人員体制の変化を契機に高まる業務効率化への取り組み
大西 真美様
パナソニック ホームズ株式会社 経理本部 経理部 業務革新課 リーダー
パナソニック ホームズ株式会社では、人員減少と業務の属人化という課題に直面する中、RPAとグループウェアを活用した経理業務の抜本的な効率化に取り組まれました。
同社の業務革新課で本プロジェクトを牽引された 大西様、岡本様、そして支援にあたった弊社 関西デジタルソリューション部 井崎の3名に、この改革の背景から成果、今後の展望までを伺いました。
ーー業務革新課は、全社に横串を入れて標準化・効率化を強力に推進されている部署とのことですが、どのようなお悩みや課題がありましたか?
大西様:経理部門では、将来の人員体制を見据え、少人数でもスムーズに業務を回せる仕組みづくりが求められていました。支社・支店に分散していた経理業務をセンターに集約する方針が決まり、これまで約30人で担っていた業務を、最終的には7〜8人で運用できる体制を目指し、業務のあり方そのものを見直す改革が本格的にスタートしました。
もう一つの悩みは、当社のシステム環境です。長年スクラッチで構築してきたため、ちょっとした改修や改善にも莫大なコストと時間がかかっていました。業務フローを少し変えるだけでプロジェクト規模になってしまうこともあり、柔軟に改善できないという不自由さが大きな課題となっていました。そのため、現場から「こう変えたい」という要望があったとしても、対応できずに問題点が蓄積していく状況でした。
ーーそのような課題に取り組むうえで、社内レベルではどのような議論がありましたか?
岡本 武康様
パナソニック ホームズ株式会社 経理本部 経理部 業務革新課
岡本様:社内での議論では、まず時間とコストの面が最大の課題でした。スクラッチで構築されたシステムは、少しの手直しでも膨大なコストがかかるためです。ところが、パーソルさんに相談したところ、コストを抑えつつ、しかも我々のスピード感に合った形でサポートしていただけることがわかりました。
大西様:人員減少やセンター化の問題は、現場だけでなく会社全体に関わるテーマです。そのため、単なる経理部門の効率化ではなく、会社全体でどう業務を変えていくか、という視点からも議論が進みました。正直、最初は「そんなに簡単に自動化できるのか?」という懐疑的な声があったことも事実です。しかし、RPA(※1)という効果的な技術があることを知って、「やってみよう」という空気が少しずつ広がっていきました。
※1 RPA:Robotic Process Automationの略。人間が定めた判断基準や業務内容を元に、プロセスの自動化を行う技術
過去の支援の信頼感と親身のヒアリングから再依頼
ーーどんなきっかけで弊社を知り、ご依頼いただいたのでしょうか?
岡本様:社内で最初に出たのは「誰に相談するべきか?」という話です。実は、パーソルさんには別のプロジェクトで既にお世話になっていました。RPAを使った小規模な業務改善を一度経験しており、非常に丁寧な支援をしていただいたことが印象に残っていたのです。そして、今回は、グループウェアにRPAやVBA(※2)を組み合わせる提案をしていただき、「そんな使い方ができるのか!」と大変驚いたことを覚えています。
大西様:そういう具体的なきっかけを作ってくださったのが、井崎さんでした。当社の業務を深く理解しようと、現場に常駐しながら丁寧にヒアリングしてくれたのです。その中で、こちらが考えていた以上の改善案を提示してくださり、「これはぜひお願いしたい」と自然に思うようになりました。
その意味で、決め手は「人」でした。井崎さんがこちらの説明をすぐに理解し、私たちが気づかなかった改善策を次々に提案してくれました。プロジェクトメンバーの間では「井崎さんに任せておけば大丈夫」という空気がすぐに生まれたほど、信頼感がありました。
岡本様:また、当社では体制に大きな転換がありました。2018年度以降、当社はスタッフ領域における業務効率化を“コスト削減”ではなく、“未来への投資”と捉える方針へと転換しました。経理部門をはじめとするバックオフィスでは、RPAや電子化、業務標準化の取り組みを通じて、属人化の排除・業務品質の向上・継続性の確保を実現してきました。
また、通常の外部委託では、営業、コーディネーター、開発者と役割が分かれていて、こちらが要望を伝えてもタイムラグや課題認識の齟齬が生じがちです。しかし、井崎さんは営業のように話を聞き、開発者として実装まで担ってくれる。まさに「一気通貫」の存在でした。技術力だけでなく、人柄やフットワークの軽さも含めて、「この人に任せたい」と思えたことが決定打でした。
※2 VBA:Visual Basic for Applicationsの略。Microsoft Officeのアプリケーションの機能のカスタマイズや拡張を行うためのプログラミング言語
小さな自動化から始まり業務ごとに最適解を見出す
ーー具体的には、どのような取り組みをされたのでしょうか?
