「守りのEAP」から「攻めのEAP」へ
昨今、多くの企業でEAPサービスの「乗り換え」が増えています。背景にあるのは、コスト削減や費用対効果の改善だけではありません。
健康経営が広がりを見せる中、健康施策の重要性は「実行したか」ではなく、「効果の可視化」と「改善の質(PDCA)」に変わりつつあります。その結果、利用されづらいEAPサービスは、「守りの法対応(とりあえず導入する)」に留まり、ヘルスケア対策としての「攻めの対応(投資)」とはみなされにくくなっているといえるでしょう。
また、実際の現場でも、以下のような声が聞こえます。
- 「周知が行き届かず、利用件数が増えない」
- 「心理的なハードル(スティグマ)を拭いきれない」
- 「具体的な効果が見えづらい」
加えて、ストレスチェックも「受検→高ストレス判定」の後が課題になりがちです。日本産業衛生学会の調査報告(2018〜2019年、主に産業医などを対象としたWeb調査)では、高ストレス者に対する医師の面接指導の実施率が「0〜10%(最も近い選択肢)」に該当する事業場が77.5%を占めたと報告されています(※調査対象の特性上、全国の平均値を直接示すものではありません)。
※参考:公益社団法人 日本産業衛生学会「ストレスチェック制度の実施状況および課題に関する調査報告」
そのため、今、多くの企業が契約するだけの「守りのEAP」から、利用率や効果まで見える実効性の高いサービスへ切り替えています。
以前はストレスチェック対応やハラスメント対策などコンプライアンス目的の導入が中心で、「何かあったときの窓口」があれば十分とされ、年間利用件数がゼロの企業も珍しくありませんでした。
ですが、人的資本経営(ISO30414)の流れから、健康投資が生産性にどのように寄与しているかが問われ、「使われないサービス」はコストロスとして考えられるようになり、「攻めのEAP」へと切り替える動きが進んでいるのです。
※参考:内閣官房「人的資本可視化指針」
EAPサービスを導入する目的を整理する
EAPを選定する際、最も避けたいのは、「導入すること」が目的になり、現場の課題とサービスの内容が乖離してしまうことです。
まずは自社の状況を整理し、以下の4つの課題パターンに当てはめてみてください。要件を取りまとめおくことで、比較検討の精度が飛躍的に高まるでしょう。
| 解決したい課題(目的) | 背景・現場の悩み | 【推奨】EAPサービスのタイプ |
|---|---|---|
| 利用率の改善と浸透(形骸化の防止) | ・相談することの心理的ハードルが高く、利用を敬遠する層が多い ・形式的な周知に留まっている |
IT・オンライン特化型 |
| 福利厚生の充実(コスト・多機能重視) | ・低コストで展開したい ・窓口だけでなく、職場環境・育児/介護・自己啓発など幅広い機能が欲しい |
福利厚生総合型 |
| メンタルヘルス不調への専門相談(重症化の予防) | ・休職・復職支援を強化したい ・医療機関との連携や対面での深いカウンセリングを行いたい |
医療・カウンセリング型 |
| 法的リスク・安全配慮義務(組織管理・リスクマネジメントの強化) | ・ストレスチェック後の体制を整備したい ・人事・産業医との連携を強化し、法令遵守を徹底したい |
産業医連携型 |
「EAPサービスのタイプ」は後述の「主要EAPサービス4タイプの比較と特徴」のタイプと同一のものとなり、それぞれに近しいEAPサービスをいくつかピックアップしています。
自社の課題に近い項目から読み進めていただくことで、導入後のミスマッチを防ぎ、従業員に浸透するEAPサービスを選定できるでしょう。
EAPの導入・切り替えの検討と併せ、「そもそも社内の従業員相談窓口が機能していない」という課題をお持ちの方は、窓口の基本的な作り方や運用体制の見直しについて解説した以下の記事もご参照ください。
「使われにくいEAPサービス」と「使われやすいEAPサービス」の違い
EAPの価値は、機能の数ではなく「必要な状況で、ためらわずに利用されるか」で決まります。
“導入後になかなか使われることなく形骸化するサービス”と、“従業員に浸透し使われるサービス”には、設計において明確な違いが3つあります。
- 相談に対する「心理的ハードル」の低さ
- プライバシーの不安を排除する独立性
- 利用者に「相談」と構えさせないUI/UX
違い(1)相談に対する「心理的ハードル」の低さ
使われるEAPサービスの条件の一つは、電話や対面以外のデジタルな相談方法を備えていることです。
