社内問い合わせ業務の現状
社内問い合わせ業務とは、社員からの疑問や手続きに関する確認・依頼に対応する業務のことです。現代の企業では、DX推進に伴うAIやツール、新しいシステムの増加により、問い合わせ件数が急激に増加している傾向にあります。
問い合わせ対応が非効率化する要因
社内問い合わせ対応に追われる主な原因として、知識や情報の整備不足、システムの複雑化による操作難易度の上昇、対応人員の不足という3つの要因が挙げられます。調査によると、企業のマニュアル利用状況について「十分に活用されている」と答えた企業は全体の35%にとどまり、残りの65%は情報の更新不足や検索しづらさなどの課題を抱えています。
また、ITサポートやツール操作に関する問い合わせの約60%が基本的な内容であることが判明しており、「使い方がわからない」「エラーが出た」といった初歩的な問い合わせが大半を占めているのが現状です。さらに、約7割の企業が情報システム職の採用が困難と回答しており、人的リソースの確保も大きな課題となっています。
※参考:社内問い合わせ対応に関する調査(Cloud CIRCUS)
属人化の問題
社内問い合わせ対応における大きな課題の一つが、対応の属人化です。特定の担当者のみが詳細な知識を持っている状況では、その担当者の不在時に業務が停滞するリスクが高まります。
情報の分散も深刻な問題となっています。部署ごとに統一されたマニュアルが整備されていない場合、社員は必要な情報を見つけるまでに時間がかかり、結果として問い合わせ件数の増加につながります。
社内問い合わせ効率化の具体的な方法
社内問い合わせの効率化を実現するためには、問い合わせ件数の削減と対応プロセスの最適化という2つのアプローチが重要です。ここでは、実践的で効果の高い7つの手法について詳しく解説します。
問い合わせ内容の見える化
効率化の第一歩として、どの部署にどのような問い合わせがどの程度届いているのかを可視化することが必要です。問い合わせ内容を記録・分類することで、頻出パターンや課題を明確に把握できるようになります。
専用フォームやチャットツールを導入して問い合わせをデータとして蓄積すれば、業務負荷の集中箇所を客観的に分析でき、改善の優先順位を決定する際の重要な指標となります。また、問い合わせ数の把握により、工数をかけて効率化を行うべきか、専任担当者を配置する方が効率的かという判断も可能になります。
社内マニュアル・ポータルサイトの整備
問い合わせ件数削減の基本となるのが、社内マニュアルやポータルサイトの整備です。手続きの流れやツールの使い方など、よくある質問とその回答を体系的にまとめることで、社員の自己解決を促進できます。
情報を一元管理し、検索しやすい仕組みを構築することで、必要な情報への迅速なアクセスが可能になります。重要なのは、マニュアルを一度作成して終わりにするのではなく、実際の問い合わせ内容を基に定期的な見直しと改善を継続することです。
FAQ・データベースの構築
繰り返し発生する問い合わせには、FAQやデータベースの整備が効果的です。過去の問い合わせから「よくある質問」を抽出し、カテゴリごとに整理することで検索性を向上させます。
操作手順や申請の流れといった内容には、画像や動画を活用することで視覚的理解を促進し、情報の伝達効率を大幅に改善できます。FAQシステムの導入により、社員が24時間いつでも必要な情報にアクセスできる環境を整備することが重要です。
チャットボット導入による自動化
定型的な問い合わせが多い場合は、チャットボットの導入が有効な施策となります。あらかじめ登録した回答を即座に返すことで、担当者の負担を軽減しながらスピーディーな対応を実現できます。
人事や経理に関する就業規則、申請手続きなど繰り返される質問を自動応答で処理することにより、有人対応が必要な問い合わせにリソースを集中させることが可能になります。導入時には、よくある質問の収集・整理を行い、定期的な回答内容の更新により精度を維持することが重要です。
RPA活用による業務自動化
決まった手順で処理できるルーティンワークには、RPA(Robotic Process Automation)の導入が効果を発揮します。勤怠データの集計、経費精算処理、定期報告の自動化など、ルール化しやすい業務を自動化することで質問が発生する作業自体を大幅に減らすことが可能です。
RPA導入の際は、作業頻度が高く手順が明確な業務から段階的に自動化範囲を拡大していくことが成功の鍵となります。人的ミスに起因する質問の削減も期待でき、業務品質の向上にも貢献します。
