営業マネジメントとは?新任マネジャーが押さえるべき3つの役割
営業マネジメントとは、ひとことで言うと、営業チーム全体のパフォーマンスを最大限に引き出し、組織として継続的に成果を上げ続けるための「仕組み」を作り、運用していく活動全体のことを言います。
これは、単に部下ひとりひとりの売上目標を管理するだけではありません。
チームの目標設定、日々の活動の進捗管理、部下の育成、モチベーションの維持、そしてチーム内での情報共有の促進など、その役割は非常に多岐にわたります。
新しくマネジャーになった方の中には、これまでトッププレイヤーとして個人で大きな成果を上げてきた経験をお持ちの方も多いかもしれません。
しかし、これからは、これまでとは全く違う視点を持つことが大切になります。
自分一人が頑張って売上を作るのではなく、チーム全体の力、つまり「組織力」で目標を達成することを目指すのが、営業マネジメントにおける最も重要なミッションと言っても過言ではないでしょう。
1-1.プレイヤーからマネジャーへ。求められる役割の大きな変化
営業の第一線で活躍していた「プレイヤー」から、チームを率いる「マネジャー」へと立場が変わると、求められる役割は根本的に変わります。
プレイヤー時代の評価の軸は、主に自分自身の営業成績、つまり「個人」としての成果でした。
しかし、マネジャーの評価の軸は、チーム全体の目標がどれだけ達成できたか、つまり「組織」としての成果へと大きくシフトします。
これまでのように「自分がやった方が早いから」という考えで仕事を一人で抱え込んでしまうと、それは部下の貴重な成長の機会を奪うことになり、結果としてチーム全体のパフォーマンスを停滞させてしまう原因にもなりかねません。
マネジャーに求められるのは、もはや自分が先頭に立って売ることではなく、部下が自律的に考え、行動し、成果を出せるように「支援する」ことです。
部下一人ひとりの能力をしっかりと見極め、それぞれに合った適切な目標を与え、ときには親身に相談に乗り、ときには勇気づけて背中を押してあげる、そうした環境づくりこそが、マネジャーにとって最も大切な仕事になるのです。
1-2.営業マネジメントの目的は「組織成果の最大化」にある
営業マネジメントが目指す最終的な目的は、ずばり「組織成果の最大化」です。
これは、目の前の短期的な売上目標を達成するだけでなく、長期的かつ安定的に成果を出し続けられる「強い営業組織」を作り上げることを意味しています。
ここで言う「強い組織」とは、特定のスタープレイヤー一人の活躍に依存するのではなく、チームメンバー全員が一定水準以上のパフォーマンスを安定して発揮できる組織のことです。
そのためには、売れるためのノウハウや成功事例といった貴重な情報を、組織全体で共有し、誰もが実践できる「仕組み」として構築することが欠かせません。
また、メンバーが仕事にやりがいを感じ、いきいきと働けるような環境を整え、個々の成長を後押しすることも非常に重要な要素となります。
つまり、組織成果の最大化とは、売上という数字だけの話ではなく、人材の成長や定着といった、すぐには目に見えにくい価値も含めて、組織全体の資産を未来に向かって増やしていくことなのです。
なぜあなたの組織は変わらない?営業マネジメントが陥る典型的な失敗例
多くの新任マネジャーが、チームのために良かれと思って実践していることが、実はチームの成長を妨げる要因になっているケースは意外と多いものです。
特に、過去に優秀な営業プレイヤーであった方ほど、特定の失敗パターンに陥りやすい傾向が見られます。
例えば、ご自身の成功体験を唯一の正解だと信じ込み、部下にそれを押し付けてしまったり、具体的な指導ではなく「気合が足りない」といった精神論に頼ってしまったりすることです。
こうしたマネジメントは、一見すると熱心な指導に見えるかもしれませんが、部下の主体性や考える力を奪い、チーム全体を疲弊させてしまう大きな原因となります。
ここでは、多くの営業組織が直面しがちな典型的な失敗例を3つ取り上げ、なぜそれが問題なのか、そして組織にどのような悪影響を及ぼすのかを具体的に解説していきます。
ぜひ、ご自身のマネジメントスタイルと照らし合わせながら、チェックしてみてください。
2-1.自身の成功体験に固執する「エースプレイヤーの罠」
かつてトップセールスとして華々しく活躍した経験を持つマネジャーが、最も陥りやすいのが、この「エースプレイヤーの罠」です。
自分が成功したやり方が最も効率的で正しいと信じ込み「俺の言う通りにやれば絶対に売れる」と、自身の成功体験を部下に一方的に押し付けてしまう、というケースです。
しかし、その成功法則は、そのマネジャー自身の個性や、特定の市場環境、タイミングといった様々な要因が奇跡的に重なって生まれたものであり、他の誰もが同じように再現できるとは限りません。
部下には部下の個性や、それぞれに得意な営業スタイルがあります。
それを無視した画一的な指導は、かえってパフォーマンスを低下させ、大切なモチベーションを削いでしまうことにも繋がります。
また、時代が変われば顧客のニーズや有効なアプローチ方法も刻々と変化していきます。
