安全運転管理者の基本的な選任義務
道路交通法第74条の3は、一定台数以上の車両を保有する企業に対し、安全運転管理者の選任を義務付けています。まずは、どのような企業が対象となるのか、基本的な選任要件を確認しましょう。
選任対象の台数基準
安全運転管理者の選任義務は、使用の本拠である事業所ごとに保有車両の台数で判断されます。乗車定員11名以上の自動車を1台以上保有する場合、または乗車定員10名以下の自動車を5台以上保有する場合に選任義務が発生します。自動二輪車については、50ccを超えるバイクは1台を0.5台として計算する特別なルールがあります。
さらに保有台数が20台以上になると、副安全運転管理者の選任も必要です。20台から39台までは1名、以降20台増えるごとに1名ずつ追加する必要があります。たとえば40台保有する事業所では、安全運転管理者1名に加えて副安全運転管理者2名の選任が求められます。
届出期限の詳細
安全運転管理者を選任または解任した場合、15日以内に管轄の公安委員会へ届け出る義務があります。この届出は実務上、所轄の警察署を通じて行われることが一般的です。届出期限を過ぎた場合、5万円以下の罰金が科される可能性があります。
届出義務違反は企業のコンプライアンス体制に対する信頼を損なうだけでなく、事故発生時の責任追及において不利な状況を招きます。
選任届出書には、安全運転管理者の氏名、生年月日、住所、運行管理者資格者証の写しなどを添付する必要があります。人事異動などで担当者が変更になった場合も、速やかに届出手続きを行うことが重要です。
資格要件のポイント
安全運転管理者には以下のように年齢と経験に関する明確な資格要件が定められています。
| 役職 | 年齢要件 | 経験要件 |
|---|---|---|
| 安全運転管理者(19台以下) | 20歳以上 | 2年以上の運転管理実務経験 |
| 安全運転管理者(20台以上で、副安全運転管理者も選任する場合) | 30歳以上 | 2年以上の運転管理実務経験 |
| 副安全運転管理者 | 20歳以上 | 1年以上の運転管理経験または3年以上の運転経験 |
これらの要件を満たす人材を社内で確保し、適切に選任することが法令遵守の第一歩となります。
安全運転管理者の業務義務の全体像
安全運転管理者には、アルコールチェック以外にも道路交通法施行規則第9条の10に基づく多岐にわたる業務が義務付けられています。これらの業務を適切に遂行することで、事業所全体の交通事故防止と安全運転の徹底につながります。
運転者の把握方法
安全運転管理者は、運転者の適性、技能、知識、法令遵守状況を継続的に把握する義務があります。単に運転免許証の有効期限を確認するだけでなく、運転者の運転技術や交通ルールに対する理解度、過去の違反歴なども含めて総合的に評価します。
具体的には、免許証の更新状況の確認、運転記録証明書の取得、定期的な面談による運転者の意識確認などが該当します。運転者の健康状態や生活習慣の変化が安全運転に影響することもあるため、日常的なコミュニケーションも適切に把握するための重要な手段です。
運行計画の作成要点
過労運転や最高速度違反を防止するため、安全な運行計画を作成することも安全運転管理者の重要な業務です。運行距離、運転時間、休憩時間、交替運転者の配置などを具体的に計画し、無理のないスケジュールを組み立てます。
特に長距離運転や夜間運転が予定される場合は、適切な休憩を確保し、必要に応じて交替運転者を配置することで、運転者の疲労蓄積を防ぎます。運行計画は単なる形式的な書類ではなく、実効性のある内容にすることが事故防止につながります。
点呼の実施基準
運転者に対する点呼は、日常点検の実施確認と、疾病・疲労・睡眠不足など正常な運転ができないおそれの有無を確認するための重要な機会です。点呼時には運転者の顔色や受け答えの様子を観察し、体調に問題がないか確認します。
点呼で異常が認められた場合は、運転を中止させる、代替運転者を手配する、十分な休息を取らせるなど、適切な指示を与える必要があります。点呼は形式的に済ませるのではなく、運転者の安全を実質的に確保するための対話の場として機能させることが求められます。
運転日誌の記録項目
運転日誌には、運転者名、運転日時、走行距離、運転経路などの基本情報を記録します。この記録は運転状況の把握だけでなく、事故発生時の原因究明や、運転者の労働時間管理にも活用される重要な資料です。
記録は紙の日誌でもデジタルシステムでも構いませんが、正確かつ継続的に記録を残すことが重要です。運転日誌の記録義務を怠ると、安全運転管理者としての業務不履行とみなされ、行政処分の対象となる可能性があります。
