導入前の課題
問い合わせの増加により「効率的な応対品質評価」が求められた
SBI新生銀行の有人チャット窓口は、電話中心だったコンタクトセンター運営の限界を背景に立ち上がりました。
チャット窓口が本格的に機能し始めたのは2019年です。
チャンネルサービス部の部長代理である椿様は、「チャットを強化した背景」について説明してくれました。
2021年にSBIグループの一員になり、ありがたいことに顧客基盤は順調に拡大し、2025年12月末には約110万口座の増加によって口座数が417万口座となり過去最高を更新します。
問い合わせ件数が年々増加するなかで、特に若年層を中心に「電話をかけない」利用者が増え、電話というチャネルそのものが顧客の行動実態と合わなくなっていきました。
部長代理 椿 様
こうした背景から、「お客様に問い合わせしやすいチャネルを用意する」という方針のもと、電話を補完する形で有人チャット窓口が導入されました。「実際、電話で受けていた問い合わせの約8割はチャットでカバーできる内容であり、業務効率の観点からも有効な手段でした」と当時を振り返ってくださりました。「ただし、年間の対応件数は約15万件にのぼり、限られた人員で安定した対応を継続するためには、一件あたりの対応時間や処理効率を意識した運営が課題として出てきました」とSVの井上様。有人チャット窓口の立ち上げ当初、対応を担っていたのは電話対応経験者が中心だったため、言葉遣いや顧客対応の基本については、失礼な対応になる心配はほとんどなかったと振り返りながらも次のように解説してくれます。
「チャット対応には電話とは異なる難しさがありました。表情や声のトーンが伝わらないテキストコミュニケーションにおいて、どのように”寄り添い”を表現すべきか、当時は確立途上にあったチャット品質の在り方に対し、現場主導で試行錯誤を重ねながら知見を蓄積してきました。」電話対応で培ってきた品質管理の考え方をベースにしながらも、チャット特有の評価軸については、検討を進めていく必要があったのです。
また、対応件数の増加に伴い、新たなCSR(顧客対応担当)が加わるなかで、チャット対応ならではの品質の捉え方や、指導の観点を整理していく必要性が高まっていきました。椿様も、「現場にとって分かりやすい品質方針を模索しながら運用を進めていましたが、評価が部分的になりやすく窓口全体の品質状況を俯瞰的に把握することが難しかった」と、述べてくれました。
問い合わせ件数の増加という状況が示すように、有人チャットチャネルは、年々重要な顧客接点となりつつあります。HDI-Japanが実施する「問合せ窓口格付け調査」においても、近年は電話に加え、Webやチャットを起点とした問い合わせが増加傾向にあり、審査の中でもチャットチャネルが重要な評価対象となりつつあります。顧客が最初にアクセスするチャネルが多様化する中で、有人チャットは“補助的な窓口”ではなく、サービス品質そのものを左右する重要な接点へと位置づけが変わってきているのです。SBI新生銀行が有人チャットの品質評価に本格的に向き合う必要性を感じた背景には、こうした業界全体の変化もありました。
取り組み内容
全件を同じ基準で振り返る仕組みづくり
こうした課題を背景に検討されたのが、チャット対応の品質評価ツールの導入でした。 チャット対応は件数が非常に多く、部分的な確認や個別の評価だけでは、現場全体の品質を俯瞰的に把握することが難しいという問題意識があったのです。
さらにサンプリング評価では、評価対象となる対応が限られ、CSR自身が自分の対応を十分に振り返る機会を持ちにくいという課題もあったことから 「全件を同じ基準で評価できる仕組みが必要だ」という考えに至って、導入検討開始となりました。
SBI新生銀行では、こうした考えのもと、有人チャットの品質管理について外部の知見にも目を向けるようになっていきました。セミナーなどを通じて、有人チャットにおける自動評価の考え方について情報収集を進めていたといいます。
SV 井上 様
当時は、有人チャットに特化した自動評価の取り組み自体が少なく、実運用を前提とした形で紹介されている選択肢は限られていました。 そうした中で、全件評価を前提とした品質改善のアプローチとして紹介されていたのがAQchatでした。
自分たちが直面していた課題と重なる点が多いと感じたことから、具体的な検討へと進んでいくことになりました。
品質評価ツールに求めていたポイントはいくつかあり、一つ目はチャット対応の全件を対象に、同一基準で評価できる点です。対応件数が多い環境においても、評価の抜け漏れがなく、公平性を担保できる仕組みであることを重視しました。二つ目は、評価基準が一定水準を満たしている論拠がある点です。SBI新生銀行がHDI三つ星の取得を目指すなかで、評価指標と目標が乖離しないことは、現場にとって分かりやすい判断材料となったようです。そして三つ目は評価結果をCSR自身が確認できる点です。
CSRの山田様は、「これまで、自分の対応を好きなタイミングで振り返る仕組みはなく、評価はSVから伝えられるものという認識が強かった」といいます。
CSR 山田 様