大西様:まずは回収業務というところに特化し、小さな自動化から始めました。お客様からの入金があると、その都度、経理担当が営業にメールで連絡していましたが、これをRPAで自動送信できるようにしたのです。これだけでも大きな工数削減になりました。その後、入金予定と実績を自動照合して伝票を起票する仕組みを構築し、さらに未収金や入金予定に関するアラートを自動で発信する仕組みへと広げました。こうして、以前は1から10まで、すべて手入力手作業で行われていた回収業務が段階的に自動化されていきました。このような取り組みが経理部の他の課に広がり、支払い業務では外部サービスと連携して、マスターの連携や仕訳データの取り込みまでも自動化するなどの対応をし、経理部全体として大幅な効率化につながっていきました。
ーー実際に解決策を提案して実現する立場からは、どのように取り組んだのでしょうか?
井崎 麻由
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
関西デジタルソリューション部 リーダー
井崎:私は経理に関しては専門家ではないので、最初は一つひとつ「この作業は何のためにやっているのですか?」と質問するところから始めました。その素朴な疑問が、実は改善のヒントになることが多かったですね。まず、常駐して現場で一緒に画面を見ながら、手を動かしつつ理解を深めることから始めて、そのうえで「この工程は本当に必要でしょうか?」、「この部分は自動化できますよ」と提案する形で支援しました。全体としては、会社に対する影響や効果が大きい作業と、リスクを軽減するための業務の改善に、最優先で対応することを心がけています。
ーー弊社とやり取りする中で、印象的だった提案やアプローチはありましたか?
岡本様:RPAだけで作ると処理時間が長くなる業務について、「ここはVBAを組み合わせたほうが速いですよ」と提案してもらったことは衝撃的でした。実際にRPAだけでは1、2時間かかってしまう処理でも、VBAを挟むだけで劇的に早くなることがわかったからです。RPA一本槍で考えていた私たちにとって、柔軟な発想で最適解を導き出す井崎さんの姿勢が印象に残っています。
大西様:RPAという技術自体が、私たちにとっては初めて触れるものでしたので、それを組み合わせて使うことで、想像以上の処理が可能になると説明を受けたときには、それこそ目から鱗の状態でした。
ーー今回の取り組みで、特に工夫したことは何でしょうか?
大西様:私たちは、システムの画面を実際に見せながら、業務の流れを一つ一つ説明していきました。質疑応答を繰り返し、工程の持つ意味や、それに伴って起こる仕訳の処理なども含めてお話しをしました。結果的に業務に対する私たちの理解が深まる、という二次的効果もありました。これもパーソルさんが事務所に常駐していただいていたから可能になったことです。
井崎:私としては逆に、良い意味での素人目線を大事にしました。自分が経理業務には慣れていないからこそ、工程ごとに「これは本当に必要なのか?」という疑問を持つことができたと思います。そのおかげで、実際には不要な工程を省けるようになり、より効率的なフローを一緒に設計することができたのです。
また、いつも気をつけているのは、目的から逸脱したシステムやツールを選ばないということです。 業務の中で課題になっている箇所にフィットしそうなツールを複数洗い出し、それらを比較してメリットを説明することで、選んでいただけるようにしています。
ーー取り組むうえでぶつかった壁や懸念点はありましたか?
岡本様:実は、壁にぶつかったという実感がないのです。すべてにおいてパーソルさんがリードしてくれたので、取り組み全体がスムーズに進みました。逆にいえば、壁にぶつからないで済むように、うまくリードしてもらっていたのだと思います。
大西様:懸念点も、ほとんどありませんでした。唯一あったのは、経理と営業との間で運用を始めるタイミングなどを決めるような業務調整です。しかし、それも丁寧に説明し納得してもらうことでクリアできました。
井崎:私は、予定していたツールでは、やりたいことが実現できないというような場面がありました。しかし、そのような場合でも、必ず代替手段を見つけて解決するようにしています。
例えば、「グループウェア(データベースアプリ)上で集計処理をさせたいが、アプリ上では複雑な集計処理を実現するための機能がない」といったようなケースがありましたが、そういった場合は、「データの抽出はRPA、集計処理はVBAに任せ、成果物は共有ファイルサーバ上で閲覧いただく運用」を提案するなどしてご要望が実現できる方針を模索しました。
人が介在しない完全自動処理ルーティンの実現
ーー今回の取り組みの成果として、どのような事が実現できるようになりましたか?
