ストレスチェックの集団分析とは|結果の見方と活用方法を解説!

ストレスチェックの集団分析とは|結果の見方と活用方法を解説

2015年の労働安全衛生法改正に伴い、常時50人以上の労働者を雇用する事業場を対象にストレスチェックの実施が義務化されました。また、ストレスチェックの“集団分析”は組織の健康状態を可視化し、職場環境の改善に取り組むためにも重要です。

本記事では、集団分析の流れ・結果の活用方法や注意点を解説しています。集団分析の結果をうまく活用できていないなどお悩みの際はぜひご覧いただき、メンタルヘルス不調の未然防止に取り組んでみてください。

人事・労務の担当者が、まずはポイントを簡単に押さえたい場合にもおすすめです。文末の「よくある質問」も参考にしてください。



目次

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    ストレスチェックの集団分析とは

    「ストレスチェックの集団分析」とは、集団ごとの集計・分析をストレスチェックの実施者などが、個人を特定されない形で集計・分析することを指します。

    部署や職種、職位・職階など業務実態に合った集団を分析することで、組織の構造的なストレス状況を把握でき、多くの職場で生じている業務量や人員配置のミスマッチ解消、勤務形態の調整など、より良い職場環境づくりに活用することができます。

    集団分析の実施方法は、使用する調査票(ストレスチェックの項目)により異なりますが、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用し「仕事のストレス判定図」をもとに分析を行うことがメジャーな手法です。

    2026年1月現在、ストレスチェックの集団分析は努力義務とされていますが、令和4年11月から令和5年10月までの期間に実施された厚生労働省の調査によると、ストレスチェックの集団分析を実施した事業所の割合は約70%、そのうち集団分析の結果を活用したと回答した事業所は約80%となっています。

    徐々に集団分析の結果を活用する動きは浸透していると言えますが、従業員自身でストレス要因を取り除くことは非常に難しいため、結果の見方と活用方法を適切に理解し、職場環境の改善に取り組むことが重要です。

    集団分析で「わかること」

    集団分析は、ストレスチェックの結果を部署・職種・職位・年代などの単位でまとめて見て、その職場にどんな傾向があるかをつかむためのものです。

     

    個人結果が「自分の状態に気づく」ことを目的にするのに対して、集団分析は「職場のどこに無理が出やすいか」「何が足りていないか」といった、環境改善の手がかりを得るために使います。

     

    見るときのポイントは、ストレスの「強さ」だけで判断しないことです。負担が大きいのか、支援や裁量が足りないのか、要因(負担)と支え(裁量・支援)をセットで見ることで、「なぜそうなっているのか」が見えやすくなります。

     

    その結果、たとえば次のようなことが分かります。


    部署ごとの傾向 業務量が偏っている、相談しにくい雰囲気がある、支援が薄い、など職場のクセ
    年代ごとの傾向 若手は裁量が少なく不安が強い、ベテランは役割過多になっている、など段階ごとの課題
    階層ごとの傾向 管理職に負担が集中している、プレイングマネジャー化している、などマネジメント上の論点
    経年の変化 去年より良くなった点や悪くなった点が分かり、取り組みの効果も追える

    要するに、集団分析は「誰が悪いか」ではなく、どこに負荷や支援の偏りがあるかを見える形にして、職場を整えるための材料にするものです。


    集団分析の対象人数の目安と、個人特定を避ける考え方

    集団分析でいちばん注意したいのは、結果から個人が推測されないようにすること(プライバシー保護)です。厚生労働省の導入マニュアルでも、職場の集団分析は努力義務とされつつ、「原則10人以上の集団」を集計対象とする考え方が示されています。


    実務では、次のようにルールを決めておくと運用が安定します。


    10人以上 原則として集計・分析結果を提供(ただし極端な分布には配慮)
    10人未満 部署統合・職種統合などで合算し、集団の単位を大きくする
    10人未満でも分析したい 原則として分析対象者全員の同意がない限り行わない運用が適当

    小規模部署が多い会社では、最初から「課単位」にこだわらず、「部単位」や「職種×部門」など、改善に使える粒度で設計しておくと進めやすいです。

     

    ただし、業務特性の似た部署同士で合算しないと分析の意味が薄れるリスクもある点には注意が必要です。

     

