【2026年最新】職場のハラスメントの種類一覧|定義・具体例・企業の防止措置を徹底解説

【2026年最新】職場のハラスメントの種類一覧|定義・具体例・企業の防止措置を徹底解説

近年は「○○ハラ」と呼ばれる行為が次々と知られるようになり、人事・労務の担当者や管理職の方から「どこまで把握し、何に対応すべきか分からない」という声が増えています。種類が多いうえに、それぞれの違いや「どこからがハラスメントなのか」という判断基準も見えにくいのが実情です。

さらに法改正によって、企業に求められる措置義務は年々拡大しています。法律上、防止措置の対象となる主なハラスメントには、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント、介護休業等に関するハラスメント、カスハラがあります。加えて、2026年10月1日からは、求職者等に対するセクシュアルハラスメントについても防止措置が義務付けられます。

本記事では、法律上、防止措置が義務付けられているハラスメントとその他、職場で問題になりやすいハラスメントを整理し、定義・具体例・判断基準・関連法・企業の対応まで一気通貫で解説します。


2026年10月1日に施行される最新の法改正も踏まえて構成しています。本記事を読むことで、職場のハラスメントの全体像を把握し、自社の研修、規程整備、相談対応を検討する際の基礎知識を得られるでしょう。

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まずは要点を以下の早見表にまとめました。各「確認したいポイント」をクリックすると、該当の見出しに移動できます。

本記事では、主に雇用されている労働者の職場環境に関わるハラスメントを、実務上分かりやすく『5類型』として整理します。なお、求職者等に対するセクシュアルハラスメントは対象者が異なるため、『就活ハラスメント』の項目で別途解説します。

確認したいポイント 結論 詳細
就業環境を害する言動の総称 パワハラ・セクハラから○○ハラまで、働く人の就業環境を害するさまざまな言動を指します
職場内の主要なハラスメントを5類型に整理 パワハラ・セクハラ・マタハラ/パタハラ・ケアハラ・カスハラの5類型に加え、求職者等へのセクハラも別途解説します
3要素と6類型で判断する 優越的な関係を背景とした言動・業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動・就業環境を害することの3要素をすべて満たすかで判断します
対価型・環境型などに整理 マタハラ等は、制度利用に関する嫌がらせや、妊娠・出産などを理由とする嫌がらせに整理できます
モラハラやリモハラなど多数 モラハラ・SOGIハラ・リモハラ・スメハラ・就活ハラなど性質ごとに整理できます
客観的・総合的に判断する 受け手の主観だけでなく、言動の内容や状況、継続性、一般的な受け止め方などを踏まえて総合的に判断します
方針周知・相談体制・事後対応などが必要 方針の明確化、相談体制、事後対応、プライバシー保護などが求められます。必要な措置の詳細はハラスメントの種類によって異なります
予防と対応の両輪で進める 方針・研修による予防と、相談窓口・事後対応・再発防止の対応を整えます

この記事でわかること

  • 法律上の措置義務がある主要な5類型と、それぞれの定義・具体例

  • パワハラを判断する「3要素」と「6類型」、適正な指導との境界
  • モラハラ・SOGIハラ・リモハラ・就活ハラなど、その他の種類の全体像
  • ハラスメントに当たるかどうかの判断基準(主観と客観の考え方)
  • 関連法と企業の措置義務、予防・相談対応・再発防止の具体的な進め方

目次

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    職場のハラスメントとは?定義と種類が増える背景

    職場のハラスメントとは、職場における言動によって相手に不利益や不快感を与え、就業環境を害する行為の総称です。パワハラ・セクハラといった代表的なものから近年話題の「○○ハラ」まで多種多様なものがあります。いずれも呼称や定義は異なりますが、就業環境を害する言動が問題となる点は共通しています。

    まずはこの基本を押さえたうえで、それぞれの種類を見ていきましょう。

    ハラスメントの意味と職場で問題になる理由

    ハラスメントとは、もともと英語で「嫌がらせ」「いじめ」を意味する言葉です。職場でハラスメントが問題になるのは、放置すると被害者の心身の不調や離職を招くだけでなく、企業活動にも大きな影響を及ぼすからです。