社員教育を通じた意識改革
技術的な改善だけでなく、社員の意識改革も重要な要素です。「マニュアルを見るより聞いた方が早い」という考えが根付いている場合、システムやツールを整備しても問い合わせは減少しません。
問い合わせ対応にもコストがかかっているという意識を社内で共有し、自己解決の重要性について理解を促進することが必要です。よくある質問をテーマとした研修やマニュアル活用法の情報共有を通じて、段階的に自ら調べる習慣を定着させていきます。
デジタルガイドによる操作支援
業務システムの操作に不慣れな社員が多い場合、デジタルガイドの導入が効果的です。操作画面上に表示されるチュートリアルやツールチップを活用することで、利用者が迷わず操作できる環境を構築できます。
既存システムにガイド機能を組み込むことで、手順の説明やボタンの意味を補足し、直感的な操作を実現できます。マニュアルを別途開く必要がなくなるため、社員のストレス軽減にもつながります。
社内問い合わせ効率化の実践手順
施策を成功させるためには、段階的かつ体系的なアプローチが重要です。以下の4つの効率化ステップに沿って実践を進めることで、確実な成果を得ることができます。
ステップ(1)現状分析
最初に実施すべきは、問い合わせ内容の詳細な分析です。どの部署から、どのような質問が、いつ多く発生しているのかを整理し、内容・頻度・発生タイミングなどを見える化します。
同じような質問が繰り返されている場合は業務フローや情報共有に課題があり、対応に時間がかかる問い合わせが多い場合は手順やシステムが複雑すぎる可能性があります。問い合わせを数値やカテゴリで分類して傾向を把握することで、改善すべきポイントを明確化できます。
ステップ(2) 回答テンプレートの標準化
頻出する問い合わせに対しては、あらかじめ回答テンプレートを準備することで対応時間の短縮と品質の標準化を実現できます。パスワード再設定方法や経費精算の締切日など、繰り返し聞かれる内容については定型文を用意します。
メールやチャットで即座に使用できる形式で保存し、実際の対応を通じて継続的に改善を行うことが重要です。新しい質問パターンが発生した際には、随時テンプレートを更新して精度を向上させます。
ステップ(3) 自己解決体制の構築
問い合わせ件数の根本的な削減を実現するには、社員が自分で疑問を解決できる環境の整備が不可欠です。FAQシステム、チャットボット、デジタルガイドなどのツールを組み合わせて活用します。
FAQにより社員が自分で情報を検索でき、チャットボットで対話形式での問題解決が可能になります。さらに、デジタルガイドにより操作画面上での直接的な支援を提供することで、包括的な自己解決環境を構築できます。
ステップ(4) 一元管理システムの導入
応対品質の向上とスピードアップを実現するには、問い合わせ窓口の一本化と情報の整理が重要です。複数のチャネルが存在すると対応の重複や見落としが発生しやすくなります。
問い合わせ管理システムを活用した一元管理により、すべての履歴や対応状況を集約し、担当者間の連携をスムーズにすることで属人化を防止できます。蓄積された対応履歴の分析により、継続的な改善施策の立案も可能になります。
社内問い合わせの効率化によるメリット
社内問い合わせの効率化は、単なる業務負荷の軽減にとどまらず、企業全体の生産性向上と競争力強化に大きく貢献します。具体的な効果を4つの観点から詳しく解説します。
従業員満足度の向上
問い合わせをせずとも業務をスムーズに進められる環境は、従業員の心理的負担を大幅に軽減します。「どこに情報があるのかわからない」「毎回誰かに確認しないと仕事が進まない」といった悩みが解消されることで、はたらきやすさが格段に向上します。
新入社員や異動者も早期に業務に慣れることができ、人材の有効活用と組織全体のパフォーマンス向上につながります。
コスト削減効果
一見些細な問い合わせも、積み重なると大きなコストになります。1件5分の対応が1日100件発生すれば、年間で約2,000時間もの時間が消費される計算になります。
この時間を削減できれば、限られた人材を、より付加価値の高い戦略的業務に集中させることが可能になり、人件費の最適化と業務効率の大幅な改善を実現できます。
生産性の向上
情報が整理され、必要な内容にすぐアクセスできる環境が整うと、「わからなくて業務が停止する」という状況が大幅に減少します。FAQやチャットボットにより疑問を即座に解消できるため、業務の流れが中断されにくくなります。