    例えば、「高負荷・高裁量」の部署と「低負荷・低裁量」の部署を人数合わせのために合算した場合、数値が平均化され、両者の特徴的なストレス要因が相殺される、などが考えられます。

     

    合算する場合は、業務内容や勤務形態が類似しているグループ同士で行うことが、分析の有効性を保つために推奨されます。

     

    あわせて、制度面ではストレスチェックがこれまで50人以上の事業場で義務化されてきた一方で、50人未満にも義務化が拡大されます。これにより、企業規模を問わず、全社的なメンタルヘルス対策の体制整備が急務となっています。(2025年5月に改正労働安全衛生法が公布済、施行は公布後3年以内)

     

    そのため、集団分析を行う場合も、ストレスチェックの個人結果が本人の同意なく事業者に提供できないという前提を踏まえ、個人が推測できる形での開示にならないように扱うことが重要です。





    集団分析の役割

    そもそもストレスチェック制度は「メンタルヘルス不調の未然防止」を目的としており、実施したから終わりというわけにはいきません。2026年1月現在、集団分析は努力義務ですが、ストレスチェック結果を分析することで以下のメリットがあることから重要な役割といえます。


    • 組織内のストレス要因を特定し可視化する
    • 職場環境の改善を行う際の指針になる

    部署や職種など関連性の高い集団のストレスチェック結果を分析することで、ストレス要因の傾向を可視化し課題の特定に繋がります。また、個人単位では見過ごされがちな構造的な課題を明確にすることで、優先的に改善に着手すべきポイントを整理しやすくなります。


    例えば、部署Aのメンバーに高ストレスの傾向がみられた場合には、当該部署の業務配分の見直しや、ハラスメントが発生していないかの確認、人員体制の再構築を行うなど、環境改善の指針となるでしょう。

    なお、集団分析の結果から積極的に職場環境の改善に取り組むことでメンタルヘルス不調のリスクを低減するだけでなく、自社への安心と信頼を醸成することにもつながり、従業員エンゲージメント(ES)向上の役割も期待されます。

    多くの求職者が「はたらきやすさ」に関心を持つ今、採用面でのプラスも考えると、集団分析を起点に改善を継続する意義は大きいでしょう。

    「やりっぱなし」になりやすい理由と、活用につなげる要点

    集団分析が活きない一番の理由は、「結果が出たあとに、誰が何をするか」が決まっていないことです。やりっぱなしになりやすいのは、以下の3つが大きいです。


    1. 悪い結果が出ると「犯人捜し」になりそうで議論が止まる
    2. 統計用語や判定図が難しく「結局どうすればいいのか」が現場で整理できないまま止まってしまう
    3. 集計・配布で手一杯で改善の場づくりまで手が回らない

    一方で、集団分析をきちんと活用できている企業は、実施前の段階でいくつかの前提を決めています。

     

    たとえば、目的を「評価のためではなく、はたらきやすい職場をつくるため」と明文化しておくこと。あわせて、結果を人事評価や査定には使わないと明言すること。さらに、経営層・衛生委員会・管理職・従業員といった関係者ごとに、共有する範囲や「見せる粒度」をあらかじめ設計しておくことです。

     

    つまり、集団分析は「データの良し悪し」よりも、事前にどこまで合意をつくれているかで活用度が決まります。


    集団分析の実施手順【4ステップ】

    一般的にストレスチェックの集団分析は次の手順で実施されます。

    1. ストレスチェック結果の集計
    2. 分析対象となる集団の選定
    3. 集団分析の実施
    4. 課題の特定と改善

    一つずつ解説します。


    ステップ(1)ストレスチェック結果の集計

    はじめに、ストレスチェックの回答データを集計します。

    個人情報保護の観点から、データの取り扱いには注意が必要になるため、個人が特定できないよう匿名化やアクセス制限を設け、情報管理ポリシーに沿った管理を徹底しましょう(外部システムを使う場合は委託先・運営会社とも運用をすり合わせます)。

    情報漏洩のリスクを最小限にするための対策を講じることが重要です。必要に応じてアクセスログの取得なども追加し、監査可能な状態にしておくと安心です。

    なお、ストレスチェックを単なる義務として実施している場合や回答率が低い場合には、正確な分析が行えません。実務を担当する方は、従業員の不安の声に耳を傾け、意見を聞く姿勢を持ちながら目的を丁寧に説明し、能動的な参加を促しましょう。

