則だけでなく、事故発生時の責任問題や社会的信用の失墜など、企業経営に深刻な影響を与える可能性があります。


    法的罰則と行政処分

    アルコールチェック義務違反に対しては、安全運転管理者の解任命令や事業所に対する指導・勧告が行われます。繰り返し違反する場合は、より厳しい行政処分が科される可能性があります。特に、義務違反の状態で飲酒運転事故が発生した場合、企業の安全管理責任が厳しく問われ、民事・刑事両面での責任追及を受けることになります。また、監督官庁からの業務停止命令など、事業継続に関わる処分もあり得ます。実際に、2025年に日本郵便が飲酒確認を伴う点呼を適切に実施していなかった問題で、国土交通省から運送事業の許可取消し処分を受ける方針が示された事例があり、違反が企業活動に重大な影響を及ぼすことが示されています。


    事故発生時の企業責任

    アルコールチェックを適切に実施していない状態で飲酒運転事故が発生した場合、企業は使用者責任を免れることができません。被害者に対する損害賠償責任に加え、安全管理体制の不備による企業過失も問われます。さらに、監督者や経営陣の刑事責任も問われる可能性があります。


    社会的信用への影響

    飲酒運転事故は社会的な注目度が高く、企業の社会的信用に致命的な打撃を与えます。顧客からの信頼失墜・取引先からの契約解除・求職者からの敬遠など、事業活動全般に長期的な悪影響をもたらします。近年はSNSでの拡散により、風評被害の規模と継続期間がより深刻化する傾向にあり、企業ブランドの回復には相当な時間とコストを要します。


    このように、アルコールチェック義務違反は単なる手続き違反では済まされず、企業経営に深刻な影響を与える重大なリスクとなっています。法令遵守は企業の社会的責任であり、従業員と企業を守るための必要不可欠な取り組みです。


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    運転後のアルコールチェックは、業務中の飲酒運転を防ぐ重要な安全対策として義務化されました。企業は運転前後のダブルチェック体制により、従業員の安全運転意識向上と組織全体の安全文化醸成を実現できます。しかし、直行直帰対応や記録管理など、効率的な運用には専門的な知識と体制整備が必要です。


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