健康診断結果報告書は提出の義務がある
企業には健康診断結果報告書を作成し、提出する義務があります。
労働安全衛生規則の第52条には「健康診断結果報告」について、次のように記載されています。
※引用: e-Gov「労働安全衛生規則」
定期健康診断を実施した場合、報告書の作成が必要となるためあらかじめ準備しておくことが必要です。
従業員数の規模が大きい企業では、作成する報告書の枚数も多くなりますので、書き方や提出方法をしっかりと確認しておきましょう。
1-1. 提出が義務付けられている健康診断結果報告書の種類
1-1. 提出が義務付けられている健康診断結果報告書の種類
報告書の提出が義務付けられている健康診断は13種類あり、次のとおりです。
健康診断の種類 | 結果報告書の名称 |
---|---|
1. 定期健康診断 (50人以上の労働者を使用している事業場) | 定期健康診断結果報告書 |
2. 特定業務従事者健康診断 (50人以上の労働者を使用している事業場) | 定期健康診断結果報告書 |
3. 歯科医師による健康診断 (50人以上の労働者を使用している事業場) | 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書様式 |
4. 有機溶剤等健康診断 | 有機溶剤等健康診断結果報告書 |
5. 鉛健康診断 | 鉛健康診断結果報告書 |
6. 四アルキル鉛健康診断 | 四アルキル鉛健康診断結果報告書 |
7. 特定化学物質健康診断 | 特定化学物質健康診断結果報告書 |
8. 高気圧業務健康診断 | 高気圧業務健康診断結果報告書 |
9. 電離放射線健康診断 | 電離放射線健康診断結果報告書 |
10. 石綿健康診断 | 石綿健康診断結果報告書 |
11. 除染電離健康診断 | 除染等電離放射線健康診断結果報告書 |
12. じん肺健康診断 | じん肺健康管理実施状況報告 |
13. 指導勧奨による特殊健康診断 | 指導勧奨による特殊健康診断結果報告書 |
また、それだけでなく報告書によって必要となる部数も異なるため注意しておきましょう。具体的には「じん肺健康管理実施状況報告」は3部、その他は2部、準備する必要があります。
1-2. 提出義務の条件
1-2. 提出義務の条件
結果報告書の提出が義務になるのかどうかは、従業員数によって異なります。
定期健康診断や特定業務従事者健康診断、歯科医師による健康診断は、50人以上の労働者を常に使用している事業者に限られます。しかし、「じん肺健康診断」については、その年度中にじん肺健康診断を実施していなくても報告義務がありますので注意が必要です。
1-3. ⻭科医師による健康診断の実施報告義務
1-3. ⻭科医師による健康診断の実施報告義務
歯科医師による健康診断の実施報告義務については、2022年10月に下記のような法改正がありました。
時期 | 内容 |
---|---|
2022年9月末まで(法改正前) | ・定期健康診断結果報告書を使用 ・常時50人以上の労働者を使用する事業者は提出義務がある |
2022年10月1日以降(法改正後) | ・有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書様式を使用 ・労働者数にかかわらず提出義務がある |
2022年10月以降、歯科医師による健康診断を実施した企業は、従業員数にかかわらず「新しい仕様の報告書」を提出するようにしましょう。
1-4. 一部手続きの電子申請が義務化
なお、2025年1月1日、改正労働安全衛生規則等が施行されたことにより、労働者死傷病報告の報告事項が一部改正されています。
具体的には以下の手続きについて、労働基準監督署への報告は電子申請が義務化された点に留意しておきましょう。いずれも厚生労働省の「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を介し、「e-Gov」より直接申請が可能です。
<電子申請が義務化された手続き>
- 労働者死傷病報告(死亡及び休業4日以上/休業4日未満)
- 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
- 定期健康診断結果報告
- 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
- 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
- 有機溶剤等健康診断結果報告
- じん肺健康管理実施状況報告
- 事業の附属寄宿舎内での災害報告(死亡及び休業4日以上/休業4日未満)
※参考:厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)」
定期健康診断結果報告書を提出しないと罰則はあるのか?