安全運転指導の実施方法
運転者に対する安全運転の指導や教育は、交通事故防止の根幹となる業務です。交通法規の変更点や事故事例の共有、危険予測トレーニング、季節ごとの注意喚起など、多様な形式で継続的に実施します。
指導は座学だけでなく、実際の運転場面を想定したロールプレイや、ドライブレコーダーの映像を活用した振り返りなど、実践的な方法を取り入れることで効果が高まります。安全運転に対する意識を組織全体で共有し、継続的に向上させる文化を作ることが安全運転管理者の役割です。
アルコールチェック義務の実務ガイド
2023年12月から完全施行されたアルコールチェック義務は、安全運転管理者の業務において最も注意を要する項目です。この義務を正確に理解し、確実に実施する体制を構築することが、罰則リスクを回避する上で不可欠です。
義務化の経緯
アルコールチェック義務化の背景には、白ナンバー車両による飲酒運転事故の多発があります。特に2021年に千葉県八街市で発生した、飲酒運転のトラックによる児童死傷事故は社会に大きな衝撃を与え、法改正の契機となりました。
段階的な施行が行われ、2022年4月からは目視等による酒気帯び確認と記録保存が義務化されました。当初2022年10月に予定されていた検知器使用の義務化は、半導体不足による検知器供給難を理由に延期され、最終的に2023年12月から完全施行となりました。
対象範囲の定義
アルコールチェックの対象者は、安全運転管理者選任事業所における業務目的で車を運転するすべての従業員です。正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイト、派遣社員など、雇用形態を問わず業務で車両を運転するすべての人が対象となります。
営業車や社用車だけでなく、マイカーを業務に使用する場合も対象に含まれるため、直行直帰の営業担当者や在宅勤務者が自家用車で取引先を訪問する場合も、アルコールチェックが必要です。
確認のタイミングの実務
法令上は運転しようとする運転者および運転を終了した運転者に対して確認を行うことが定められています。警察庁の解釈では、必ずしも個々の運転の直前直後に実施する必要はなく、運転を含む業務の開始前や出勤時、および業務の終了後や退勤時に実施すれば足りるとされています。
実務上は1日2回、出勤時と退勤時にアルコールチェックを実施する運用が一般的です。ただし、勤務時間中に飲酒する可能性がある昼休憩後や、長時間の外出から戻った後など、必要に応じて追加の確認を行うことが望ましいとされています。
確認方法の二段階要件
アルコールチェックは目視等による確認とアルコール検知器の使用という二段階の確認が必須です。目視等による確認では、安全運転管理者または補助者が運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子を五感で確認します。具体的には、顔の赤みやアルコール臭、呂律の回らない話し方といった異常がないかを確認しましょう。
アルコール検知器は、呼気中のアルコールを検知し、その有無または濃度を警告音、警告灯、数値などで示す機能を持つ機器を使用します。これは単に購入して置いておくだけでなく、メーカーの取扱説明書に基づき適切に使用・管理・保守し、定期的に故障の有無を確認する必要があります。
記録保存の要件
アルコールチェックの確認内容は記録し、1年間保存する義務があります。記録媒体は紙、Excel、クラウドシステムなど形式は問われませんが、以下の8項目を必ず記録する必要があります。
記録すべき項目は次の通りです。
- 確認者名:安全運転管理者、副安全運転管理者、または委託先オペレーターの氏名
- 運転者の氏名
- 自動車登録番号等:運転車両のナンバーまたは社内管理番号
- 確認の日時:チェックを実施した日時
- 確認の方法:アルコール検知器の使用有無、対面でない場合の具体的方法
- 酒気帯びの有無:検知器の測定結果および目視の結果
- 指示事項:運転許可、運転不許可、再検査指示などの内容
- その他必要な事項:睡眠不足の申告、体調不良、日常点検の結果など
これらの記録は事故発生時に警察や裁判所から提示を求められる可能性があるため、正確かつ漏れなく記録し、確実に保存する体制が必要です。記録が不十分な場合、安全配慮義務違反の証拠となり、損害賠償責任を問われるリスクが高まります。
アルコールチェック運用の現場課題を解消する方法
