住宅ローン営業の急拡大と、事前審査チームの立ち上げ。通常であれば両立の難しい二つの課題に直面したSBI新生銀行様。「人手を増やすだけでは限界がある」・・そんな現場の声をきっかけに、業務の一部を外部に委ねるBPOの導入がスタートします。導入までの試行錯誤や立ち上げ時の苦労と、築いてきた信頼関係。決して平坦ではなかったプロセスの先に『事前審査件数が約5倍に増加し、コストの削減にもつながる』という、大きな成果が待っていました。今回は、現場の最前線でこの取り組みを牽引してきた二人の担当者に話を伺います。
課題・背景:審査体制の見直しにおける人員確保とコスト削減
ー まずはBPOを導入するに至った経緯から教えてください。
残間様:2023年8月、審査体制の見直しを検討していたタイミングで、BPO導入がスタートしました。もともと当社では住宅ローンの本審査のみを行っており、事前審査の仕組みはありませんでした。しかし、住宅ローンの取り扱い規模を拡大する方針に転換したことで、フロント・バック両面での業務強化が急務となったんです。
そこで社内に業務体制を見直すプロジェクトチームを立ち上げました。その中で、派遣スタッフをご紹介いただいていたご担当者から、BPOについてのご提案を受けたのが導入のきっかけです。
株式会社SBI新生銀行
住宅ローン部 副部長
残間 桃子さま
ー 審査体制を見直す中で、なぜBPOを選ばれたのでしょうか?
残間様:もちろん、業務の見直しという観点もありましたが、それ以上に「このままスタッフの数を増やし続ける形では立ち行かない」という課題感がありました。人員体制の限界を見据えたうえで、業務効率の向上やコスト削減を目的に、アウトソーシングサービスの導入に踏み切った、という背景があります。
ー BPOのどういったところに効果を期待していましたか?
田中様:審査オペレーションの量に応じて短期間で人員を増やそうとすると、どうしてもコストがかさみますし、新たに入った方への研修にも時間が必要になってきます。その結果、既存メンバーが本来の業務に集中できなくなり、全体のオペレーション効率が下がってしまう。最悪の場合、審査そのものが止まってしまうリスクもあります。そうした事態を未然に防ぐためにも、アウトソースには大きな効果を期待していました。
株式会社SBI新生銀行
住宅ローン部 営業推進役
田中 祥子さま
残間様:理想は、その日に入ってきた審査はその日のうちに完了させ、積み残しをゼロにすることです。審査のスピードは、デベロッパーからの信頼にも直結する重要なポイントなので、以前から大きな課題として捉えていました。
ー 通常であれば、どのぐらいが理想のスピード感なのでしょうか?
田中様:一般的には、住宅ローンの審査には「事前審査」と「本審査」の2段階があります。事前審査は、お客様の申し込み内容を確認してから結果をお伝えするまでに、通常2営業日程度かかります。ただ、即日で結果を出す金融機関もあるため、スピード感が求められる部分でもあります。一方、本審査になると、5~6営業日を要するのが一般的ですね。
残間様:他行では、事前審査を即日で完了させるケースもありますが、内容としては個人信用情報の確認のみで完了するなど、比較的ハードルの低い審査が一般的です。一方で、弊社の事前審査は、本審査とほとんど変わらないレベルの厳密なチェックを行っています。そのため、即日回答は難しい反面、最初の段階から精度の高い審査ができるという強みがあります。
取り組み内容:BPO導入によるスピード感のある対応
ー パーソルビジネスプロセスデザインを選んだ決め手は?
田中様:パーソルさんをパートナーとして選んだ理由はいくつかあって。まず、人材会社ならではの強みとして、短期間での要員追加が可能であること。そして導入準備期間中には、派遣スタッフとして研修業務を先行して行うことができた点も大きかったです。また、積み残し業務ゼロを前提とした委託が可能であり、業務の繁閑による案件数の変動にも柔軟に対応していただける提案内容だったこと。さらに、費用面でも案件ごとの従量制ではなく、一定のコストで運用できるという点も非常に魅力的でした。最終的に、即日対応など柔軟性の高いオペレーションを提案してくださったのが、パーソルさんだけだったというのも決め手のひとつです。
ー BPO導入までの社内での承認は?