特に若手社員にとって、オンライン(メール・チャット等)ではないオフラインの会話は想像以上にハードルが高いのが現実です。2025年に株式会社グラファーが実施した「電話とAI自動音声の活用に関する意識調査」によると、Z世代(社会人1~5年目)の80.3%が電話に苦手意識を持っていることが分かります。その理由は、「緊張する」「感情が読めない」「準備ができない」といった心理的な負担の重さが上位に集中しています。
何らかの理由でメンタルに不安を抱えている場合、たとえ相手が心理士などの専門家であったとしても「見知らぬ相手にいきなり悩みを相談する」こと自体が大きなストレスになり得るのです。チャットやメール・オンライン・顔出し不要など「入り口の軽さ」が心理的なハードルを下げ、利用率を左右する要因となります。
違い(2)プライバシーの不安を排除する独立性
EAPの利用を阻む最大の壁は、「相談したこと(相談内容)が会社に知られるのでは」。という不信感です。特に社内窓口(内部EAP)の場合、相談窓口の設置場所や動線、周囲からの視線や噂話など物理的なリスクだけでなく、人事との距離の近さが心理的な抵抗感を生みやすいでしょう。
このような不安、懸念を排除するためには、運営側の「徹底した第三者性・独立性」が不可欠です。利用されるEAPサービスは、以下のような条件を明文化し、利用者に周知しています。
- 情報の非対称性:会社に報告される情報は、個人を特定できない「統計情報」のみであること
- 徹底した守秘義務:専門職として倫理規約、外部機関としての第三者性を担保した運用であること
結局のところ、「会社に筒抜けではないか」という不安をどこまで丁寧に解消できているかが、利用率に直結します。「誰が相談したか」が会社に伝わらない独立性が担保されていることは、本音を話してもらうための大切な前提になります。
違い(3)利用者に「相談」と構えさせないUI/UX
「相談やカウンセリングは深刻な悩みを持っている人が行くもの」という抵抗感がある限り、従業員が躊躇し、利用が進みません。そこで重要になるのが、「相談をカジュアルな体験に変える」UI/UXの設計です。
例えば、当社と東京大学との共同研究で開発されたメンタルヘルスサービス「KATAruru(カタルル)」は、非対面かつアバターを活用して心理師と相談できる点が特徴の一つに挙げられます。実証実験では、約64%の利用者が「相談への抵抗感が軽減した」と回答、また70%以上の方が「本音で話せた」「受け止めてもらえた」と回答しています。
<KATAruru(カタルル)が支持されるポイント>
- 顔出し不要の相談形式:双方向アバターを導入しているため、匿名性が高く、視線も気にならない
- 非言語コミュニケーション:実際の動作に合わせアバターが頷く、など「聴いてもらえている」温度感がある
- 心理的安全性:本格的なカウンセリングを、3Dゲームやチャットのような気軽な感覚で体験できる
つまり、利用者にとっては「心理相談」という言葉の重さよりも、「カジュアルな体験」として提供できるサービスが求められているといえるでしょう。
【5つの比較ポイント】失敗しないEAPサービスの選び方
EAPサービスの導入や切り替えで最も多い失敗は、「メニューの多さ」や「価格の安さ」だけで決めてしまい、思ったほど利用されないままになってしまうことです。
実効性を高めるために重要な、以下の5つの観点で比較検討を行いましょう。
- 【相談形式】…オンライン完結・アバターなど「今の時代」に合っているか
- 【匿名性】…心理的安全性を守る仕組みの有無
- 【専門性】…「臨床心理士・公認心理師」など有資格者が対応するか
- 【対象範囲】「予備軍」から「高ストレス者」まで幅広く支援できるか
- 【運用支援】人事の負担を減らす「伴走支援」があるか
ポイント(1)【相談形式】オンライン完結・アバターなど「今の時代」に合っているか
若手社員を中心に「電話を掛ける・出る」ことへの抵抗感が高まっている今、相談手法の幅が利用率を左右します。
<チェック項目>
- スマホやブラウザのみで予約手続きから相談まで完結するか
- 「顔出し不要(音声のみ・アバター・チャット・カメラオフ)の選択肢があるか
- リモートワーク中や自宅からでも、周囲を気にせず相談できる導線を用意しているか
リモートワーク環境では、場所を選ばずに相談できないと在宅勤務中の孤独感や悩みを拾いにくくなるため、スマホひとつでオンライン完結できたり、カメラオフやチャットのみ、アバターなど顔を出さずに相談できるかを確認しておくと安心です。