AQchatは、CSRが自ら評価結果を見に行き、自分の対応を振り返ることができるため、「納得感を持って改善につなげられるのではないか」という期待を持たれていました。しかし同時に、検討当初は不安もあったことは事実です。「正直、評価システムさえ入れれば品質が上がるといったイメージはありませんでした」という声もありました。当時はチャット対応に特化した品質評価について、業界全体としても確立された手法がなく、現場と管理者が一体となって、最適な評価や育成の形を模索しながら運用を進めていたからです。
ただ、AQchat導入から数か月が経過するころには、現場でも評価結果を日常的に活用するようになり、その反応は良い方向に進んでいきました。「評価結果が、感覚ではなく共通の基準として示されることで、”どの対応が加点されたのか””自分の癖はどこなのか”が把握できるようになり、ゲーム感覚で楽しんで自分の対応を振り返れるようになっていった」と山田様はいいます。
導入の効果
振り返りが定着し、品質改善が日常に
AQchat導入後、SBI新生銀行の有人チャット窓口では、チャット対応の品質が数値として可視化されるようになりました。
チャット対応の全件が同一基準で評価されることで、CSR個人の傾向だけでなく、窓口全体としての品質傾向を把握できるようになっています。それだけではなく「評価結果が共通の判断材料となったことで、改善に向けた行動や対話も生まれやすくなりました」と椿様はいいます。 従来の”人から直接指摘される”場合と異なり、システムからの評価であるため、感情的にならず、冷静に受け止められるという声が多く聞かれたのです。
さらに現場からは「振り返り方そのものが変わった」という声も聞かれました。「以前は、点数を見ても“なぜその評価なのか”が分からず、次に何を確認すればよいか迷うことがありましたが、今は評価項目ごとに振り返るポイントが明確になり、自分で改善点を探せるようになりました。」とCSRの岡本様はいいます。評価は「叱責」や「ダメ出し」ではなく、「改善のヒント」として捉えられるようになり、CSR自身が自発的に評価結果を確認し、改善点を考える動きが定着していったようです。椿様は、評価結果の確認をきっかけに、「なぜこの点数なのか」「どうすれば評価が上がるのか」といった会話が、CSRとSVの間で自然に生まれるようになったことには驚きを隠せなかったと語ってくれました。
続けて管理者側としてAQchat導入の効果が大きかった点がもう一つあったと次のように説明してくれました。 人の手で対応内容を確認する必要がなくなったことにより、品質管理にかけていた時間を教育や分析といった、より付加価値の高い業務に充てられるようになりました。評価結果をもとに全体傾向を把握し、重点的に見るべきポイントを絞れるようになったことも、運用負荷の軽減につながっています。こうした取り組みを継続する中で、2025年【銀行業界】HDI格付けベンチマークの「問合せ窓口格付け」において、念願であった三つ星評価を獲得することができました。これは、応対品質の一部が評価されたということではなく、日々の運用の中で積み重ねてきた対応の工夫や改善の取り組みが、外部の評価基準においても一定の水準に達していると認められた結果と言えます。現場で続けてきた改善の取り組みが、HDIが重視する顧客視点の対応という観点でも評価される内容であったことが今回の結果から明らかになりました。品質向上に向けた取り組みが外部の評価を通じて裏付けられた形です。
最後に、これから有人チャットの品質改善に取り組む企業に向けて、椿様からは次のようなメッセージが聞かれました。「品質を上げたいと思っても、人の手では限界があります。評価を仕組みに任せることで、現場が自ら改善できるようになりました。三つ星を目指すのであれば、まずは“評価のやり方”を変えることが近道だと思います。」
有人チャットの品質向上において重要なのは、ツールの導入そのものではなく、品質評価を日常業務に落とし込み、現場が自ら改善を回せる状態をつくることだと言えそうです。
お客様プロフィール
株式会社SBI新生銀行
日本長期信用銀行を前身とし、2000年6月に新生銀行へと名称を変更。さらに、2021年12月にSBIホールディングスの子会社となったSBI新生銀行様は、銀行とノンバンクの機能を併せ持つハイブリッドな総合金融グループです。グループが持つ金融機能を組み合わせて、従来の金融サービスでは満たされない顧客ニーズに対応する商品・サービスの提供を行っていらっしゃいます。
| 本社所在地 | 東京都中央区日本橋室町2-4-3 日本橋室町野村ビル |
|---|---|
| 設立 | 1952年12月 |
| 代表者 | 代表取締役社長 川島 克哉 |
| 従業員数 | 5,689人(2025年3月末時点) |
担当者コメント
SBI新生銀行様には、AQchat導入時にチャット対応のポイントや自動評価の考え方を解説する「有人チャット研修」もご活用いただきました。当初は自動評価の結果に戸惑う場面も見られましたが、次第にCSRのみなさんが評価結果を自分ごととして捉え、応対品質と前向きに向き合っていく姿が印象的でした。マネジメント側も、CSRが自発的に品質を確認・改善できるよう評価を丁寧に回していて、そうした現場主体の取り組みが応対品質の向上につながり、HDI問合せ窓口格付評価での三つ星評価獲得にも結びついたのだと感じています。今後も、品質向上の取り組みを継続的に支援させていただけると嬉しく思います。
サービスデザイン本部 サービス戦略部
サービスイノベーション課
植草 健吾
※掲載内容は取材当時の情報です。