大西様:たとえば電子決済代行の入金処理は、以前は手作業で行っていたため、これだけでも膨大な時間がかかっていたのですが、今では完全に自動化することができ、大幅な時間の節約が実現しました。作業時間は最大で20分の1に短縮され、業務負荷が劇的に軽減されました。
岡本様:入金内容確認のために営業と経理の間で頻繁に繰り返されていたメールのやり取りも、今ではほとんどなくなりました。その分、両部門とも本来の業務に集中できるようになったことが大きな成果です。銀行振込みの入金処理も、RPAのソフトウェアロボットが定期的に巡回し、入金情報を営業に発信するだけでなく、入金内容が分からない場合の確認督促もできるようになりました。さらに、伝票起票なども自動化され、合理化が進んでいます。外部システムと自社システムを、RPAとVBAの組み合わせによって連携させ、タイマーで年間を通じて自動実行されるルーティンが完成したことで、パソコンが壊れない限り、人間は一切介在せずに処理を続ける仕組みができあがりました。
大西様:現場からも「こんなに楽になるとは思わなかった」という声が多く聞かれます。営業や経理のスタッフにとって非常に大きな負担だった作業が減ったことで、本来の仕事に対するモチベーションも上がりました。
ーー今回の弊社からの支援を通じて、社内の意識や文化にも変化がありましたか?
大西様:RPAが、何か特別なツールとしてではなく、「業務の仲間」として受け入れられたことを感じています。特に経理部内では、これまでExcelや手作業で処理するしかないと思っていたところに、RPAやVBAといった自動化ツールが使えるとわかり、新たな業務改善のやり方を知ることができた点が大きかったですね。今では「次はここを自動化できないか」と、社員自ら提案してくれるようにもなりました。
岡本様:RPAがトラブルで止まった時の作業のダメージを経験しているので、逆にRPAのありがたみを実感しています。たとえば以前は、銀行のWebサイトがポップアップウィンドウでニュースを表示するなどの不規則的な動きをした際、RPAが停止することがありました。しかし、ポップアップが出ても回避するようなロジックを入れたり、一度停止しても、2回目以降同じ現象が起こらないようにポーズの時間を長く設定したりと、すぐに対処していただいたおかげで助かっています。
ーー弊社のサポートを受けて良かったことは何でしょうか?
大西様:それは、やはり井崎さんと出会えたことです。
岡本様:本当に井崎さんは素晴らしいなと感じております。課題が解決するまで伴走してくれましたし、単にツールを導入するのではなく、井崎さんのチームが現場に常駐して、対話しながら一緒になって改善を進めてくれた点が非常にありがたかったです。実は、当初の開発時には、パーソルさんとは単体のプロジェクトごとの契約でした。しかし、我々としては井崎さんを継続的にアサインしたいという強い思いから、途切れなくプロジェクトを計画し、進めてきた経緯もありました。
自動化の拡大とAI活用へ、信頼できる伴走者と共に挑む
自動化の拡大とAI活用へ、信頼できる伴走者と共に挑む
ーー今後どんな事に挑戦していきたいと思われますか?
大西様:経理以外の部門にも自動化を広げ、全社的な効率化に取り組みたいと考えています。
岡本様:何に挑戦するにしても、パーソルさんと一緒にやっていきたいと思っています。RPAに限らず、今後も幅広い業務領域で、継続的にご支援いただけることを期待しています。
井崎:私にとってRPAはあくまで1つのツールで、それだけにこだわっているわけではありません。これまでの経験や知識を活かしながら、今後も皆さんの業務に寄り添い、幅広い領域でサポートしていきたいと考えています。
ーー弊社に期待されているサポートや領域はありますか?
岡本様:それは、AIやデータ分析の活用ですね。RPAと組み合わせることで、単なる効率化にとどまらず、経営判断を支える仕組みに進化できるものと考えています。
井崎:私は、今後も現場に寄り添うことを忘れず、素朴な疑問から改善点を見つけていく姿勢を大切にして支援していきたいと思っています。現在、私を含む6名の専門チームが、現場に寄り添いながら、経理部様の業務改善を継続的に支援していますが、これからも、さらにチームの総合力を活かして、個人では創出できないような大きな価値を提供していきたいですね。
業務改善は、適切なツールを導入して終わりではなく、現場との対話と信頼関係が鍵となります。パナソニック ホームズ様の事例は、まさにそれが実を結んだ案件であり、期待されているAIやデータ分析の活用のお話をいただくことがあれば、同じように取り組み、着実な成果をあげていくつもりです。