また、自宅からの相談の際など家族が近くにいる場合は、チャットが有効な場面があります。若手やリモート社員への浸透を狙うなら、オンライン完結は外しにくい要件になるでしょう。
ポイント(2)【匿名性】心理的安全性を守る仕組みの有無
「匿名性」は気分の問題ではなく、制度設計として捉えます。「会社にバレるかも」という不安を拭うには、規約と情報の取り扱い体制を両面からチェックする必要があります。
<チェック項目>
- 個人を特定できない形式でレポート作成を行っているか
- Pマーク(個人情報保護)やISMS(情報管理)など、外部認証を取得しているか
- 相談相手となる担当者に対する守秘義務の徹底と第三者性が担保されているか
外部ベンダーへ相談窓口の設置を委託する際には、適切な情報管理体制(外部認証の有無)が敷かれているかなどは、従業員への説明の際に大きな説得力を持ちます。
例えば、相談内容など要配慮情報について、本人の同意がない限り会社に報告されない旨が利用規約やガイドラインで明文化されていること、をはじめ会社に漏れないという安心感が整っていることが利用促進の第一歩となるでしょう。
ポイント(3)【専門性】「臨床心理士・公認心理師」など有資格者が対応するか
入り口が気軽でも、支援の中身(対応の質)が十分でなければ、不調を見逃すリスクが残ります。
<チェック項目>
- 有資格者の在籍比率を開示されているか(臨床心理士・公認心理師)
- 重症化リスクを適切に見立て、必要に応じて医療機関へ連携できる体制があるか
- 対応の質を維持するための研修・監督体制などがあるか
とくに相談員の保有資格は重要で、「臨床心理士(民間資格)」や「公認心理師(国家資格)」かどうかを見ておきたいところです。単なる悩み相談と、メンタル不調の予兆を見抜いて適切に振り分ける判断は、求められるスキルや経験が異なるためです。
安価なサービスでは、短期間の研修のみで無資格のカウンセラーが対応するケースもあるため、不調を見逃さないための目安として有資格者比率は参考になります。
気軽さは大切ですが、ケアの質(専門性)を妥協しないことがポイントです。
ポイント(4)【対象範囲】「予備軍」から「高ストレス者」まで幅広く支援できるか
「メンタル不調が深刻化したら」「病気になったら」という認識では、EAPサービスの利用者は増えません。
ストレスチェック後に「高ストレス判定」を受ける従業員は全体の約10%程度とされています。不調の手前にいる「予備軍(健康者層~未病者層)」をいかにカバーできるかが、一次予防のポイントです。
<チェック項目>
- キャリアや人間関係など、カジュアルな悩みも相談対象に含まれるか
- ストレスチェック結果と連動した自動案内などの「能動的な働きかけ」があるか
- セルフケア用の学習コンテンツ(動画・コラム等)が充実しているか
ストレスチェックの結果だけでは、高ストレス者層を完全に把握することはできません。大切なのは一次予防と受け皿を用意しておき、予備軍に対しても早期にアプローチができる体制の構築です。
業務上発生するストレス要因に限らず、キャリアについての相談やプライベートな悩みまで、フラットに受け入れることで重症化リスクを徹底して排除しましょう。
ポイント(5)【運用支援】人事の負担を減らす「伴走支援」があるか
EAPサービスは導入して終わりではありません。健康経営と同様に、施策の評価と改善(PDCA)が重視されますので、周知や効果測定まで伴走支援が可能かが検討材料となります。
<チェック項目>
- 定期的なレポート(月次・四半期等)に基づいた具体的な改善提案があるか
- 社内周知用のポスターやチラシ、説明動画などの素材が提供されるか
- 部署別の傾向分析など、組織改善に活かせるデータを提供してくれるか
人事担当者のリソースには限りがあるため、運用が丸投げにならないよう、導入後の活動支援や利用状況レポートの支援が手厚いベンダーを選ぶことが重要です。
特に、部署などのセグメント単位での相談傾向を個人が特定できない形で分析・報告してくれるレポート機能は、組織改善に役立つデータになり得ます。
費用対効果(ROI)を高めるための料金体系とコスト比較
EAPサービスは、単に「料金の安さ」だけで導入可否は判断できません。
例え、月額利用料が低単価であっても利用者がほとんどいない場合、「非効率な固定費」となります。反対に、一時的にコストが掛かったとしても、適切に利用され「1人の離職を防ぐ」ことができれば、それだけで数倍の投資回収が期待できるでしょう。
