東京湾岸部の新たなシンボルで、人がつながり、アイデアが育つ。
2025年、野村不動産は新宿から芝浦への本社移転を機に、新たなオフィス運営の形を模索しました。目指したのは、効率化だけでなく「社員へのハッピー」と「訪れるお客様への感動」を生み出す場所。その実現のために導入されたのが、パーソルビジネスプロセスデザインによる「受付コンシェルジュ」と「フロアラウンド」というBPOサービスです。
プロジェクトの背景にはどのような想いがあり、それをどう具現化したのか。野村不動産とパーソルビジネスプロセスデザイン、両社のキーマン4名に、プロジェクトの全貌と「人が介在する価値」について語っていただきました。
「事務的な処理」から「感動体験」へ。新本社移転で挑んだ、脱・受け身の受付改革
ー 今回のプロジェクトが立ち上がる前、新宿本社時代にはどのような課題を感じていらっしゃったのでしょうか?
野村不動産 恩田様:新宿野村ビル時代は総務部が受付を管理していましたが、どうしても「受け身の姿勢」になってしまっていたという課題感がありました。お客様がいらっしゃったら受付をして、機械的に会議室をご案内する。そうした事務的な対応ではなく、もっと野村不動産のファンになっていただけるような、温かい雰囲気づくりができないか。「思いやりのあるおもてなし」を実現し、より能動的な新しい受付へと変革したいという強い想いが、今回の原点にあります。
野村不動産 浦田様:今回の移転では、新宿から芝浦へ場所が変わることで、多くの社員にとって通勤時間が20~30分増えることになります。社長からも懸念がありましたが、ハードだけでなくサービスなどのソフト面も含めて、社員が「行きたくなる」「モチベーションが上がる」オフィスにする必要がありましたね。
野村不動産 恩田様:そこで出てきたのが「社員へのハッピー」というキーワードです。お客様へのおもてなしはもちろんですが、文房具の整理や備品の発注といったノンコア業務を「フロアラウンド」のスタッフにお願いすることで、社員が本来の業務に集中できる環境を整える。それこそが社員の幸せに繋がると考え、構想に至りました。
野村不動産株式会社
芝浦プロジェクト本部
グループオフィス戦略室
推進課 課長
浦田 伸彰さま
ー 他社の事例なども参考にされたのですか?
野村不動産 浦田様:はい。移転に際して他社様の受付を見学する機会があったのですが、そこで非常に温かく迎え入れていただき、部外者である私たちをファミリーのように扱ってくれる雰囲気に感銘を受けました。
受付の印象が企業の印象、ひいては商談の結果にも繋がると肌で感じ「私たちもこういう温かい受付を作りたい」と強く思うようになったんです。
決め手は「社員へのハッピー」と「現場視点」。抽象的な「おもてなし」を具現化した独自の提案力
ー 多くの選択肢がある中で、今回もパートナーとしてパーソルと共に歩むことを決断された、最大の「決め手」は何でしたか?
野村不動産 恩田様:最大の決め手は、私たちが求める「おもてなし」に対して、具体的な例を示して提案していただいたことです。
会議室で話している理想論ではなく「現場で何が起きていて、どうすれば実現できるか」というボトムアップの視点からの提案が非常に明確でした。現場のことを一番理解し、具体的に動ける会社様だと感じたことが理由です。
野村不動産ホールディングス株式会社
総務部 総務一課 課長
恩田
大輔さま
ー 野村不動産様からの「想像から創造へ」「ラグジュアリーホテルのおもてなし」という非常に高いオーダーに対し、BPOのプロとしてどのような「設計図」を描かれたのでしょうか?
パーソル 石井:ご提案依頼の中にあった「奥行きのあるおもてなし体験」という言葉が非常に印象的でした。従来の延長線上で考えていてはご期待に応えられないと感じ、今回は「既存からの脱却」をテーマに掲げ、業務を「基本価値」と「付加価値」に再定義することから始めました。
正確でスムーズな取次は、従来通りできて当たり前の「基本価値」です。そこに、受付コンシェルジュとしての「付加価値」をどう乗せるか。私たちはその答えを「お客様の感情への共感」と定義しました。
ー 「感情への共感」とは、具体的にどのようなことですか?