    ステップ(2)分析対象となる集団の選定

    次に、分析対象となる集団を選定します。

    個人が特定されないよう原則として10名以上での実施が必要となりますが、10名を下回る場合には複数部署を合算して分析を実施することも可能です。この際、個人の特定につながらない方法でない限りは、集計・分析の対象となるすべての労働者の同意がなければ企業側に集計・分析の結果が開示されない点に留意しておきましょう。

    10名未満の場合は、他部署と合計して1回の集計単位にするなど、現状把握に必要な粒度を確保します。

    基本的な集団の分け方は、以下が挙げられます。

    • 部署
    • 職種や職位
    • 勤続年数
    • 年齢
    • プロジェクト(チーム) など

    対象の集団については企業側で調整することができますので、「職種ごとの固有のストレス要因を明確にする場合には職種別に分析する」など目的を決め集団を選定しましょう。

    ステップ(3)集団分析の実施

    続いて、医師などストレスチェックの実施者が集団ごとの分析を行い、チェック項目の平均値や高ストレス者の割合を算出します。

    厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」または簡易化した調査票を使用する場合は、「仕事のストレス判定図」を用いて実施されます。

    この「仕事のストレス判定図」では、「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司の支援」「同僚の支援」の4つの尺度の得点を計算し、集団の平均値と標準集団(全国平均)を比較することで、集団におけるストレスレベルや健康リスクを判定することができます。

    量-コントロール判定図と職場の支援判定図
    散布図(2枚):左は『仕事の量的負荷(点数)』を横軸、『仕事のコントロール(点数)』を縦軸にした格子状の等高線グラフ。6〜12点の範囲で、右下ほど暖色(負担が大きくコントロールが低い)になり、左上ほど淡色(負担が小さくコントロールが高い)。青い斜めの等高線に100・90・80…の数値が表示され、黒いプロットがやや中央右寄り(負荷はやや高め、コントロールは中程度)に位置する。右は『上司の支援(点数)』を横軸、『同僚の支援(点数)』を縦軸にした同様の格子状等高線グラフ。右下ほど暖色(支援が低い)になり、左上ほど淡色(支援が高い)。青い斜めの等高線に100・90・80…の数値が表示され、黒いプロットが中央付近(上司支援・同僚支援とも中程度)に位置する。凡例には全国平均(赤菱形)、管理職(□)、専門職(●)、事務職(◆)、現業職(▲)、営業職(■)の記号が示されているが、黒いプロットのみ強調されている。
    ※出典:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」より引用

    ステップ(4)課題の特定と改善

    最後に実施者から提供された集団分析の結果をもとに組織課題を洗い出し、職場環境の改善に取り組みましょう。

    「部署Bは、業務量の項目が平均値よりも高い」、「C職のメンバーに対する周囲のサポートが少ない」といった集団ごとの課題とその要因が可視化できるはずです。アンケートの実施やヒアリングを行い従業員の意見も取り入れながら、ストレス要因の解消に向けた根本的な取り組みが必要となります。

    例えば、「業務量が多い部署には、人員不足の有無を確認したうえで業務配分の見直しや配置調整を検討し、根本解決を目指す」、「サポートが少ない職種があれば研修を行う」に加え、ハラスメントの発生が疑われる場合は、産業医や保健師とも連携してこころのケアを行える体制を整える」など、課題に即した対策が重要です。


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    集団分析結果の見方と活用方法

    ストレスチェックの分析結果は職場環境の改善を行う上で重要なデータとなりますが、適切に評価し活用しなければストレス要因の根本的な改善は難しいでしょう。

    ここでは、集団分析結果の見方・評価方法とその活用方法を解説します。


    4-1. 集団分析結果の見方と評価方法

    集団分析の方法は、ストレスチェックの際に使用する調査票により異なりますが、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」を用いる場合には、「仕事のストレス判定図」による分析がメジャーです。

