コールセンターにおけるKPIとは
コールセンターのKPIとは、センター運営の状態を数値で可視化し、改善判断の根拠とするための指標です。
KPIは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」の略称で、目標達成に向けた進捗を定量的に把握する役割を担います。コールセンター(コンタクトセンター)においては、電話だけでなくメール・チャット・SNSなど複数チャネルの運営品質を横断的に測定する基準として活用されています。
たとえば、応答率は「電話のつながりやすさ」を、FCR(一次解決率)は「1回の対応で解決できたか」を数値化します。こうした指標を定期的にモニタリングすることで、感覚的な運営から脱却し、データに基づいた改善サイクル(PDCA)を回せるようになります。
KPIはセンター運営の状態を数値で確認する指標
コールセンターにおけるKPIは、日々の運営が目標に対してどの程度順調に進んでいるかを客観的な数値で示す指標です。
コールセンターの業務は多岐にわたり、つながりやすさ・応対品質・処理効率・顧客満足度・人材定着など管理すべき領域が広いため、「なんとなく」の管理ではボトルネックを特定できません。具体的には、以下のように目的ごとにKPIが設定されます。
| つながりやすさ | 応答率、サービスレベル(SL) |
|---|---|
| 解決力 | FCR(一次解決率)、再入電率 |
| 処理効率 | AHT(平均処理時間)、CPH(1時間あたり処理件数) |
| 顧客評価 | CSAT(顧客満足度)、NPS(ネットプロモータースコア) |
| 人材状況 | 離職率、欠勤率、稼働率 |
重要なのは、KPIを取る目的は「評価」ではなく「改善」にあるという点です。数値を集めること自体がゴールではなく、改善アクションにつなげて初めて意味を持ちます。
なお、指標を増やしすぎると現場が混乱するリスクもあるため、自社のKGI(最終目標)に合った重点KPIを3〜5個に絞ることが実務上のポイントです。
KPIとKGIは何が違う?
KGIとは
KPIとセットでよく耳にするKGIは、「Key Goal Indicator:重要目標達成指標」の略称です。KPIは、日々の運営が適切であるかを測る指標であることに対し、KGIは「最終ゴール」を指します。つまり、KPIは「過程」であり、KGIは「ゴール」なのです。
ひとつ例を挙げてみましょう。
例)自社センターで下記のミッションを掲げている
「リピートしてくれる顧客を増やしたい」
- KGI……顧客のリピート率を10%上げる
- KPI……半期後までに一次解決率を平均5%上げる
(ユーザーの利便性を向上させて定着を図る)
この構造を見てわかるように、KPIはあくまで“過程”であり、最終目標にはなりません。これがKGIとの違いになります。
KGI→KPIへとブレイクダウンしていく
KPIを測定する最大の目的は、KGIを達成することにあります。
前述した通り、そもそもKPIはKGIを達成するための「過程」ですので、KPIとKGIが関連づけられていなければ役割を果たすことができません。
そのため、KPIを設定するときは、
- センターを設置した目的は何なのか
- センター全体のゴールは何なのか
を踏まえてKGIを設定し、そこから逆算してKPIを決めていきましょう。
【一覧表】コールセンターで見るべき主要KPI・指標
各分類ごとにKPIの意味・概要を整理していきます。計算式と目安は後述の「コールセンターKPIの計算式・算出方法と目安 」で詳しく解説しますので、あわせてご覧ください。
コールセンターKPIの種類は目的別に整理する
KPIは大きく「品質」「効率」「売上」「人材」の4つに大別されますが、本記事では実務上の改善アクションに落とし込みやすいよう、7分類で整理します。
従来の4分類では「接続品質」と「応対品質」が同じ「品質」に含まれ、改善施策が異なるにもかかわらず混同されやすいためです。また、BPO活用が進む中で委託先評価・SLAという独自の管理カテゴリも重要性が高まっています。