そこで、ここからは「料金体系の違い」に加え、「内部運用と外部委託のコスト差」、さらに「コストに見合う運用サポート体制があるか」といった観点で整理していきます。
料金体系の比較:自社の「状況」に合わせる
自社の規模や想定する利用率に合わせて、料金プランを選ぶことが大切です。料金体系が合っていないと、予算が想定以上に膨らんだり、費用を気にして利用を控えてしまったりして、せっかくの制度が活かしにくくなることがあります。
代表的な料金体系は、次の3つです。
- 月額固定型
- 従量課金型
- セットプラン
月額固定型は従業員数に応じて毎月一定額を支払う形で、利用者が増えてもコストが変わりにくいため、「まずは利用者を増やしたい/浸透させたい」フェーズと相性が良いです。
従量課金型は相談ごとに費用が発生するため、導入初期など利用が少ないうちは抑えやすい一方で、利用が増えると総額が読みづらくなる点がデメリットに挙げられます。
セットプランはストレスチェックの実務代行や福利厚生などのオプションとして付帯する形が多く、手続きが簡単で安価になりやすい反面、専門サービスに比べて対応範囲や専門性が限定的なケースも見られます。
比較するときは、「利用を促進したいタイミングで、費用がブレーキにならないか」などを軸に見ると整理しやすいでしょう。利用率を高めたい場合は、回数を気にせず使いやすい月額固定型が選ばれることが多くなります。
| 料金体系 | 特徴・仕組み | メリット | デメリット | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|
| 月額固定型 |
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| 従量課金型 | 基本料(安価または無料)+相談1件ごとの料金が一般的 |
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| セットプラン(付帯型) | ストレスチェックや福利厚生サービスなどのオプションとして付帯 |
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「内部EAP」vs「外部EAP(アウトソーシング)」のコスト比較
中小・中堅企業では、EAPは社内で抱えるより外部に委託したほうが、費用対効果を出しやすい場合があります。
内部EAP(カウンセラーを直接雇用する形)は、人件費に加えて採用・教育費、相談室のスペースや備品などの固定費が継続的にかかりやすく、相談が少ない時間帯でもコストが発生しがちです。 さらに、カウンセラーの休職・離職が起きた際の代替や引き継ぎなど、運用面の負担も想定以上に膨らむことがあります。
一方で、外部EAP(アウトソーシング)は契約料を中心とした形になり、必要なときに必要な専門性を使いやすい点が特徴です。社内に常駐者を1名置く場合、費用は年間:数百万円にも上りますが、外部委託では、24時間対応や多言語対応などの体制をより安価に利用できるケースもあります。
特に中小・成長企業では、1人の休職・離職が事業に与える影響が大きくなりやすいため、リソースを必要量だけ確保できる外部EAPのほうが、投資対効果(ROI)の観点でも検討しやすくなるでしょう。
<「内部EAP」と「外部EAP」の比較>
| 項目 | 内部EAP(直接雇用) | 外部EAP(アウトソーシング) |
|---|---|---|
| 主なコスト | 人件費(例:年収400〜600万円+社保)、採用・教育費、スペース(家賃按分)、備品など | 契約料が中心(スケールメリットで低廉化される場合あり) |
| コストの性質 | 固定費が重くなりやすい(利用が少なくても発生しがち) | 使う分に合わせて調整しやすい |
| 主なリスク | アイドルタイムでも費用が出やすい/休職・退職時の対応負担が出やすい | 品質管理がベンダー側に寄りやすい |
| 期待できる効果 | 社内事情に詳しく、復職支援などで力を発揮しやすい(ただし損益分岐点が高くなりがち) | 必要時に専門性を確保しやすく、費用対効果を出しやすい |
| 体制・機能面 | 自社で整備できる範囲に限られやすい | 24時間対応・多言語対応などのインフラを利用できることがある |
1人の休職・離職を防ぐ価値はどのくらいか?