アルコールチェック義務の実務運用では、直行直帰の運転者への対応や24時間対応の負担など、多くの企業が共通の課題に直面しています。そこで、ここでは実務上の主要な課題と、それを解消するための具体的な方法を解説します。
直行直帰での確認手法
営業担当者や配送ドライバーなど、直行直帰で勤務する運転者に対するアルコールチェックは、多くの企業が直面する課題です。原則として対面での確認が必須とされていますが、物理的に対面が困難な場合、一定の条件を満たせば代替方法が認められています。
禁止される方法として、メール、チャット、SMS、FAXなど一方的な報告手段があります。これらは安全運転管理者が運転者の顔色や声の調子をリアルタイムで確認できないため、目視の義務を果たしたとはみなされません。
遠隔確認で満たすべき条件
直行直帰での確認方法として認められるのは、双方向の対話が可能な手段です。最も推奨されるのはビデオ通話方式で、スマートフォンのビデオ通話機能や専用アプリを使用し、安全運転管理者が運転者の顔色と声の調子を映像と音声で確認し、同時に検知器の測定結果も画面越しに確認します。
電話方式も許容されており、携帯電話や業務無線などで直接対話し、安全運転管理者が声の調子を確認するとともに、検知器の測定結果を報告させます。ただし、これらの方法を採用する場合でも、確認方法の記録には対面でない場合の具体的方法を明記する必要があります。
検知器の管理と校正手順
アルコール検知器の常時有効保持義務には、定期的な故障確認とセンサーの使用期限管理が含まれます。多くの検知器はセンサーに使用期限が設定されており、期限を過ぎた検知器の使用は有効な確認とみなされません。
検知器の管理台帳を作成し、各機器のシリアル番号、購入日、センサー交換日、次回交換予定日を記録します。定期的に動作確認を行い、異常がないことを確認する手順を業務フローに組み込むことが重要です。
早朝深夜対応の負担軽減策
早朝の直行、夜の直帰、土日祝日の就業など、安全運転管理者が通常勤務時間外にアルコールチェックに対応する必要が生じるケースが増えています。これは安全運転管理者の時間外労働の増加と人件費の増大を招くだけでなく、担当者の疲弊による確認品質の低下するおそれもあります。
さらに、安全運転管理者が電話に出られない状況では、運転者が管理者との連絡待ちとなり、業務開始が遅延して生産性が低下する場合もあります。この課題を解決する現実的な方法が、アルコールチェック業務の外部委託です。
外部委託利用時の確認項目
警察庁によれば、安全運転管理者がアルコールチェック業務を外部の事業者や補助者に委託することは差し支えないとされています。ただし、業務を委託した場合でも安全運転管理者の管理責任は残るため、委託先の選定と管理には注意が必要です。
委託先を利用する際は、次の体制を確保する必要があります。まず、委託先の事業者を事前に指定し、酒気帯び確認の方法について指導と教育を行います。さらに、委託先が酒気帯びを確認した場合には、安全運転管理者へ速やかに報告し、安全運転管理者が運転中止などの指示を行える仕組みを整えることが重要です。
外部委託の利点は24時間365日対応が可能になることです。専門のコールセンターが早朝、深夜、休日の確認業務を代行することで、安全運転管理者の負担と残業コストを大きく削減できます。さらに、専門オペレーターによる法令に準拠した厳格な確認と、必須項目の記録をシステムでリアルタイムに管理し、1年間のデータ保管を代行することで、記録管理の負担も軽減されます。
アルコールチェックのアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
安全運転管理者には選任義務、アルコールチェック義務、記録保存義務など多岐にわたる法的義務が課されています。特に2023年12月から完全施行されたアルコールチェック義務では、検知器の使用と常時有効保持、1年間の記録保存が必須となり、直行直帰や早朝深夜の対応など実務上の課題も顕在化しています。義務不履行は罰則や行政処分だけでなく、事故発生時の民事責任という深刻なリスクにつながります。
わたしたちパーソルビジネスプロセスデザインでは、アルコールチェックに関する業務を代行させていただいております。24時間365日、早朝・深夜のみ、土日祝日のみなど、お客様の状況に応じてコールセンター窓口を開設したり、記録や管理にかかる業務において担当者さまの工数を削減したりと、お客様のご要望に合わせた対応をしております。
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