職場でメンタルヘルス不調者を出さないための3つの予防策とは?一次予防・二次予防・三次予防を徹底解説

職場でメンタルヘルス不調者を出さないための3つの予防策とは?一次予防・二次予防・三次予防を徹底解説

職場においてメンタルヘルスの不調を訴える従業員は少なくありません。厚生労働省の労働安全衛生調査(令和6年)によれば、メンタルヘルス不調が原因で「連続1カ月以上の休業」または「退職した」従業員がいた事業所の割合は、12.8%と公表されています。

また、同様に仕事に対して強い不安やストレスを抱えている人の割合は68.3%であることが分かっています。

※参考:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」

7割近くの人が何らかのストレスや不安を抱えていることになりますので、実際にメンタルヘルス不調に陥ってしまうことも珍しくないでしょう。

慢性化したストレスは、うつ病などの精神疾患や心臓病・脳卒中といった身体疾患の発病リスクを高める要因となりかねないため、未然防止が求められます。最悪の場合、過労死に至ることもあり得ますので決して看過できるものではないでしょう。

本記事では、このようなリスクを未然に回避するために重要となるメンタルヘルス不調への予防策について3つ解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。



目次

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    職場でメンタルヘルス不調になる要因

    職場でメンタルヘルス不調になる要因として、どのような点が挙げられるのでしょうか。

    職業性ストレスをモデル化している『NIOSHモデル』では、職場のストレス要因から“それに対抗するためのストレス反応が生じる”とされます。そして、ストレス反応が慢性化することで疾患が発症すると考えられているのです。

    ※参考:東京都労働相談情報センター「NIOSHの職業性ストレスモデル」

    また、特徴的なのが、ストレス反応には職場外のストレスや性格などの個人要因も影響するとする点です。さらに、上司や同僚、家族など周囲のサポートがストレスを緩和させるとも考えられています。

    以上のように、NIOSHモデルで想定されているストレスの4つの要因として「職場内の要因」、「職場外の要因」、「個人要因」、「周囲のサポート」がありますが、それぞれ具体的には以下のようなポイントが挙げられます。

    • 職場内の要因:業務の量や質、裁量範囲、業務の将来性、人間関係など
    • 職場外の要因:育児や介護の負担、死別や離別などネガティブなライフイベントの有無など
    • 個人要因:年齢、性別、性格特性、自尊心など
    • 周囲のサポート:上司や同僚との信頼関係、サポーティブな風土、家族関係

    会社としては、働きやすい職場環境を整えるだけではなく、従業員個人の特性や生活状況を踏まえた対策が必要だといえるでしょう。

    職場におけるメンタルヘルス対策で重要な「3つの予防」

    では、職場のメンタルヘルス不調にはどのように対処すれば良いのでしょうか。メンタルヘルス対策に重要なのは、「3つの予防」という観点です。

    病気の発生や長期化を抑止する予防医学では、一次予防、二次予防、三次予防という3つのフェーズに分類し、介入する対象と時期を分ける試みがなされます。

    具体的には、次のように定義されています。

    • 一次予防:発病していない人が病気にかかることを未然に防ぐ
    • 二次予防:病気にかかってしまった人を早期に発見し、治療に繋げて重症化を防ぐ
    • 三次予防:リハビリテーションを通して社会復帰を促し、再発を予防する

    では、具体的にどのように予防策を考えれば良いのでしょうか。

    ここからは、会社として取り組むべき予防策について、実施する対象を「従業員」と「環境面」に分けて説明していきましょう。

    メンタルヘルス対策の一次予防

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    メンタルヘルス不調の一次予防としては、ストレスチェックや快適な職場環境づくり、啓蒙活動が挙げられます。

    従業員にメンタルヘルス対策の重要性と現在の健康状態に気づくきっかけを与え、ストレスのかかりにくい職場環境づくりを実行します。


    <従業員向けのアプローチ> ストレスチェックや啓蒙活動により気づきを促す

    従業員に対する一次予防の大きな柱は「ストレスチェック」の実施です。ストレスチェックとは、2015年12月の労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行によって実施が義務化された制度を指します。

    職業性ストレス簡易調査票などを用いて従業員のストレス状況を把握することで、メンタルヘルス不調の未然防止、セルフケアの促進、職場環境の改善などを目的としています。

    2015年12月からは、常時50人以上の従業員を雇用する事業場において年に1回以上の実施が義務となっています。また、2025年5月に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が施行されたことで、義務化対象が50人未満の従業員を雇用する事業場にまで拡大することが決定しました(施行期日は公布後3年以内に政令で定める日とされている)。

    ※参考:厚生労働省「労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)」
    ※参考:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」

    ストレスチェックでは、業務上の心理的負担の原因や心身の自覚症状、周囲のサポートなどから現在の状態を総合的に判定します。

    従業員自身がメンタルヘルス不調の兆候に気づき、早期の対処(セルフケア)を促す効果が見込めるでしょう。また、産業保健スタッフからメンタルヘルスに関する情報を発信することも有効です。

    社内報やイントラネットを活用し、ストレス対処法や精神疾患に関する情報を提供し、メンタルヘルス対策への意識を高めていきます。

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    <職場環境へのアプローチ> 集団分析から職場環境の改善点を洗い出す

    メンタルヘルス不調を防止するには、ストレス無くいきいきと働ける職場環境を整えることが重要です。そのためにも、管理職をはじめとした管理監督者が主体となり、従業員を働きにくくさせてしまっている点を洗い出すことが求められます。

    そういった職場環境の改善点を洗い出すのに適しているのが、ストレスチェックの集団分析です。

    ストレスチェックの集団分析は部署単位でのストレス傾向について、「業務の質」「業務の量」「周囲のサポート状況」を数値化して把握することができます。定量化することで改善点を把握でき、毎年実施すれば対策の効果を測定することも可能になります。