作業スピードの向上により、チーム単位から会社全体レベルでの生産性向上が期待できます。
経営資源の最適化
問い合わせ対応に使用していた時間、人材、コストを見直し、売上や成長戦略に直結する業務へ再配分することで、組織全体のパフォーマンスが向上します。社内問い合わせ対応は基本的に直接的な利益につながらない「ノンコア業務」に分類され、本来であれば対応が不要な業務です。
調査によると、社内問い合わせの6割は基本的な内容(ツール操作など)であり、これらをデジタルツールで補完することで、人的リソースの価値を最大化できます。このような取り組みはDX推進の土台となり、将来的な企業成長を支える基盤づくりにも貢献します。
※参考:社内問い合わせ対応に関する調査(Cloud CIRCUS)
社内問い合わせの効率化におすすめのツール
社内問い合わせの効率化を成功させるためには、適切なツールやシステムの選択が重要です。ここでは、特に効果的な4つのツールについて詳しく紹介します。
問い合わせ管理システム
問い合わせの一元管理を実現するシステムは、効率化の基盤となるツールです。すべての問い合わせを統合的に管理し、対応状況の可視化、担当者の自動割り振り、対応履歴の蓄積などの機能を提供します。
主要な機能として、チケット管理、エスカレーション機能、レポート生成などがあり、企業の規模や要件に応じてカスタマイズ可能なシステムを選択することが重要です。
| 機能カテゴリ | 主要機能 | 期待効果 |
|---|---|---|
| チケット管理 | ステータス管理、優先度設定 | 対応漏れ防止、進捗可視化 |
| 自動化機能 | 担当者自動割り振り、定型回答自動送信 | 対応時間短縮、人的ミス削減 |
| 分析・レポート | 対応時間分析、傾向分析 | 継続的改善、品質向上 |
FAQシステム
FAQシステムは、社員からのよくある質問を体系的に整理し、社内ポータルなどで公開する仕組みです。質問内容ごとにカテゴリ分けを行い、検索機能と組み合わせることで、必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整えます。
問い合わせ対応の前に、社員が自分で答えを見つけられるようにすることで、問い合わせ件数そのものを削減でき、担当者の負荷軽減につながります。特に、反復的な質問が多い部門では高い効果が期待されます。
チャットボット
チャットボットは、AIや自然言語処理を活用して、社員からの問い合わせに自動で回答する仕組みです。よくある質問や手順案内など、定型的な内容に対して迅速に対応することができます。
24時間365日稼働できるため、夜間や休暇中の問い合わせにも対応可能です。また、対応ログを蓄積し、改善を重ねることで、応対品質の向上とともに自動化範囲の拡大も期待できます。
デジタルアダプションプラットフォーム
既存システムの使いやすさを向上させるデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)は、操作画面上でのリアルタイムガイダンスを提供します。チュートリアル、ツールチップ、プロセスガイドなどにより、システム操作に関する問い合わせを大幅に削減できます。
実際に、導入した企業の67%が効果を実感しており、特に新システム導入時や機能アップデート時の問い合わせ削減に高い効果を発揮します。
社内問い合わせのアウトソーシングならパーソルビジネスプロセスデザインへ
社内問い合わせの効率化は、企業の生産性向上と従業員満足度の改善に直結する重要な取り組みです。問い合わせ内容の見える化から始まり、FAQシステム、チャットボット、デジタルガイドなどのツール活用、そして一元管理システムの構築まで、段階的なアプローチが成功の鍵となります。
自社での効率化施策の実施が困難な場合や、より専門的なサポートが必要な場合は、ヘルプデスク業務のアウトソーシングやコンサルティングサービスの活用も有効な選択肢です。パーソルビジネスプロセスデザインでは、国際スタンダードの品質を維持しながら、ナレッジマネジメントの活用により高効率な社内問い合わせ対応を実現します。
豊富な経験と実績に基づく最適なソリューション提案により、企業の生産性向上と業務効率化を強力にサポートいたします。社内問い合わせ業務でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。