業務改善とは?
業務改善とは、現状の業務プロセスを見直し、ムリ・ムダ・ムラを排除することで、業務の効率と品質を高める取り組みです。
トヨタ式「カイゼン」に象徴されるように、現場での創意工夫を重視しながら、改善を継続的に進めていきます。
QCD(品質・コスト・納期)のバランスを取りながら最適化を図ることが基本です。単なるコスト削減だけでなく、生産性の向上や顧客満足度の向上といった幅広い目的を持ちます。
これから業務プロセスの改善を考えている方は、業務プロセスを改善する流れも確認しておきましょう。
業務改善が重要視される理由
近年、企業が業務改善に力を入れる背景には、さまざまな社会的・経済的な課題があります。
- 労働人口の減少による限られた人材活用のため
- 働き方改革に合わせた効率的な業務運営のため
- コスト削減・競争力維持のため
ここでは、業務改善が必要とされる3つの理由を解説します。
労働人口の減少による限られた人材活用のため
少子高齢化の影響により、日本の生産年齢人口は年々減少しています。パーソル総合研究所の「 労働市場の未来推計2035 」によると、2035年には1日あたり1,775万時間の労働力が不足する見込みです。これは、働き手に換算すると384万人分の不足に相当します。
こうした状況下で企業が持続的に成果を上げるためには、限られた人材で生産性を最大限に高める必要があります。業務改善により、業務の無駄を省き、効率的な体制を構築することで、人員を増やさずに成果を上げることが可能です。
人材不足に悩んでいる方は、企業ができる改善策も確認しておきましょう。
働き方改革に合わせた効率的な業務運営のため
働き方改革の推進により、長時間労働の是正やワークライフバランスの向上が求められています。このような流れの中で、柔軟な勤務形態の導入や業務の可視化・効率化は、改革を実現する上で不可欠です。
業務改善を通じて、無駄な会議や重複した業務を排除し、時間や人的リソースの最適化を図ることが求められます。改革を効果的に進めるためには、まず現場の業務実態を把握し、その上で段階的に改善策を導入していくことが重要です。
自社の業務運営を改善したい方は、働き方改革に合わせた改善方法をご確認ください。
コスト削減・競争力維持のため
企業が安定的に成長を続けるためには、競争力の維持と同時にコストの削減も重要な課題です。
業務改善を進めることで、無駄な作業や重複業務を排除し、人件費や備品費といったコストの削減が実現できます。また、ペーパーレス化の推進により、印刷や保管にかかる費用を削減しつつ、業務のスピードも向上します。
こうした改善は、単なるコスト削減にとどまらず、企業の収益性や持続可能性を高める施策につながるため重要です。浮いたリソースは、付加価値の高い業務や新規事業への活用にもつながります。
業務改善を実施する3つのメリット・効果
業務改善を進めることで、企業には主に次の3つのメリットがもたらされます。
- 無駄なコスト削減
- 生産性向上による業務の質・スピード向上
- 従業員のモチベーション・能力向上
業務の見直しや仕組みの改善によって、コストを抑えつつ効率的な運営が可能になり、従業員にとってもはたらきやすい環境が実現できます。
無駄なコスト削減
業務改善により、非効率な作業や重複している業務プロセスを見直すことで、人件費や紙代、光熱費といった経費の削減が可能です。
また、残業時間の減少によって、不要な時間外労働にかかる人件費も抑制できます。ペーパーレス化を推進することで印刷や書類保管のコストも軽減でき、限られたリソースをより重要な業務に集中できます。
生産性向上による業務の質・スピード向上
業務工程やフローの見直しを行うことで、自動化や業務の標準化が進み、生産性が大きく向上します。
属人化を解消することで、誰が行っても同じ品質で業務を遂行できる体制が整います。さらに、アウトソーシングや各種ツールの活用により、反復作業の時間短縮やミスの削減が実現可能です。
また、業務改善を行いたくてもリソースが足りない方には、アウトソーシングの活用もおすすめです。依頼先に迷っている場合は、パーソルビジネスプロセスデザインへお問い合わせください。
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従業員のモチベーション・能力向上
業務の効率化により時間的余裕が生まれることで、従業員は新しい業務への挑戦やスキルアップに取り組むことが可能です。
残業の削減によってはたらきやすい職場環境が整い、ストレスの軽減や離職率の低下にもつながります。また、成長意欲や当事者意識を引き出すことで、組織全体の活力と創造性が高まります。こうした好循環が、個人と企業双方の成長を促進するでしょう。
業務改善の進め方・手順【4STEP】
業務改善を効果的に進めるためには、以下のように段階的なアプローチが重要です。