では仮に、定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署に提出しなかった場合、罰則はあるのでしょうか。
結論からお伝えすると、罰則に関しては法律では言及されていません。しかしながら、遅滞なく提出しなけれならないため、実施後1~3カ月以内には提出のが望ましいでしょう。
一方で、そもそも健康診断を実施しなければ、50万円以下の罰金が科されますので、怠らないよう気をつけなければなりません。
定期健康診断結果報告書の書き方と記入例
定期健康診断結果報告書の書き方と記入例
次に、定期健康診断結果報告書の「書き方」と「記入例」を10個の項目に分けて解説していきます。
定期健康診断結果報告書を作成するには、厚生労働省が配布しているテンプレートを利用しましょう。下記よりダウンロードすることができます。
>>厚生労働省「各種健康診断結果報告書」
>>定期健康診断結果報告書式第6号(第52条関係)
記入例(1)対象年
まずは、「1.対象年」を記入します。
左端の「元号」に令和の「9」を入れるのを忘れないようにしましょう。そして、健康診断を実施した年を記入します。
記入例(2)健診年月日
次に、「2.健診年月日」です。
ある一定期間で健康診断が行われた場合、報告日に一番近い健診年月日を記入します。1年を通して実施し、まとめて報告したい場合には、左側の「( 月~ 月分)」に記載しましょう。
その横の「(報告 回目)」は、本報告書が報告年度において何度目の提出であるかについて記載します。もし4月から5月にかけて健康診断を実施し、今回が3回目の報告なら、以下のようになります。
記入例(3)事業場の名称
「3.事業場の名称」には企業名だけでなく、以下のように店舗や支店、工場もあればその旨も記載しましょう。
記入例(4)事業場の所在地
「4.事業場の所在地」には本社ではなく、健康診断を実施した事業場の住所を記入します。
記入例(5)健康診断実施期間の名称と所在地
「5.健康診断実施機関の名称と所在地」はそれぞれ記入し、所在地が複数ある場合には別紙を使用しましょう。
記入例(6)在籍/受診労働者数
「6.在籍/受診労働者数」には、パートやアルバイトも含めた労働者数を記入します。
記入例(7)労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務に従事する労働者数
「7.労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務に従事する労働者数」では、以下の表を参考に、該当の業務に携わる人数を記載していきます。
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
※参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
記入例(8)初見のあった者の人数
「8.所見のあった者の人数」には有所見者数の合計ではなく、すべての検診項目のどれかが有所見であった場合の実人数を記入します(他覚所見や歯科検診をのぞきます)。
記入例(9)医師の指示人数
「9.医師の指示人数」は、「8.所見のあった者の人数」のなかで、医師が「要治療」「要精密検査」と判定したなど、生活指導や保健指導を必要とすると指示した人数を入力します。
ただし、医師が「再検査」を指示する場合は、「9.医師の指示人数」に入れません。
記入例(10)産業医の氏名・所在地・事業者職氏名
「10.産業医の氏名・所在地・事業者職氏名」には、それぞれ氏名と所在地を記入しましょう。
定期健康診断結果報告書の提出方法
前述したように、2025年1月1日より、労働安全衛生法関係の一部の手続きにおいて、電子申請が原則義務化されました。
これに伴い、定期健康診断結果報告書についても電子申請による提出が求められることとなります。具体的な提出方法について以下解説します。
電子申請の概要
従来の健康診断結果報告書等の申請方法は、紙と電子申請の2種類でしたが、2025年1月1日より、事業者の負担軽減や処理作業の効率化を促進を目的に一部の手続きが原則義務化となりました。
なお、一定期間の経過措置が設けられており、当面の間は書面による報告も可能となっています。また、電子申請はモバイル端末での利用も可能です。
対象となる手続きについては、「1-4. 一部手続きの電子申請が義務化 」でも解説していますので、ご確認ください。
電子申請サービスの利用方法
電子申請サービスは、厚生労働省が提供する「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」または、デジタル庁が運営する「e-Govポータル」より手続きをすることができます。
24時間いつでもオンラインで申請でき、役所の窓口が閉まっている時間帯でも利用可能である点、マイページで申請状況をすぐに確認できる点など、利便性が高く申請作業を効率化することができるでしょう。
<電子申請の流れ>
- 利用準備を行う(e-Gov アカウント、G ビズ ID または Microsoft アカウントを作成する)
- 帳票作成メニューから「定期健康診断結果報告書」を選択
- 入力エリア(画面右側部分)に必要項目を入力する ※入力の途中で保存可能です。
- 必要に応じて書類(ファイル)を添付する ※添付可能なサイズは合計15MB以下です。
- 入力内容を確認し「申請に進む」をクリックする
- 申請完了後に「申請結果」ページが表示され、「到達番号」が割り振られる
- 「メニューに戻る」をクリックする
- PDFファイルとして保存・印刷する(控えとして利用する)
※参考:電子申請サービス利用説明書(PDF)
定期健康診断結果報告書を効率的に作成するポイント
- 事業場情報を適切に管理する
- 予約段階で健診機関や実施日を記載する
- データ管理を徹底する
ポイント(1)事業場情報を適切に管理する
ポイント(1)事業場情報を適切に管理する
「労働保険番号」「会社の名称」「所在地」「事業の種類」などは頻繁に利用しますが、滅多に変わることがありません。
スプレッドシートなどにリスト化して保存し、アクセスしやすいように管理しておけば、検索する時間を短縮できるでしょう。
ポイント(2)予約段階で健診機関や実施日を記載する
ポイント(2)予約段階で健診機関や実施日を記載する
医療機関に健康診断を予約した段階で「健診機関」や「実施日」などをあらかじめ記入しておけば、スムーズに提出できるようになります。
健診後に発生する集計作業に集中できるよう、事前に記載できるものは済ませてしまいましょう。
ポイント(3)データ管理を徹底する
ポイント(3)データ管理を徹底する
健康診断の結果をしっかりとデータ管理することで、報告書作成が効率的に進みます。
データ化することで作業者の業務負担が減り、従業員に素早いアプローチができるのがメリットといえるでしょう。
定期健康診断結果報告書の管理業務ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
定期健康診断結果報告書を作成する際、見本を参考に記入することでミスを減らすことができます。
あらかじめ把握しておくことで効率的に作業できますので、ぜひこの記事で説明した「提出方法」を参考に、定期健康診断結果報告書の作成や提出を進めましょう。
しかし、定期健康診断結果報告書の作成や健康診断の実施には多くのリソースが必要になってしまいますので、健康診断の管理業務を外部へ委託する(アウトソーシングを利用する)ことで担当者の負担を軽くすることが可能となります。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、健康診断の管理業務をトータルサポートしており、定期健康診断結果報告書の作成だけでなく、医療機関の予約代行や精算代行まで行っているのが特徴です。
お客様のニーズに合わせて作業内容をカスタマイズすることもできますので、健康診断の実施で自社のリソース不足にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。