    「仕事のストレス判定図」は次の2つの図からなります。

    • 量ーコントロール判定図
    • 職場の支援判定図
    仕事のストレス判定図(男女用)
    横棒グラフではなく散布図(2枚):タイトル『仕事のストレス判定図(男女用)』。A:量・コントロール判定図は横軸が『仕事の量的負担』、縦軸が『仕事のコントロール』。グリッド上に斜めの等高線(100・90・80…)と色分けのリスク帯(右下が高リスクのオレンジ〜赤、左上が低リスクの淡色)。黒い点は横8.2、縦7.2付近にあり、吹き出しで『仕事量とコントロール(自由度)のバランスがやや悪い』と示される。B:職場の支援判定図は横軸が『上司の支援』、縦軸が『同僚の支援』。同様に斜め等高線と色分けのリスク帯(左下が高リスク)。黒い点は横6.7、縦8.8付近にあり、吹き出しで『上司の支援が特に低い』と示される。両図の右下隅に凡例:全国平均(赤菱形)、管理職(白四角)、専門職(白丸)、事務職(白ひし形)、現業職(白三角)、営業職(白四角)。全体として、Aは負荷高めでコントロール中程度、Bは同僚支援は高めだが上司支援が低く、リスク帯への注意を促す内容。
    ※出典:厚生労働省「職場結果「仕事のストレス判定図」について」より引用

    まず、従業員のストレスチェック結果を、「仕事の量的負担/仕事のコントロール/上司の支援/同僚の支援」の4つの指標で数値化し、分析対象の集団ごとの平均値を算出します。その数値をそれぞれの判定図にプロットして、標準集団(全国平均)と比較します。

    さらに、現在の職場におけるストレス要因が、どの程度従業員の健康に影響を与えるかを図る指標として「総合健康リスク」を算出することができます。

    「総合健康リスク」とは、職場のストレス要因が、従業員の健康(疾病休業やメンタルヘルス不調)にどの程度影響を与えるリスクがあるかを数値化したものです。全国平均を「100」として算出されます。

    計算の仕組みは単純に点数を掛け合わせるのではなく、各判定図から統計的に算出された「健康リスク値」を用いて計算されます。(「量-コントロール判定図の健康リスク値」×「職場の支援判定図の健康リスク値」/ 100)

    職場の健康リスク評価

    職場名 営業部(業務内容:営業戦略の策定、商談)
    対象者数 男性:10名 女性:5名
    尺度 全国平均 平均点数(前回比) 健康リスク(全国平均=100とした場合) 総合健康リスク
    量的負担 8.7 8.5(+1.6 量―コントロール判定図
    108(-6)
    総合健康リスク
    121(+27
    コントロール 7.9 6.4(+2.1)
    上司の支援 7.5 6.0(-2.8 職場の支援判定図
    112(+38
    同僚の支援 8.1 8.8(-0.9

    上記の例では、ストレスチェックの結果から平均点数(前回比)を算出しており、赤字は前回より悪化、黒字は前回より良化していることを示しています(「仕事のコントロール」のみ前回比で改善されている状態)。また、健康リスクの列をみるとコントロール(自由度)が良化していることから「量―コントロール判定図」は改善しているが「職場の支援判定図」は悪化しており、ストレスレベルが高くなっていることが読み取れます。

    結果的に総合健康リスクが 121となっており、職場のストレスを起因とする心理的ストレス反応、疾病休業、医師受診率等のリスクが 1.2 倍になることが推定される状態という見方が可能です。

    この総合健康リスクが150を超えている場合には、該当集団の中で健康問題が顕在化している可能性が高いため早急な改善が必要となります。また120を超えている場合でも、問題が顕在化する前に潜在的なストレス要因を早期発見し職場環境の改善に取り組むべきといえるでしょう。

    4-2.  よくある誤読と注意点

    数字の読み違いは、そのまま対策のズレにつながりますので、注意が必要です。よくある例を以下に3つ挙げてみました。

    まず「高ストレス者が多い=悪い職場」と決めつけるケース。負荷が高くても、裁量や支援があって前向きに回っている職場もあります。判定図は「負荷」と「資源」をセットで見たほうが安全です。

     

    次に「同僚支援が低い=仲が悪い」という誤解。リモートで声をかけづらい、業務が分断されて助け合いが起きにくいなど、構造の問題でそう見えていることもあります。

     

    最後に、数値だけで言い切ってしまうこと。アンケートには抗議の低評価や、弱音を吐きにくい文化の「盛り」も混ざります。

     

    要するに、数字は一面です。残業、欠員、離職率といった客観的指標と併せて判断することが大切です。


    4-3. 衛生委員会・経営層への報告で使えるまとめ方

    経営層に分厚い資料を渡しても、まず読まれません。伝えるのは「意思決定に必要な点」だけに絞りましょう。


    ①結論

    • 全社の健康リスクの現状

    • 前年差
    • いま最優先で手を打つ課題

    ②根拠(簡潔な図表)