| 分類 | 目的・用途 |
|---|---|
| 1. 接続品質 | 顧客からの電話が「つながりやすいか」を確認する |
| 2. 応対品質 | オペレーターの対応が「正確で納得感があるか」を確認する |
| 3. 生産性・効率 | 業務が「適正な時間とコストで処理されているか」を確認する |
| 4. 顧客満足度 | 顧客の「体験価値やロイヤルティが向上しているか」を確認する |
| 5. 人材・マネジメント | オペレーターの「負荷や定着率」を確認する |
| 6. 売上・解約 | センターが「利益や継続利用にどれだけ貢献したか」を確認する |
| 7. 委託先評価・SLA | アウトソーシング先が「契約水準を満たしているか」を確認する |
KPIを「全部追う」のではなく、「目的別に選ぶ」ことが成功の鍵です。以下、各分類の主要指標を解説します。
(1) 接続品質に関するKPI
接続品質のKPIは、電話やチャットが顧客に早く・確実につながっているかを示す指標群です。「つながらないコールセンター」を改善したい場合、最初に監視すべき項目となります。
| KPI名 | 概要・意味 |
|---|---|
| 応答率 | 着信した総コール数のうち、オペレーターが実際に対応できた割合 |
| 放棄呼率(アバンダンレート) | オペレーターにつながる前に、顧客が待ちきれず電話を切った割合 |
| サービスレベル(SL) | 設定した時間内(例:20秒以内)に応答できたコールの割合 |
| ASA(平均応答速度) | 着信してからオペレーターが応答するまでの平均待ち時間 |
応答率だけでは「どれだけ待たせたか」が見えないため、SLやASAとセットで管理することが重要です。
(2) 応対品質に関するKPI
応対品質のKPIは、オペレーターの対応が正確で、顧客に納得感を与えられているかを測る指標です。AHT(平均処理時間)が短くても解決していなければ意味がないため、効率指標とは分けて管理する必要があります。
| KPI名 | 概要・意味 |
|---|---|
| FCR(一次解決率) | 最初の1回のコンタクトで問い合わせが完全に解決した割合 |
| モニタリングスコア | SVや品質評価担当者が通話音声を採点した定量スコア |
| ミス率 | 全処理件数に対して誤案内が発生した割合 |
| エスカレーション率 | オペレーター単独で解決できず上位者へ引き継いだ割合 |
| 再入電率 | 短期間内に同一内容で再度問い合わせがあった割合 |
| ミステリーコール結果 | 覆面調査による応対品質の客観評価 |
(3) 生産性・効率に関するKPI
生産性・効率のKPIは、限られた人員と予算の中で無駄なく業務を遂行しているかを示す指標です。
| KPI名 | 概要・意味 |
|---|---|
| AHT(平均処理時間) | 通話時間+保留時間+後処理時間の平均。1件完了までの所要時間 |
| ATT(平均通話時間) | 純粋に顧客と会話している平均時間 |
| ACW(平均後処理時間) | 通話終了後のシステム入力等に要した平均時間 |
| CPH(コール・パー・アワー) | オペレーター1人が1時間あたりに処理した対応件数 |
| CPC(コスト・パー・コール) | 1件の電話を処理するためにかかった総費用 |
ただし、AHTの短縮だけを追求すると応対品質が低下するリスクがあるため、FCR(一次解決率)やCSAT(顧客満足度)とセットで管理することが不可欠です。
(4) 顧客満足度に関するKPI
顧客満足度のKPIは、対応を終えた顧客の心理状態やロイヤルティを測る指標です。VOC(顧客の声)活動やCX改善の起点となります。
| KPI名 | 概要・意味 |
|---|---|
| CSAT(顧客満足度) | 対応直後のアンケートで「満足したか」を5段階等で測定 |
| NPS(ネットプロモータースコア) | 「このサービスを他者に勧めるか」を0〜10点で評価し、推奨者割合から批判者割合を引いたスコア |
| CES(顧客努力指標) | 問題解決のために「どれだけの手間を要したか」を測定 |
