ビジネスを学んで気づいた「人を大事にしたいという想い」
ビジネスを学んで気づいた「人を大事にしたいという想い」
ーーーご自身のキャリアについて教えてください。
森山:学生時代から「人が一番大事だ」と考えており、「人を大切にする」というビジョンを掲げ、かつ人事の仕事ができるということで、社員20人ほどのベンチャー企業に就職しました。そこでは人事部門の立ち上げに携わり、採用を中心に責任者も任せていただき、やりがいをもってはたらいていました。一方、人事施策ではなくビジネスの成否が人に与える影響が大きいという現実にも直面しました。この経験から「ビジネスそのものを学ぶ必要がある」と考え、2018年にパーソルグループに転職しました。
ーーー現在も「人が一番大事だ」という視点は変わらずお持ちですか。
森山:はい。とはいえ、人事では動かしきれないことを経験してから転職したこともあり、パーソルグループに入社した直後は、「人よりビジネスモデルが大事」という考え方になっていました。しかし、入社して携わった方々に芯を持っている方が多く、人の意思を元にして事業部の戦略が変わっていく状況を目の当たりにし、「やっぱり人が一番大事だな」と思い直しました。もともと持っていた根っこの価値観に戻った感じです。
ーーー現在の職場では、ご自身の強みをどのように活かしていらっしゃいますか。
森山:現在は事業開発本部で新規事業を担当しています。社会の変化や業界動向を踏まえながら、事業の方向性を見極め、仮説を立てて組み立てていく──この「事業を考える力」が自分の強みだと感じています。社内では、そうした構想を経営陣に提案し、立ち上げまでを一貫して担っています。これまでに提案した新規事業は3件あり、いずれも承認されています。構想力と実行力の両輪で、会社や社会に価値を提供できていると実感しています。
中小企業・地方の構造的な採用難その課題解決に向けて
中小企業・地方の構造的な採用難その課題解決に向けて
ーーー現在の日本社会が抱える課題のうち、特に注目しているのはどのような点ですか。
森山:日本社会における労働人口の減少や人材不足は、引き続き深刻な構造的課題であると捉えています。日本全体での人口減少は顕著ですが、地方や中小企業にとってはより人が足りていない状況です。
ーーー中小企業や地方には、どのような構造的課題があるとお考えですか。
森山:たとえば中小企業の求人倍率を見ると、今では0.3倍ほどしかなく、採用が非常に困難な状況です。つまり「求人を出してもなかなか人が来ない」状態です。私自身も中小企業で人事をしていたので、採用の難しさは肌で感じてきました。
地方に行くとその傾向はより顕著です。スキルを持った人材の数が都内に比べると少なく、各社にとってそういった人材の採用はさらに難しいものとなっています。ある地方では例えば採用担当1人が複数社の採用をまとめて担当する、ということを実施しながら問題の解決を行っているとも聞いています。
SaaSサービスがその改善の担い手になると言われてきましたが、導入しきれていない企業も多いです。まだまだシステムだけでは改善できず、操作・伴走できる人がいないとすべての解決には至らない、ということが明らかになった数年間であったとも感じています。
「らしくいられる一歩目」をすべての人と企業に
「らしくいられる一歩目」をすべての人と企業に
ーーーStepBaseは、どのようにして着想されたのですか。
森山:中小企業ではたらいていた自身の経験から、パーソルグループがもっと中堅・中小企業の役に立てることがあるのではないかと感じましたし、パーソルのような大きな会社であるからこそ、社会的に意義のあることを実施すべきとも考えていました。コロナ禍を機にリモートワークやテクノロジーの受容が進み、オンライン業務支援に対する企業の関心が高まったことも、ビジネスの立ち上げを後押しする追い風となりました。
最初のアイデアは「BPOをUber Eatsのように気軽にはたらきたい人と企業を柔軟につなげることはできないのか」と着想しました。調査を進める中で、社内の機密情報をまったく知らない人に業務を任せることには不安がある企業が多いことも見え、そこでパーソルグループが業務を受託し、社内で適切にマネジメント・育成した上で人をアサインする構造にしました。
ーーーStepBaseのビジョンについて教えてください。
森山:ビジョンは「らしくいられる一歩目を」です。この言葉には、企業とはたらく人、双方へのメッセージが込められています。
企業も従業員の方も“らしく”はたらくために必要なことは、業績が安定し順調であることが大切だと経験から感じています。そのため、バックオフィス部分をStepBaseが支援することでより多くの企業が本業に集中できるようになり、事業で結果を生み出しやすくなると考えています。そのサイクルができることで企業も経営者も従業員も“らしく”いられる環境が作り上げられると考えています。
また、はたらく人も、ご家庭の事情で地方に在住しているため、これまでの経験を活かす場を見つけられていないと感じている方が多くいます。そのため、住む場所を理由に、自身のキャリアを諦めなくてもよくなるよう、オンラインではたらく場所を提供しています。
StepBaseという名前にも、「ステップ=一歩」と「ベース=土台」を掛け合わせた意味を込めています。企業にとってはStepBaseが会社を支える基盤の第一歩にしてもらえればと思いますし、はたらく個人にとっては新たなキャリアの土台にしてもらいたいと思っています。誰もが“らしくいられる”第一歩を支える事業でありたいと願っています。
