「10区10様」の業務プロセス標準化からBPOを推進。外部委託の障壁を乗り越え、継続的な業務改善サイクル創出を導く

札幌市こども未来局

業種
地方自治体
導入部署・部門
子育て支援部(支援制度担当部)

課題・背景

・国の制度改正により、職員の事務作業量の大幅な増加が予測された。
・市内10区で業務マニュアルやフローが異なり、属人化・非効率化が課題となっていた。
・委託範囲の定義や効果の定量的な算出が困難だった。

取り組み内容

・体制面だけでなく、複雑な制度への深い理解に基づいた提案内容を評価し、BPOパートナーを決定。
・「業務の標準化」そのものをBPOプロジェクトの一環と位置づけ、10区共通の統一マニュアル作成に着手。
・未経験業務の工数算出や、適切な評価項目の設定など、前例のない中で委託範囲を切り分け、具体化を進めた。

成果

・煩雑な事務作業の負担が軽減され、職員が制度改善などのコア業務に注力できる環境を構築。
・外部の客観的な視点により、職員だけでは気づけなかった業務上の課題が可視化され、改善サイクルが生まれた。
・定量的なデータ分析に基づく報告により、継続的なサービス改善への道筋が立った。

Before

・制度改正により、職員の事務作業量が大幅に増加。
・市内10区で業務マニュアルや進め方が異なり、非効率が発生。
・職員が日々の対応に追われ、業務改善の機会創出が困難。

After

・BPOにより業務プロセスを標準化し、事務負担を大幅に軽減。
・創出された時間で、制度改善や企画といったコア業務に注力。
・外部の客観的な視点により、職員だけでは気づけなかった課題が可視化され、改善サイクルが生まれた。

目次

    2019年の制度改正に伴い業務負担の増加が見込まれたことから、BPOを導入した札幌市子ども未来局様。市内10区で業務プロセスが標準化されていないという課題に対し、2022年より新たなパートナーとなったパーソルが「業務標準化」から課題解決に着手。業務効率化に留まらない“課題の可視化”まで実現したプロセスを、インタビュー形式でご紹介します。


    制度改正への対応と業務量増加がBPO検討のきっかけに

    ー 本日はよろしくお願いいたします。まず、BPO導入のきっかけとなった背景や、当時の課題についてお聞かせいただけますでしょうか。

    数田様: 2019年から開始された幼児教育・保育の無償化が、最初のきっかけです。業務が大幅に増加すると想定される中、単純に正職員を増員することは難しく、庁内の人員だけでは対応が困難であると判断しました。 この問題を解決するためには、庁内で臨時職員を採用するのか、外部業者に依頼するのか。業務を遂行する場所についても、庁内に事務所を設けるのか、外部業者の施設を利用するのか。様々なケースについて、費用対効果や将来的なあり方を勘案しながら検討しました。他の政令指定都市とも情報交換を行い、札幌市としては外部委託を選択し、かつ庁舎外で業務を行っていただくという現在の「事務センター」方式が、最も効率的で円滑に進められると結論付けました。

    ー 外部委託を決定する上で、特に懸念された点や、慎重に進められたことはありましたか。

    数田様: 課題となったのは、私たちの業務では機微な情報を取り扱うことが多いという点です。お子様の個人情報から保護者の所得や住所、世帯構成、疾病状況に至るまで、これまで庁内で管理していた情報を民間企業に連携することになります。 当時、札幌市ではそういった実績が少なく、マイナンバーとの連携など、様々な課題がありましたが、一つひとつ解決していきました。

    ー 外部委託によって、具体的にどのような状態を目指されたのでしょうか。

    数田様: 行政は基本的に「丁寧かつ正確な業務遂行」を得意としていますが、それが非効率につながる場面もあります。外部委託へは、対応すべき業務量が増加しても、ミスなく効率的に業務を遂行していただけることを期待しています。また私たち職員は、委託によって創出されたリソースを活用し、制度の新設や既存制度の改善といったコア業務に集中できる環境を整備することを目指しました。


    制度改正への対応と業務量増加がBPO検討のきっかけに

    10区で異なる業務プロセス──「標準化」からのBPO推進

    ー 様々な事業者の中から、パーソルを選ばれた決め手についてお教えください。

    数田様: 事務センターの委託はプロポーザル方式で公募しましたが、2022年以降の新たなパートナーとなったパーソル様については、このプロポーザルで総合的に最も高い評価を得ました。札幌市だけではない、様々な場所での業務改善で培われたノウハウをお持ちである点と、シンプルにご提案いただいた内容そのものが優れていた点が決め手です。

    子ども未来局が所管する制度は非常に複雑で、その内容を正確に理解し、間違いなく業務を遂行することが極めて重要になります。その点において、パーソル様のご提案は、体裁が整っているだけでなく、制度への深い理解に基づいた内容であり、他のご提案と比較して優れていました。