| 自己解決率 | FAQ・チャットボット等で顧客自身が疑問を解決できた割合 |
(5) 人材・マネジメントに関するKPI
人材・マネジメントのKPIは、オペレーターの労働環境の健全性と組織の安定性を測る指標です。採用難が深刻化する中で、センター運営の成否を分ける重要な項目の一つといえます。
| KPI名 | 概要・意味 |
|---|---|
| 稼働率 | 給与発生時間のうち、顧客対応関連業務に費やした割合。目安は80〜85% |
| 占有率 | 稼働時間のうち、通話+保留+後処理を対応している割合。高すぎると疲弊 |
| 離職率(退職率) | 一定期間内に退職したオペレーターの割合 |
| 欠勤率 | シフトに対する突発的な欠勤の割合 |
(6) 売上・解約に関するKPI
売上・解約のKPIは、コールセンターを「コストセンター」ではなく「収益接点」として評価するための指標です。
| KPI名 | 概要・意味 |
|---|---|
| 成約率(コンバージョン率) | 問い合わせから実際の購入・契約に至った割合 |
| 解約阻止率(リテンション率) | 解約申し出に対し、適切な提案で契約継続に至った割合 |
| アップセル/クロスセル率 | インバウンド対応中に上位商品・関連商品の追加購入に至った割合 |
(7) 委託先評価・SLAに関するKPI
BPO(業務委託)を活用している場合、委託先が契約水準を満たし自社ビジネスに寄与しているかを客観評価するためのKPIが必要です。運用指標(応答率等)だけでなく、ベンダーの改善提案力や報告品質まで評価することが、SLAの形骸化を防ぐポイントとなります。
| KPI名 | 概要・意味 |
|---|---|
| SLA達成率 | 契約で定めた基準(応答率90%以上等)を遵守できた割合 |
| 月次改善提案数 | 委託先から能動的に提出されたFAQ改修等の件数 |
| レポート提出率(遅延率) | 定例報告書が期日通りに提出されたかの割合 |
コールセンターの品質指標・評価指標・管理指標として見るべきKPI
前章で整理したKPI群は、「誰が、何の目的で使うか」という実務的な切り口で再整理することで活用しやすくなります。ここでは、品質管理・オペレーター評価・組織マネジメントの3つのレイヤーでKPIの活用法を解説します。
(1) 応対品質を確認する品質指標
応対品質を測る際、応答率の高さやAHT(平均処理時間)の短さだけで判断してはなりません。
電話がすぐにつながり短時間で会話が終わっても、顧客の疑問が解消されていなければ再入電を招き、結果的に不満が高まりやすくなります。真の品質を測るためには、FCR(一次解決率)、再入電率、CSAT(顧客満足度)、モニタリングスコアを組み合わせる必要があります。/p>
モニタリングスコアではSVや専任評価者が通話録音をランダムに抽出し、言葉遣い・傾聴姿勢・知識の正確性などを客観基準で採点します。この定性的な品質評価を定量スコアに変換し、他の指標とクロス分析することが品質管理の重要なポイントです。
「速いが解決していない」は品質管理上の課題であることを、組織全体で共有することが重要です。
(2) オペレーター評価に使われる評価指標
オペレーター個人の評価にKPIを用いる場合、効率指標だけに偏重すると深刻な副作用が生じます。
CPH(コール・パー・アワー)やAHT(平均処理時間)だけで評価すると、オペレーターは通話時間を短くするために顧客の話を遮ったり、複雑な案件を安易にエスカレーションしたりする行動に走りがちです。
適正な評価では、AHTの効率性を認めつつも、モニタリングスコアが一定基準を満たしていることやミス率が規定以下であることを条件とするなど、効率と品質を両立させる設計が大切です。さらに、ルール遵守姿勢やチーム内のナレッジ共有への貢献なども加味し、評価制度を単純化しない姿勢が求められます。
(3) SV・委託先管理で見るべき管理指標
センター管理者(SV・マネージャー)や委託元の購買担当者が見るべき管理指標は、チーム別の稼働状況と委託先のSLA遵守状況です。
