ウェルビーイング経営とは?健康経営との違いと経営成果につなげるコツ

ウェルビーイング経営とは?健康経営との違いと経営成果につなげるコツ

経営層から「従業員のウェルビーイング向上に取り組むように」と指示を受けているものの、具体的に何から始めればよいのか、どのように取り組んで経営成果につなげればよいか不明瞭な状況に陥っていませんか?

健康経営優良法人の認定取得(または継続認定)を目指しているが、単なる制度導入で終わってしまい、形骸化しているという企業も少なくありません。また正直なところ、「ウェルビーイング(well-being)経営」という言葉を聞いたことがあっても、健康経営との違いや、具体的な実践方法、経営指標との関係性を正確に理解するのは難しいでしょう。

本記事では、ウェルビーイング経営の定義と健康経営との違いから、経営成果への影響、具体的な推進ステップ、効果測定のKPI設計、経営層への報告のコツまで、実践的な内容を紹介します。

目次

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    ウェルビーイング経営とは|健康経営との違い

    ウェルビーイング(well-being)経営と健康経営は混同されがちですが、対象範囲やアプローチ、目的において明確な違いがあります。まずは両者の違いを理解し、ウェルビーイング経営の特徴を把握しましょう。


    ウェルビーイング経営の定義

    健康経営との違いに入る前に、まずは定義から確認しましょう。ウェルビーイング経営とは、従業員の「身体的・精神的・社会的な幸福」を高めることで、組織の持続的成長を実現する経営手法です。

    そもそも「ウェルビーイング(well-being)」とは、WHOが定義する「健康の定義」において、「身体的・精神的・社会的に良好な(満たされた)状態」にあることを指します。よって、ウェルビーイング経営では、従業員が心身ともに健康で、仕事にやりがいを感じ、良好な人間関係を築ける環境をつくることを目指します。

    Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

     

    健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。



    これは単なる福利厚生の充実ではなく、従業員の幸福度向上を経営戦略の中核に位置づける考え方です。

    昨今は人的資本経営の文脈でも重要視されており、従業員のウェルビーイング向上が企業価値向上につながるという認識が広がっています。


    対象範囲の違い|身体的健康から心身・社会的幸福へ

    健康経営は、主に身体的健康(生活習慣病予防、健康診断、運動促進など)に焦点を当てた取り組みです。

    一方、ウェルビーイング経営は、身体的健康に加え、精神的健康(ストレス管理、心理的安全性)、社会的健康(良好な人間関係、コミュニティへの帰属感)まで包括的に扱います。WHOのウェルビーイングの定義に基づき、心身の健康だけでなく、仕事の意義や人間関係の質も重視する考え方です。

    健康経営の考え方と比べウェルビーイング経営の方が対象範囲が広いため、人事施策だけでなく、組織文化やマネジメントのあり方まで見直す必要があります。



    アプローチの違い|リスク管理からポジティブ価値創造へ 

    健康経営は、病気や不調を防ぐという「マイナスをゼロにする」リスク管理のアプローチです。

    一方、ウェルビーイング経営は、従業員の強み・やりがい・幸福感を高める「ゼロをプラスにする」ポジティブなアプローチを取ります。ポジティブ心理学の知見を取り入れ、従業員が「働くことで成長できる」「仕事に意義を感じる」状態を目指すのです。

    結果として、単なるリスク回避ではなく、イノベーションやエンゲージメント向上など、組織の創造的な価値を生み出します。

    目的の違い|コスト削減から価値創造へ

    健康経営は、医療費削減、欠勤率・離職率の低下など、コスト削減による経営効率化や、人的資本への投資、企業価値・生産性の向上が主な目的です。

    一方、ウェルビーイング経営は、生産性向上、イノベーション創出、従業員エンゲージメント向上など、新たな価値創造を目指します。

    結果としてコスト削減も達成できますが、本質的な目的は「従業員の幸福度を高めることで、組織のパフォーマンスを最大化すること」です。投資対効果(ROI)も、コスト削減額ではなく、売上増加や生産性向上などポジティブな成果で測定します。

