解約率改善の鍵は顧客体験にあり!カスタマーサクセスにおけるジャーニーの重要性
サービスの解約率、いわゆるチャーンレートの高さは、多くのSaaSビジネスにとって深刻な悩みではないでしょうか。
その根本的な原因は、もしかすると製品の機能や価格設定といった部分だけではなく、顧客がサービスを利用する過程で得られる「顧客体験」そのものにあるのかもしれません。
例えば、顧客がサービスを使い始めた際に「操作方法が直感的にわからない」「期待していたような効果がなかなか出ない」といった、ささいなつまずきを感じたとします。
このような小さな不満が積み重なることで、顧客満足度は徐々に低下し、最終的には「このサービスは自分には合わない」という結論に至り、解約へと繋がってしまうのです。
そこで極めて重要になるのが、顧客一人ひとりがどのような体験をしているのかを深く理解し、彼らを成功へと導くための「ジャーニー思考」です。
これは、顧客がサービスを初めて知り、興味を持ち、契約し、そして実際に活用して成功を実感するまでの一連の道のりを設計し、最適化していく考え方です。
このジャーニー思考を組織全体で取り入れることで、顧客がどの段階で、どのような課題に直面しやすいのかを予測し、先回りしてサポートを提供することが可能になります。
結果として、顧客はスムーズにサービスの価値を実感できるようになり、顧客満足度が高まることで、解約率の改善に大きく貢献することが期待できるのです。
1-1.顧客の成功体験を設計するジャーニー思考とは
「ジャーニー思考」とは、単に顧客の行動データを追いかけるだけでなく、、一連の「旅」として立体的に捉え、最高の体験を設計しようとするアプローチです。
想像してみてください。
サービスを導入した直後の顧客は、新しいツールへの期待感と同時に「自分はこれをうまく使いこなせるだろうか」といった不安を少なからず抱えています。
この非常にデリケートなタイミングで、適切なサポートがなければ、その不安はすぐに不満へと変わり、最悪の場合、サービスを利用する前に心が離れてしまうかもしれません。
ジャーニー思考では、こうした顧客の心理状態を深く洞察し、それぞれの段階に最適なアプローチを計画的に実行していきます。
例えば「導入直後のこの段階では、初心者向けの分かりやすいガイド動画を送ろう」といったように、顧客の感情の波に寄り添った施策を講じるのです。
このように、顧客の感情に細やかに配慮し、小さな成功体験を一つひとつ着実に積み重ねていけるように導くことこそが、ジャーニー思考の核心部分と言えるでしょう。
顧客を単なる「利用者」としてではなく、事業の成功を共に目指す大切な「パートナー」として捉えるこの視点が、長期的に良好な関係を築き、LTVを最大化する上で重要です。
1-2.属人化を防ぎ、組織的なサクセス活動を実現する
あなたの会社のカスタマーサクセス活動は、特定の優秀な担当者の個人的なスキルや長年の経験だけに頼ってしまってはいないでしょうか。
このような状態は「属人化」と呼ばれ、多くの組織が抱える課題の一つです。
属人化が進むと、そのエース担当者が異動や退職をした途端にサポートの質が低下してしまったりと問題が生じがちです。
この属人化という大きな壁を乗り越え、組織として安定した成果を出すための非常に有効な手段が、カスタマーサクセスジャーニーマップの作成と活用なのです。
ジャーニーマップという共通の「設計図」があれば、顧客がどの段階でどのようなサポートを必要とし、その際にどのような感情を抱くのかが、組織全体で明確に共有されます。
これにより、経験の浅い担当者であっても、ベテランと同じように質の高い対応が可能となり、顧客は誰が担当になっても常に安心してサービスを使い続けることができます。
また、新しくチームに加わったメンバーも、このマップを見ることで顧客へのアプローチ方法を体系的に理解できるため、教育にかかる時間やコストの削減にも繋がります。
組織全体で一貫した質の高い顧客体験を提供するための「共通言語」としてジャーニーマップを機能させることが、カスタマーサクセス活動を実現する第一歩となるのです。
カスタマーサクセスジャーニーとは?マップ作成の目的とメリットを解説
それでは「カスタマーサクセスジャーニー」とは、具体的に何を指すのでしょうか。
これは、一人の顧客があなたの提供するサービスと出会い、利用を開始し、その価値を深く実感して「成功」と呼べる状態に至るまでの一連の道のりそのものを指します。
そして、この目には見えない道のりを、誰にでもわかるように可視化したものが「カスタマーサクセスジャーニーマップ」です。
このマップを作成する最大の目的は、何よりもまず「顧客の視点」に徹底的に立ち、彼らがどのような体験をしているのかを深く、そして共感をもって理解することにあります。
顧客が各段階で「具体的に何を行い」「その時何を考え」「そして、どのように感じているのか」を整理していくことで、課題が明確になります。