SV向けには、チームごとの稼働率・占有率をリアルタイムに監視することが求められます。占有率が80%を超える状態が続くとオペレーターの負荷が高まり、メンタル不調や欠勤率の増加などに繋がるリスクもあるためです。
一方、BPO委託先を管理する場合はSLA達成率が重要指標となります。単なる応答率だけでなく、月次での改善提案数やVOCを活用した業務改善の件数など、ベンダーの「運用力・提案力」を客観的に評価する指標をSLAに組み込むことが重要です。
コールセンターKPIの計算式・算出方法と目安
KPIを正確に活用するには、各指標の算出ロジックを理解しておく必要があります。ここでは主要KPIの計算式と一般的な目安を提示します。
主要KPIの計算式・算出方法
| 指標名 | 計算式 | 何を見る指標か |
|---|---|---|
| 応答率 | 応答件数 ÷ 着信件数 × 100 | つながりやすさ |
| 放棄呼率 | 放棄呼件数 ÷ 着信件数 × 100 | 顧客離脱状況 |
| SL(サービスレベル) | 設定時間内応答件数 ÷ 着信件数 × 100 | 体感的つながりやすさ |
| ASA(平均応答速度) | 応答待ち時間合計 ÷ 応答総件数 | 平均待機時間 |
| AHT(平均処理時間) | (総通話時間 + 総保留時間+総後処理時間) ÷ 総応答件数 | 1件あたりの処理効率 |
| ATT(平均通話時間) | 総通話時間 ÷ 総応答件数 | 通話の長さ |
| ACW(平均後処理時間) | 総後処理時間 ÷ 総応答件数 | 後処理の効率 |
| CPH(コール・パー・アワー) | 対応件数 ÷ 稼働時間 | 個人の処理能力 |
| CPC(コスト・パー・コール) | センター総コスト ÷ 総処理件数 | 1件あたりコスト |
| FCR(一次解決率) | 初回解決件数 ÷ 総問い合わせ件数 × 100 | 解決力 |
| 稼働率 | (通話+保留+後処理+待機) ÷ 給与対象時間 × 100 | 顧客対応への時間配分 |
| 占有率 | (通話+保留+後処理) ÷(通話+保留+後処理+待機) × 100 | 忙しさ・負荷度合い |
| 離職率 | 退職者数 ÷ 在籍者数 × 100 | 人材定着状況 |
| 欠勤率 | 欠勤数 ÷ 予定シフト数 × 100 | 現場のストレス兆候 |
| CSAT(顧客満足度) | 満足回答数 ÷ 回答総数 × 100 | 対応直後の満足度 |
| NPS(ネットプロモータースコア) | 推奨者割合 − 批判者割合 | 中長期ロイヤルティ |
計算式を定義する際は、分子・分母・除外条件(IVR切断を含むか、営業時間外着信を含むか等)を自社内で統一しておくことが正確な計測の前提です。
KPIの一般的な目安例と注意点
| 指標 | 一般的な目安例 | 補足 |
|---|---|---|
| 応答率 | 90%以上 | 緊急窓口は95%以上が目安 |
| SL(サービスレベル) | 20秒以内に80%応答 | 「80/20」が業界慣行 |
| 放棄呼率 | 10%以下 | 高いほど機会損失大 |
| AHT(平均処理時間) | 業種・内容により大きく異なる | 一律の目安は危険 |
| FCR(一次解決率) | 70〜80%以上 | 高いほど顧客満足度に好影響 |
| 稼働率 | 80〜85% | 高すぎると疲弊・離職リスク |
| 占有率 | 80%以下 | 超えるとメンタル不調リスク |
| CSAT(顧客満足度) | 4.0以上(5段階) | 業種・商品特性で異なる |
これらの目安は「いかなる状況でも死守すべき絶対値」ではありません。業種、問い合わせの緊急度、提供チャネル、人員体制によって適正値は大きく異なります。
たとえば、金融機関の紛失・盗難デスクであれば応答率95%以上などが多いですが、複雑なITトラブルシューティング窓口では応答率80%程度でもFCRを高める方が顧客満足度に寄与する場合があります。自社のKGIから逆算して独自の適正値を設定することが運用責任者の責務です。
