ミッショングレード制とは
ミッショングレード制とは、各従業員が担う「ミッション(役割)」の価値に基づいて等級を定め、達成度に応じて報酬などの処遇を決定する人事評価制度です。
具体的には、以下の項目を定義し、等級としてまとめます。
- それぞれの役職やポジションに期待される役割の難易度
- 責任の範囲
- 会社への貢献度
従来の日本で使用されていた職能資格制度と職務等級制度の良いところを併せ持つ、新しい評価制度の一つです。
変化の激しい現代のビジネス環境において、企業の戦略や目標達成に直結した人材配置と、従業員の貢献度を正当に評価できる仕組みとして、導入を検討する企業が増えています。
ミッショングレード制の仕組み
ここでは、ミッショングレード制の仕組みについて3つの観点で解説します。
- 賃金について
- 昇給・昇格について
- 降給・降格について
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賃金について
ミッショングレード制の賃金は、各ミッションの難易度や会社への貢献度に応じて決定されます。具体的には、係長は500〜600万円、課長は700〜800万円のように企業が決めた等級にあわせて、報酬額の範囲を事前に決めておき、従業員の成果をもとに賃金を柔軟に決める仕組みです。
ミッショングレード制により、同じ等級であっても、役割ごとに報酬帯を設けることで、柔軟な賃金設定が可能となります。
例えば、営業部門と人事部門のマネージャーが同じ等級であっても、成果への影響度に応じて異なる報酬を設定できます。
昇給・昇格について
ミッショングレード制では、昇給や昇格は、担う役割としての重要性が上がるタイミングで行われます。例えば、プロジェクトで目覚ましい成果を上げたリーダーが、より大規模な現場を任されるといったケースがあるでしょう。
昇給・昇格が行われるタイミングは、現在任されている役割で成果を出し、さらに難易度や責任範囲の大きい役割を担当できると判断された場合です。
また、人事異動に伴って昇給・昇格が発生しやすいのも特徴の一つです。
会社の戦略に基づき、より重要な役割を担う部署へ異動する際には、状況にあわせて等級と報酬が見直されやすいといった特徴があります。
降給・降格について
ミッショングレード制では、担っているミッションに対する成果が期待に届かない場合、降給や降格が行われることもあります。
たとえば、組織変更によってミッションの難易度が下がったり、プロジェクト終了に伴い同じ役職が用意されていなかったりするケースでは、こうした事象が起こりやすくなります。
降給や降格が発生する場合は、成果や役割の変化に基づく判断であり、個人の能力を否定するものではありません。
従業員にとって影響も大きいため、十分な説明を行うとともに、再挑戦の機会を提供するなどのフォロー体制を整えることが重要です。
ミッショングレード制と類似した等級制度との違い
従来の日本企業では「職務等級制度」や「職能資格制度」が活用されていました。
それぞれの制度は異なる評価の軸を持っており、組織の目指す方向性や人材育成の方針によって最適な選択は異なります。
ここでは、ミッショングレード制と類似した制度の特徴を解説します。
- 職務等級制度
- 職能資格制度
職務等級制度
職務等級制度は、従業員が担当する職務の価値を評価し、重要度などをもとに等級を決定する制度です。
ミッショングレード制は、成果に対する責任が評価基準なのに対し、職務等級制度は仕事内容や責任範囲が基準になっている点が異なります。
職務等級制度では、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)と呼ばれる、等級の基準や範囲を示した文書を各企業が作成し、決めた内容をもとに評価する点が特徴です。
職能資格制度
職能資格制度は、従業員の職務遂行能力を基準に等級を設計する制度です。
ミッショングレード制は、成果に対する責任が評価基準なのに対し、職能資格制度は個人の能力やスキルに応じて評価が変動します。
職能資格制度では、勤続年数や経験を積むことで能力が向上するという考え方が根底にあり、個人の成長を評価に反映しやすい点が特徴的です。一方、年功序列的な運用になりやすいという面があるため、勤続年数が長い社員が増えるにつれて人件費が増大する傾向があります。
ミッショングレード制を導入するメリット
ここでは、ミッショングレード制を導入するメリットについて4つの観点で解説します。
- 職種ごとの役割を明確にできる
- 適切な人件費の支払いができる