    具体的には、優秀な人材の流出やチーム全体の生産性低下といった「人材面」、損害賠償請求や行政指導といった「法務面」、企業イメージの毀損や採用力の低下といった「評判面」への影響が挙げられます。

    ハラスメント対策は、個人のモラル任せにするものではなく、採用・定着・労務リスク・企業ブランドに関わる経営課題として取り組む必要があります。


    なぜハラスメントの種類は増え続けているのか

    ハラスメントの種類が増え続けている背景には、大きく3つの要因があります。

    第一に、価値観やライフスタイルの多様化です。これまで当たり前とされてきた言動が、今では相手を傷つける行為として認識されるようになりました。第二に、働き方の変化です。リモートワークの普及に伴い、オンライン上での過度な監視など、新たな形の問題が「リモハラ」として認識されるようになりました。

    第三に、法整備の進展です。法律で対策が義務付けられたことで社会全体の関心が高まり、問題が可視化されやすくなりました。種類が増えている背景には、これまで見過ごされてきた職場の問題が可視化され、社会的な認識が広がっていることもあると考えられます。一方で「種類が多すぎて整理できない」という状況も生んでいるため、本記事で全体像を体系的に整理します。


    この記事で扱う種類の全体像(措置義務がある5類型+その他)

    本記事では、数多くのハラスメントを次の2つに分けて整理します。

    • 法律上の措置義務がある主要な5類型:パワハラ/セクハラ/マタハラ・パタハラ/ケアハラ/カスハラ
    • その他、職場で問題になりやすい種類:モラハラ/SOGIハラ/リモハラ/スメハラ/就活ハラ など

    なお、就活ハラスメントのうち、求職者等に対するセクシュアルハラスメントについては、2026年10月1日から事業主の防止措置義務の対象となる点を押さえておきましょう。

    まず企業が法的に対応を求められる5類型を押さえ、そのうえでその他の種類を一覧で俯瞰する、という流れです。この切り口で読み進めることで、何から手をつければよいかが明確になります。

    区分 主な種類 企業の義務
    措置義務がある5類型 パワハラ/セクハラ/マタハラ・パタハラ/ケアハラ/カスハラ 法律で防止措置が義務
    その他の種類 モラハラ/ジェンダーハラ/SOGIハラ/リモハラ/スメハラ/就活ハラ ほか 独立した法令上の類型ではないが、内容によっては既存の措置義務の対象となる

    その他の種類の中には、単独の法令用語ではないものの、内容によってはパワハラ・セクハラ等に該当し、企業の措置義務の対象となるものがある点には留意が必要です。

    法律上の措置義務がある主要なハラスメント【5類型】

    ここでは、法律によって企業(事業主)に防止のための措置が義務付けられている主要な5類型を解説します。いずれも対応を怠ると行政指導の対象になり得るため、まずはこの5つを優先的に押さえましょう。



    パワーハラスメント(パワハラ)

    パワハラとは、優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によって、労働者の就業環境を害する行為です。上司から部下へのものが典型ですが、同僚間や部下から上司への言動が該当することもあります。

    パワハラは「3要素」と「6類型」という枠組みで整理されるのが特徴で、詳細は次章で解説します。労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)により、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から、すべての企業に防止措置が義務付けられています。

    セクシュアルハラスメント(セクハラ)

    セクハラとは、職場における性的な言動によって労働者の就業環境を害したり、その対応によって労働者に不利益を与えたりする行為です。男女雇用機会均等法により、企業に防止措置が義務付けられています。

    セクハラには「対価型」と「環境型」の2種類があります。加害者・被害者は性別を問わず、同性間でも成立します。性的指向や性自認(SOGI)に関する言動が含まれる点も近年重視されています。

    妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ・パタハラ)

    マタハラ・パタハラとは、妊娠・出産や、育児休業などの制度利用を理由として、不利益な取扱いや嫌がらせを行う行為です。女性に対するものをマタニティハラスメント(マタハラ)、男性に対するものをパタニティハラスメント(パタハラ)と呼びます。

