業務改革(BPR)とは
業務改革とは、企業が目指す成果を確実に達成するために、組織構造や業務プロセスを根本から見直し、再構築する戦略的な取り組みのことです。海外ではBPRと呼ばれており、世界中で注目を集めています。
業務の成果を達成するために必要なコスト削減や生産性向上、従業員満足度の改善といった複数の経営課題を同時に解決するためには、業務全体を俯瞰した改革が必要となります。
従来の業務フローや組織体制を、本来あるべき姿から逆算して最適な仕組みを構築することで、成果を実現できるのが業務改革の特徴です。
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業務改革によって企業が得られる効果
業務改革を実施することで、企業は大きく6つの効果を得られます。
- 業務効率が上がる
- 顧客満足度が高まる
- 長時間労働が解消される
- 従業員のモチベーションが向上する
- DXを進められる
- 業務の属人化を防げる
業務改革の推進には、BPOの活用がおすすめです。BPOについての概要や事例は下記の資料で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
【資料】概要と事例でよく分かる!BPO解説ブック
- BPOの今と未来予測
- BPOの基礎知識
- BPOを導入する3つのメリット
- BPOを導入する4つの注意点
- BPOを活用した5つの事例(営業事務、金融関連業務、経理・財務事務、総務、官公庁)
業務効率が上がる
業務改革は、既存の業務プロセスを見直すため、業務効率が向上します。
業務改革によって、習慣として続けてきた不要な業務や重複作業が洗い出され、業務プロセスを適正化します。これまで実施してきた業務が適正化されることによって、無駄な作業が削減され従業員の業務負荷を軽減できるためです。
特に一つの部署内にとどまらず、部署間で発生する業務の流れや連携プロセスまで含めて最適化することで、社内全体の業務効率化につなげられます。
例えば、営業部門と経理部門が同じ顧客情報の入力作業を実施していた場合、業務を一元化し情報の連携をすることで業務効率が向上します。
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顧客満足度が高まる
業務改革を実施することで顧客満足度を向上させることが可能です。
業務改革によって業務プロセスが標準化され、提供するサービスの品質を一定水準以上に保てます。結果として顧客に常に高い品質のサービスを安定して提供できるため、顧客満足度を高められます。
また、業務効率化によって削減できた工数分のコストを価格に反映させることで、顧客の経済的負担を軽減することが可能です。さらに、顧客のニーズにあわせた業務プロセスや組織編成を構築することで、サービスの利便性や使いやすさが格段に向上し、顧客体験の質を高められます。
業務改革は内部の効率化だけでなく、顧客に対する価値提供を向上させる手段といえるでしょう。
長時間労働が解消される
業務改革をすることで長時間労働が解消されます。
業務改革によって無駄な作業が削減され、業務時間の短縮が実現することで、慢性的な長時間労働を解決できるためです。
長時間労働は従業員の健康上のリスクを高めるだけでなく、労働基準法違反などのトラブルにもつながります。法律違反などが判明すると会社のイメージが低下し、ブランドが傷つく要因にもなりかねません。
業務改革を通じて適正な労働時間を実現することは、コンプライアンス遵守と企業ブランドの維持・向上という観点においても重要な取り組みです。
従業員のモチベーションが向上する
業務改革を行うことで、従業員のモチベーションにいい影響を与えられます。
業務改革が成功すると、従業員は無駄な作業から解放され、本来注力すべき付加価値の高い業務に集中できる環境が整い、仕事に対するやりがいや達成感が向上するためです。
また、業務プロセスの見直しによってリモートワークやフレックスタイム制などの柔軟なはたらき方を導入しやすくなり、従業員のライフスタイルに合った労働環境が実現できます。
はたらきやすい職場環境は、優秀な人材の確保や定着率の向上を実現でき、企業のさらなる成長につながります。
DXを進められる
業務改革によってDXの推進も可能です。
DXを推進する上で障害となる要因として、長年使い続けてきた古いシステムの存在があります。業務改革を実施する中で、ブラックボックス化していた業務内容やデータの流れを可視化し、現状を正確に把握した上で新しいシステムへの移行を進められます。
現在の業務に必要なシステムやデジタルテクノロジーを導入できるため会社全体のDX化が実現可能です。
デジタル技術を活用した業務改革により、蓄積されたデータを戦略的に活用できる体制が整い、市場環境の変化に素早く対応できる柔軟な組織として成長できます。
業務の属人化を防げる
業務改革によって業務内容を明文化し、誰でも同じ品質で実施できるよう標準化するため、業務の属人化を防げます。
業務プロセスの中で特定の担当者しか理解していない作業が存在すると、担当者が不在や退職、異動といった事態が発生した際に業務が停滞し、組織全体の生産性が低下してしまいます。また、属人化した業務は次の担当者への引き継ぎが困難となり、品質のばらつきや業務ミスの原因にもなりかねません。