    項目 健康経営 ウェルビーイング経営
    対象範囲 身体的健康が中心(生活習慣病予防、健康診断、運動促進など) 身体的・精神的・社会的幸福を包含(心身の健康、仕事の意義、人間関係の質)
    アプローチ マイナスをゼロへ(病気や不調を防ぐリスク管理) ゼロをプラスへ(強み・やりがい・幸福感を高める価値創造)
    主な目的 コスト削減、経営効率化(医療費削減、欠勤率・離職率の低下) 生産性向上、イノベーション創出、従業員エンゲージメント向上

    混同されがちな論点|人的資本経営/健康経営/EX/エンゲージメントとの関係

    ウェルビーイング経営を正しく理解し、実践につなげるためには、関連する用語との関係性を整理しておくことが欠かせません。

     

    「人的資本経営」「健康経営」「EX(従業員体験)」「エンゲージメント」は、似た文脈で使われることが多いものの、それぞれ役割や捉えるレイヤーが異なる概念です。これらを同列に扱ってしまうと、施策が分散したり、KPI設定に迷ったりする原因になります。

     

    まず、人的資本経営は、人材を「コスト」ではなく「資本」と捉え、その価値を最大化することで、中長期的な企業価値向上を目指す経営戦略の考え方です。この文脈において、ウェルビーイング経営は単なる個別施策ではなく「人的資本経営を機能させるための重要な基盤(エンジン)」と位置づけることができます。

     

    実際に、内閣官房が示す「人的資本可視化指針」でも、「健康・安全(ウェルビーイング)」は開示が推奨される重要項目の柱の一つとされています。

     

    ※参考:内閣官房「人的資本可視化指針の見直しについて」

     

    一方、健康経営は、主に従業員の身体的・精神的な健康リスクを管理・低減し、就業継続や生産性の土台を整える取り組みです。長時間労働対策やメンタルヘルス対応、生活習慣病予防などが代表例であり、いわば「働くうえでの最低限の安全・安定を確保するアプローチ」と整理できます。

     

    ウェルビーイング経営は、この健康経営を包含しつつ、さらに一歩進んで「より良い状態(しあわせ・充実感)」を目指す考え方と捉えると理解しやすいでしょう。

     

    こうした関係性を踏まえたうえで、ウェルビーイング施策を設計する際に参考になるのが、学術的な整理モデルです。

     

    ポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマン博士が提唱したPERMAモデルでは、「ポジティブ感情」「没頭」「関係性」「意味」「達成」の5要素によって幸福を捉えます。これにより、各施策が従業員のどの要素に働きかけているのかを整理しやすくなります。

     

    参考:金沢工業大学 心理科学研究所「PERMA-Profilerの説明」

     

    また、アメリカのGallup社は、ウェルビーイングを「Career/Social/Financial/Physical/Community」の5要素で整理し、とくに仕事における「Career」が他の要素の基盤になるとしています。これは、ウェルビーイング経営が人事施策だけでなく、働きがいやキャリア形成とも密接に関係していることを示しています。

     

    参考:PERSOL(パーソル)グループ「“はたらくWell-being” を知る」

     

    EX(従業員体験)は、採用から退職までのあらゆる接点やプロセスを設計する手段(How)です。制度や施策、コミュニケーションのあり方を整えることで、良い体験を積み重ねていく考え方と言えます。

     

    一方、ウェルビーイングやエンゲージメント(活力・熱意・没頭)は、その結果として従業員にもたらされる状態(State)です。良質なEXが設計・運用されてこそ、ウェルビーイングやエンゲージメントは高まっていきます。

     

    これらの概念をすべて同じレイヤーで捉えてしまうと、「何のための施策なのか」が曖昧になり、取り組みが形骸化しやすくなります。


    人的資本(戦略)×EX(手段)×ウェルビーイング(状態)×エンゲージメント(仕事における状態)というように、それぞれの役割を整理して考えることで、言葉の混線を防ぎ、施策設計やKPI設定の精度を高めることができます。