    男女雇用機会均等法および育児・介護休業法により、防止措置が義務付けられています。このハラスメントには、育休取得などの制度利用への嫌がらせ型と、妊娠・出産という状態への嫌がらせ型があります。

    介護休業等に関するハラスメント(ケアハラ)

    『ケアハラ』という通称は幅広い意味で使われることがあります。一方、法令上の防止措置義務の対象となるのは、介護休業や介護短時間勤務などの制度利用に関する言動によって、労働者の就業環境が害されるケースです。育児・介護休業法により、防止措置が義務付けられています。

    マタハラ・パタハラと同じく「制度利用への嫌がらせ」という枠組みで理解できます。

    高齢化の進展に伴い、仕事と介護の両立支援は今後さらに重要性が高まると考えられます。

    カスタマーハラスメント(カスハラ)―2026年10月1日から防止措置が義務化

    カスハラとは、顧客・取引先・施設利用者などの言動が、業務の性質や状況に照らして社会通念上許容される範囲を超え、その結果として労働者の就業環境が害されるものを指します。正当な苦情や合理的な要求が直ちにカスハラになるわけではなく、暴言や威圧的な言動、土下座の強要、長時間にわたる執拗なクレームなどが該当します。

    これまで法律上の措置義務の対象ではありませんでしたが、2025年6月の労働施策総合推進法の改正により、2026年10月1日から中小企業を含むすべての企業に対策が義務付けられます企業規模による適用猶予はありません。

    義務化への備えは「カスハラ対策|2026年10月義務化への備えと進め方」で具体的に解説しています。

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    パワハラの3要素と6類型【詳しく解説】

    パワハラは、実務上、該当性の判断に迷いやすいハラスメントの一つです。ここでは「3要素」「6類型」「指導との境界」という3つの観点から、パワハラの判断軸を掘り下げます。

    パワハラに当たる3つの要素

    職場のパワハラは、次の3つの要素をすべて満たすものと定義されています。

    • 優越的な関係を背景とした言動であること
    • 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
    • その言動によって労働者の就業環境が害されること

    ポイントは、3つのうちどれか1つでも欠ければパワハラには当たらないという点です。上司からの言動であっても、それが業務上必要かつ相当な範囲内の指導であれば、パワハラには該当しません。3要素をセットで確認することが、適切な判断の出発点になります。

    パワハラの6類型と具体例

    厚生労働省は、パワハラに該当しうる代表的な行為を次の6類型に整理しています。

    類型 内容 具体例
    1.身体的な攻撃 暴行・傷害 殴る、蹴る、物を投げつける
    2.精神的な攻撃 脅迫・名誉毀損・侮辱・暴言 人格を否定する発言、長時間の叱責
    3.人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視 一人だけ別室に移す、会議に呼ばない
    4.過大な要求 過大・不可能な業務の強制 到底こなせない量の業務を押し付ける
    5.過小な要求 能力や経験に比べて著しく程度の低い業務を命じる、または業務を与えない 退職に追い込むため雑務しかさせない
    6.個の侵害 私的なことへの過度な立ち入り 私生活を執拗に詮索する、個人情報を暴露する

    ただし、この6類型はあくまで代表例であり、ここに当てはまらなければパワハラではない、ということではありません。各行為が前述の3要素に当てはまるかを個別に判断する必要があります。

    業務上の指導とパワハラの境界

    「指導とパワハラの違いが分からない」という疑問は、管理職が判断に迷いやすいポイントの一つで。結論から言えば、業務上の必要性があり、その手段が社会通念上相当な範囲に収まっている指導は、パワハラには当たりません

    分かれ目になるのは、業務上の必要性・相当性を超えて、人格を否定したり、見せしめのように叱責したりしているかどうかです。ミスの原因を確認し、再発を防ぐために事実に基づいて注意することは適正な指導ですが、大勢の前で長時間にわたって本人を罵倒したり、人格を否定したりする行為は、業務上必要かつ相当な範囲を超えパワハラに該当する可能性があります。判断は行為者の主観ではなく、客観的・総合的に行う点に注意しましょう。

