総務が抱えている4つの業務課題
はじめに、総務が抱えている4つの業務課題について解説します。
- 業務範囲が広い
- 慢性的な人材不足になっている
- 業務が属人化しやすい
- 成果に対する評価がしにくい
効率化に取り組む前に、現状の課題点を正確に把握することで、適切な施策につなげられるでしょう。
業務範囲が広い
総務部門は、会社の運営基盤を支える部署として幅広い業務範囲を担当します。そのため、業務量に対して総務部門の人数が少ない場合、一人ひとりにかかる担当の業務量が膨大になりがちです。
結果として、業務の重要度や優先順位の判断が困難になるなど、従業員の負荷につながり、以下のような問題が発生します。
- 本来注力するべき業務ができなくなる
- ミスの発生が増える
- 対応の遅れが起きる
- 従業員の満足度が下がり、離職率が増える
慢性的な人材不足になっている
総務は売上に直結しない間接部門であるため、人員が配置されにくく、少数で業務を回しているケースが少なくありません。また、近年の少子高齢化による労働人口の減少や人手不足の影響もあり、急な退職や異動により業務が滞ることもあります。
とくに年度末や税務申告期などの繁忙期には、業務量が増加する傾向にあり、その時期を乗り越えるための人材確保や育成が困難です。そのため、一人ひとりの業務負担が集中してしまいます。
総務の仕事量が減らない一方、人材不足が続くと残業や担当者の疲弊につながり、生産性が低下してしまうでしょう。
業務が属人化しやすい
総務部門では、長年の経験から培われたノウハウやルールが担当者の頭の中にだけ蓄積されており、業務が属人化しているケースがあります。
業務知識がマニュアル化されておらず、担当者だけしか理解していない場合、以下のようなリスクが発生しやすくなります。
- 新人が業務を引き継ぐ際に困難になる
- 退職や休暇、異動などが発生した際に業務が止まる
- 非効率な方法で進めていることに気づきにくい
業務の属人化は、長期的な業務効率の低下を招く原因になるため、早期の対策が必要です。
成果に対する評価がしにくい
総務部門の業務は間接業務が大半のため、成果が可視化されにくく、評価が難しいという課題を抱えています。
たとえば、営業部門のように売上や契約件数といった明確な数字がある場合は、一定の基準での評価が可能です。しかし、総務部門の場合は、書類手続きの簡略化や社内ルールの整備を実施しても、会社にどれだけ貢献しているか数値で示すのが困難です。
評価指標があいまいだと、改善策を提案しても効果が出ているか判断が難しくなります。適切に評価されにくいため、従業員のモチベーションの低下につながる恐れもあります。
総務が業務効率化に取り組む方法
総務が業務効率化に取り組む方法は大きく2つあります。
- アウトソーシングを活用する
- ツールを導入する
紹介する2つの方法は、総務部門が業務改善を進めるうえで、とくに有効なアプローチとなるでしょう。
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アウトソーシングを活用する
アウトソーシングとは、自社の業務の一部を外部の企業に委託することです。総務部門の業務のうち、ノンコア業務や定型作業を外部の企業に委託することで、社内のリソースを重要なコア業務に集中させられます。
たとえば総務部門でアウトソーシングが可能な業務には、以下のようなものがあります。
- 総合受付や電話対応などの秘書業務
- 郵便・宅配の受取や仕分けなどのメール業務
- ワンストップ対応を目的とした窓口カウンター業務
- 備品や消耗品の在庫管理
外部のプロに任せることで、業務品質が安定するだけでなく、業務が属人化するリスクも軽減できるでしょう。
ツールを導入する
定型作業やノンコア業務の中で自動化できる内容がある場合は、ITツールやシステムの導入が効果的です。ツールを導入することで紙資料の削減につながり、業務効率の向上を図れます。
具体的には、以下のようなツールが総務業務で活用されています。
- 勤怠管理システム:従業員の出退勤や有給休暇管理を自動化
- 契約管理ツール:契約書類の締結・保管・更新期限の管理を一元化して抜け漏れを防止
- チャットボット:従業員からの質問や問い合わせに自動で回答
日常の業務の一部を自動化することで、その分の時間を他の重要な業務に充てることが可能です。
総務が業務効率化する4つのメリット
総務部門が業務効率化を実施すると、以下のようなメリットがあります。
- 従業員のモチベーションの向上につなげられる
- 業務にかかる時間が削減できる
- コア業務に集中できる
- 安定した業務の運用ができる
メリットを理解しておけば部署内での提案をしやすくなるため、把握しておくことが大切です。
従業員のモチベーションの向上につなげられる
経理部門が業務効率化を進めると従業員のモチベーション向上につながります。業務効率化によって「作業時間の短縮」「コア領域への集中」「安定した運用」の3つが実現し、従業員のはたらく環境が劇的に改善するためです。
まず、データ入力や書類作成といった定型業務が削減されれば、不必要な残業が減り、従業員は心身の健康を保ちやすくなります。
次に、単純作業が解消されて生まれた時間によって、従業員は創造的で企業価値を高めるコア業務にリソースを充てることが可能です。