業務改革の中で属人化したノウハウを業務プロセスに落とし込むことにより、誰が担当しても同じ品質を担保できます。
業務改革を成功させるための具体的な4つのステップ
業務改革を確実に成功させるためには、段階を踏んで実行することが重要です。
ここでは、業務改革を実際に行う際の具体的な4つのステップを解説します。
- 目的やゴールを設定して全社で認識を揃える
- 現状の業務を可視化・分析して課題を洗い出す
- 新規業務プロセスを設計する
- 段階的に実行して効果を検証する
目的やゴールを設定して全社で認識を揃える
業務改革を開始する際には、最初に目的やゴールを設定して全社で認識を揃えましょう。
業務改革を全社で取り組むためには、経営陣の思いだけでなく、各部門の役職者やリーダー、現場ではたらく従業員まで、改革の目的と目指す姿を理解してもらうことが必要です。全社で目的を明確にすることで、一貫した改革が可能になります。
具体的には、業務時間の削減率といった定量的な指標と、それを達成する期限を明確に設定しましょう。具体的な数値を定めることで、進捗状況や成果を客観的に測定できる体制を整えられます。
現状の業務を可視化・分析して課題を洗い出す
目的を定義して全社で共有できたら、現状の業務を可視化・分析して課題を洗い出しましょう。
もし、可視化や分析が不十分なまま改革を進めると、的外れな施策を実施してしまい、期待した効果が得られないリスクが高まるためです。
可視化プロセスを通じて、重複している作業や不要なプロセスなど、改善ポイントやボトルネックを特定します。
具体的には業務フロー図の作成や各作業にかかる時間の測定を実施するのがおすすめです。感覚ではなく、実際のデータと数値に基づいて業務の実態を把握して課題を洗い出しましょう。
新規業務プロセスを設計する
課題を洗い出せたら、新規業務プロセスを設計しましょう。
洗い出した課題に優先順位をつけ、最も効果的な改善策から順番に新しい業務プロセスを設計することで業務を適正化できます。
業務プロセスの設計では、システム導入による自動化、複数部署の業務統合、不要なプロセスの削除など、さまざまな手法を組み合わせて、最適な業務フローを構築しましょう。
この段階で、BPOサービスを活用することで、外部の専門的なノウハウや成功事例を取り入れながら、より効率的に改革を進めることも可能です。
段階的に実行して効果を検証する
新しい業務プロセスが完成したら、まず小規模な部署やプロジェクトで試験的に導入し、その効果を慎重に検証しましょう。最初から全社に導入すると業務プロセスに問題があった場合、トラブルが広範囲になってしまうためです。
まずは、試行段階で発見された問題点や改善の余地を丁寧に修正し、より完成度の高いプロセスへとブラッシュアップしていきます。PDCAサイクルを継続的に回すことで、業務改革の精度と効果を高められます。
業務改革が失敗しないためのポイント
業務改革を着実に進めるためには、以下3点を押さえることが重要です。
- 業務改革の目的を決める
- 業務改革の重要性を共有する
- 自社に適した方法を導入する
業務改革の推進には、BPOの活用がおすすめです。BPOについての概要や事例は下記の資料で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
【資料】概要と事例でよく分かる!BPO解説ブック
- BPOの今と未来予測
- BPOの基礎知識
- BPOを導入する3つのメリット
- BPOを導入する4つの注意点
- BPOを活用した5つの事例(営業事務、金融関連業務、経理・財務事務、総務、官公庁)
業務改革の目的を決める
業務改革を全社一丸となって推進するためには、明確な目的を設定する必要があります。
業務改革の目的が曖昧な状態で進めてしまうと、課題に対して直接的なアプローチができず、改革が終わっても現場が変わらないといったリスクがあるためです。
また、経営陣は短期的な数値目標だけでなく、企業の中長期的なビジョンや経営戦略と結びつけて、改革の目的を社員に伝えることが重要です。
例えば、「3年後に業界トップクラスの生産性を実現する」といった、将来の成長につながる大きな目的を掲げることで、社員の意識を高められます。
業務改革の重要性を共有する
業務改革を開始する前には社員に対して業務改革の重要性を共有しましょう。
業務改革を成功させるには、部署を超えた協力体制が必要なためです。部署を超えた協力体制を構築するためには、現場の担当者から管理職まで、全員が業務改革の当事者意識が求められます。
改革の重要性が十分に伝わっていないと、一部の社員だけが熱心に取り組む一方で、他の社員は消極的な姿勢を示し、結果として改革が中途半端に終わってしまう恐れがあります。
成功した他社の事例や、改革によって得られる具体的な効果を示しながら、必要性を繰り返し伝える工夫が必要です。
自社に適した方法を導入する
業務改革を実際に行う際は、自社の業務規模や組織文化、業界特性に最も適した方法を慎重に選択しましょう。
他社で成功した手法をそのまま導入しても、自社の状況に合わない場合は期待した効果が得られず、かえって混乱を招く可能性があるためです。
また、すべての業務に対して一度に複数の改革手法を適用すると、現場が対応しきれずに業務が停滞するリスクもあるため、段階的な導入が求められます。