- 社員の主体性が向上する
- 社員同士で協力しやすくなる
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職種ごとの役割を明確にできる
ミッショングレード制を導入するメリットとして、各職種やポジションに求められる役割と、達成すべき成果が具体的かつ明確になる点が挙げられます。
従業員に対して、ミッションや役割が伝えられるため、何をするべきかが明確になり主体的に動いてもらいやすくなります。また、従業員は日々の業務において具体的な目標を設定しやすくなり、自身のキャリアパスを描く上での指針にもなるでしょう。
企業側にとっても、各ポジションの役割が明確になることで、人材育成の方向性が定めやすくなり、戦略的な人員配置を実現できるという利点があります。
適切な人件費の支払いができる
ミッショングレード制によって適切な人件費の支払いができます。年齢や勤続年数といった属人的な要素ではなく、各役割が持つ重要度や難易度に基づいて報酬が決められるためです。
その結果、従来の年功序列で起こりがちだった、貢献度と人件費のアンバランスを解消できます。企業の収益構造や事業戦略と連動させた柔軟な人件費管理が実現し、経営の健全性を高めることにつながります。
ミッショングレード制により、ミッションの価値に応じた報酬設計を構築できるため、人件費を戦略的にコントロール可能です。
社員の主体性が向上する
ミッショングレード制によって、社員の主体性を向上できます。自身の担うべき役割と評価基準が明確になることで、従業員は会社から求められていることを正しく理解できるためです。
その結果、従業員は指示待ちではなく、自ら課題を見つけて解決策を考え、ミッション達成に向けて主体的に動く状態を実現しやすくなります。また、主体的な行動は、個人の成長を促すだけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
従業員は会社から成果が正当に評価され、処遇に反映されるという納得感を得られるため、仕事に対するモチベーションを高める状況を作れます。
社員同士で協力しやすくなる
ミッショングレード制によって各々の役割が明確になると、社員同士で協力しやすくなります。各従業員の役割が明確になっているため部署間や職種間でスムーズな連携を実現可能です。
また、誰が担当するのかという責任の境界がはっきりするため、業務の重複や押し付け合いといった非効率な状況を減らせます。
さらに、自分の役割に集中できると同時に、他部署の役割も理解しやすくなるため、組織横断的なプロジェクトなどにおいても、円滑な協力体制を築きやすくなるでしょう。
ミッショングレード制を実施する際の注意点
ミッショングレード制は多くのメリットを持つ一方で、導入と運用を成功させるためには、いくつかの重要な注意点が存在します。
ここでは、ミッショングレード制を実施する際の注意点について4つの観点で解説します。
- ミッションの定義を明確にする必要がある
- 制度の内容を十分に検討する必要がある
- 従業員に理解をしてもらうために制度を説明する必要がある
- 導入する際は時間を十分に確保する必要がある
ミッションの定義を明確にする必要がある
ミッショングレード制を導入する際には、ミッションの定義を明確にしましょう。ミッションの定義が曖昧であったり、評価者の主観によって解釈が変わってしまったりすると、評価に対する従業員の納得感を得ることはできません。
ミッションの定義を決める際は、各ポジションの役割や具体的な職務内容などをもとに決めましょう。
また、誰が読んでも同じ理解ができるレベルまで言語化することが重要です。ミッションの定義を明確にすることで、公平で透明性の高い評価制度を構築できます。
制度の内容を十分に検討する必要がある
人事異動や組織変更が頻繁に発生する企業は、ミッショングレード制の内容を慎重に検討しましょう。
例えば、会社都合による異動で本人の能力とは関係なくミッションの等級が下がり、結果的に給与が引き下げられるといった事態が発生すると、従業員のモチベーションを低下させる原因となります。
こうした不満を未然に防ぐためには、異動や等級変更が発生する際のルールを事前に細かく定めておくことが重要です。
降格が発生してしまった従業員のキャリアを長期的な視点で支援するフォロー体制を整備しておく必要があります。
従業員に理解をしてもらうために制度を説明する必要がある
ミッショングレード制を導入する前には、従業員への丁寧な説明が必要です。もし説明が不十分な状態でミッショングレード制を進めてしまうと従業員が理解できずに不満につながるためです。