    • 高リスク部署の一覧

    • 判定図のどこが悪化しているか

    ③提案(打ち手)

    • 早期ヒアリング

    • 負担軽減策
    • 支援強化(研修・1on1等)

    厚生労働省の令和5年調査でも、実際の活用例として「人員体制・組織の見直し」「業務配分見直し」「研修」「ワークショップ」などが挙げられています。経営報告は、「何を、どの順でやるか」まで書くほど通りやすくなります。

     

    ポイントは、細かい統計ではなくエグゼクティブサマリーにすることです。経営層が見たいのは偏差値ではなく、「経営への影響」と「対策に対するリターン」です。


    仕事のストレス判定図(男女用)

    表:第4表。ストレスチェック結果の集団(部・課など)ごとの分析結果について、分析の実施状況と、実施した場合の活用の有無・活用内容(複数回答)を、事業所規模(従業員数:1,000人以上、500~999人、300~499人、100~299人、50~99人、30~49人、10~29人)別に示した割合の表。令和5年の合計では、集団分析を実施した事業所は69.2%。分析結果を活用した事業所は78.0%。活用内容(合計の主な内訳)は、残業時間削減や休暇取得促進などの取組が55.7%で最も多く、次いで相談窓口の設置が38.9%、上司・同僚に支援を求めやすい環境の整備が37.1%、業務配分の見直しが34.1%、衛生委員会等での審議が31.9%、人員体制・組織の見直しが30.2%、管理監督者向け又は同労者向け研修の実施が23.9%、職場の物理的環境の見直しが18.8%、従業員参加型の職場環境改善、ワークショップの実施が6.0%、その他が3.7%。分析結果を特に活用していないは17.5%。表には令和4年の合計値も併記されている。
    ※出典:厚生労働省「令和5年「労働安全衛生調査(実態調査)の概況」より引用

    4-4. 職場環境改善のフレームワーク

    集団分析の結果をもとに職場環境の改善へ取り組む際は、以下のフレームワークを参考にしてみてください。なお、単に職場・組織の問題を指摘するのではなく、「どうするとより良くなるのか」を検討することが大切です。

    ●環境改善に向けた体制づくり

    職場改善の改善を効果的に行うためには、事前の体制構築や方針を明確にしておくことが重要となります。改善主体に応じて「経営者主導型」、「管理職主導型」、「専門職主導型」、「従業員参加型」の4つに分類されますが、いずれの場合でも産業医など産業保健スタッフと管理職・管理監督者間での連携を取ることが求められるでしょう。

    ●職場環境の評価

    ストレスチェックで使用した調査票をもとに、組織のストレス要因など職場環境の評価を行います。「職業性ストレス簡易調査票」を使用した場合は前述した「仕事のストレス判定図」を、それ以外の独自の調査票を使用した場合は経年比較など、事業場に適した方法で評価しましょう。

    ●改善計画の立案

    次に評価結果に基づき、安全衛生委員会・各部署の管理監督者が環境改善を計画します。必要に応じて、産業医や事業場外の専門家の支援を受けることも効果的です。

    計画立案時のポイントは以下が挙げられます。


    • 事業所内外の優良事例を事前に収集する(必要に応じてオンラインのセミナーや関連イベントで他社の実践も学ぶ)

    • 主体的に参加できるよう、従業員の意見を聞く機会をつくり、双方向のコミュニケーションとして施策に反映する
    • • 心身の負担に関する職場環境や労働条件など幅広く着目し施策を検討する

    実効性のある改善計画を立案するために、改善の内容だけでなく、そのタイミングやスケジュールを明確にしておくことが重要です。1回きりで終わらせないためにも、限られたリソースの中で実施できるよう考慮しておきましょう。適宜、健康経営に特化したコンサルティングなど外部からの支援を受けることも有効です。

    ●改善施策の実施

    立案した計画を実行に移します。継続的に改善が進むよう、「計画に則り実行できているか」、「実施上の問題は起きていないか」など進捗共有を定期的に行いましょう。部署ごとに中間報告や3カ月・半年ごとなど期間を定め報告してもらうことも効果的です。