表面上の月額費用だけで判断するのではなく、休職や離職を防いだことで回避できる「損失」も含めてROIを見ていくことが大切です。メンタル不調による生産性低下(プレゼンティーイズム)は見えにくい一方で影響が大きく、コスト評価の前提を変えてしまうことがあります。
<「見えない損失」の例>
年収500万円の社員の生産性が、不調により20%低下(プレゼンティーイズム)していると仮定します(便宜上、賃金を生産性価値の近似として扱うこととする)。
※実際の損失は職種・業務特性・代替要員の有無などで変動
仮にこの社員が離職し、新たに1名を採用・教育するとしましょう。その際、一般的に年収の50%~150%(約250~750万)のコストが掛かると言われており、結果だけを見ると組織として一時的に大きな損失は免れません。
月額費用が少し高めでも、復職支援や組織改善の提案まで含まれるサービスであれば、結果として「1人の離職を防ぐ」「休職期間を1か月でも短縮する」だけで投資回収につながる計算です。
「安さ」ではなく、「損失を防げる設計になっているか」という視点で、費用に何が含まれているかを確かめておくと安心です。特に、周知支援・効果測定レポート・高ストレス者支援への導線が弱いと、人事側の工数が増えやすく、結果的にコスト高になりやすい点も意識しておきたいところです。
主要EAPサービス4タイプの比較とおすすめサービス11選
EAPサービスは提供の仕方や得意分野がさまざまで、選ぶ際に迷いやすいところがあります。
そこで本章では、市場を大きく4タイプに分類しました。それぞれの特徴やメリット・デメリットを見比べながら、タイプ別におすすめのサービスを紹介しているので、自社に合う方向性の把握に活用してみてください。気になるサービスがあれば各社の公式情報もあわせて確認してみてください。
なお、ここでの分類はあくまで理解をしやすくするための整理であり、各社のサービスが特定のタイプにのみ該当することを意味するものではありません。実際には複数のタイプにまたがる機能や、別のサービス展開を行っている企業もあります。
タイプ(1)IT・オンライン特化型
「利用率」と「若手対応」を重視するなら、まずはKATAruru(カタルル)に代表されるIT・オンライン特化型が候補になりやすいです。アバター相談やチャット相談など、顔出し不要・匿名性を前提にした仕組みで、従来の「相談しづらさ」を抑えやすいとされています。
場所や時間に縛られにくく、リモート環境でも使いやすいため、導入後に利用が伸びるケースも見られます。一方で、対面での温かみを重視する層には物足りない場合があったり、重度の精神疾患への直接的な医療行為はできない(医療連携が必要)など、一定の制約はあります。
1.KATAruru(カタルル)
KATAruruは、東京大学大学院教育学研究科の下山研究室との産学連携共同研究により開発された、次世代のアバター心理相談サービスです。
「こころの健康アバター支援サービス」と銘打ち、相談者と心理師の双方がアバターを介して対話を行うという、他に類を見ないアプローチを採用するとともに、従業員の状況に合わせたきめ細かなケアを行います。導入後の伴走支援も充実しており、休職・離職の未然防止と組織の健全化を強力にバックアップします。
<主な特徴>
- アバター面談で「誰にも知られず・顔出し不要」で構えがほどけ、本音が出やすい
- 専用アプリ不要/背景もバーチャルで環境を気にしにくい
- 臨床心理士・公認心理師など有資格の心理師が1on1で対応
- 気持ちの整理〜対処行動(セルフケア)まで支援
- 導入後は周知・研修・月次レポートで運用まで伴走
2.Smart相談室
Smart相談室は、メンタルヘルスケアを目的とした、SaaS型の法人向け対人支援プラットフォームです。
「カウンセリング」の心理的ハードルを下げ、従業員が日常的な「モヤモヤ」を解消する場として設計されています。
<主な特徴>