例えば「サービスの導入自体はスムーズだったけれど、ある機能の使い方が分からず、そこから先の活用が全く進んでいない」といった、具体的な課題を発見できるのです。
これは、企業側のう思い込みや推測ではなく、顧客のリアルな声といった客観的な事実に基づいて課題を特定し、改善策を講じるための「羅針盤」と言えるでしょう。
2-1.顧客の行動と感情を可視化するカスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップは、顧客の複雑な体験を「見える化」し、チーム全員が共通認識を持つための非常に強力なツールです。
このマップは通常、横軸に時間の流れを、縦軸に顧客の体験要素を配置して作成されます。
横軸には、顧客がサービスと関わる段階を示す「ステージ」を設定します。
具体的には「認知」「検討」「導入」「オンボーディング」「活用」「定着・ロイヤル化」といったフェーズが一般的です。
一方、縦軸には、各ステージにおける顧客の「行動」「思考」「感情」、そして企業との「タッチポイント(接点)」といった項目を設定します。
これらの項目の中でも特に重要なのが、顧客の心の動きを表す「感情」の項目です。
顧客がサービスを利用する中で感じるポジティブな感情からネガティブな感情まで、その浮き沈みを一本の曲線(感情曲線)で描くことがよくあります。
この感情曲線によって、どのタイミングで顧客満足度が下がり、解約のリスクが高まっているのかを直感的に、そして一目で把握できるようになります。
例えば、活用ステージで新機能がリリースされた際に感情曲線が大きく上向けば、顧客がその新機能を歓迎していると判断できます。
逆に下を向けば、使い方が分かりにくくストレスを感じさせているのではないか、といった仮説を立てることができます。
このように顧客の行動だけでなく、その裏に隠された感情まで可視化することこそが、エンゲージメントを高めるための鍵となるのです。
2-2.LTV(顧客生涯価値)最大化につながる3つのメリット
カスタマーサクセスジャーニーマップを作成し、それを日々の活動に活用することには、ビジネスの成長に直結する非常に大きなメリットがあります。
その中でも特に、LTV(顧客生涯価値)の最大化に貢献する3つの重要なメリットをご紹介します。
LTVとは、一人の顧客が取引を開始してから終了するまでの全期間にわたって、自社にもたらしてくれる利益の総額を指す重要な指標です。
まず第一のメリットは「解約率(チャーンレート)の低減」です。
マップによって、顧客がどの段階でつまずきやすいのか、どこで不満を感じやすいのかが事前に特定できるため、問題が深刻化する前に先回りしてサポートを提供できます。
これにより顧客満足度が高まり、サービスの継続利用、すなわち長期的な関係構築に繋がります。
第二のメリットは「アップセル・クロスセルの機会創出」です。
マップ上の感情曲線を見れば、顧客がサービスの価値を実感し、成功体験を積み重ねて満足度が非常に高まっている「ゴールデンタイム」を特定できます。
その絶好のタイミングで、より上位のプラン(アップセル)や関連サービスを提案することで、顧客は前向きに受け入れやすくなり、顧客単価の向上を見込めます。
そして第三のメリットが「顧客ロイヤルティの向上」です。
一貫性のある質の高いサポートを受け続けることで、顧客は企業やサービスに対して単なる満足を超えた、強い信頼感や愛着を抱くようになります。
このようにして「ファン」となった顧客は、口コミや紹介で新たな顧客を呼び込んでくれる貴重な存在となり、結果としてLTVを大きく向上させてくれるのです。
明日から使える!カスタマージャーニーマップ作成の5ステップと具体的な活用法
カスタマージャーニーマップは、その理論をただ理解するだけでは不十分で、実際に自分たちの手で作成し、日々の業務で活用することで初めてその真価を発揮します。
「なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
まずはこれからご紹介する基本的なステップに沿って、チームで協力しながら作成してみることから始めましょう。
ここで最も大切な心構えは、最初から100点満点の完璧なものを作ろうとしないことです。
まずは大まかな骨格を作り、それをたたき台にして、後から顧客の実際のデータやフィードバックを元に少しずつ肉付けしていく、というイメージで進めるのが成功のコツです。
このマップを作成するプロセスそのものを通じて、これまで漠然としていた顧客像がチーム内で具体的に共有され、顧客理解が飛躍的に深まります。
そして、その結果として「この課題を解決するために、こんな施策はどうだろう?」といった、具体的な改善アクションについての議論が活発になるはずです。