パーソル 石井:来訪されるお客様は、商談の目的も違えば、その日のコンディションも様々です。そうしたお客様一人ひとりの感情や状況を私たちがより早く察知し、その場にふさわしいご案内をすること。そして、このBLUE FRONT SHIBAURAに来ることで得られる「特別な体験」を感じていただくことです。
例えば、野村不動産様が大切にされている「ダイバーシティ」を表現するために、3月の国際女性デーにはスタッフのコサージュをシンボルであるミモザに変えるご提案をしました。こうした季節や企業の想いに合わせた演出もそのひとつですが、ここに来ることで気持ちが上向きになり、「より良い感情」を持って商談に向かっていただく。そしてお帰りになる際まで、入り口から出口までの一連の流れを通して特別な体験をしていただく。そうしたプロジェクトにしていこうと考えた結果のご提案でした。
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
BPO事業本部 BPO第1統括部
東日本スマートワークサービス部
スマートワーク運用3課 ユニット長
石井 奈津美
ー 村田さんは、そのコンセプトを実際の「目に見える形」にする役割だったと伺っています。「来訪者の導線設計」や「制服の選定」において、どのような意図や計算を込められたのでしょうか?
パーソル 村田:動線については、当初は一方通行を想定していましたが、実際に歩いてみると不便な点があり、出口を自由に使える運用に変更するなど、現場での調整を繰り返しました。また、会議室の自動扉でお客様を待たせないよう工夫したり、眺望が良い部屋ではあえて上座と下座を入れ替える提案をしたりと、細部までこだわりました。
制服については、かなり時間をかけて選びました。コンセプトはこの建物に合わせた「ブルーフロント」です。通年同じではなく、夏は海や空を感じさせる明るい色合い、冬は「冬の海」をイメージしたシックな黒とグレーにするなど、季節感を演出しました。また、受付コンシェルジュとフロアラウンドで業務内容が異なるため別の制服を用意しましたが、遠目で見ても統一感が伝わるようなデザインにしています。
ー 社内でのBPO導入検討プロセスにおいて、議論の的になったポイントや、乗り越えなければならなかったハードルはありましたか?
野村不動産 浦田様:最大の懸念は「グループ会社8社、約3,000名超の従業員が初めて集結するこの場所で、その全てのお客様を本当に対応しきれるのか」という点でした。待合スペースだけでも100名規模のお客様がいらっしゃいます。また、VIPの方は他のお客様と動線も対応も異なります。どこまでを有人対応にし、どこからシステムに任せるか。何度もシミュレーションを行い、議論を重ねました。
最終的には、来客会議室である「Villa」と応接室である「Salon」でオペレーションを分ける、という結論に至りました。Villaは社員がお迎えに伺い、Salonは受付コンシェルジュがSalonへのご案内や飲料提供も含めて対応する。この運用ルールを固めるまでの議論が一番のハードルでした。
グループ8社・3,000名の巨大オフィスを支える。品質基準「50項目」の徹底と、現場主導のルール作り
ー 構築フェーズにおいて、トレーナーとして「品質の基準作り」をされたと思います。「気が利く」といった個人の資質に頼りがちな要素を、どのように「スキル」として定着させたのでしょうか?
パーソル 村田:今回はフロアラウンドと受付コンシェルジュの同時立ち上げということもあり、「高品質」であることが絶対条件でした。よって開業前の1ヶ月間、まずは座学で「おもてなしとは何か」を学ぶ研修を行いました。その後は基礎を徹底するために、タブレット端末を使って自分たちの所作を撮影し、その場にいる全員で見て指摘し合うという実践的な研修を行いました。
また、独自の品質基準(マナーチェック)も、通常は25項目程度のところを、今回は2倍の50項目に設定し、難易度を上げました。これをクリアできなければご要望には応えられないと考え、自己チェックとフィードバックを繰り返して定着を図りました。
パーソル 石井:スキルだけでなく、マインドセットの変革も重要でした。採用したメンバーに対し、1ヶ月間は連日「おもてなしを体現するには」というテーマでマインドをセットアップしていきました。
パーソル 村田:現場のスタッフにはレベルの高い要求をしましたが、弱音を吐かず懸命に取り組んで切磋琢磨してくれて、本当に感謝しています。
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
BPO事業本部 BPO第1統括部
東日本スマートワークサービス部
スマートワーク運用3課
村田 智子
ー プロジェクトを進める中で、「ここが最大の山場だった」「一番頭を抱えた」という場面について教えてください。
野村不動産 恩田様:やはり移転直後のバタバタは最大の山場でした。実際に現場で何が起きているかを毎日確認し、パーソルさんと膝を突き合わせて課題を解決していく日々。夏のあいだは「とにかく働いた」という記憶があります(笑)。
現在抱えている課題としては、ルールの周知ですね。私たちが意図した運用ルールを、いかに全社員に伝えていくかというのは、今後も継続的な課題だと感じています。
野村不動産 浦田様:私も移転直後のエントランスの混雑対応が一番心配でした。複数のお客様が同時に来場される中で、本当に対応しきれるのかと経営層からも懸念されていましたが、実際にはうまく対応していただき、今となっては安心しています。
現在抱いている期待としては、受付コンシェルジュやフロアラウンドの方々が、さらに「個性」を出してくれることですね。業務ができるのは前提として、社員から「あのコンシェルジュやフロアラウンドのかたはよく話す人だとか、話題の引き出しが多い人だよね」などと認知され、親しまれ頼られる存在になってほしいと思っています。
ー 両社の連携において、お互いの存在が支えになったと感じる具体的なエピソードはありますか?