StepBaseがオンラインで実現する高品質・高信頼の業務代行
StepBaseがオンラインで実現する高品質・高信頼の業務代行
ーーークライアント企業の課題とはどのようなものでしょうか。
森山:最も多いのは、「人を採用できない」また、「人が辞めてしまうが代わりの手段がない」という課題です。これは本当に切実で、「今月末に退職者が出るが代わりがいない」「ノウハウを持った人がいなくなってしまった」といった声がよく届きます。
特にバックオフィス業務においてはその傾向が強く、採用担当が突然辞めてしまった、経理が抜けてしまった、といったケースが非常に多いです。業務そのものは継続しなければならないのに、社内に誰もわかる人がいないという深刻な状態に陥っている企業からお問合せをいただいています。
私は、この「人材不足」にどう向き合うかが、現在の日本社会にとって避けて通れない大きなテーマだと考えています。特に地方では、スキルを持った人材が限られ、そもそも採用活動が思うように進まない企業も多く、課題は非常に根深いと思います。
だからこそ、オンラインでスキルを提供できる仕組みを持つ私たちStepBaseの存在意義があると感じています。人材不足に悩む企業に対して安心して業務を任せられる仕組みを届ける。そしてはたらく人にとっても、ライフイベントや居住地に縛られずにキャリアを築ける環境を整える。そうすることで、企業とはたらく人の両方に新しい選択肢を広げていきたいと考えています。
ーーーStepBaseではどのような支援をしているのですか。
森山:StepBaseでは、定型業務を支援する「アシスタントプラン」と、より業務の設計からご支援が可能な「プロプラン」をご用意しています。こういった業務支援のサービスを使ったことがない企業の方も多いので、まずはアシスタントプランを使ってサービスを利用してもらい、当社の品質に満足いただいた後に「この業務も実施したい」「この業務を始めてみたい」とプロプランに移行していただく方も少なくありません。
業務手順はタスク管理ツール「Bizer team(バイザーチーム)」で可視化・共有し、安定運用と将来的な内製化もサポートしています。業務整理から自社運用への移行まで、柔軟にご活用いただけます。また、オンラインで完結できるバックオフィス業務を月10時間から支援しています。事務業務、採用や経理を中心に、労務・マーケティング補助など幅広く支援しています。
競合サービスとの大きな違いは「手軽さ」と「品質の高さ、安心感」です。マニュアルや指示書などがなくても、画面を見せてもらえればStepBase側で手順を作成できるので、開始することの手軽さや、手順を「Bizer team」で明確にすることや品質管理チームによるチェック体制も整えることで品質や安心感につながっていると感じます。
StepBaseとBPaaSで描く未来のはたらき方
StepBaseとBPaaSで描く未来のはたらき方
ーーー今後、新たに提供していきたいサービスや構想はありますか。
森山:今後は、より多くの業務を支援できるようにAIを組み合わせた業務提供を想定しています。多くの企業からさまざまなご依頼をいただいており、各社業務は違うのですが、中身を見ていくと共通で対応できる部分もあります。その点についてAIを活用しスピーディに対応できるような状況にしていく想定です。
私たちが日々蓄積している業務データや実績を活用して、AIやシステムによる“ハイブリッド型のBPO”にも取り組んでいく予定です。たとえば、業務の最初と最後は人が対応し、中間部分はAIが処理することで、人とテクノロジーの融合による新しい価値を提供できるようにしていく、などを考えています。
最終的には、ご依頼いただく企業様のすべてのバックオフィス業務を、代わりにStepBaseが担うということを見据えています。
ーーーStepBaseの展開と並行して取り組まれているBPaaSについて教えてください。
森山:BPaaSは「Business Process as a Service」の略で、BPOをより定型化された形で提供していくための方法です。従来のBPOは企業の業務をヒアリングして対応していくため、カスタマイズ前提で柔軟に対応していくことができる一方、どうしても高額になり、大企業しか利用できないサービスになっています。一方でBPaaSはプロセス自体を設計し提供することで、BPOのノウハウを活かした効率的な業務手順をより安価に提供できることが価値になります。
たとえば、ある業務を手順化し、ツール化し、必要であればAIを組み合わせて、それを「業務パッケージ」として提供できるようにする。こうすることで、提供する側の効率性も上がり、受け取る側のお客様も導入しやすくなります。
ーーーStepBaseやBPaaSの普及で、どのような社会を実現したいとお考えですか。
森山:目指すのは、「各々がらしくはたらける社会」です。これからのはたらき方は「人の可能性を広げるもの」でありたいと思っています。まだまだ場所や時間という物理的な足かせがあり、「はたらけるのにはたらけない人」に機会が行き渡っていないと感じています。しかし、テクノロジーと人の力を掛け合わせれば、もっと自由で柔軟なはたらき方は実現可能です。
地理的制約やライフイベントによってキャリアを断念していた人にも、「オンライン×BPO(BPaaS)」という新しい形のはたらき方が一つの選択肢になります。StepBaseを通じて、“制約のないはたらき方”を当たり前にしていきたい。まだまだ小さな事業ではありますが、こうした一歩の積み重ねで、そのような社会に近づいていけると信じています。