    セクハラ・マタハラ等の類型と具体例

    ここでは、パワハラ以外の措置義務類型について、具体例を交えて補足します。セクハラの2類型、そしてマタハラ・パタハラ・ケアハラの典型例を整理します。

    セクハラの2類型(対価型・環境型)

    セクハラは、大きく次の2つの類型に分けられます。

  1. 対価型セクハラ:性的な言動への労働者の対応(拒否・抗議など)を理由に、解雇・降格・減給などの不利益を与えるもの
    (例)上司の誘いを断った部下を、報復として不利益な配置転換にする

  2. 環境型セクハラ:性的な言動によって就業環境が害され、働きづらくなるもの
    (例)職場でわいせつなポスターを掲示する、性的な噂を流す、身体に不必要に触れる
  3. セクハラは性別を問わず、男性が被害者になることも、同性間で起こることもあります。性的指向や性自認に関する侮辱的な言動(いわゆるSOGIハラ)も、セクハラに含まれうる点に留意が必要です。

    マタハラ・パタハラ・ケアハラの具体例

    典型例は、制度の利用、妊娠・出産の状態、介護を担っていることなどを理由とした次のような言動です。

    • 「育休を取るなら辞めてもらう」「男が育休なんてあり得ない」と制度利用を妨げる
    • 「忙しい時期に妊娠するなんて非常識だ」と妊娠・出産を非難する
    • 「介護を理由に休むなら、重要な仕事は任せられない」と介護を理由に冷遇する

    これらは、制度利用に関する嫌がらせや、妊娠・出産の状態、介護を担っていることなどを理由とする不適切な言動として整理できます。本人に悪気がなく「気遣いのつもり」であっても、結果として制度利用をためらわせる言動はハラスメントに該当しうるため、注意が必要です。

    職場で問題になりやすいその他のハラスメント一覧

    ここからは、独立した法令上の類型ではない呼称を中心に、職場や採用活動で問題になりやすい「その他のハラスメント」を性質ごとに紹介します。なお、就活ハラスメントのうち、求職者等に対するセクシュアルハラスメントは、2026年10月1日から防止措置義務の対象となります。


    種類 主な内容 法的な注意点
    モラハラ 無視・人格否定など精神的な嫌がらせ 内容によりパワハラに該当する可能性
    SOGIハラ 性的指向・性自認に関する侮辱やアウティング 内容によりパワハラ・セクハラに該当する可能性
    リモハラ オンライン会議や在宅勤務下での過度な監視等 内容によりパワハラに該当する可能性
    スメハラ においに関する問題 指摘方法によっては、指摘する側の言動がハラスメントに該当する可能性
    アルハラ 飲酒の強要など 安全配慮義務・労災リスクにも注意
    就活ハラ 採用選考・OB・OG訪問等での嫌がらせ 求職者等セクハラは2026年10月から措置義務対象

    モラハラ・ジェンダーハラスメント・SOGIハラ

    人格や属性に関わるハラスメントには、次のようなものがあります。

    • モラルハラスメント(モラハラ):態度や言葉、無視などによって精神的に相手を追い詰める嫌がらせ。身体的な暴力を伴わない点が特徴です。
    • ジェンダーハラスメント:「男のくせに」「女性だから」など、性別による固定的な役割を押し付ける言動。
    • SOGIハラ:性的指向・性自認に関する侮辱や、本人の了解なく暴露する行為(アウティング)。

    リモハラ・テクハラ・ロジハラなど働き方・コミュニケーションに関するもの

    働き方やコミュニケーションの変化に伴い、近年使われるようになった呼称です。

    • リモートハラスメント(リモハラ):オンライン会議で執拗にカメラ起動を求める、業務時間外も常時接続を強要するなど。
    • テクノロジーハラスメント(テクハラ):ITに不慣れな人に対し、わざと専門用語を使ったり、できないことを馬鹿にしたりする。
    • ロジカルハラスメント(ロジハラ):正論を盾に相手を一方的に追い詰め、逃げ場をなくす。