    また、従業員が相談しやすい環境を作るよう、管理監督者と従業員の良好な人間関係を維持する働きかけも必要でしょう。相談を受ける際に必要な傾聴スキルの研修や、部下と上司の個人面談の設定を行い、サポーティブな職場環境を育むことが不調の予防につながるのです。

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    メンタルヘルス対策の二次予防

    二次予防の主な目的は、メンタルヘルス不調に陥った従業員を早期に発見し、治療につなげることで重症化を防ぐことです。

    早期発見のためには、従業員が示す不調のサインにいち早く気付き、相談できる体制を整えておくことが必要だといえるでしょう。


    <従業員向けのアプローチ> メンタルヘルス不調の兆候を見逃さない

    早期発見に必要なのは、メンタルヘルス不調のサインに従業員自身が気づき、相談に繋がることです。しかし、心の病気は本人の自覚がない場合も多いので、周囲が兆候に気づくことが重要だといえます。

    具体的なメンタルヘルス不調の兆候としては、以下のような症状があげられます。

    • 心理面:イライラや不安が増加。集中力が低下してミスが増えた
    • 行動面:表情が暗くなった。遅刻や欠勤が増えた
    • 身体面:頭痛や吐き気、胃痛、発熱などの訴えが増えた

    これらの変化がみられる場合、過度なストレスが慢性化し、精神症状を引き起こしている可能性があります。まずは、従業員に心配していることを伝えて「何か困っていることがないか」を尋ねてみることも重要です。

    また、必要に応じて、産業保健スタッフの面談や医療機関への受診を勧めてみても良いでしょう。

    職場環境へのアプローチ> 従業員が相談しやすい環境を整える

    メンタルヘルス不調者が出たことに気づいたら、早期の対処が必要です。いざ何らかの対処をする必要が生じてから慌ててしまわないよう、社内で「どの窓口に相談すべきなのか」を事前に話し合っておきましょう。

    そのためには、「健康相談を受けるための時間を確保する」とか、「必要な相談窓口を設置する」といったように、相談を受けやすい体制を整えていくことが重要です。

    また、医療機関への受診について消極的な管理監督者も少なくありません。紹介しても良いものかと迷ったり、実際に紹介する時の流れが分からなかったりとさまざまな悩みがあるでしょう。会社として「医療機関受診の目的」や「診断書の役割」などを伝える機会があると、理解が進みやすいでしょう。

    メンタルヘルス対策の三次予防

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    メンタルヘルス対策の三次予防には、メンタルヘルス不調に陥り休職した従業員の「復帰支援」と「再発防止」が含まれます。

    具体的な職場復帰の支援と再発予防の流れについて説明しましょう。


    従業員向けのアプローチ> 休養に専念し、安心して復帰できるようフォローする

    従業員が医療機関を受診し、診断書が提出されると休職期間がスタートします。

    会社としては、従業員が休養に専念できるよう必要な情報を過不足なく伝えていくことになります。具体的には、以下のような情報を提供すると良いでしょう。

    • 休職に関する制度や必要な手続き
    • 職場復帰のプロセス(産業医面談、復職の可否を判断するタイミングなど)
    • 休職中の連絡方法と担当者
    • 社内外の相談機関(リワークや産業保健スタッフによるカウンセリングなど)
    • 傷病手当金制度
    • 休職の最長期間

    病状が回復し、従業員本人から復職の希望があれば、かかりつけの主治医に復職可能かどうかの判断を仰ぎます。「復職可能」と記載された診断書を提出してもらうことが一般的でしょう。

    しかし、医療機関の主治医は「生活リズムが整い、意欲が回復してきた」といった病状の回復に焦点を当てて復職可能と判断していることも少なくありません。復職に必要な業務遂行能力について主治医とコンセンサスをとったうえで、判断してもらうことが望ましいでしょう。

    真面目な従業員ほど、「職場に迷惑をかけてはいけない」と復職を焦り、再び休職してしまうケースが少なくありません。休職期間中に「生活リズム表」を記録してもらったり、「試し出勤」の機会を設けたりして、復職可能かを客観的に判断していくことが大切です。

    環境面へのアプローチ> 職場復帰支援プランを作成し、社内で共有する

    復職後の再休職を防止するためには、復帰する職場に配慮すると同時に理解を得ることも必要です。

    管理監督者は「復帰したからには、休職前と同じレベルで働いてもらいたい」と考えていても、ブランクがある状態だと以前のように業務を遂行することができない場合もあるものです。ですから復職するに当たり両者のズレを除去するためにも、産業保健スタッフが中心となって「職場復帰支援プラン」を作成しましょう。

    職場復帰支援プランでは復帰する従業員の情報を基に、無理のない勤務時間や業務量、働く上で配慮しておくべき事項などを管理監督者と連携して決めていきます。具体的には、厚生労働省の手引きなども参考にしながら、以下のような項目について検討を経て職場復帰支援プランを作成していくと良いでしょう。

    • 職場復帰日
    • 管理監督者による業務上の配慮:サポートの内容や方法、業務内容および量の変更、就業制限(残業しないなど)
    • 人事労務管理上の対応:配置転換や異動、時短勤務など勤務体系の変更
    • 産業医などによる医学的見地からみた意見
    • フォローアップ:就労制限や勤務体系の変更を見直すタイミング
    • その他:試し出勤制度の利用、社外の相談窓口の活用

    ※参考:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

    職場復帰支援プランは作成して終わりではありません。従業員が復帰した後も丁寧にフォローアップし、健康状態を把握しながら見直しを検討していくことも必要です。

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