コールセンターKPIの数値を取得・可視化する方法
KPIの数値は、各種システムからのデータ抽出と定期的なアンケート調査の組み合わせによって取得します。管理者が目視で確認するだけでなく、全オペレーターがいつでも最新の数値を確認できる環境を整えることが理想です。
そのためにはツールの導入が効果的です。以下、KPIの分類別に取得方法を整理します。
(1) 「品質」に関するKPIは応対記録・顧客調査・品質モニタリングから取得する
品質指標の正確な把握には、複数のデータソースを組み合わせる必要があります。
FCR(一次解決率)や再入電率は、CRM(顧客関係管理システム)に入力された日々の応対履歴や再接触判定、顧客アンケートを組み合わせて集計できます。一方、CSAT(顧客満足度)・NPS(ネットプロモータースコア)・CES(顧客努力指標)といった顧客心理を測る指標は、通話終了直後のIVRアンケートやSMS・メールアンケートを通じて顧客から直接取得します。
モニタリングスコアは、通話録音システムを活用し、SVや品質管理担当者が評価シートに基づいて定期的に採点することで可視化されます。自社での客観的な採点が難しい場合は、品質調査専門のBPOベンダーに外注することも有効です。
(2) 「効率」に関するKPIはCTI・テレフォニーシステムから取得する
応答率、放棄呼率、ASA(平均応答速度)、AHT(平均処理時間)、CPH(コール・パー・アワー)などの効率指標は、CTI(Computer Telephony Integration)システムやPBXのレポート機能から直接取得するのが一般的です。
CTIを導入すれば、ダッシュボード上にリアルタイムの待ち呼数や応答率が表示されます。SVは状況を即座に把握し、人員の再配置や休憩時間の調整といった判断を迅速に行えるようになります。
メールやチャット対応を含める場合は、CRMやチケット管理システムのログデータをあわせて分析しましょう。特定の期間だけを切り取るのではなく、常時数値が取得できる環境であることが望ましいです。
(3) 「売上」に関するKPIは販売管理システムから取得する
売上関連の指標は必ずしも毎日取得する必要はありませんが、アウトバウンド業務を行うコールセンターは売上をミッションに掲げることが多いため、重要な項目といえます。隔週もしくは毎月など、定期的に数値を取得することを意識しましょう。
(4) 「人材」に関するKPIはWFMから取得する
「人材」に関するKPI指標はWFM(Work Force Management)システムから数値を取得できます。
コールセンターにおいて、シフト調整や離職など「人材にまつわる悩み」は大きな課題です。また、季節要因によっても業務量に大きな変動が生じることもあります。
WFMシステムから取得したデータを活用することで、人材や業務量にまつわる課題は解消できる場合があります。日々の数値指標から「効率的な人員配置」を導き出して、現実的なKPIを設定しましょう。
取得したKPIを改善に活用するポイント
KPIは数値を集計してレポートを作って終わりではなく、問題を発見しPDCAサイクルを回すための基盤です。
(1) KPI同士のつながりを意識する
KPIの各指標は、一見独立した数値に見えますが、実は関連性があるものも多くあります。『応答率』を例に、指標同士のつながりを見てみましょう。
- 応答率を上げるためには、応答数を増やす必要がある
- 応答数を増やすためには、処理時間を短くする必要がある(稼働人数を変更しない場合)
- 処理時間を短くするためには、「通話時間」「保留時間」「後処理時間」を短くして、1件あたりの対応時間を短くする必要がある
このように、各指標は関連しており、連動して改善できる場合があります。
数値の改善に着手するときは、ただ悪い数値だけに目を向けて改善しようとするのではなく、どこの指標がボトルネックになっているのかを見極めるようにしましょう。
(2) コントロールできない指標もある
注意点として、KPIの各指標のなかには、「日々の運営ではコントロールができない指標」もあります。