    ●施策の評価と計画の見直し

    一定の期間で、改善施策の効果を評価しましょう。

    計画通りに施策が実行できたかを活動記録や関係者へのヒアリングで判断するパフォーマンス評価、施策の目的としていた指標が改善したかどうかで判断するアウトカム評価のいずれかの評価方法が一般的です。

    計画から逸脱している場合や参考指標が目標値から乖離している場合には、計画を見直します。反対に数値の改善がみられた事例などは、他の部署にも参考になるよう社内に公開して共有し、PDCAサイクルを回しましょう。


    4-5. 改善テーマの優先順位付けとKPI設定

    改善は、「影響度×実行しやすさ」で優先順位をつけて、まずは「やり切れる範囲」から始めるのが現実的です。

     

    影響度が大きいのは、高リスクの部署や、離職・欠員がすでに出ているところ。実行しやすい取り組みとしては、業務の棚卸し、会議の削減、1on1の導入などが挙げられます。

     

    あわせて、指標は「結果」と「行動」を分けて設計します。結果指標(KGI)は、総合健康リスク、高ストレス者率、休職率・離職率といった最終的な到達点。行動指標(KPI)は、1on1の実施率、業務配分見直しの完了率、有休取得率、ノー残業デーの達成率など、日々の取り組みが進んでいるかを測るものです。

     

    結果はどうしても時間がかかり、スコアだけを目標にすると続けにくくなりがちです。だからこそ、「スコアはまだでも、1on1は全員実施できた」のように、行動指標で進捗を見える形にしてプロセス評価を行うことでモチベーションを維持させ、取り組みを継続しやすくするのもポイントです。


    集団分析結果を活用する際の注意点

    ストレスチェック結果を正しく読み取り理解することで組織の健康状態を把握し、メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)に取り組むことができますが、効果的に活用するためには以下の点に留意しておく必要があります。

    • 総合健康リスクと高ストレス者を把握する
    • 職場環境の改善を見据えた集団の設定が重要
    • 分析結果の適切な開示と保管

    一つずつ解説します。


    5-1. 総合健康リスクと高ストレス者を把握する

    集団分析の結果をもとに「総合健康リスク」と「高ストレス者」を特定しそれに応じて対策を行うことが必要となります。

    総合健康リスクは「仕事のストレス判定図」から算出し、職場のストレス要因が従業員の健康に与える影響度合いを評価します。リスクが高くなっている集団に関しては、メンタルヘルス不調が顕在化している可能性も高いため、対策が必要になります。

    また、平均値を下回る場合でも問題がないというわけではありません。仕事のストレス判定図で用いる4つの指標(仕事の量的負担/仕事のコントロール/上司の支援/同僚の支援)以外にも“仕事のやりがい”や“業務の将来性”など仕事上のストレス要因は多岐に渡る点に留意しておきましょう。

    ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、本人から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施します。高ストレス者個人に対するケアだけでなく、該当者が所属する組織内のストレス要因を見つけ、根本的な解消に向けた取り組みを実施しましょう。



    高ストレス者の判定基準や対策については以下のコラムでも解説していますので、ご参考ください。

    5-2. 職場環境の改善を見据えた集団の設定が重要

    集団分析は医師などの実施者により実施されますが、分析対象の集団の選定は企業側で行うことができるため職場環境の改善を見据えた集団選定が重要になります。

    個人が特定されないように最低でも10名以上での分析が基本となりますが、職場環境を改善していくために必要となる情報が取得できるよう、部署や職種、職位・職階等、業務実態にあった分析単位での選定を心掛けましょう。

    併せて過去の分析結果から経年比較をすることで、ある程度組織の課題を予測した集団選定を行うことが可能です。重点的に改善をしたい集団や影響を与えたい集団を考慮して選定することで、最適な職場環境の改善につなげることができます。

    5-3. 分析結果の適切な開示と保管

    集団分析の実施者から連携された結果について、開示方法やその範囲をあらかじめ実施規程に定めることが必要です。その上で、各職場に分析結果の説明を行う場合には、管理監督者に対する批評や批判と受け取られることがないように注意しましょう。