田中様:当時、社内ではまだ委託の実績がなかったため、単純なコスト比較ができる状況ではありませんでした。そのため、見積もりを1案件あたりのコストに換算するなど、比較検討しやすいように工夫しながら社内説明を行いました。
また実務面では、業務が繁忙を極める中、一部の業務を新たな委託先へ切り替えるという対応が必要でした。ただ、これまでの部門運営を大きく変える決断でしたので、社内説明の段階では現場担当者から不安の声も。
そこで、短期的な負荷ではなく、長期的に見て必要な変化であること、またこの対応が自身の業務改善にもつながるということを丁寧に説明し、理解を得ていきました。
ー BPOを導入して最初から順調でしたか?
残間様:いえ、正直まったくそんなことはなかったです(笑)。8月からの事前審査スタートに向けて準備は進めていたのですが、実際には9月、10月に入ってもなかなかうまく稼働しませんでした。私自身、アウトソーシングチームを持つのは初めての経験で、手探りの部分も多くて。一方で、営業はしっかりと案件を取ってきてくれるのに、肝心の審査チームが止まっているような状態になってしまい、業務のバランスが崩れてしまったんです。結果として大きな遅延には至りませんでしたが、営業と審査、両輪を同時に走らせるという状態に持っていくまでには、かなり時間がかかりました。本格的にスムーズに回り始めたのは、ようやく翌年2月頃からだったと思います。
振り返ってみると、システムの実装以上に時間がかかったのは、“関係性の構築”でした。今思えば、もっと私たちの側から歩み寄って、パーソルさんにとって何がボトルネックになっていたのかを丁寧に聞いていれば、もう少しスムーズに立ち上がっていたのかもしれないなと思っています。
ー 大変な状況から好転したきっかけは、何かありますか?
残間様:やはり、窓口となってくださった方をはじめ、現場の皆さんの真摯な対応、これに尽きます。立ち上げ当初は、ほぼ毎日のようにパーソルさんとミーティングを重ねていましたが、その中で一切言い訳をせず、常に誠実に向き合ってくださっていたのが印象的でした。こちらから「もう少しこうしていただきたい」とお願いすると、「来週までにはなんとかします」と即座に応えてくださる。その積み重ねが信頼関係につながり、私にとっては、それがこの取り組みの中で最も大きな要素だったと感じています。
ーBPO導入プロジェクトの担当者として、最もプレッシャーを感じたのはどのような時でしたか?また、どのようにそれを乗り越えましたか?
残間様:BPOの導入にあたって、企画・契約部門から私たち現場部門へと担当が引き継がれることになったのですが、その段階で、現場としては想定していなかったことがいくつもありました。社内でのすり合わせが十分にできていなかったため、結果的にパーソルさんにご迷惑をおかけしてしまう場面もあったと思います。とはいえ、「それも承知の上で進めていますよね」という共通認識だけで現場に落とし込むには無理があり、物理的な制約やシステムとの適合性など、実際に稼働を始めてみないと判断できないことも多かったです。立ち上げ当初は本当に厳しい状況でした。
成果:BPO導入による審査件数のアップ及び第三者視点でのフィードバック
ー BPO導入による効果として、実感できたことは何でしょうか?
田中様:私が前任者からこの業務を引き継いで、ちょうど1年ほど経ちます。以前は、審査業務といえば多くの派遣スタッフを抱えて、自分たちでオペレーションも管理も教育も担っているという印象が強く、「相当大変な仕事だろうな」と思っていました。
実際に自分が携わるようになって実感したのは、パーソルさんのように業務に集中して取り組んでくださる存在の心強さです。もちろん、どうしても委託できない部分は私たちが担いますが、全体としては圧倒的に管理がしやすくなりました。
社内には多くの派遣スタッフを抱えて運用しているチームもありますが、休暇や離職などで急に人員が減ってしまうリスクも少なくありません。その点、今の私のチームは必要最低限の人員で安定して業務を回せており、本当にありがたいなと感じています。
また、新しい業務が始まる際にも、私たちは十分な研修時間を確保するのが難しいのですが、既に信頼関係が築けているパーソルさんにお願いできることで、負担もプレッシャーもかなり軽減されていると感じています。
ー 心身ともにかなり負担が軽減されたんですね。その変化は数字面にも現れているのでしょうか?