過去の成功体験に固執するのではなく、多様なやり方を認め、部下一人ひとりに合った方法を一緒に模索していく柔軟な姿勢こそが、現代のマネジャーには強く求められているのです。
2-2.感覚や根性論に頼った指導による再現性の欠如
「気合が足りない」「もっとお客様の懐に飛び込んでいけ」「とにかく足で稼ぐんだ」といった、具体的な方法論を伴わない感覚的・精神的な指導も、組織の成長を妨げてしまう大きな原因となります。
こうした根性論は、一見すると熱意のある指導のように聞こえるかもしれませんが、言われた部下からすれば「具体的に何をどう改善すれば良いのか」が全く分からず、途方に暮れてしまいます。
成果が出ない原因が、アプローチの数にあるのか、提案の質が低いのか、あるいはターゲットの選び方が間違っているのかを具体的に分析し、論理的に指導しなければ、部下はただ闇雲に動き、同じ失敗を繰り返すだけです。
このような指導法には「再現性」がありません。
つまり、そのカリスマ的なマネジャーがいなくなってしまえば、誰も成果を出せなくなってしまう、非常に脆い組織になってしまうのです。
本当に強い組織を作るためには、個人の感覚や気合といった曖昧なものに頼るのではなく、誰が実践しても一定の成果が見込める「再現性のある仕組み」を組織内に構築することが不可欠です。
2-3.結果だけを追うマネジメントが引き起こすチームの疲弊
売上や契約件数といった「結果」の数字だけを評価の対象とするマネジメントは、短期的には成果が出ているように見えても、長期的にはチームを崩壊させてしまう危険性を秘めています。
結果だけを厳しく追求される環境では、部下はプロセスを無視してでも、とにかく数字を作ろうとしてしまいます。
例えば、強引な値引き交渉で利益率を度外視した契約を取ってしまったり、将来的な信頼関係を損なうような無理な押し売りをしてしまったり、最悪の場合、プレッシャーから虚偽の報告をしてしまう可能性も出てきます。
また、結果が出ない部下は常に厳しいプレッシャーにさらされ、精神的に追い詰められてしまい、やがては疲弊してしまいます。
本来マネジャーが評価すべきは、結果に至るまでの「プロセス」です。
適切な行動(例えば、有効な商談をどれだけ設定できたか、質の高い提案ができたかなど)を正しく評価し、改善のための具体的なフィードバックを行うことで、部下は正しい努力を継続できるようになります。
その結果として、チーム全体の力は着実に向上していくのです。
属人化を脱却!チーム全体の営業力を底上げするマネジメント術
一部の優秀な営業担当者の活躍に頼る「属人化」した組織は、そのエースが異動したり退職したりすると、一気に業績が傾いてしまうという、とても大きなリスクを抱えている状態です。
このような不安定な状態から脱却し、チーム全体の営業力を安定的に向上させるためには、個人の能力に依存しない「仕組み」によるマネジメントが不可欠になります。
具体的には、まずチーム共通の目標を、日々の具体的な行動指標にまで落とし込み、活動状況を「見える化」することが挙げられます。
そして、トップセールスのノウハウや成功事例を、誰でもわかる「形式知」という形に変えて、誰もがアクセスできる組織の資産として共有すること。
さらに、一人ひとりの主体性を引き出し、自律的な成長を促すためのコミュニケーションを実践すること。
これらを通じて、新人でも早い段階で戦力となり、チーム全員で成果を追求できるような強い組織文化を育てていくことができるのです。
3-1.目標設定とKPI管理でチームの行動を具体的に可視化する
「今月は目標達成に向けてみんなで頑張ろう!」といった、曖昧なスローガンを掲げるだけでは、チームメンバーは具体的に何をすれば良いのか理解できず、行動に移すことができません。
組織の営業力を底上げするためには、まず最終目標であるKGI(Key Goal Indicatorの略で「重要目標達成指標」のこと。例えば「売上高1億円」など)を達成するために、どのような行動が必要かを細かく分解し、具体的な行動指標であるKPI(Key Performance Indicatorの略で「重要業績評価指標」のこと)を設定することが非常に重要です。
例えば「新規顧客からの売上1,000万円」というKGIに対して「新規アポイントを月に20件獲得する」「提案件数を月に10件行う」「受注率を20%にする」といったKPIを設定します。
これにより、メンバーは日々の活動の中で何を意識すれば目標に近づけるのかが明確になります。
さらに、これらのKPIの進捗状況をSFA(営業支援システム)などのツールを使ってチーム全体で共有し、可視化することで、目標達成に向けた現在地や課題点が誰の目にも明らかになります。
その結果、より具体的で的確な対策を、チーム一丸となって打つことが可能になるのです。
3-2.組織の「勝ちパターン」を仕組み化するナレッジ共有の方法
優秀な営業担当者が持っているノウハウや成功事例は、その人しか知らないノウハウ、いわば「暗黙知」のままにしておくのではなく、組織全体の「形式知」、つまり誰もが理解し活用できる形にして資産化することが、チーム力向上の鍵を握ります。
これが、いわゆる組織の「勝ちパターン」を仕組み化する、ということです。