KPIの数値が前回の測定時より悪化している場合には、どうにかして改善しようと考えてしまいがちです。ただ、コールセンター側では数値の改善が難しい指標があることも把握しておきましょう。
コールセンター側では改善が難しい代表的な例として、「入電数」や「放棄時間」が挙げられます。先ほども説明したように、テレビCMなどの外部要因によって入電数が同時間帯に集中したり、放棄時間が長めになってしまったりすることは起こり得ます。
このような事象をコールセンター側では改善することは困難です。あくまで突発的な事象として記録するだけにとどめておき、「外部要因がないのに同様の事象が続いてしまった」という場合に改善に着手するようにしましょう。
また、”改善することは可能だが、必ずしも数値を改善することが良いとはいえない指標”として『通話時間』が挙げられます。通話時間を無理やりにでも短くすることは可能ですが、あまりに不自然に短くすると顧客からの不信感につながりかねません。
このような場合には、通話時間を短くしようとするのではなく、「適切な通話時間はどれくらいなのか」という基準を定めておきましょう。
(3) トレードオフとなるKPIを理解する
もう1つの注意点として、各KPIのつながりの中にトレードオフの関係性にある指標があることを理解しておきましょう。
KPIは全体的に高い水準を保っていることが望ましいですが、両立しえない指標もあるのです。こちらも「応答率」を例に見てみましょう。
- 応答率を上げるために、応答数を増やす必要がある
- 応答数を増やすためにオペレーターを増員し、応答数は増加したがコストも上昇した
- 応答数を増やすために後処理の上限時間を定め、応答数は増加したがミスも増えた
このように、1つの数値を改善しようとすると、どこかの数値が悪化してしまいます。このようなトレードオフの関係性である指標は、どちらも高い数値を維持するといったことは難しい場合があります。
こういった場合は、どちらか一方を集中的に改善するのではなく、バランスを見ながら目標数値を設定するようにしましょう。
(4) 月次で改善アクションまで落とし込む
KPIの集計結果を「報告用データ」で終わらせないことが重要です。毎月の定例レビューでは、数値の読み上げにとどまらず、以下の4項目をセットで決めましょう。
- なぜこの数値になったのか(要因分析・仮説)
- 誰が対応するのか(担当者の明確化)
- いつまでに何をするか(改善施策と期限)
- 次回どう効果を測るか(効果測定方法)
たとえば「応答率が前月比3%低下した」場合、呼量が増えたのか、AHT(平均処理時間)が長くなったのか、欠勤が増えたのか、IVRでの離脱が増えたのかを切り分け、原因に応じた施策を担当者と期限つきで設定します。
ここまで落とし込めていない場合、KPI管理は「報告作業」で止まっている可能性があります。集計から要因分析、改善提案までを自社で回しきれない場合は、BPOベンダーの月次報告サービスを活用することも有効な選択肢です。
よくある課題と改善策
KPIは「設定すれば必ず改善する」ものではありません。運用段階で起こりがちな失敗パターンを事前に把握し、対策を講じることが重要です。
課題(1) KPIが多すぎて現場が混乱する
課題
システムから取得できるデータが多く、SVがすべてを追いかけてしまう。「応答率を上げろ、AHT(平均処理時間)も短縮しろ、品質も高めろ」と相反する要求が重なり、現場が疲弊する。
改善策
KGIから逆算して重点KPIを3〜5個に絞る。その他は補助KPIとしてマネージャー層が異常値チェックに使い、現場への指示は重点KPIのアクションに限定する。「全部追う」のは管理ではなく、優先順位を付けられていない状態です。
課題(2) AHT(平均処理時間)短縮で応対品質が下がる
課題
コスト削減圧力からAHT(平均処理時間)短縮を最優先事項にした結果、オペレーターが通話を急ぎ、説明不足による再入電が増加。全体の入電数と総通話時間がかえって増えてしまう。
改善策