- 不調になる前の「モヤモヤ」から相談できる
- 200名以上の専門家が登録
- スマホ/PCで予約・条件検索ができ、必要に応じて相談相手をマッチング
- 相談件数・カテゴリーを企業へフィードバックし、周知〜利用定着も支援
3.cotree for Biz
JMDCグループのデータヘルス知見とも連動しながら、多様なニーズに応じたケアを提供します。
<主な特徴>
- 24時間365日オンライン相談できる
- 診断・アンケート等で専門家を紹介
- ストレスチェック、リワーク、研修、ハラスメント窓口などを組み合わせて提供
- 相談カテゴリや満足度などを個人特定できない形でレポートし、利用傾向を把握できる
タイプ(2)福利厚生総合型
コストを抑えながら福利厚生のメニューを充実させたい企業には、パッケージ型の相談窓口が選びやすいです。 宿泊割引などの福利厚生サービスとセットになっていることも多く、比較的手頃に導入しやすい傾向があります。
一方で、専門機関のカウンセリングほどの深い支援は難しい場面もあり、相談内容によっては物足りなさを感じたり、「映画の割引チケット」など他のメニューに埋もれてしまい、メンタル相談窓口としての認知度が上がりにくいこともあります。
「まずは相談できる窓口を用意したい」という用途にはなじみやすいですが、セーフティネットとしての役割が中心になりやすい点は、あらかじめ想定しておくと安心です。
4.Benefit Station
ベネフィット・ステーション(福利厚生サービス)の会員向けに提供される相談窓口です。電話やメールなどを通じて、メンタル面を含む生活上の相談を受け付けます。
<主な特徴>
- 24時間、電話/Webで相談できる
- メンタル、健康、育児、介護など複数領域の相談が可能
- 看護師・保健師・助産師などの有資格者が対応する運用がある
5.WELBOX
<主な特徴>
- 従業員の生活課題を支える福利厚生メニューを幅広く掲載
- Webに加え公式アプリを提供
- 問い合わせの受付手段を複数用意
- 人事担当者向けに「利用実績ダッシュボード」を用意
タイプ(3)医療・カウンセリング型
従来型の「専門性重視」のEAPは、重度のメンタル不調者への対応や、休職者の復職支援を重視する企業に向いています。臨床心理士や医師などの有資格者が対面や電話でじっくり関わり、危機介入(自殺リスクへの対応など)や医療機関との連携にも強みがあるためです。
一方で、「対面の場合、予約して現地に行く」、「知らない人と電話する」といった心理的・物理的なハードルがあり、忙しい社員や若手の軽い悩み相談では使われにくい傾向があります。専門家対応ゆえに費用が高めになりやすい点も含め、予防や早期相談の観点では利用の壁が課題になりやすいです。
とはいえ深刻なケースでは人の専門家による介入が欠かせない場面も多く、企業の危機管理を支える「守りのEAP」として、最後の砦になりやすいサービスです。
6.ティーペック
ティーペックのEAPサービスは、電話やチャットボット等を通じて健康・メンタル双方の相談窓口を提供するサービスです。
メンタル相談に加え、ハラスメント相談窓口や職場復帰サポートなど、周辺機能も取り扱います。
<主な特徴>
- 健康・医療/メンタル/職場改善までをトータルサポート
- 電話(24時間)/チャットボットなど複数チャネ
- 相談窓口の他に、法律相談、定期訪問カウンセリング等あり
- ストレスチェック、研修、人事労務ホットライン、通報・相談窓口なども対応
7.ジャパンEAPシステムズ
ジャパンEAPシステムズは、EAP専門機関としてカウンセリング提供を中心に据えたサービスです。
臨床心理士や精神保健福祉士、キャリアコンサルティング技能士(1級・2級)などの有資格者による対応や、1人のカウンセラーがすべての相談方法に対応する相談担当カウンセラー制が示されています。
<主な特徴>
- 30年以上にわたる実績
