急増する業務の荒波を越えて―――佐世保市×BPOの挑戦
長崎県佐世保市は古くから軍港として栄え、異国情緒あふれる街並みや、九十九島に代表される豊かな自然に恵まれた、九州でも有数の観光都市です。同市のふるさと納税業務を担当するふるさと物産振興課では、平成27年度の制度変更を機に急増した業務に対応するため、パーソルビジネスプロセスデザインのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を導入しました。
かつては職員による手作業の事務処理と、鳴り止まない電話対応に追われていたという同課。BPO導入によってどのように業務体制を立て直し、職員がより付加価値の高いコア業務へとシフトしていったのか、プロジェクトのご担当者様にお話を伺いました。
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手作業による膨大な処理と鳴り止まない電話で陥った「悪循環」
ー 本日はよろしくお願いいたします。まず、BPOを導入される以前の業務体制と、当時の課題についてお聞かせください。
細井様:BPOを導入する以前は、ふるさと納税に関わるほぼすべての業務を職員が行っていたのですが、想定を超える寄付件数の増加により、寄付者様への証明書発行や、特例申請書の受付・処理といった事務作業が爆発的に増加しました。そのなかで大きな課題となったのが、ワンストップ特例制度への対応です。ワンストップ特例の受付期限は1月10日必着であり、職員は年末年始も出勤して膨大な量の書類処理に追われる状況でした。
ー かなり逼迫した状況だったのですね。
細井様:はい。当時は業務フローも確立しておらず手探り状態。しかも、とにかく期限が定まっている業務なので、職員が総出で対応していました。また、お金に直結する業務であるため、「間違いが許されない」というプレッシャーも常に感じていました。
さらに、寄付者様からの問い合わせや、返礼品事業者様とのやり取りの電話が鳴り止まず、職員がその対応に忙殺されていました。電話対応によって本来の事務処理が遅れ、それが事業者様への発注遅延につながり、結果として寄付者様からお叱りの電話を受けるという、まさに悪循環に陥っていました。
トラブル発生でBPO化を決断。「電話対応」からの解放が急務だった
ー BPOの導入を検討されたのは、どのような経緯があったのでしょうか?
細井様:業務量が急増した平成27年度には、ついに証明書の発行遅れや、ワンストップ特例の受付業務でトラブルが発生してしまいました。この事態を受け、「とにかくスピーディーに対応できる体制を構築しなければならない」と、BPOの導入検討が本格化しました。
ー 導入検討時、BPOにはどのような効果を期待されていましたか?
細井様:まずは、煩雑な事務作業からの手離れです。そして同時に、職員を疲弊させていた電話対応を切り離すこと。すなわち、コールセンター機能の確立が急務でした。電話対応さえなければ、他の重要な業務が確実に進むことは明らかでした。
ふるさと納税は、寄付者様からお金をいただき、いただいたご厚志を佐世保の発展のために各事業に活用させていただく仕組みです。加えて本市では、佐世保市をさらに知っていただき、佐世保のファンになってもらいたいとの思いから、感謝の気持ちも込めて返礼品をお送りしています。このお金に直結する事務作業のプレッシャーから解放され、職員は返礼品の魅力を高めるといった、よりプロモーション的な「攻め」の業務など、業務をもっと色濃くすることに注力したいと強く考えていました。
佐世保市
経済部 ふるさと物産振興課 課長
細井 清樹さま
決め手は「業務を完遂する体制」と、過去の実績からくる信頼感
ー BPO導入にあたり、庁内での議論や懸念点はありましたか?
細井様:庁内でコスト面での議論はほとんどありませんでした。「とにかくすぐに委託しないと、業務が回らない」という切迫した状況だったためです。一方で、マイナンバーの取り扱いなど、セキュリティ面での懸念は確かにありました。しかし、当時は業務体制の立て直しが喫緊の課題でもあったため、その懸念点については迅速に解消・確認した上で、業務の確実性を求め、BPO導入を決定しました。
ー 最終的にパーソルビジネスプロセスデザイン(旧パーソルワークスデザイン)を選ばれた決め手は何だったのでしょうか?