    ウェルビーイング経営が注目される3つの背景

    近年、ウェルビーイング経営が注目を集めている背景には、社会環境の変化や企業を取り巻く状況の変化があります。

    なぜ今、ウェルビーイング経営が重要視されているのか、3つの観点から解説します。

    背景(1)労働人口減少と人材獲得競争の激化

    日本の労働人口は減少の一途をたどり、2040年には20〜64歳人口が人口全体の約半数を占めるまでに減少すると推計されています。人材不足が深刻化する中、優秀な人材を獲得・定着させるには、給与や待遇だけでなく、働きやすさや働きがいが重要な差別化要因となります。従業員の幸福度を高める企業が選ばれる時代になったのです。

    実際、従業員のウェルビーイングを重視する企業は、「働きやすい会社」として認知され、採用競争力が高まります。特に若年層は、給与よりもワークライフバランスや仕事の意義を重視する傾向があるため、ウェルビーイング経営は人材獲得の鍵となるでしょう。


    背景(2)働き方改革と従業員の価値観の多様化

    働き方改革関連法の施行により、リモートワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方が普及しました。コロナ禍を経て、働き方や仕事の意義を見直す人が増え、「仕事だけが人生ではない」という価値観が広がっています。

    今や従業員の価値観が多様化し、一律の福利厚生や評価制度では満足度を高められなくなりました。個々の従業員が何に幸福を感じるか(キャリア、人間関係、ワークライフバランスなど)を理解し、柔軟に対応することが求められます。

    背景(3)人的資本経営とESG投資の潮流

    2023年3月期以降の有価証券報告書より、人材の多様性確保の方針や社内環境整備の方針などの人的資本に関する一部の項目についての記載が必須とされ、従業員の健康やエンゲージメントなどの情報開示が求められるようになりました。ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)において、従業員のウェルビーイングは「S(社会)」の重要な評価項目です。

    今や投資家は、従業員を大切にする企業を「持続的な成長が期待できる企業」として評価し、投資判断に活用しています。ウェルビーイング経営は、投資家や取引先からの信頼獲得、企業価値向上につながる重要な経営戦略なのです。


    ウェルビーイング経営がもたらす4つの経営成果

    ウェルビーイング経営は単なる従業員満足度向上の取り組みではなく、経営成果に直結する戦略的な施策です。具体的にどのような経営成果がもたらされるのか、以下4つの観点から解説します。

    • 生産性向上とイノベーション創出
    • 離職率低下と採用競争力の強化
    • 従業員エンゲージメントの向上
    • 企業ブランド価値とESG評価の向上

    成果(1)生産性向上とイノベーション創出

    幸福度の高い従業員はストレスが少ないため、集中力が高まりやすいと考えられ、業務効率が向上し全体の生産性も向上します。心理的安全性が高まることで、職場で従業員が自由に意見を出しやすくなり、新しいアイデアが生まれやすくなる効果も期待できるでしょう。

    また、ウェルビーイングが高い従業員は、仕事に対する意欲が高く、自発的に改善提案や新規プロジェクトに取り組む傾向があります。結果として、業務効率化だけでなく、イノベーション創出や新規事業開発にもつながるでしょう。

    成果(2)離職率低下と採用競争力の強化

    従業員が心身ともに満たされ、仕事にやりがいを感じている職場では、離職率が低下します。離職率の低下により採用・育成コストが削減され、経営効率は向上するでしょう。

    「働きやすい会社」「従業員を大切にする会社」として認知されることで、求職者からの応募が増え、採用競争力も高まります。既存社員の定着と優秀な人材の獲得という好循環が生まれ、組織の持続的成長が可能になるでしょう。

    成果(3)従業員エンゲージメントの向上

    ウェルビーイングが向上すると従業員エンゲージメントが高まり、組織へのコミットメントが強化されます。

    エンゲージメントとは、従業員が組織に対して愛着を持ち、自発的に貢献しようとする意欲のことです。ウェルビーイングが高い従業員は、会社のビジョンに共感し、自分の仕事に誇りを持つため、エンゲージメントが向上します。

    エンゲージメントの高い従業員は、目標達成に向けて主体的に行動し、困難な状況でも粘り強く取り組みます。結果として、組織全体のパフォーマンスが向上し、事業目標の達成確度が高まるでしょう。

    ~あわせて読みたい~

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    成果(4)企業ブランド価値とESG評価の向上

    ウェルビーイング経営に取り組んでいる企業は、従業員を大切にする企業として社会的に評価され、企業ブランド価値が向上するでしょう。取引先や顧客からも「信頼できる企業」として選ばれやすくなり、ビジネス機会が拡大します。