    スメハラ・アルハラ・時短ハラなど生活・慣習に関するもの

    生活習慣や職場の慣習に関わる種類です。

    • スメルハラスメント(スメハラ):体臭・口臭・強すぎる香水などのにおいで周囲に不快感を与える。
    • アルコールハラスメント(アルハラ):飲み会で飲酒を強要する、一気飲みをはやし立てる。
    • 時短ハラスメント(時短ハラ):時短勤務者に十分な配慮なく業務量だけを求める、または時短を理由に冷遇する。

    これらは悪意がないまま起こりやすい点が特徴で、職場全体での意識づけが予防につながります。

    就活ハラスメント(採用・就活生へのハラスメント)

    就活ハラスメントとは、採用選考やOB・OG訪問などの場で、求職者に対して行われる不適切な言動の総称です。立場の弱い就活生への性的な言動(就活セクハラ)や、内定をちらつかせた圧力などが問題になっています。

    この分野でも法整備が進んでおり、2025年の法改正によって、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が、カスハラと同じく2026年10月1日から全企業に義務付けられます。採用活動を行う企業は、選考時の対応も見直しておく必要があります。

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    ハラスメントの判断基準(該当する/しないの境界)

    「どこからがハラスメントなのか」は、対応する側にとって最も悩ましい問題です。結論として、ハラスメントは受け手の主観だけで決まるものではなく、客観的・総合的に判断します。

    本人の主観だけで決まらない|客観的な判断が必要

    「相手が不快に感じたら、すべてハラスメント」と考えるのは正確ではありません。該当するかどうかは、言動の内容・状況・継続性などを総合し、一般的な労働者の受け止め方や社会通念に照らして客観的に判断します。

    一方で、受け手の受け止め方をまったく無視してよいわけでもありません。同じ言動でも、相手の立場や状況によって受ける影響は異なります。「不快=即ハラスメント」でもなければ「本人が気にしなければ問題なし」でもない、というバランス感覚が求められます。

    「業務上必要かつ相当な範囲」をどう考えるか

    特にパワハラでは、その言動が「業務上必要かつ相当な範囲」を超えているかが判断の核になります。業務上の必要性があり、手段としても相当であれば、たとえ厳しい注意であっても適正な指導の範囲内です。

    実際の裁判でも、同じような叱責がパワハラと認定されたケースと、されなかったケースの両方があります。判断は、言動の目的・経緯・態様・頻度・継続性などを総合して行われます。管理職や現場担当者が判断に迷った場合に、個人で結論を出さず、人事・労務部門や社内外の専門窓口に相談できる流れを整えておくことが大切です。

    ハラスメントに関する法律と企業の措置義務

    ハラスメント対策は、複数の法律によって企業の義務として定められています。ここでは、既存の法制度から2025年の改正、そして企業が講じるべき措置までを整理します。

    ハラスメントの種類と根拠となる法律

    どのハラスメントがどの法律に対応するかを整理すると、次のとおりです。

    ハラスメントの種類 根拠となる法律
    パワハラ 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)
    セクハラ 男女雇用機会均等法
    マタハラ・パタハラ 男女雇用機会均等法・育児・介護休業法
    ケアハラ 育児・介護休業法
    カスハラ・就活セクハラ カスハラ|労働施策総合推進法(2026年10月1日施行)
    就活セクハラ|男女雇用機会均等法(2026年10月1日施行)
    労働施策総合推進法に基づくパワハラ防止措置は、大企業には2020年6月から、中小企業には2022年4月から適用され、現在はすべての企業が対象です。

    2025年改正でカスハラ・就活セクハラ対策が義務化

    2025年6月、労働施策総合推進法などの改正法が成立しました。企業実務における主な変更点は、カスタマーハラスメントと、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の防止措置が、2026年10月1日からすべての企業に義務付けられることです。

    中小企業も含めた全企業が対象で、企業規模による適用猶予はありません。企業が講じるべき具体的な措置の内容は、法律に基づく厚生労働大臣の指針で定められています。施行までの準備期間は決して長くないため、早めの体制づくりが求められます。