細井様:複数の事業者様から提案をいただく中で、重視したのは「業務を漏れなく、安定的に履行できる体制」が構築されているかという点でした。その点で、パーソルさんは、コールセンター業務と事務処理業務の両方において、非常にしっかりとした業務フローと体制を提案してくださいました。
実は、パーソルさんには、市の別の事業で業務を委託した実績があり、その信頼関係がベースにあったことも大きいです 。当時はまだ前例のない「ふるさと納税BPO」という分野で、こちらの細かい要望や懸念事項をひとつひとつ丁寧にヒアリングし、万全の体制を整える提案をしてくれたことが決め手となりました。
「任せられる安心感」が最大の効果。職員は返礼品開拓などコア業務へ
ー 実際にBPOを導入されて、どのような効果を感じていらっしゃいますか?
細井様:最大の効果は、定性的な面ですが安心感です。確実に業務を遂行してくれる体制があることで、業務全体が非常に安定しました。
定量的な効果も顕著で、繁忙期に向けたパートタイマーの方の募集がゼロになりました。というのも、年末年始にも稼働していただく前提の募集だったため、導入以前は20名必要だったところに16名の応募しかなかったという状況でした。そういった雇用に関する不安が払拭されたのも大きな効果です。
井坂様:私は2025年4月からの赴任です。ふるさと納税事業は、自治体の業務としては珍しく納税額の数字目標を持っており、民間企業に近い側面があります。また、12月31日が寄付の締切となるため、年末年始の稼働が避けられない特殊な業務です。ですので、赴任にあたっては「年末年始も稼働があるぞ」と覚悟していました。しかし今では、職員の負担が大きくなりがちなその時期の稼働も、パーソルさんのおかげで最小限に収まっているということで、心強く感じています。市の業務のなかでは特殊な環境ですが、業務遂行上の不安もなく、安定的に運用できています。
佐世保市
経済部 ふるさと物産振興課 主任主事
井坂 拓海さま
ー 課題であった電話対応はいかがでしたか?
細井様:コールセンターが一手に引き受けてくれるため、職員が電話に追われることは一切なくなりました。応対品質が均一化され、寄付者様へのサービスレベルも向上したと感じています。
ー 創出された時間で、職員の皆様の業務内容はどのように変わりましたか?
細井様:職員は、本来取り組むべき「業務をより色濃くする」ということができるようになりました。返礼品の開拓やPRなど、これまで手が回らなかった業務まで充実し、時間を使えるようになったことです。ふるさと納税事業が上手くいくことで、地域経済が潤い、雇用が充実し、ひいては納税額を増やしていただける。そういった流れが作れていると思います。
ー 最後に、今後の期待についてもお聞かせください。
細井様:今後も、現在のこの安心できる連携体制を継続していただき、佐世保市の魅力をさらに発信していくためのパートナーとして、引き続きサポートしていただくことを期待しています。
担当者コメント
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
WD事業本部
サービスデザイン統括部 公共ソリューション部 3課
マネージャー 野田 忠嗣
「佐世保市の熱心なサポーターを増やす」――これは、当初から一貫して抱き続けているプロジェクトのビジョンです。運用体制を構築し、職員の皆様のご負担を軽減することに加え、ふるさと納税を通じて佐世保市をより好きになっていただくことを目指し、メンバーと共に取り組んでまいりました。
今回、「パートナー」と称していただけたことは、大変光栄であり、心から嬉しく感じております。年末の繁忙期やコロナ禍など、困難な時期もありましたが、業務開始以来、多くの皆様に支えられながら築き上げてきたノウハウは、私たちにとって貴重な財産です。今後も、佐世保市ふるさと納税のさらなる拡充と進化に貢献できるよう、尽力してまいります。
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
WD事業本部
サービスデザイン統括部 公共ソリューション部 3課
小川 麻似子
度重なる制度改正により、ふるさと納税全体が過渡期を迎える中、職員の方から「パーソルさんとはもう一蓮托生ですよ」とのお言葉をいただいたことが、強く印象に残っています。その後、佐世保市様、佐世保物産振興協会様と一丸となり、日々の業務に取り組んでまいりました。
今後も、寄せられた声をもとに課題を可視化し、改善に向けた提案を積み重ねながら、佐世保市の魅力をより多くの方にお伝えできるよう、全力で努めてまいります。