- 現状の業務を正確に可視化する
- 課題を抽出して優先順位をつける
- 改善計画を立てて具体的なアクションに落とし込む
- 実行と効果の検証をセットで行う
次の手順を踏むことで、無理のない業務改善を実現し、組織内で継続的な改善文化を育てることが可能になります。
1.現状の業務を正確に可視化する
まず、業務の全体像を正確に把握しましょう。業務の種類や担当者、必要な人員、所要時間、使用ツールなどを洗い出し、現場の実情を丁寧に整理します。
その際には、先入観を排除できる中立的な聞き手によるヒアリングが有効です。さらに、フローチャートやプロセスマップ、BPMNといった図解手法を用いて業務プロセスを視覚化し、関係者間で共通認識を形成しましょう。
現場の課題や非効率な部分も見逃さず、問題の本質に迫る基盤を作ることが重要です。
2.課題を抽出して優先順位をつける
可視化した業務内容をもとに、改善すべき課題を整理しましょう。重要度と緊急度を基準に評価し、リソース負担が少なく改善効果の高いものから取り組むことがポイントです。
ECRSや改善の8原則といったフレームワークを活用し、課題の具体化と整理を行います。属人化や重複作業、過剰な会議などの無駄を洗い出し、それぞれの改善インパクトを分析します。
自社の業務に即した本質的な課題を見極めることで、効果的な改善につなげることが可能です。
3.改善計画を立てて具体的なアクションに落とし込む
課題が明確になったら、改善のための具体的な計画を立てましょう。各施策について、目標・期限・担当者・必要リソースを明確にし、実行のスケジュールを組み立てていきます。
最初は小規模な改善から始めることで、現場の負担を抑えながら効果的に浸透させることが可能です。関係部署との連携フローも事前に想定し、必要な調整を行います。
また、計画書や提案書を用いて関係者と合意を形成し、全員が当事者意識を持って取り組める体制を整えましょう。
4.実行と効果の検証をセットで行う
改善施策を実行した後は、振り返りの機会を設けて効果の検証を行いましょう。定量的・定性的な視点から成果と課題を明らかにし、必要に応じて再調整を行います。
成果が想定より小さい場合は、原因を分析して前のステップに戻り、PDCAサイクルを回します。改善点と継続すべき点を整理するためにも、KPTのようなフレームワークを用いることが重要です。
成功事例は社内で共有し、他部門への展開を図りましょう。
業務改善に活用できる代表的なフレームワーク5選
業務改善を効果的に進めるには、目的や状況に応じて適切なフレームワークを使い分けることが重要です。
- ECRS
- PDCAサイクル
- ロジックツリー
- KPT
- QCD
ここでは、多くの現場で活用されている代表的な5つのフレームワークを紹介します。
ECRS
ECRSは、以下の4段階から構成される業務の効率化を目的にした改善手法です。
Eliminate(排除)/Combine(結合)/Rearrange(再配置)/Simplify(簡素化)
優先順位はE→C→R→Sの順で考えると効果的です。無駄を省き、よりスリムで効率的な業務フローの構築に役立ちます。
PDCAサイクル
PDCAサイクルは、以下4つのステップを繰り返すことで、継続的な業務改善を目指す手法です。
Plan(計画)/Do(実行)/Check(評価)/Action(改善)
一度で完璧を目指すのではなく、改善の積み重ねによって業務の質を高められます。
ロジックツリー
ロジックツリーは、問題の原因や解決策をツリー状に分解・整理することで、思考の流れを可視化する手法です。
Whyツリー(原因研究)/Howツリー(問題解決)/Whatツリー(要素分解)/KPIツリー(目標計画)
上記の4種類があり、全体像の把握や議論の方向性を明確にするのに有効です。論理的な思考を促進します。
KPT
KPTは、以下3要素で構成される振り返りのフレームワークです。
Keep(継続)/Problem(問題)/Try(挑戦)
チームで定期的に実施することで、成功体験を共有しながら課題を明確にし、次のアクションへとつなげる文化の醸成に役立ちます。
QCD
QCDは、以下3要素をバランスよく管理するための視点を提供するフレームワークです。
Quality(品質)/Cost(費用)/Delivery(納期)
この3つは互いにトレードオフの関係にあるため、業務内容や優先事項に応じて最適なバランスを見極めることが求められます。
業務改善を進める上でよくある課題
業務改善を進める際、多くの企業が以下のような課題に直面します。
- 組織全体に「自分事」の意識を持たせづらい
- 短期間で成果を出すことは難しい
- 現場と意識のすり合わせを行う必要がある
改善の取り組みを成功させるためには、課題の本質を理解し、段階的かつ丁寧に対応していくことが重要です。
組織全体に「自分事」の意識を持たせづらい