    企業が講じるべき措置(方針周知・相談体制・事後対応)

    既存の職場内ハラスメント対策において、事業主に求められる主な措置は、次の4つに整理できます。なお、カスハラや求職者等セクハラについては、それぞれ固有の措置も定められているため、最新の指針を確認する必要があります。

    • 方針の明確化と周知・啓発:ハラスメントを許さない方針を定め、就業規則などに明記して周知する
    • 相談体制の整備:相談窓口を設置し、適切に対応できる体制を整える
    • 事後の迅速かつ適切な対応:事実確認・被害者保護・行為者対応・再発防止を行う
    • 併せて講ずべき措置:相談者・行為者のプライバシー保護、相談を理由とする不利益取扱いの禁止など

    これらは「やっておくと望ましい」レベルではなく、法律上の義務です。次の章では、これらを実務にどう落とし込むかを見ていきます。

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    企業が取り組むべきハラスメント対策・防止策

    措置義務を実務に落とし込むには、「予防」と「対応」の両輪が欠かせません。ここでは、方針・周知、相談窓口・事後対応、再発防止、そして相談を受けたときの初動までを整理します。

    方針の明確化と就業規則・研修による周知

    対策の起点となるのが、方針の明確化と周知です。まず、経営トップが「ハラスメントを許さない」というメッセージを明確に発信します。そのうえで、就業規則に、ハラスメントの禁止および違反した場合の懲戒に関する規定を明記し、全社員を対象とした研修で周知・啓発を行います。

    研修は一度きりで終わらせず、定期的に実施することが効果的です。管理職向けには、指導とパワハラの境界や相談を受けたときの対応など、立場に応じた内容を盛り込むとよいでしょう。

    研修設計の考え方は「ラインケア研修とは?目的やメンタルケアに効果的な実施方法を解説」も参考になります。

    相談窓口の設置と適切な事後対応

    従業員が安心して相談できる窓口を設置することは、措置義務の中核です。相談しやすさを高めるため、社内窓口だけでなく社外の専門窓口を併用する企業も増えています。厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、ハラスメントの相談窓口を『社内と社外の両方に設置している』企業は41.2%と報告されています。

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    相談があった際は、放置や決めつけを避け、事実確認を行ったうえで、被害者の保護と行為者への対応を迅速かつ適切に進めます。対応のフローをあらかじめ定めておくことで、いざというときに現場が迷わず動けます。

    窓口づくりの具体策は「ハラスメント相談窓口の設置・運用のポイント」で解説しています。

    再発防止とプライバシー・不利益取扱いの防止

    ハラスメント対策は、一度ルールや窓口を整備して終わりではありません。発生した事案を分析し、再発防止につなげる継続的な取り組みが重要です。

    例えば、相談内容の傾向を把握し、管理職向け研修の内容を見直したり、組織風土に関するアンケートを実施したりすることで、潜在的なリスクを早期に発見しやすくなります。また、従業員への定期的な周知や啓発は、ハラスメントを許さない職場文化の醸成にも有効です。

    企業が継続的に改善を重ねることで、ハラスメントの未然防止と安心して働ける職場環境の実現が期待できます。

    ハラスメントが起きた/相談されたときの対応

    ハラスメント事案への適切な対処は、被害の拡大や二次被害を防ぐうえでも重要です。初動が遅れたり、対応が不適切だったりすると、被害者の心身への影響が深刻化するだけでなく、職場全体の信頼関係や生産性にも悪影響を及ぼします。

    そのため、相談を受けた際の初動対応から、事実確認、被害者・行為者への対応、再発防止まで、一連の流れを組織として整備しておくことが大切です。

    相談を受けたときの初期対応

    ハラスメントの相談を受けた際は、まず相談者の話を最後まで傾聴することが重要です。相談内容を否定したり、「気にしすぎではないか」と決めつけたりすると、相談者がさらに傷つき、必要な情報を把握できなくなるおそれがあります。