    またESG投資の観点でも「S(社会)」の評価が高まることで、機関投資家からの資金調達を得やすくなる効果も期待されます。

    このように、人的資本情報の開示において、ウェルビーイングへの取り組みを示すことで、ステークホルダーからの信頼を獲得できるでしょう。

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    ウェルビーイング経営を失敗しないための注意点(よくある落とし穴5つ)

    ウェルビーイング経営は、正しく進めれば大きな成果につながります。一方で進め方を誤ると、効果が出ないだけでなく、組織に冷笑や反発を生むおそれもあります。企業が陥りやすい5つの落とし穴と、主な回避策は次のとおりです。


    注意点(1)施策の形骸化・マンネリ化

    導入直後は盛り上がっても、やがて関心が薄れ、健康意識の高い一部の社員だけが利用する制度になりがちです。

     

    対策は、「なぜやるのか(Why)」を継続して発信し、施策を固定化せずPDCAで更新し続けること。アプリやポイント、チーム対抗などの仕掛けを取り入れ、参加しやすい環境を作ります。


    注意点(2)現場の「やらされ感」と心理的リアクタンス

    トップダウンで参加を強く促すと、「忙しいのに余計な仕事」「私生活への干渉」と受け止められ、反発を招きます。

     

    対策は、現場を巻き込む推進体制づくりです。各部署から健康推進の担当を選び、現場の声を反映させます。

     

    また「健康のため」を前面に出しすぎず、チームビルディングやポイント活用など、社員にとってのメリットが伝わる設計にします。



    注意点(3)「KPI迷子」と手段の目的化

    実施率や開催数といった活動指標が目的になり、本来の狙いである経営課題の解決が見えなくなるケースです。

     

    対策は、経済産業省が推奨する「健康経営戦略マップ」やロジックモデルで、最終的な経営課題(生産性向上、離職率低下など)と各施策の因果関係を可視化することです。

     

    「健康経営戦略マップ」の作成方法は以下リンクよりご確認いただけます。

     

    参考:経済産業省「健康経営ガイドブック」


    注意点(4)施策過多による消化不良

    矢継ぎ早に施策を増やすと、現場が疲弊し、何を使えばよいか分からなくなります。

     

    対策は、データで課題を特定し、選択と集中を徹底すること。優先順位をつけ、「やらないこと」を決めることで浸透度が高まります。


    注意点(5)個人情報・労務リスクへの配慮不足

    健診やストレスチェックの結果は要配慮個人情報で、扱いには厳格な運用が求められます。

     

    対策は、厚生労働省のガイドラインに基づき健康情報の取扱規程を整備し、「誰が・何の目的で・どの情報を見るか」を明確に管理すること。従業員への説明と同意取得も徹底します。


    参考:厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」


    要点は、施策を「点」で終わらせないことです。落とし穴を避ける最短ルートは、目的(Why)と体制、指標を先に固め、施策と成果がつながる筋道を見える化して進めることです。


    ウェルビーイング経営を推進する6つのステップ

    ウェルビーイング経営を効果的に推進するためには、計画的なアプローチが必要です。導入から定着までの具体的なステップを6つに分けて解説します。

    ステップ(1)体制と役割分担(人事/労務/産業保健/現場/経企/IR)

    はじめに、体制の構築から触れていきます。

     

    ウェルビーイング経営は人事部門だけで完結するものではなく、全社で推進する体制づくりが欠かせません。データ管理、リスク対応、現場での運用、社外開示まで領域がまたがるため、あらかじめ役割分担(RACI)を整理して連携しやすい形にしておくことが重要です。

     

    以下にウェルビーイング経営推進のためのRACIチャート(役割分担表)の例を作成しましたのでご参考ください。こうすることで各部門が「いつ」「どのように」関わるかが一目でわかるよう、主なアクションごとに整理することができます。