業務改革を実際に行うための4つの方法
業務改革を実践する際には、代表的な手法を状況に応じて活用して進めるのがおすすめです。
ここでは、業務改革を実際に行うための4つの方法を解説します。
- BSC(バランス・スコアカード)
- シェアードサービス
- 業務システムの導入
- BPO
BSC(バランス・スコアカード)
BSC(バランス・スコアカード)は、財務・顧客・業務プロセス・人材育成という4つの視点から企業の業績を総合的に評価し、改善を図るフレームワークです。
従来の財務指標だけでなく、顧客満足度や業務効率、従業員のスキル向上など、多角的な観点から企業のパフォーマンスを分析することで、バランスの取れた業務改革を実現できます。
例えば、コスト削減という財務目標は達成しているが、同時に顧客サービスの質が安定していないことや従業員の能力開発が進んでいないなど、全体のバランスを客観的に判断できます。
シェアードサービス
シェアードサービスとは、グループ会社や複数の会社で共通する人事、経理、総務などの間接部門を一つの組織として集約し、専門的に処理する方法のことです。
業務の集約により、重複していた作業を削減し、専門性の高いスタッフによる効率的な業務処理が可能となります。
一方で、シェアードサービスを始める際の導入コストがかかりやすいといった点には注意が必要です。また、業務内容が単調なため従業員の意欲が低下しやすい点も考慮して人員の調整をしましょう。
業務システムの導入
これまで従業員が行っていた定型的な業務を、ITシステムやRPAなどの技術で自動化することで、業務スピードが上がり効率化が期待できます。さらにシステムを活用することでヒューマンエラーの削減も可能です。
ただし、システムは目的や課題にあわせて導入する必要があります。例えば、ヒューマンエラーの削減や処理スピードの向上といった目的を解決しないシステムを導入すると、課題に対して直接的なアプローチができなくなるでしょう。
適切なシステムを選定し、現場の業務フローにあわせてカスタマイズすることで、費用対効果の高い業務改革を実現できます。
BPO
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、企業の業務プロセスの一部またはすべてを、専門性の高い外部企業に委託する手法です。
外部の専門企業が持つ最新のノウハウや効率的な業務処理方法を活用することで、自社だけでは実現が難しい高度な業務改革も達成できます。
さらに、定型的なノンコア業務をBPOに委託することで、自社の社員は戦略的で付加価値の高いコア業務に専念できる環境を整えられ、企業全体の競争力強化につながります。
BPOを導入することで、従業員の人材リソースを確保できるため、効率的な業務改革を進められるでしょう。
関連記事| 労働力不足の解消に欠かせない「働き方改革」の改善策
BPO活用で業務効率化に成功した企業の事例
実際にBPOを活用した企業として、株式会社NTTドコモ様の事例を紹介します。同社は複数の部門が同じ業務を別の方法で実施しており、事務処理に課題を感じておりました。
同じ業務ならば別々に処理するよりもあわせて実施した方が効率的で質も向上するのではないかと考え、パーソルビジネスプロセスデザイン(旧パーソルテンプスタッフ)にBPOのご依頼をいただきました。
業務をBPOに委託して効率化した結果、本来必要な仕事に時間を割けるようになり、情報の管理や働き方改革などにも取り組めるようになったそうです。
このようにBPOの活用は、単なる業務の外注化ではなく、効率化した先の企業の成長戦略に注力する状況までの構築が可能です。
関連記事| 膨大な業務、非効率な仕事、属人的な環境……。「もしBPOをお願いしなければ、首が回らなかった」
業務改革を成功させて組織の最適化を図りましょう
業務改革は、企業が目指す成果を確実に達成するために重要な経営戦略であり、適切に実施すれば組織全体のパフォーマンスを向上させられます。
本記事で紹介した4つのステップと実践的な手法やポイントを参考に、自社の状況に最適な業務改革を計画的に進めることで、変化の激しい現代でも柔軟に対応できる企業として成長し続けられるでしょう。
もし、自社で業務改革を進めるのが難しい場合はBPOなど、外部の専門知識を取り入れながら効率的に改革を進める方法がおすすめです。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、豊富な実績とノウハウをもとに、お客さまの要望にあわせたBPOサービスを提供しております。
BPOやアウトソーシングサービスについて、導入経験のないお客さまからはさまざまなお問い合わせをいただいております。なかでも代表的な「BPOの事例を知りたい」という内容については、以下の資料にて補足説明しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。
【資料】概要と事例でよく分かる!BPO解説ブック
- BPOの今と未来予測
- BPOの基礎知識
- BPOを導入する3つのメリット
- BPOを導入する4つの注意点
- BPOを活用した5つの事例(営業事務、金融関連業務、経理・財務事務、総務、官公庁)