さらに、業務プロセスが標準化されることで、特定の個人にしかできない属人化が解消され、誰が担当しても作業が滞らない安定した運用が実現します。
その結果、従業員のはたらきやすさや達成感が高まり、モチベーションの向上につながるでしょう。
業務にかかる時間が削減できる
業務効率化により、定型業務の自動化を進めると、これまでかかっていた業務時間を大幅に削減できます。
たとえば、以下のような業務時間を改善できます。
- 書類承認の電子化:上司の元へ書類を持参する時間が不要になる
- 発注業務のシステム化:ボタン一つで発注でき処理時間が短縮できる
- 秘書業務の自動化:総合受付や電話対応が軽減する
結果として、残業時間の減少にもつながるため、従業員のワークライフバランスや会社のコスト削減にも効果が見込めるでしょう。
コア業務に集中できる
業務の負荷が高い状態では日々の対応に追われてしまい、重要な業務に時間を割けません。しかし、業務効率化を実施し余力時間を活用することで、戦略的企画や社内向け施策の立案・実行などのコア業務に注力できます。
コア業務に集中し、はたらきやすい環境に整えることで、総務部門が企業にもたらす価値は格段に向上するでしょう。また、次世代のリーダーを計画的に育成するなど、人材育成の時間も確保できるため、総務部門の長期的な成長も見込めます。
安定した運用ができる
無理のある体制や属人化した業務を放置していると、予期せぬトラブルが発生した際に、業務が滞るリスクを抱えます。
業務効率化により、業務プロセスが整備されることで、適切な人員配置や外部リソースの活用が実現し、安定した業務運営が可能です。
たとえば、業務の属人化を解消し業務マニュアルを整備しておくことで、担当者が交代してもスムーズに引き継ぎができます。また、属人的な体制を解消させ、ITツールの導入でデータ管理を自動化すれば、人的ミスや抜け漏れが軽減されるでしょう。
これらの取り組みはリスクを減少させ、安定して日常業務を進められます。
総務の業務を効率化させるための手順
ここでは、総務の業務を効率化させるための手順について紹介します。
- 現状の問題点の洗い出し
- 改善案の立案
- 改善の実行
- 効果の計測と振り返り
手順を理解していない状態で進めてしまうと、期待する効果が得られず、かえって業務が混乱するリスクもあります。業務効率化に効果的な施策を取るためにも、手順を適切に理解しましょう。
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現状の問題点の洗い出し
業務効率化を実現するためには、まず総務部門の業務をすべて洗い出し、可視化することが重要です。可視化することで、不要なタスクや非効率な状況を客観的に把握し、業務フローを適正化できます。
たとえば、「会議室予約の調整に時間がかかりすぎている」や「備品発注のフローが非効率で無駄な在庫が発生している」といった具体的な問題点をピックアップします。
さらに詳しく分析するために、従業員に対して以下の項目で調査を実施すると効果的です。
- 業務の内容
- 業務に必要な工数
- 業務の難易度
結果によって、現在の部署人数が業務量に対して適切かも把握できるため、運用体制の見直しにもつなげられるでしょう。
改善案の立案
次に、現在の総務業務にどのような問題があるかを明らかにしましょう。改善案を立案するためには「ECRS(イクルス)」というフレームワークの活用がおすすめです。
Eliminate(排除) | 必要ない業務はないか |
---|---|
Combine(結合) | 他の業務とまとめられないか |
Rearrange(並べ替え) | 業務を並べ替えして効率化できないか |
Simplify(簡素化) | 簡単にできないか |
このECRSは上から順に業務効率化の効果が高いとされています。
ECRSで浮き彫りになった問題点に対し、アウトソーシングやITツールを導入し、業務の削減や改善が図れないかを、検討しましょう。
もし、アウトソーシングやITツールの導入が効果的だと判断した場合は、費用対効果や導入期間を比較しながら最適な改善案を絞り込みましょう。
効率化施策は、短期(3カ月以内)・中期(1年以内)・長期(1年以上)の3つの時間軸でロードマップを作成し、段階的に実施することで無理のない推進が可能です。
改善の実行
改善案の立案で設定した施策をもとに実施していきます。
限られたリソースで効果を高めるため、以下のポイントを意識して施策を進めましょう。
- 効果が大きいと予測される施策から優先的に対応する
- 一部の業務から導入を始め、徐々に適用範囲を拡大する
- 担当者や責任者を明確に設定し、プロジェクトの進捗管理と社内への周知徹底を図る
実行段階では定期的に進捗確認を行い、問題に対して迅速に対応できる体制を整えておくことでリスクを最小限に抑えられます。
多くの業務改善を進めるためにも、少しずつ成功体験を積み重ねていくことが重要です。
効果の計測と振り返り
改善策を実行したら、実際に効果があったかを計測して客観的に振り返ります。最初に目標やKPIを設定していた場合は、その達成度を測定することが重要です。
たとえば、「残業時間を20%削減する」という目標を立てていた場合、実際にどれくらい削減できたかを、実数値のデータを集めて確認します。また、従業員の満足度向上や業務品質の変化など、数値化しにくい効果も多角的に評価することが重要です。