業務改善に取り組む上で、従業員一人ひとりに「自分事」としての意識を持たせることは容易ではありません。そのためには、まず経営層が改善の目的やゴールを明確に伝える必要があります。
加えて、業務改善のメリットを社員に理解させることが、共通の目的意識の醸成につながります。ネガティブな感情に寄り添い、心理的な障壁を取り除くことも協力体制の構築には不可欠です。
社内でのコミュニケーションを強化し、業務改善を会社全体のプロジェクトとして位置づけましょう。
短期間で成果を出すことは難しい
業務改善では、即座に効果を求めるのではなく、長期的な視点が重要です。課題に対しては、「改善の効果」「コスト」「難易度」などをもとに優先順位をつけ、小さな改善から始めて段階的に進めましょう。
一度にすべてを変えようとせず、現場への負担を抑えながら段階的に進行させることが求められます。実行段階では実現可能性を十分に検証し、詳細まで想定した上で計画を立てる必要があります。
また、改善後も振り返りと修正を繰り返しながら、PDCAサイクルを回し続ける仕組みづくりが大切です。
現場と意識のすり合わせを行う必要がある
業務改善を推進するためには、現場との認識のずれを解消し、意識をすり合わせることが不可欠です。改善内容については現場担当者に丁寧に説明し、納得感を得ましょう。
現場から本音を引き出すには、中立的な第三者がヒアリングを担当するのが効果的です。意見の食い違いがあった場合でも、心理的な抵抗を否定せず、丁寧に対応する姿勢が求められます。
従業員との対話を重ね、改善によって何が変わるのかを具体的に伝えることで、全社的なマインドチェンジを行い現場との連携を高めましょう。
業務改善を自社で行うのが難しければBPOを検討しよう
業務改善を自社で進めるには、全社的な意識改革や継続的なPDCAサイクルの実施が必要になります。しかし、十分なリソースや専門的なノウハウが不足している企業では、途中で取り組みが頓挫してしまうケースも少なくありません。
こうした課題に直面した場合は、専門知識を持つ外部への委託が現実的な選択肢となります。特に、社内の限られたマンパワーをコア業務へ集中させたい企業には、アウトソーシングの活用が効果的です。
なかでもBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、定型作業やバックオフィス業務を丸ごと外部に委託することで、業務の効率化を強力に支援します。
業務改善に取り組みたいが自社だけでは難しいと感じている企業には、BPOの活用を検討することをおすすめします。
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業務改善をBPOで解決した製薬業界の成功例
ここでは、製薬業界において業務改善を目的にBPOを導入し、成果を上げた事例を紹介します。
本事例では、以下のような課題を抱えていました。
- 経費処理が社員ごとに異なり、非効率で属人化していた
- 多様な伝票形式に対応できる統一された仕組みが求められていた
- 社員による教育や労務管理の負担が大きかった
- コア業務とノンコア業務の明確な分離を図りたかった
これらの課題に対応するため、同社はBPOを導入し、業務の標準化とプロセスの見える化を進めました。さらに、eラーニングやアカウント管理など複数の業務を委託しました。社員がコア業務に専念できる環境を整える目的です。
加えて、独自開発のRPAとの連携により、累計7.7万時間以上の業務時間を削減することに成功しました。業務改善提案やDX支援も受けたことで、さらなるプロセス改革への新たな施策を得られました。
関連事例| コア業務とノンコア業務の仕分けができ、業務プロセスもシンプルに。「効率化に大きな効果がある」
業務改善の成功を左右する「効率化」と「標準化」
労働人口の減少や働き方改革が進む現代において、業務改善は企業が競争力を維持するための重要な施策と言えるでしょう。
いかに効率化を図り、業務の標準化を実現できるか。ここに業務改善の成功が左右されます。よって、現状の可視化、課題の抽出と優先順位付け、改善計画の策定、実行と効果の検証という4つのステップを段階的に進めることが重要です。既存のフレームワークを活用していきましょう。
しかし、業務改善には「短期間で成果を出すことは難しい」「現場との意識のすり合わせが必要」などの課題も。自社だけで解決することが難しい場合は、専門知識を持った外部パートナーに相談してみることをオススメします。
パーソルビジネスプロセスデザインのBPOサービスでは、業務の標準化やプロセスの見える化を支援しています。業務改善を前提に、貴社の経営資源をコア業務へ集中いただくことで、コスト削減だけでなく付加価値を生めるよう伴走しております。
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