- カウンセリング/職場復帰支援/管理職・人事向けコンサル/研修等を提供
- 相談担当カウンセラー制度
- 電話/メール/対面面談/WEB面接/派遣相談など複数チャネル
8.ピースマインド
ピースマインドのEAPサービスは、個人相談に加えて組織支援(管理職・人事支援)を含む設計が特徴として示されています。
ハラスメント等の問題行動に関するサポートも取り扱います。
<主な特徴>
- セルフケアとマネジメントアシストの2系統で、従業員と組織の両面を支援
- 公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラーなどの有資格者が対応
- 専用ホットライン/予約制(対面・オンライン対面・電話)/オンライン等、複数チャネルで提供
- 訪問(オンサイト)や多言語(日本語・英語24時間)などのオプションあり
9.Advantage EAP
Advantage EAPは、医師や臨床心理士が中心となって職場のメンタルヘルスケアをサポートします。
「統合型EAP」として、担当カウンセラーが継続してカウンセリング対応し、アプローチを行うことによる早期発見、予防を促します。
<主な特徴>
- 「統合型EAP」として、従来のEAPでは解決できなかった課題に対応する設計
- 担当カウンセラーが情報を集約し、継続的に対応
- 医師が要対応者(自覚がない場合を含む)へアプローチし、EAP利用を促進
- 精神科医・認定産業医などの医療チームが運用まで支援
タイプ(4)産業医連携型
法令遵守(コンプライアンス)やリスク管理を丁寧に進めたい企業に、比較的向いているタイプです。
顧問契約している産業医や保健師が窓口となり、ストレスチェック後の面接指導や就業判定といった法的な手続きと連動しやすい点が特徴とされています。そのため、人事情報とも連携が取りやすく、休職・復職の流れを整えやすい場面もあります。
人事や管理職へのサポートは手厚い一方で、従業員側からは「会社側の医師」という印象を持たれやすく、率直な相談につながりにくいこともあるようです。結果として、法対応の効率化には役立ちやすいものの、メンタルケアの入り口としては機能しにくいケースも考えられます。
10.産業医トータルサポート
エムスリーキャリアは、医療従事者向けプラットフォームの会員基盤を背景に、産業医紹介や産業保健業務の支援を提供しています。
産業保健業務全般をカバーしており、法令対応や健康経営のサービスも揃えています。
<主な特徴>
- 日本の医師の約9割(34万人以上)が登録する「m3.com」の基盤を活用
- 審査通過率19%の厳選された産業医のみを提案
- 初期費用やミスマッチ時の再交代手数料も無料
- 専門資格を持つスタッフがチーム体制で日常業務まで伴走
11.産業医With
SOMPOヘルスサポートは、グループの広範なネットワークを活かし、全国各地の事業所へ最適な産業医の選任・紹介を行っています。
嘱託・専属の両サービスに対応しており、メンタルヘルス対策や保健師・心理職による支援、健康経営の推進まで、産業保健体制をトータルでサポートしています。
<主な特徴>
- 選任率95%/継続率95%の産業医の選任支援
- メンタルヘルス対策に精通した産業医の選任を得意としている
- 専任コンサルタントと産業医サポート担当がフォローし「橋渡しをサポートする」連携支援体制
- 訪問以外にWeb面談システムでの従業員フォローが可能
EAPサービス導入に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 小規模な企業でも導入効果はありますか?
はい、効果は期待しやすいです。
中小企業では産業医を常駐させにくい一方で、1人の休職・離職が経営に与える影響が大きくなりがちです。外部EAPを使うことで、比較的低コストで専門的なケア体制を整えやすくなります。
Q2. 産業医や既存の相談窓口とどう使い分ければ良いですか?