実際の数値や従業員からの意見をもとに、「計画は適切だったか」「実行段階で問題はなかったか」をPDCAサイクルで振り返り、次のアクションに活かすことが大切です。
総務部門が業務効率化に成功した事例
ここでは、アウトソーシングの一種であるBPOを活用して、組織全体の生産性を向上させた、自動車メーカーのH社様の事例を紹介します。
当時、H社様の総務部門は業務の属人化が進んでおり、従業員の異動や退職のたびに大きな影響を受けていました。課題を解決するために、マニュアルを整備しようにも日頃の業務に追われ後回しになっていたようです。
そこで、「生産性の向上」と「戦略総務になる」という2軸の目標を立て、BPOの導入のためにコンペが開催されました。パーソルビジネスプロセスデザイン(旧パーソルテンプスタッフ)もコンペに参加し、提案力と実績が高く評価され、契約へと至りました。
H社様からは「総務カウンターを作りたい」とのご要望もあり、業務の引き継ぎや改善、人員の手配にマニュアル作成など、立ち上げまで残り1カ月もない中で進めていくことになります。
パーソルビジネスプロセスデザインの視点でシステム化やペーパーレス化などを実施し、短い期間で26業務の引き継ぎを完了させました。その結果、総務の新たな窓口となる「サポートオフィス」が稼働を開始しました。
H社様からは、「御社には、これらにご理解をいただき、弊社にとって最適なBPOの形は何かという視点でご検討いただけました」と高い評価をいただいております。
関連記事: 属人化を解消し、『戦略総務』を目指すべく1ヵ月で立ち上げた、新たな総務カウンター
総務が業務効率化する際の3つの注意点
ここでは、総務が業務効率化する際の3つの注意点を解説します。
- 最初は手間やコストが増加してしまうおそれがある
- 目的があいまいだと業務効率化につながらない
- 現場の問題点を理解しなければ正しい施策は打てない
注意点を理解していない状態で進めてしまうと、効果的な施策ができずに無駄な工数と時間がかかるリスクがあります。起こりうるトラブルへの対策を講じるためにも、事前に注意点を理解しておきましょう。
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最初は手間やコストが増加してしまうおそれがある
業務効率化の施策を導入する初期段階では、現状の洗い出しやシステムの導入により、工数やコストが一時的に増えてしまう場合があります。
たとえば、新しいシステムを導入した場合、初期費用が発生します。また、設定作業や従業員への教育が必要です。新しい業務プロセスに現場が慣れるまでの間は、作業効率が一時的に低下する可能性もあります。
しかし、初期投資を惜しんでしまうと、十分な効果が得られず失敗に終わるおそれがあります。業務効率化の効果は中長期的に現れるため、初期段階である程度のコストや時間をかける必要があるでしょう。
目的があいまいだと業務効率化につながらない
業務効率化の取り組みを成功させるには、明確な目的と最終的なゴールの設定が不可欠です。目的があいまいなまま動き出すと、的外れな施策に時間と費用を費やしてしまうリスクがあります。
業務効率化を目指すにあたって、以下の内容を明確にしましょう。
- なぜ効率化が必要なのか
- 効率化で何を達成したいのか
- 課題に対する現状の数値と目標値はいくつか
目的を明確にすることで、取るべき施策の優先順位も明らかになります。関係者全員で目標を共有することで、一貫性のある取り組みを継続できます。
現場の問題点を理解しないと正しい施策が打てない
総務業務の効率化において、実務レベルで従業員が抱える課題を理解せずに施策を決定してしまうと、現場のニーズとかけ離れた改善策となり、不満を招く結果となります。
管理者側の想定と、実際の現場の状況では差異があることが多いため、この認識ギャップを埋める努力が必要不可欠です。
たとえば、業務効率化プロジェクトの初期段階から現場担当者を参加させ、担当者の視点や意見を積極的に取り入れるのが効果的です。また、どの業務を効率化するか検討する際は、従業員にアンケートやヒアリングをし、現場の視点を取り入れましょう。
総務部の業務効率化にはパーソルビジネスプロセスデザインにご相談ください
総務部門は幅広い業務範囲を担当するため、一人ひとりに負荷がかかりやすい傾向にあります。業務効率化することにより、属人化の解消や工数削減、コア業務に注力できるといったメリットがあります。
業務効率化を実現するには、アウトソーシングの活用やITツールの導入が効果的です。総務部門の業務に課題を感じている担当者の方は、ぜひ業務効率化に取り組んでみましょう。
また、業務効率化を目指したいけれど日々の業務に追われて時間がない方は、BPOサービスの活用が有効です。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、豊富な実績とノウハウをもとに、お客さまの要望にあわせたBPOサービスを提供しております。 BPOやアウトソーシングサービスの導入について、ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
また、総務部門に特化したBPOサービスの詳細は、以下のページから資料請求が可能です。
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