    初動対応で特に重要なのは、「傾聴」「秘密保持」「本人の意向の尊重」の3つです。相談内容は必要最小限の関係者に限って共有し、本人の意向を確認しないまま、不必要に情報を開示しないよう配慮します。また、相談者がどのような解決を望んでいるのかを確認し、対応方針を丁寧に説明することも欠かせません。

    相談の放置や安易な判断は、被害の深刻化や二次被害につながる可能性があります。まずは安心して話せる環境を整え、相談者との信頼関係を築くことが大切です。

    事実確認・被害者と行為者への対応

    相談を受けた後は、中立的な立場で事実確認を進めます。相談者だけでなく、行為者とされる人物や関係者からも話を聞き、日時や場所、具体的な言動などを整理しながら客観的な事実を把握します。先入観を持たず、公正に確認することが重要です。

    事実確認の結果、ハラスメントが認められた場合は、被害を受けた相談者の保護を最優先に対応します。配置転換や業務調整、必要に応じたメンタルヘルス支援などを行い、安心して働ける環境の回復を図ります。一方で、行為者には事案の内容に応じて指導や研修、懲戒処分などの措置を検討します。

    また、同様の問題を繰り返さないために、原因分析や職場環境の見直し、再発防止策の実施も欠かせません。対応が難しい場合は、弁護士や外部相談窓口などの専門家を活用することも有効です。

    ストレスチェック結果を職場改善につなげる進め方は「ストレスチェック後の職場改善の進め方」、相談体制づくりは「メンタルヘルス対策の基本と進め方」もご覧ください。

    ハラスメント対策を支援するパートナーの活用

    ハラスメント対策は、種類の理解にとどまらず、規程の整備、研修の実施、相談窓口の運用、事案発生時の調査対応まで多岐にわたります。これらをすべて自社の人事・労務部門だけで担うのは、負担が大きいのが実情です。

    近年は、外部の専門パートナーと連携して対策の実効性を高める企業が増えています。社員向け研修、外部相談窓口(EAP)の運用、規程整備や第三者の立場からの事案対応など、提供される専門サービスは多様です。特に2026年10月のカスハラ・就活セクハラ義務化を控え、「何から手をつければよいか分からない」という段階であれば、自社だけでの対応が難しい場合に備え、相談できる外部専門機関や支援サービスをあらかじめ把握しておくことが重要です。

    なお、ハラスメントの相談状況については、厚生労働省の実態調査でも、過去3年間に労働者から「顧客等からの著しい迷惑行為」の相談があった企業の割合は27.9%で、前回調査から8.4ポイント増加したことが示されています。

    まとめ

    職場のハラスメントは多様で、一見すると整理が難しく感じられます。しかし「法律上の措置義務がある5類型」と「その他、職場で問題になりやすい種類」に分けて捉えれば、全体像はぐっと把握しやすくなります。

    最後に要点を整理します。

    • 定義:職場における言動によって、労働者の就業環境を害する行為
    • 措置義務がある5類型:パワハラ/セクハラ/マタハラ・パタハラ/ケアハラ/カスハラ
    • パワハラ:『優越的な関係を背景とした言動』『業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動』『就業環境を害すること』の3要素と6類型をもとに判断
    • その他の種類:モラハラ、SOGIハラ、リモハラ、スメハラ、就活ハラ など
    • 判断基準:主観だけでなく、客観的・総合的に判断する
    • 法律・措置義務:法律・措置義務:方針周知・相談体制・事後対応・プライバシー保護などを整備。ハラスメントの種類に応じた固有の措置にも対応する
    • 対策・相談対応:予防(方針・研修)と対応(窓口・事後対応・再発防止)を両輪で進める
    加えて、2026年10月1日からは、カスハラと就活セクハラの防止措置が、すべての企業に義務付けられます。施行日の2026年10月1日に向けて、計画的に準備を進める必要があります。この機会に自社のハラスメント対策を点検し、研修・規程・相談体制の整備に着手しましょう。

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    形骸化した窓口から「使われる」窓口へ。顔出し不要の心理支援サービス「KATAruru」についてまとめています

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