    札幌市子ども未来局 子育て支援部(支援制度担当部)
    保育推進課 保育企画係長
    数田 光嘉さま

    札幌市子ども未来局 子育て支援部(支援制度担当部)保育推進課 保育企画係長 数田 光嘉様のインタビュー写真

    ー 導入の検討段階や事業者選定のプロセスで、特にご苦労された点はどのようなことでしたか。

    横内様: 外部委託の際は、委託によって「職員の工数がどの程度削減されるのか」「どの程度の効率化が見込めるのか」といった点を定量的に説明することが求められます。これを数値化して説明することが、非常に難しい点でした。 と申しますのも、導入前は業務内容が明確ではなく、「未経験業務の工数算出」を行わなければならない状況。業務ごとに一つひとつ工数を算出し、かつ長期的な視点での効果を考慮する必要があるため、「どの業務をどこまで委託するのか」という業務範囲の切り分けも課題の一つです。

    また、どの事業者であれば安定的に業務を履行していただけるのか、その決定も重要でした。事業者選定の評価項目作成も担当したのですが、どのような評価項目を設定すれば、業務内容を正確にご理解いただき、着実に業務を履行していただける事業者を選定できるか。正解がない中で、多角的な検討を重ねての取り組みとなりました。

    ー 導入プロセスにおいて、他に課題となった点はありましたか。

    横山様: 保育関連業務は制度が非常に複雑ですが、札幌市に属する10区では、業務マニュアルや業務の進め方に、実は区ごとで大きな差異がありました。 もちろん、法律に基づいているため基本的な考え方は共通であり、様式も本庁で定めていますが、運用の部分ではある程度の裁量が認められています。そのため、ある区の方式が、他の区でそのまま適用できるかと申しますと、適用できないことが多いのが実情です。この標準化には、非常に労力を要しました。

    ー 業務の標準化は、どのように乗り越えられたのでしょうか。

    横山様: 最初の1年程度は、職員と前受託業者とで連日打ち合わせを重ねながら試行しましたが、それでも想定どおりに処理できないものが次々に発生したり、処理待ちのものが滞留するなど厳しい状況が続きました。それほど、制度が複雑であるということです。しかし当然ながら、市民の方々をお待たせするわけにはいきません。試行錯誤を繰り返しながら改善を進めましたが、「やはり委託は困難ではないか」という意見も職員の一部からはありました。この点については、当時の係長が粘り強く、何度も打ち合わせを重ねて統一マニュアルを作成し、想定問答集などを整備したと聞いております。

    ー 市民サービスに直結する業務だけに、プレッシャーも大きかったのではないでしょうか。

    横山様: 何か問題が発生すれば、市民や保育施設にご迷惑をおかけするため、プレッシャーも感じます。これまでは同時にこなしてきたこれらの業務の大部分を、現在では事務センターに担っていただくことで、注力すべき業務に集中して取り組むことができ、安堵しております。 現在、事務センターに委託する業務をさらに拡大できないか調整しているところです。制度の新設などは、私たちにとって大きな負担増となりますが、これに余裕をもって取り組めるのは、やはり事務センターの支援があってこそです。


    札幌市子ども未来局 子育て支援部(支援制度担当部)
    保育推進課 保育料係
    横内 嵩之さま

    札幌市子ども未来局 子育て支援部(支援制度担当部)保育推進課 保育料係 横内 嵩之様のインタビュー写真

    BPO導入による業務効率化と「課題の可視化」

    ー BPO導入による最も大きな成果は、どのような点だと感じていらっしゃいますか。

    横山様: 日々、課題を発見していただいていると強く実感しています。日々の業務を遂行しているだけでは、どうしても自分たちでは気づけない側面があります。私は本庁へ配属される以前、区で保育関係の窓口業務にも従事しておりましたが、常に業務に追われている状況だったため、他の区とのやり方の違いに当時は気づいていませんでした。 区とのやり取りは本庁の各担当が行っていましたが、10区全てと協議する機会は少なく、全区共通の認識を形成し、業務を遂行する体制は、なかなか構築できていませんでした。 その点において、パーソル様に参画いただくことで、「この部分に問題があるのではないでしょうか」「保護者からこのような意見があったため、このように改善してはどうか」といったご提案を随時いただけます。そのご提案を基に、関係者全員で対応を検討できることに、最も大きな意義があると考えております。

    ー 課題発見以外に、具体的な効果を感じる場面はありますか。

    数田様: 毎月2回の定例会が開催されますが、パーソル様は毎回非常に詳細な分析を行ってくださいます。この点も非常に重要な点です。 市民や保育施設から日々多くの電話やメールをいただきますが、それらを機械的に記録し、客観的に分析するということが、以前は十分にはできていませんでした。事務センター設立後は、「X日間で電話がY件あり、その内容はZでした」といった情報を集約・分析してくださるため、様々な業務改善に繋がっています。その結果、利用者にとっての利便性が向上し、対応する職員の負担も軽減されます。これは大変価値のあることだと考えております。