次のセクションでは、マップ作成に欠かせない具体的な5つのステップを、初心者の方にも分かりやすく、順を追って解説していきます。
このステップに沿って進めれば、きっと明日からでもあなたの組織でジャーニーマップ作成に取り組むことができるでしょう。
3-1.【実践編】マップ作成に欠かせない5つのステップ
それでは、実際にカスタマージャーニーマップを作成するための、具体的で実践的な5つのステップを見ていきましょう。
まずステップ1は「ペルソナの設定」です。
これは「誰の旅(ジャーニー)を描くのか」を明確にする作業で、サービスの典型的な顧客像を、年齢、役職、業務内容、課題、性格といったレベルまで具体的に設定します。
次にステップ2は「ゴールの設定」です。
設定したペルソナが、このサービスを通じて最終的に達成したい「成功(ゴール)」とは何かを明確に定義します。
「業務効率を30%改善する」「新しい顧客を10件獲得する」など、具体的であるほど後のステップが進めやすくなります。
ステップ3は「ステージの定義」です。
顧客がゴールに至るまでの道のりを、いくつかの意味のある段階(ステージ)に区切ります。
例えば「導入期」「活用初期」「安定期」「拡大期」といった分け方が考えられます。
ステップ4では「タッチポイントと行動の洗い出し」を行います。
各ステージにおいて、顧客が企業と接する全ての点と、そこで顧客が行う具体的な行動(資料請求、契約、初回ログイン、問い合わせなど)をリストアップしていきます。
そして最後のステップ5が、最も重要な「感情・課題のマッピング」です。
ステップ4で洗い出した各行動に対して、顧客がその瞬間に何を感じ、何を考えているかを、インタビューやアンケートの結果を基に書き込んでいきます。
この5つのステップを着実に踏むことで、顧客体験の全体像が整理され、改善すべき点が明確に見えてくるはずです。
3-2.オンボーディングからロイヤル化までのタッチポイント最適化
カスタマージャーニーマップが完成したら、それはゴールではなく、いよいよ活用のスタートラインです。
特に重要なのが、マップ上で明らかになった課題をもとに、各タッチポイントでの顧客体験を最適化していくことです。
例えば、マップの「導入期(オンボーディング)」のステージで、多くの顧客がネガティブな感情を抱いていることがわかったとします。
この課題に対しては「設定手順を解説するチュートリアル動画への導線を分かりやすくする」といった具体的な改善策を講じることができます。
同様に「活用期」において特定の便利機能の利用率が低いことが課題であれば、その機能の活用方法を解説するオンラインセミナーを企画する施策が考えられます。
さらに、企業に高い信頼を寄せている「ロイヤル顧客」に対しては、、新機能のベータテストへの参加を依頼したり、導入事例インタビューを打診したりすることで、より強固な関係性を築くことができます。
このように、マップという地図を頼りに、各タッチポイントでの体験を一つひとつ丁寧に改善していく地道な活動こそが、最終的にロイヤル化を促進する確実な方法なのです。
3-3.ヘルススコア改善に直結するマップ活用術
カスタマーサクセスジャーニーマップは、顧客の状態を客観的な数値で示す「ヘルススコア」と連携させることで、さらに強力で実践的なツールへと進化します。
ヘルススコアとは、顧客がサービスを健全に、そして活発に利用できているかを示す「健康診断のカルテ」のような指標です。
一般的には、サービスのログイン頻度や特定機能の利用率、サポートへの問い合わせ回数といった複数のデータを組み合わせて算出されます。
ここでの活用術は、マップ上で特定された「顧客がつまずきやすいポイント」や「不満を感じやすい行動」を、ヘルススコアの悪化要因として具体的に定義することです。
例えば「サービスの根幹となる重要機能を1週間以上利用していない」といった状態をシステムで検知したら、自動的にヘルススコアが低下するように設定します。
そして、スコアが一定の基準値を下回った顧客に対して、ジャーニーマップに基づいてあらかじめ用意しておいた適切なサポートアクションを実行するのです。
具体的には、機能の活用を促すパーソナライズされたメールを自動送信したり、フォローの連絡を入れるようタスクを自動生成したりといった仕組みが考えられます。
これにより、問題が深刻化して解約を検討し始める前に、能動的(プロアクティブ)なアプローチが可能となり、解約の兆候を早期に摘み取ることができます。
マップという「地図」と、ヘルススコアという「コンパス」を連携させることが、データに基づいた科学的なヘルススコア改善、ひいては解約率低下に直結するのです。
ジャーニーマップを形骸化させない!カスタマーサクセス成功の秘訣
せっかく多くの時間と労力をかけてカスタマージャーニーマップを作成しても、それがいつしか更新されなくなり「お飾り」になってしまっては、全く意味がありません。