役割分担で考えると整理しやすいです。
医学的な判断や就業判定は産業医、日常の悩み相談や予防的な対応はEAP、といった使い分けがよく取られます。EAPで早めに受け止め、必要なケースだけ産業医につなぐ流れにしておくと運用しやすいです。
Q3. 導入までの期間と準備するものは?
オンライン(クラウド)型であれば、最短1〜2週間程度で開始できることがあります。
主な準備は、社員データの連携と社内周知です。社内説明用の資料やポスター、チャット素材を用意してくれるベンダーだと、人事側の負担を抑えやすいです。
Q4. プライバシーマークやセキュリティへの対応は?
メンタルヘルス関連は機微な個人情報を扱うため、PマークやISMSなどの認証は重要な確認ポイントになりやすいです。
相談内容を会社側に開示しない運用や、個人が特定できない形での統計レポート提出が一般的です。守秘の扱いを社員にきちんと伝えることが、利用の心理的ハードルを下げやすくします。
Q5. 費用対効果(ROI)はどのように測定すれば良いですか?
指標としては、利用率(相談件数)と、離職・休職を防いだことによる損失回避額を置く方法が分かりやすいです。離職による損失は、採用・育成・引き継ぎ、欠員期間の生産性低下などが重なり、一般に賃金だけでは捉えにくいコストが発生します。
具体的な金額は職種・採用難易度・育成期間などで大きく変わるため、自社の採用単価や立ち上がり期間を前提に試算するのが現実的ですが、採用・教育コストに加え、生産性低下や機会損失を含めると、年収の数倍の損失になることもありますので、月額数万円のEAPで年に1人でも離職を防げた場合、費用対効果はプラスになりやすいです。
Q6. 導入に使える助成金はありますか?
「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」を活用することで、生産性向上や職場環境改善に資する外部専門家によるコンサルティング費用(社会保険労務士などによる制度設計や研修)の一部が助成される場合があります。
なお、直接的な心理カウンセリング費用ではなく、労働時間短縮などの環境整備にかかる費用が対象となります。年度や公募内容で対象範囲が変わることがあるため、公的機関の最新情報を確認し、必要に応じて社労士へ相談すると進めやすいです。
まとめ:社員が「本音」で話せるサービスを選ぼう
企業にとってEAPは、もはや「法令対応のために置くもの」ではなく、変化の大きい環境で社員を守り、力を発揮してもらうための投資として捉えられています。一方で、利用されない状態が続くと、コストだけでなく、会社の姿勢が伝わりにくくなることもあります。
次世代のEAPを選ぶ際は、「困ったその瞬間に、スマホから迷わずアクセスできるか」を軸にすると整理しやすくなるでしょう。オンライン完結、匿名性、UI/UXといった要素は、電話に抵抗感がある層や支援のハードルが高いケースでも、相談への入り口を広げやすくします。
「使われる」EAPなら、アバターメンタルケア「KATAruru(かたるる)」
数あるEAPサービスの中でも、相談のしやすさに焦点を当てて開発されたのが、メンタルケアサービス「KATAruru(カタルル)」です。東京大学大学院教育学研究科との共同研究を背景に、科学的根拠に基づく「アバター心理相談」として提供されています。
相談は顔出し不要で、アバター(キャラクター)として行えるため、恥ずかしさや怖さといった心理的ハードルが下がり、本音を話しやすくなるとされています(プロテウス効果)。
また、アバターの“中身”はAIではなく、臨床心理士や公認心理師などの資格を持つ専門家で、気軽さと専門性の両立を目指している点も特徴です。専用アプリは不要で、ブラウザから予約・相談まで完結できるため、リモートワーク中でも周囲を気にせず利用しやすい設計になっています。
実証研究では、アバター相談で抵抗感が軽減した割合が約64%、「本音で話せた」が70%以上といった結果も報告されています。
アバターで話せる匿名性と、国家資格者による専門性を備えた「KATAruru」は、これまで拾い上げにくかった社員の本音に寄り添い、組織の健全な成長を支える選択肢の一つです。
「今のEAPがあまり使われていないかもしれない」と感じたときは、相談体験の設計を見直すきっかけとして、まずは情報収集や気軽な相談から始めてみてはいかがでしょうか。