具体的な方法としては、まずSFAやCRM(顧客関係管理システム)といった営業支援ツールを活用し、成功した商談のプロセスを詳細に記録・共有する文化を作ります。
また、週に一度「成功事例共有会」のような場を設け、担当者が自身の成功体験をプレゼンテーションし、質疑応答を通じて学びを深めるのも非常に効果的です。
さらに、これらの貴重な情報を基にして、顧客の課題別や業界別に有効なトークスクリプトや提案資料のテンプレートを作成し、誰もがいつでも使えるように整備します。
これにより、経験の浅いメンバーでもトップセールスの知見をすぐに活用でき、組織全体の営業レベルが着実に底上げされていくでしょう。
3-3.部下の主体性を引き出す効果的な面談とフィードバック
部下の成長を促し、チーム全体のパフォーマンスを向上させるためには、マネジャーと部下との定期的な1on1ミーティング(面談)が非常に重要な役割を果たします。
ただし、その面談がマネジャーからの一方的な指示や、できていないことへの詰問の場になってしまっては全く意味がありません。
ここで最も大切なのは、部下の主体性を引き出す「コーチング」の視点を持つことです。
まずは部下の話にじっくりと耳を傾け、現状の課題や悩み、そして目指したい目標などを本人の言葉で語らせることから始めましょう。
そして「なぜそう思うの?」「他にどんな方法が考えられるかな?」といった質問を投げかけることで、部下自身に深く考えさせ、自ら解決策を見つけ出せるように導いていきます。
フィードバックを行う際は、単にダメ出しをするのではなく、まず良かった点を具体的に伝え、その上で「もっとこうすれば、さらに良くなるかもしれないね」という改善点(提案)をセットで伝えることが、部下の前向きな行動変容を促す上でとても効果的です。
営業マネジメントを仕組み化する「セールスイネーブルメント」という考え方
これまで解説してきた、目標管理、ナレッジ共有、そして人材育成といった営業マネジメントの各要素を、より体系的かつ継続的に実践するためのアプローチとして、今、世界的に注目されているのが「セールスイネーブルメント」という考え方です。
これは、営業組織が継続的に成果を創出し続けるために必要な情報、ツール、トレーニングなどを包括的に提供し「売れる仕組み」を構築・改善し続けるといった一連の取り組み全体のことを指す、比較的新しい考え方です。
これまでの感覚や経験則に頼るマネジメントではなく、データに基づいて営業活動を科学的に分析し、ボトルネックとなっている課題を特定した上で、的確な打ち手を実行していくのが大きな特徴です。
このセールスイネーブルメントを導入することで、営業組織は特定の個人に依存する「属人化」から脱却し、再現性の高い方法でチーム全体のパフォーマンスを継続的に向上させることが可能になります。
まさに、強い営業組織を作るための現代的なアプローチと言えるでしょう。
4-1.セールスイネーブルメントが営業組織にもたらす本当の価値
セールスイネーブルメントが営業組織にもたらす価値は、単に売上が向上する、というだけにとどまりません。
その本当の価値は、営業組織を自ら学び、進化し続ける「学習する組織」へと変革させ、持続的な成長基盤を築くことにあります。
例えば、営業プロセスをデータで可視化することにより、チームや個人がどこでつまずいているのかが明確になり、新人からベテランまで、誰もが自身の課題を客観的に把握できるようになります。
また、効果的な営業ツールや標準化されたナレッジが提供されることで、営業担当者は資料作成などの付帯業務から解放され、本来最も注力すべき顧客との対話に多くの時間を使えるようになり、生産性がぐんとアップします。
その結果として、営業担当者一人ひとりのスキルアップが加速し、仕事へのやりがいや会社への愛着(エンゲージメント)も高まります。
これは、優秀な人材の定着にも繋がり、採用コストの削減といった副次的な効果も期待できるのです。
セールスイネーブルメントは、営業組織のパフォーマンスを最大化するための、まさに「強力なエンジン」の役割を果たすと言えるでしょう。
4-2.現場起点の伴走支援で強い営業組織をつくる
ここまで、新任マネジャーが知っておくべき営業マネジメントの重要性や、それを仕組み化するセールスイネーブルメントという考え方について解説してきました。
しかし「理論はわかったけれど、具体的に何から手をつければ良いのかわからない」「自社のリソースだけで実践するのは難しそうだ」と、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
本当に強い営業組織を構築するためには、机上の空論ではなく、現場の実態に即した具体的なアクションプランと、それを継続的に改善していくための伴走支援が不可欠です。
私たちパーソルビジネスプロセスデザインでは、現場の課題に徹底的に寄り添い、データ分析から戦略立案、ツールの導入・定着支援、そして人材育成までをワンストップで支援する「現場起点のセールスイネーブルメントソリューション」をご提供しています。
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