このような「形骸化」は、多くの企業が陥りがちな罠です。
大前提として理解すべきは、マップは一度作ったら終わりではなく、常に最新の状態に保ち続ける必要があるということです。
この形骸化を防ぐためには、マップを「使って」顧客の成功を支援し、その結果として自社のビジネス成果に繋げる、という意識をチーム全体で共有することが何よりも重要になります。
そのためには、ただ「頑張って活用しよう」と精神論を唱えるだけでは不十分です。
例えば、四半期に一度は必ずマップを見直す会議を定例化したり、マップから見つかった課題に対して期限を設定して進捗を管理したりする「仕組み化」が求められます。
次のセクションでは、この重要なマップを常に価値あるツールとして活用し続けるための秘訣や、多くの組織が陥りがちな失敗例とその具体的な対策について解説していきます。
4-1.定期的な見直しとアップデートの重要性
私たちがビジネスを行う市場環境、競合他社の動向、そして自社が提供するサービスの仕様は、目まぐるしいスピードで絶えず変化しています。
それに伴い、顧客がサービスに求める価値や、サービスを利用する上で直面する課題も、昨日と今日とでは違っているかもしれません。
そのため、カスタマージャーニーマップも一度作成したからといって、それが永遠に使えるわけでは決してありません。
最低でも四半期に一度、あるいは大きな仕様変更があったタイミングなど、定期的にマップを見直す機会をチームで設け、内容をアップデートしていくことが不可欠です。
この見直しの際には、顧客に実施したアンケートの最新結果や、営業・サポート担当者が直接ヒアリングした生の声といった、客観的で新鮮な情報を必ず反映させましょう。
「以前はここでつまずく顧客が多かったが、最近のアップデートで改善されたようだ」といった変化をマップに落とし込むことで、最適なアプローチを検討できます。
一見すると地味に思えるかもしれませんが、この地道なアップデート作業を継続することこそが、本当に「使える」ツールとしてカスタマーサクセス活動全体の精度を高めます。
4-2.陥りがちな失敗例とその具体的な対策
カスタマージャーニーマップの作成・運用においては、いくつかの典型的な、そして陥りがちな失敗パターンが存在します。
ここでは代表的な3つの失敗例と、それを避けるための具体的な対策をセットでご紹介します。
一つ目は「社内の思い込みだけで作成してしまう」ケースです。
顧客へのヒアリングやデータ分析を一切行わず、担当者の推測や希望的観測だけで作られたマップは、実際の顧客体験と大きく乖離してしまい、全く役に立ちません。
対策としては、必ず顧客インタビューやアンケート、行動ログといった客観的なデータに基づいて作成することを、プロジェクトの初期段階でルールとして徹底しましょう。
二つ目は「マップの作成が目的化してしまう」ことです。
見た目が美しい、非常に詳細なマップが完成したことに満足してしまい、そこから具体的な改善アクションに繋がらないのでは本末転倒です。
対策として、マップから見つかった課題ごとに具体的なアクションプランを必ずセットで作成し、週次や月次の定例会議でその進捗を管理する仕組みを作りましょう。
三つ目は「情報が複雑すぎて誰も見なくなる」ことです。
良かれと思ってあまりに細かく情報を盛り込みすぎると、かえって全体像が掴みにくくなり、次第に誰も参照しなくなってしまいます。
対策としては、まずは全体像を把握するための「概要版」と、詳細な分析が必要な人向けの「詳細版」の2種類を用意するなど、見る人の目的に合わせた工夫が有効です。
4-3.専門家の支援で組織強化を加速しよう
ここまで見てきたように、カスタマーサクセスジャーニーマップの作成と運用は、解約率の改善やLTVの最大化といったビジネス目標の達成に非常に有効なアプローチです。
しかしながら、業務に追われる中で、精度の高いマップを作成し、それをアップデートしていく体制を自社のリソースだけで構築するのは、決して簡単なことではありません。
「そもそも何から手をつければいいのかわからない」「一度作成してみたものの、うまく活用できていない」といったお悩みを、多くの企業様がお持ちではないでしょうか。
そのような場合は、私たちのようなカスタマーサクセスの専門家の支援を受けることも、非常に有効な選択肢の一つです。
専門家は、第三者の客観的な視点から、貴社に最適なジャーニーマップの導入、活用、そして組織への定着までを効率的かつ効果的にサポートすることが可能です。
もし、あなたの組織のカスタマーサクセス活動をもう一段階上のレベルへと引き上げ、競合他社との差別化を図りたいとお考えでしたら、まずは私たちのサービス内容や支援事例をまとめた資料をダウンロードしてご覧ください。
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