    主なアクション / 業務 CHO経営トップ 推進事務局(人事・総務・健康推進) 専門職 (産業医・保健師) 現場推進者 (管理職・推進委員) 経営企画 / IR 健康保険組合
    ① 健康経営宣言・方針策定 A R C I I I
    ② 予算・人員リソース配分 A R C - I -
    ③ 施策の企画・立案 I A / R C C I C
    ④ 高リスク者対応・面談指導 I A R (専門業務) I / C (配慮・連携) - C (データ連携)
    ⑤ 職場環境改善・声がけ I A C R - -
    ⑥ データ分析・効果検証 I R C I C C (コラボヘルス)
    ⑦ 統合報告書・投資家対話 A C (情報提供) - - R -

    凡例(RACI定義)

    • R (Responsible 実行責任): 実際に業務を行う担当者。

    • A (Accountable 説明責任): 最終的な承認権限や結果への責任を持つ者(通常は1名/1部署)。

    • C (Consulted 協業・相談): 業務遂行にあたり専門的な助言を行う、または意見を求められる対象。双方向のコミュニケーション。

    • I (Informed 報告・共有): 結果や進捗の報告を受ける対象。片方向のコミュニケーション。

    上記の場合、経営トップは健康経営宣言の発信、予算・人員など資源配分、最終意思決定を担います。

     

    推進事務局(人事・総務・健康推進室など)は施策の企画・立案、進行管理、各部署との調整、サーベイ運用を担う実働の中核です。

     

    産業医・保健師は医学的助言、高リスク者の面談指導、データ分析支援を行い、個人の健康情報を守る役割も担います。

     

    現場の管理職や推進委員は部下への声がけ、職場環境改善、現場の声の吸い上げを通じて施策の定着を支えます。

     

    経営企画・IRは人的資本情報を統合報告書等に反映し、投資家との対話を含めて社外発信を担います。

     

    健康保険組合は特定健診データの提供や、保健事業と連動した共同施策(コラボヘルス)を推進します。

     

    ポイントは、責任者(A)と実行者(R)を先に決めておくことです。これにより、途中で止まりにくい推進体制をつくれます。



    ステップ(2)経営課題とウェルビーイングを紐づける

    自社が抱える経営課題を明確にします。その後、その課題がウェルビーイングのどの要素と関連しているかを分析しましょう。

    一例ですが、以下のパターンなどが挙げられます。

    経営課題 要因 改善アプローチ
    離職率が高い ・心理的安全性の欠如、評価制度への不満 ・一人ひとりとの対話(コミュニケーション)の促進 ・公平な評価制度、管理制度の策定
    ・メンタルヘルスケア
    イノベーションが生まれづらい ・発言することへの萎縮 ・多様性・公平性・包摂性(DE&I)を尊重する風土の形成
    エンゲージメントが低い ・目的意識、働きがいの不足 ・キャリア支援
    ・パーパスの提示
    ・共有 ・成長機会の提供


    経営課題とウェルビーイングを紐づけることで、経営層への説明がしやすくなり、予算や人員の確保がスムーズになります。

    単なる「ウェルビーイングのための施策」ではなく、「経営課題を解決するためのウェルビーイング施策」として位置づけることが重要です。

    ステップ(3)現状を可視化する指標を設定する

    従業員のウェルビーイングの現状を把握するため、エンゲージメント調査やウェルビーイングサーベイを実施し、従業員の幸福度や満足度を定量的に把握します。「仕事のやりがい」「人間関係」「ワークライフバランス」「キャリア展望」など、多面的に質問項目を設定しましょう。

    部署別・年代別に分析し、どの部署や層でウェルビーイングが低いかを特定してください。現状を数値化することで、施策の優先順位が明確になり、改善の進捗を追跡できます。

    ステップ(4)優先施策を決定し実行する

    現状分析をもとに、効果が大きく、実行可能な施策から優先的に着手しましょう。すべての施策を同時に実行するのは現実的ではないため、インパクトと実行可能性の両面から優先順位をつけることが重要です。

    短期で効果が出る施策と中長期施策(評価制度の見直し、組織文化の変革など)をバランスよく組み合わせましょう。

    ▼ 短期で効果が見込める施策例

    • 1on1ミーティングによるモチベーション管理
    • 勤務時間や休暇取得に関するルールの再整備(柔軟な働き方の推進)
    • ウェルビーイングに関する社内セミナーの開催・メルマガの配信 など