特に、長年にわたって年功序列を基盤としてきた企業では、制度変更への受け入れに時間がかかったり、受け入れてもらえなかったりする場合があります。また、ミッショングレード制は成果や役割に基づいて降格や降給が発生する可能性があるため、不安や反発の声が上がることも想定されます。
なぜ、ミッショングレード制を導入する必要があるのか、従来の課題や新しく目指すビジョンを丁寧に伝えることが重要です。
導入する際は時間を十分に確保する必要がある
ミッショングレード制を導入する際は、時間を十分に確保する必要があります。
ミッショングレード制の準備には以下のような工程が必要です。
- 各ポジションのミッションを定義
- ミッションの価値を評価して等級に落とし込む
- 報酬テーブルの設計
また、制度を設計して終わりではなく、全従業員への周知や評価者となる管理職への教育を行うなど、運用を定着させるための時間も必要です。
計画段階で十分な導入期間を確保するとともに、必要に応じて外部の専門家やBPOサービスを活用することで効率よくミッショングレード制を導入できるでしょう。
ミッショングレード制を導入する際にBPOを活用するのがおすすめな理由
ミッショングレード制を導入する際には、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用するのがおすすめです。
BPOとは、自社の業務プロセスの一部、または全体を、専門的なノウハウを持つ外部の企業に委託する方法を指します。
ミッショングレード制には、さまざまなメリットがある一方、導入には多くの工数と専門知識が必要です。人事部が日常の給与計算や社会保険手続きといったノンコア業務に追われている状況では、ミッショングレード制の導入に十分な時間を使うことは難しいでしょう。
そこで、BPOを導入して、これまで自社の従業員が対応してきた業務を「コア業務」と「ノンコア業務」に振り分けます。
ノンコア業務はBPOとして外部委託することで、自社の従業員がミッショングレード制導入などのコア業務へ集中しやすい環境を作るのです。
以下の記事では人事部門向けにBPOの詳細な解説をしていますので、あわせてご確認ください。
関連記事:人事BPOの業務内容やメリット・注意点を解説|業者の選び方や導入手順も紹介
人事部にBPOを導入した実際の事例
金融機関であるK社の人事部では、在籍証明書や休業証明書といった証明書発行業務が年間約13,000件にもおよび、業務が逼迫していました。また、作業内容もアナログな箇所が多いため、業務の非効率性を招いていたようです。
そこで証明書発行業務を受託会社に委託したものの、委託先のパフォーマンスに満足できず、新たにパーソルビジネスプロセスデザイン(旧パーソルテンプスタッフ)へ相談をいただきました。
まず、チームの日次処理件数を可視化し、週次の定例会では、処理状況と今後のリカバリー計画を共有することで業務の進捗を見守る体制を構築しました。
さらに、新しい人事システムへの移行を見据え、デジタル化にも着手し、業務の効率化とペーパーレス化を推進できました。
関連記事:パフォーマンスの可視化と運用計画の共有で実感できた『証明書発行業務』における業務委託のバリュー
ノンコア業務を委託してミッショングレード制を導入しましょう
ミッショングレード制は、変化の激しい現代のビジネス環境において、新しい評価制度として注目されています。
しかし、導入を成功させるためには、丁寧な制度設計や従業員との対話など、人事部が本来注力すべきコア業務に集中できる環境の構築が必要です。
日常的なオペレーション業務に追われ、戦略的な取り組みに時間を割けていないと感じている場合は、BPOの活用がおすすめです。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、豊富な実績とノウハウをもとに、お客さまの要望にあわせたBPOサービスを提供しております。
BPOやアウトソーシングサービスについて、導入経験のないお客さまからはさまざまなお問い合わせをいただいております。なかでも代表的な「BPOについて詳しく知りたい」という内容については、以下の資料にて補足説明しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。
【資料】これ1冊で発注まで!BPOのはじめ方まるわかりBOOK
- BPOの導入を考えている
- 業務効率化や品質向上を課題としている
- BPOを成功させるためのポイントを知りたい