AHTを単独の評価軸にせず、FCR(一次解決率)・CSAT(顧客満足度)・モニタリングスコア・再入電率とセットで評価する。短縮はオペレーター個人に「早く通話を終える」ことを求めるのではなく、FAQ検索性の改善、トークスクリプトの見直し、後処理の自動化など業務プロセス側で図ることが効果的です。
課題(3) KPIが改善アクションにつながらない
課題
毎月レポートは作成されるが、「応答率が前月比○%低下しました」という事実報告にとどまり、原因分析や施策立案に落とし込めていない。
改善策
レポートのフォーマットを見直し、各KPIについて「実績→要因分析→改善施策→担当者→期限→効果測定方法」を必ずセットで記載するルールにする。データ分析スキルが社内に不足している場合は、BPOや外部コンサルの力を借り、客観的な視点から改善提案を引き出す体制を構築しましょう。
課題(4) 委託先のSLAが形骸化している
課題
BPOベンダーにSLA(例:応答率90%以上)を設定しているが、未達でも「想定以上の入電があったため」と報告されるだけで、改善プロセスが回らない。
改善策SLAに「未達時の対応プロセス」まで組み込む。具体的には、未達時の原因分析レポートと改善計画の提出期限、月次改善提案数、セキュリティ・BCP項目の確認などを評価対象に追加する。SLAは罰則を目的とするためではなく、委託先と改善サイクルを回すための共通基準として設計しましょう。
BPO委託・外部支援を検討すべきケース
インハウスでの改善が限界に達した場合は、BPO委託や外部コンサルティングの活用を検討すべきタイミングです。以下の兆候が見られる場合は、外部知見の導入が有効です。
| 慢性的な採用難と育成限界 | 採用費や時給を引き上げても人員が確保できず、応答率やSLの低下が常態化している |
|---|---|
| 激しい繁閑差への対応限界 | 季節要因やキャンペーンで呼量の波が激しく、自社の人員配置だけでは対応しきれない |
| データ分析と改善提案のノウハウ不足 | KPIは取得できているが、VOC分析やFAQ改修へのフィードバックができる専門人材がいない |
| SLA管理と委託先評価の形骸化 | 既存委託先のパフォーマンスに課題を感じているが、適切なKPI/SLAが設定されておらず客観的な評価ができない |
| BCP(事業継続計画)の脆弱性 | 単一拠点での運営では、災害時に顧客対応窓口が完全に停止するリスクがある |
これらの課題に対しては、複数拠点を活用した柔軟な人員配置や、KPI設計から改善提案まで一貫支援できるBPOパートナーの活用が有効な解決策となります。
まとめ
コールセンターのKPIは、単なる「現在の状態を測る数字」ではありません。KGI達成のために、現場の課題を可視化し、改善施策へつなげるための戦略的な管理ツールです。
多すぎる指標に振り回されず、自社の課題解決に直結する重点KPIを絞り込み、毎月の改善アクション(PDCA)に落とし込むことが、センター運営を成功に導く条件です。
KPIの見直し・改善はパーソルビジネスプロセスデザインへ
コールセンターにおけるKPIについて解説してきましたが、ここまで解説したようにKPIはセンターのミッションを達成するために欠かせない重要な項目です。まずはKGIを設定したうえで、測定すべきKPIを設定し、利益向上を目指していきましょう。
KPI数値の改善を行いたい場合には、ぜひパーソルビジネスプロセスデザインをご検討ください。
コールセンター・ヘルプデスクのアウトソーシング・コンサルティング・研修を中心に20年以上の実績がございます。長年蓄積したノウハウにより、KPI数値の改善が実現可能です。
パーソルビジネスプロセスデザインが行うコンサルティング・研修は、現状の品質調査から改善提案、効果測定まで対応可能です。また、調査に基づいて課題を抽出し、KPI数値指標の改善状況から、更なる品質向上に向けたコンサルティング、研修も実施することができます。
「自社センターにあった形でKPIを見直したい」「KPIの数値指標が安定しないから改善したい」など要望をお持ちの方は、下記のサービス資料をぜひご覧ください。