    ▼ 中長期を見据えた施策例
    • 管理職向けウェルビーイング研修の実施(マネジメント・傾聴スキル、コーチング、フィードバック能力)
    • 評価制度の見直し
    • 従業員を巻き込んだ組織文化の醸成・変革

    経営層や現場(従業員)の理解を得やすい施策から着手し、成功事例を積み重ねることで、次の施策への投資を引き出せます。施策実行時は、目的と期待される効果を全社に明確に伝え、従業員の協力を得ることが大切です。


    ステップ(5)効果測定のKPIを設計する

    施策の効果を測定するため、エンゲージメントスコア、離職率、生産性指標などKPIを事前に設定しましょう。どの指標がどれだけ改善すれば成功とみなすかを明確にしておきます。

    KPIは「エンゲージメントスコア」」、「離職率」、「生産性(売上/従業員数)」、「休職率」、「採用充足率」など、経営指標と結びついたものを選びましょう。また、定期的(四半期毎など)に設定したKPIをモニタリングし、施策の効果を検証してください。

    効果が出ていない施策は、原因を分析して改善するか、リソースの無駄を避けるために中止することも検討しましょう。

    ステップ(6)PDCAサイクルを回して継続的に改善する

    施策は一度実施して終わりではなく、PDCAサイクルを回して継続的に改善しましょう。定期的に検証し、うまくいった施策は他部署へ横展開、うまくいかなかった施策は改善または中止します。従業員アンケートやヒアリングを定期的に実施し、現場の声を拾い上げて施策に反映させましょう。

    経営環境や従業員の価値観は変化するため、常に現状に合った施策にアップデートしていくことが重要です。PDCAを回すことで、ウェルビーイング経営が形骸化せず、実効性のある取り組みとして定着します。


    ウェルビーイング経営の効果測定|KPIと投資対効果の考え方

    ウェルビーイング経営の成果を可視化し、経営層への説明責任を果たすためには、適切なKPI設計とROI算出が不可欠です。効果測定の具体的な方法を解説します。

    測定すべき3つのKPI領域

    ウェルビーイング経営の効果は、従業員指標、業績指標、組織指標の3領域で測定しましょう。

    • 従業員指標:エンゲージメントスコア、従業員満足度、離職率、休職率など
    • 業績指標:売上高、営業利益率、生産性(売上/従業員数)、イノベーション件数(新規事業や改善提案の数)など
    • 組織指標:採用充足率、応募者数、企業ブランドランキング、ESG評価スコアなど

    3つの領域を総合的に測定することで、ウェルビーイング施策が経営成果につながっているかを多角的に評価できます。

    投資対効果(ROI)の算出方法

    ウェルビーイング施策への投資額と、それによる経済的効果を比較してROIを算出しましょう。

    投資額の算出では、研修費用、ツール導入費用、施設改修費用、人件費など、ウェルビーイング施策にかかったコストを集計します。また、効果の算出では、離職率低下による採用コスト削減額、生産性向上による売上増加額、休職率低下による代替コスト削減額など、経済的効果を可能な限り数値化しましょう。

    最終的に、次の式から算出し、投資対効果を明確にしていきます。

    ROI=(利益=効果ー投資額)/投資額×100


    完全に数値化できない効果(企業ブランド向上、イノベーション創出など)は、定性的な成果として補足説明することが大切です。

    経営層を納得させるための報告と提案のコツ

    経営層にウェルビーイング経営の成果を伝える際は、以下のポイントをおさえると効果的です。

    • 経営指標との関連を明確に示す
    • ストーリーで語る
    • 定性的な成果も伝える
    • 中長期的な効果を説明する

    経営層が関心を持つ指標(売上、利益、離職率、採用コストなど)との関連を明確に示しましょう。

    「エンゲージメントが◯ポイント向上した結果、離職率が◯%低下し、採用コストが◯円削減された」など、因果関係をストーリーで語ります。数値だけでなく、従業員の声(アンケートのコメントやインタビュー)を紹介し、定性的な成果も伝えましょう。

    また、継続的な投資の必要性を伝えるためには中長期的な効果(人材の質向上、イノベーション創出など)も説明することが重要です。短期的な成果だけでなく、組織の持続的成長につながる投資であることを示すことで、経営層の理解と支援を得られます

    よくある質問(FAQ)

    Q1. 健康経営優良法人(ホワイト500/ブライト500)の認定取得は、ウェルビーイング経営と両立しますか?