残間様:BPO導入当初は、業務にまだ慣れていなかったこともあり、事前審査の回答に5~6営業日かかるケースもありました。しかし現在では、平均して約1.9営業日以内にお客様へご返答できるようになり、「審査が遅い」といった声はほとんど聞かれなくなりました。
この審査スピードの改善によって、業務全体の信頼性も向上し、私たちはさらに提携先の拡大に力を入れられるようになっています。実際、売上は前年と比べて2倍以上に伸びており、事前審査の件数も3年前と比べて約5倍に増加しました。業務の質と量の両面で、大きな成果につながっている感覚があります。
ー BPO導入後、現場の社員の方々から印象的な言葉や反応はありましたか?
田中様:営業部門からは「事前審査が早くなって本当に助かっている」という声をもらう機会が増えました。現場での実感としても、審査のスピードが営業活動の後押しになっているのを感じますし、BPO導入の効果がしっかりと現場にも届いていることを実感していますね。
ー 今回のBPO導入の成功事例を、他の部署や他の企業に広げるとしたら、どのようなメッセージを伝えたいですか?
田中様:BPOについては、半期ごとに契約の見直しを行っており、「次の3ヶ月後、半年後はどう動かしていきましょうか?」といった形で都度調整をさせていただいています。その際、過去の実績に基づいたデータをもとに、業務の繁閑に応じた最適な人員数を算出していただいており、単なる委託というより、コンサルティング的な側面もあると感じています。
今後さらに業務を拡大していく中で、そうした提案を主体的にいただけるのは非常に心強く、実務面でも大きな支えになっています。
残間様:私たちとしても、ここまで多くの業務をアウトソースするのは初めての取り組みでしたが、パーソルさんはその道のプロフェッショナル。さまざまな企業とやり取りをされているからこそ、経験値が非常に豊富です。
難しいオーダーをお願いした際も、「無理です」と断るのではなく、どうすれば実現できるかを一緒に模索してくださる。その柔軟な姿勢に何度も助けられてきました。常にお互いにとって最適な形を探りながら、伴走していただける存在として、私は絶大な信頼を寄せています。
ー BPO利用について、ご展望や期待などあればお聞かせください。
田中様:パーソルさんがデータをもとに私たちの業務を分析し、第三者の視点で気づきを与えてくれるというのは本当に助かっています。自分たちだけでは見落としてしまうような課題に気づけることも多く、社内の上司とはまた異なる角度からのフィードバックを今後もぜひいただきたいと思っています。
また、実際に業務にあたってくださっているスタッフの皆さんが、非常に真摯な姿勢で日々向き合ってくださっているのも大きな安心材料です。むしろ、パーソルさんにお願いしないと対応が難しい業務も出てきているほどで、これからもぜひ二人三脚でご一緒できればと思っています。
担当者コメント
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
BPO事業本部 BPO第1統括部
東日本BPO第2営業部
ビジネスソリューション2課 マネジャー 細野 誠治
「パーソルを選んでよかった」これほど嬉しい言葉はないですね。現場のメンバーは、苦しい場面でもお客さまへ真摯に向き合い続けてくれた。だから私は、お客さまと直球で話し続けられた。お客さまの目標やありたい姿を想えばこそ、本プロジェクトの改善・改良に近道はないと信じられたのです。ご迷惑もおかけしましたが、残間さまや田中さまは寛大なお心で受け取ってくださり、感謝いたします。一緒に歩んでいただけたことが「今」に繋がったのだと思います。SBI新生銀行様のご発展に、今後も伴走パートナーとして選ばれるよう、惜しみなく挑戦を続けます。
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
BPO事業本部 BPO第1統括部
東日本ビジネスセンターサービス部
ビジネスセンター運用1課 ユニット長
小野 裕明
どんな困難な状況でも『真摯に、誠実に。』をモットーに対応しています。これは私だけでなくリーダー含めプロジェクトに浸透しています。難しいと思えるご依頼にも「どうすれば対応できるか?」と、プロジェクトの全員で考えることが習慣づいております。お客さまは今後も急スピードで成長されると思いますので、遅れを取らぬようメンバー一同、精いっぱい伴走させていただきます!目指せベストパートナー(心の友よ)!