    ー 市民の方々からの反応はいかがでしょうか。また、職員の皆様の負担は、具体的にどのように変わりましたか。

    横山様: ご意見や改善案については都度いただきますが、逆に、業務が順調に進んでいる場合は、特に反応はありません。否定的なご意見が多くないということは、業務対応にご満足いただけていることの表れではないかと考えております。肯定的なご意見は、なかなか表に出てきにくいものです。パーソル様の存在が良い意味で当然のものとして認識されるようになってきているのかもしれません。 その膨大な業務量を把握しているからこそ、もし委託していなければ私たちはどうなっていたかと考えると、大変な状況が予測されます。大袈裟な表現に聞こえるかもしれませんが、パーソル様には大変救われたと感じております。


    札幌市子ども未来局 子育て支援部(支援制度担当部)
    保育推進課 保育料係
    横山 美音さま

    札幌市子ども未来局 子育て支援部(支援制度担当部)保育推進課 保育料係 横山 美音様のインタビュー写真

    ー 職員の方々の働きがいや、モチベーションにも変化はありましたか。

    横内様: 単純作業に従事するよりも、思考を要する業務は困難な側面もありますが、市民への貢献や子育て支援策に繋がるという、より大きなやりがいを感じられる仕事に集中できます。このことは職員のモチベーション向上にも繋がり、様々な観点から見ても、札幌市の子育て支援に確実に良い効果をもたらしていると考えております。


    パートナーとの連携で目指す、さらなる市民サービスの向上

    ー ありがとうございます。それでは最後に、BPO導入を検討されている他の自治体や企業の方々へメッセージをお願いします。

    横内様: 導入を検討されている時点で、その効果については大方認識されているのではないかと、個人的には考えております。しかし、やはり、何かを変革し、新たな取り組みを開始する際には、多くの障壁が存在し、それを乗り越えなければなりません。 私の場合、その障壁を乗り越えたのは前任者であるため、大変申し上げにくいのですが、そのおかげで現在のメンバーは非常に大きな恩恵を受けています。ですので、導入によって得られる効果は、障壁を乗り越えるだけの価値がある、非常に大きなものであると言えます。その恩恵を受けている者として、前任者の尽力が実を結び、大きな成果に繋がったことを伝えたいと思います。

    ー 数田様からも、今後の展望やパーソルへの期待についてお聞かせください。

    数田様: 成功事例のみを強調する営業トークではなく、失敗事例も含めてパーソル様が各地で培ってこられた実績に基づいたご提案をいただけます。そのご提案を基に、札幌市ではより良い保育サービスの提供が実現できており、大変感謝しております。 職員が事務作業に追われると、結果として「保育の質」の低下にもつながります。事務作業の効率化によって保育施設の負担が軽減されれば、その分、現場の職員がお子様一人ひとりと向き合う時間を増やすことができます。その結果、「保育の質」が向上し、市民の満足度向上にも繋がります。ぜひ今後とも、パーソル様がお持ちの知見を積極的にご教示いただきたいです。

    ー 横山様は、パーソルとの関係性をどのように感じていらっしゃいますか。

    横山様: 委託者と受託者の間には、利害が一致しない部分があるのではないかと想定しておりましたが、実際にはそのようなことはなく、共通の目標に向かって協力して取り組むことができています。真のパートナーとして、大変心強く感じております。


    パートナーとの連携で目指す、さらなる市民サービスの向上

    担当者コメント

    パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社 東日本BPOソリューション課 ユニット長 吉岡

    パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
    BPO事業本部 BPO第2統括部 第1公共サービス部
    東日本BPOソリューション課 ユニット長 吉岡 賢一

    今回の取材を通じて、札幌市様より「パートナー」として高い評価をいただけていることを改めて認識し、うれしい限りです。現場で尽力しているメンバーのみならず、立ち上げ当初から支えてくださった多くの方々の積み重ねによる成果だと受け止めています。 保育施設の皆様とはお話しする機会も多く、近年は業務負荷が格段に高まっていると感じています。保育は「未来を育むしごと」。札幌市様と連携しながら改善を進めていくことで、保育施設の皆様、そして保護者の皆様にとっても、より良い環境づくりに貢献できると信じています。今後も「はたらいて、笑おう。」の実現に向けて、センター一丸となって取り組んでまいります。


    パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社 東日本BPOソリューション課 プロジェクトリーダー 樋渡

    パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
    BPO事業本部 BPO第2統括部 第1公共サービス部
    東日本BPOソリューション課 プロジェクトリーダー 樋渡 麻都香

    現場に寄せられる声やデータを丁寧に拾い上げ、課題の可視化と改善提案につなげることが、私たちの役割です。札幌市様と一体となって取り組む中で、職員の皆様が本来の業務に集中できる環境づくりに貢献できていることを、大変うれしく思います。 今後も“未来を育む保育”を支える一員として、現場に寄り添いながら、より良いサービスの実現に向けて全力で取り組んでまいります。


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