    A. はい、強力な推進力となります。


    健康経営優良法人の認定要件では、PDCAサイクルの実行や推進体制の整備が求められます。これらはウェルビーイング経営に必要な基盤そのものです。

     

    健康経営ガイドブックは、方針・体制・施策・評価改善を一体で整理しており、ウェルビーイング経営の基盤整備にも活用できます。


    認定取得をマイルストーン(中間目標)として設定することで、社内の推進体制を整えやすくなります。ただし、認定取得自体が目的化しないよう注意が必要です。

     

    参考:経済産業省「健康経営ガイドブック」




    Q2. サーベイ(調査)ツールは何を使えば良いですか?

    A. 目的に応じて組み合わせることが一般的です。


    法令遵守のための「ストレスチェック」、生産性測定のための「WHO-HPQ」、組織状態を把握するための「エンゲージメントサーベイ(eNPS等)」などを、目的に合わせて組み合わせて活用します。


    従業員の負担を減らす観点では、ストレスチェックに独自の設問(生産性や働きがい等)を追加する形(80項目版など)で実施する方法も効率的です。


    Q3. 学術モデル(PERMAGallup)は実務でどう使いますか?

    A. 施策を「どの要素に効かせるか」で分類し、施策の整理と運用に使ってください。

    PERMAは、ポジティブ心理学の創始者マーティン・セリグマン博士によって提唱されたウェルビーイングを 5要素(Positive Emotion/Engagement/Relationships/Meaning/Accomplishment) に整理する枠組みです。


    アメリカのGallup社も同様に、ウェルビーイングを 5要素(career/social/financial/physical/community) として整理しています。

     

    実務では、これらを「評価のための理論」ではなく、施策を並べ替えるための整理軸として使うと扱いやすくなります。具体的には、各施策に対して「どの要素を狙う施策か」を付記し、要素ごとに施策を並べて見える化します。


    そうすると、施策の偏りや抜けを整理しやすくなり、あわせて要素別に振り返る観点(評価・改善)も置きやすくなります。


    Q4. 個人情報の取り扱いが心配です。どうすれば良いですか?

    A. 明確な規定作成と役割分担が必須で、ルール整備が推奨されます。


    健康情報は「要配慮個人情報」です。就業規則とは別に「健康情報取扱規程」を策定し、情報の取得・管理・利用範囲を明文化してください。

     

    目的・アクセス権限・同意プロセスも明文化しましょう。原則として、人事権を持つ上司には詳細な病名は伝えず、就業上の配慮に必要な情報(業務制限の内容等)のみを医師を通じて伝える運用が推奨されます。


    Q5. テレワーク(リモート)中心で、従業員の健康状態が見えにくいのですが?

    A. 高頻度・短時間のパルスサーベイと、オンラインでの対話をセットで運用しましょう。


    高頻度・短時間の「パルスサーベイ(コンディションチェック)」で気分の変化を定点観測することが有効です。

     

    あわせて、オンライン1on1や雑談タイムを設けるなど、デジタルツールを活用したケア体制を構築しましょう。1on1の運用は標準化し、数字と対話をセットにして進めることが有効です。


    ウェルビーイング経営を加速する「健康経営コンサルティングサービス」

    ウェルビーイング(well-being)経営は、従業員の幸福度を高めることで組織の持続的成長を実現する戦略的な経営手法です。健康経営との違いを理解し、経営課題とウェルビーイングを紐づけ、計画的に施策を推進することで、生産性向上、離職率低下、エンゲージメント向上、企業ブランド価値向上といった経営成果を実現できます。

    パーソルビジネスプロセスデザインが提供する「健康経営コンサルティングサービス」は、健康経営やウェルビーイング経営の推進を包括的に支援するサービスです。

    現状分析から施策設計、効果測定まで、専門コンサルタントが伴走し、自社の経営課題に最適なウェルビーイング施策の実現をサポートします。従業員の幸福度と経営成果の両立を目指す方は、ぜひサービス導入をご検討ください。

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