    また、集団分析結果は職場の強みを伸ばすためのヒントにもなりますので、組織課題に対する指摘だけでなく、良い点について従業員へフィードバックをすることも効果的です。

    誤解が生じないよう、ライン管理職とのコミュニケーションを密にし、まず耳を傾けて聞く姿勢が望ましいでしょう。

    なお、ストレスチェックの結果と同様に集団分析結果についても、5年間保存しておきましょう。前述の通り経年変化をみて職場環境のストレス状況の推移の分析やより最適な集団の選定などに活用することができるためです。


    5-4. 小集団の個人特定リスクと配慮

    10人前後の小集団の部署や、極端に悪い結果が出た場合などにも注意が必要です。

     

    管理職が動揺して犯人探しが起きたり、心理的安全性が損なわれて次年度の回答率や率直な回答が下がるといったリスクも考えられますので、フィードバック時には人事(必要に応じて産業医)から管理職へ事前に次を伝えます。

     

    「結果は統計的傾向であり、個人の特定はできません」

    「詰問はパワハラに該当し得ます。改善に向けて一緒に進めましょう」

    「数値の悪化は責任追及ではなく、改善余地のサインです」

     

    小規模部署での犯人探しは必ず防止し、管理職を「責める側/責められる側」にせず、改善のパートナーとして巻き込むことが重要です。



    よくある質問(Q&A)

    Q1. 集団分析は義務ですか?努力義務ですか?

    職場分析(集団分析)は、導入マニュアル上は努力義務と整理されています。とはいえ「やらなくてもいい」という話ではなく、指針では実施が強く推奨されています。実施率も令和5年調査で約69.2%まで進み、実務では「やるのが標準」に近づいています。




    Q2.  総合健康リスクの計算式は?

    標準的な計算式は以下の通りです。単純に点数を掛け合わせるのではなく、各判定図から統計的に算出された「健康リスク値」を用いて計算されます。

     

    総合健康リスク = (仕事の量 - コントロール判定図の健康リスク値) × (職場の支援判定図の健康リスク値)/100

     

    一般的には、量‐コントロール判定図と職場の支援判定図をもとに総合健康リスクを算出します。目安は120以上で注意、150以上で要対応。実際の計算は手作業ではなく、プログラムや委託先のレポートで自動化されるのが一般的です。


    Q3.   判定図や計算ツールはどこで入手できますか?

    厚生労働省が無料で提供している「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を利用するのが最も一般的です。

     

    このプログラムには、受検データを入力することで集団分析結果を出力する機能が標準で備わっています。

     

    プログラム本体や操作マニュアルは、厚生労働省の特設サイトから無料でダウンロード可能です。 なお、外部委託サービス(ストレスチェック代行業者)を利用している場合は、提供されるシステム内で自動的に計算・レポート化されるため、個別にツールを用意する必要はありません。



    集団分析の結果が悪い部署に対して、最初にやるべきことは?

    まずはヒアリングです。数字だけで対策を決めず、繁忙期・欠員・業務特性などの背景を確認し、判定図(負荷なのか支援なのか)と突き合わせて原因の仮説を固めていきます。


    外部委託するメリットは?


    外部に任せると、集計や督促といった「手を動かす仕事」が減るだけでなく、数字の読み解きまで含めて整理された形で戻ってきます。

     

    個人情報を社内で抱える範囲も絞れるので運用が回しやすく、結果を「出して終わり」にせず、改善の進め方までつなげやすくなります。



    ストレスチェックに関するお悩みはパーソルビジネスプロセスデザインへ

    ここまで、ストレスチェックの集団分析について解説してきました。

    ストレスチェック結果を単に分析するのではなく、目的を定めて集団を選定し職場環境の改善に活用することで、従業員のメンタルヘルス不調の未然防止やエンゲージメントの向上にも繋がります。今回解説した集団分析結果の活用方法と注意点をご参考いただき、自社のストレスチェック実施時に是非お役立てください。

    パーソルビジネスプロセスデザインでは、ストレスチェックをはじめ健康経営の促進を支援するヘルスケアサービスを多数ご提供しています。また、健康経営優良法人の取得支援を行うコンサルティングサービスも展開しています。

    健康経営に関するお困りごとがある際は、以下より健康経営のお取り組みについて紹介している資料をダウンロードいただくか、問い合わせフォームよりご相談ください。

    すでにストレスチェックは実施しているものの活かし切れていない場合でも、集団分析を「改善のスタート」にすることで課題解決に役立ちます。結果を活かす具体策も含めてご相談ください。


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