パーソル 石井:開業前から現在に至るまで、毎日助けていただいています。特に移転直後の混乱期、恩田様が毎日現場の控室まで足を運び、「何か困ったことはないか」と声をかけてくださったことは本当に心強かったです。そのおかげで、課題を止めずにスピーディーに解決できました。
野村不動産 恩田様:私たちは逆に、パーソル様の「気づき力」の高さに助けられています。日々の業務の中で、「こういうことがありましたが、こうした方が良いのではないでしょうか」という改善提案が現場から自然と上がってくる。その観察眼と提案力には常に感謝しています。
最大の賛辞は「クレームゼロの静寂」。社員がコア業務に集中できる「頼られる」存在へ
ー BPOサービス開始直後ではありますが、社内の風景や社員の方々の表情に、どのような変化の兆しを感じていますか?
野村不動産 浦田様:受付コンシェルジュに関しては、「何も言われない」ことが最大の評価だと感じています。オフィス運営において、カフェや空調などには様々な要望やクレームが出がちですが、受付コンシェルジュに関してそういったネガティブなフィードバックはほとんどありません。これは「普通に対応できて当たり前」という難しいラインを、とてもスムーズにクリアできている証しだと思います。
フロアラウンドについては、社員から「これもお願いできますか?」「業務拡張できませんか?」といった問い合わせが増えてきました。今まで自分たちでやるしかなかった庶務から解放され、頼りにされている証拠だと思います。
パーソル 村田:お客様から「ここの受付の方は細かいところまで気がつきますね」とのお言葉をいただいたときは、メンバーもとても喜んで報告してくれました。
ー 実際に現場で稼働しているスタッフの方々からは、どのようなやりがいや声が上がっていますか?
パーソル 村田:お褒めの言葉をいただいたこともそうですが、メンバー自身がお互いにフィードバックし、改善するサイクルができていることにやりがいを感じているようです。お客様視点で物事を考え、行動することが定着してきていると感じます。
AI時代だからこそ際立つ「人間力」の価値。企業と人が共に成長し「行きたくなるオフィス」を目指して
ー このプロジェクトを振り返って、もしタイムマシンで「BPO導入検討時の悩み多き自分(またはチーム)」に声をかけるとしたら、どのようなアドバイスを贈りますか?
野村不動産 恩田様:僕はその頃の自分に「この人たちに任せておけばいいんだよ、なんとかなるよ」と言いたいですね。当時は決められないことも多く、懸念がいっぱいありましたが、結果としてきちんと収まっていますから。
ー 今回の取り組みを、もし他企業ではたらく同様の部門担当者様に紹介するとしたら、このBPOサービスの「一番の価値」をどう伝えますか?
野村不動産 恩田様:パーソル様は「気づき力」が高く、きめ細やかで丁寧な対応をしてくださる企業様なので、安心して任せられますよ、と伝えたいですね。
野村不動産 浦田様:最近は受付の無人化・機械化が進んでいますが、私たちはあえて「人」を残す選択をしました。実際に運用してみて、機械にはない「人的な温かみ」こそが、これからの企業の価値や魅力になっていくのだと確信しています。AI化が進む時代だからこそ、対人対応の価値は高まっていくと思います。
ー 今後、この「新本社」という舞台で、野村不動産様とパーソルチームが共に目指していきたい「理想のオフィスの姿」をお聞かせください。
パーソル 石井:この来訪エリア自体すでに素晴らしい空間ですが、そこにメンバーの「おもてなし」で、さらに彩りを加えられるような存在になりたいと考えています。フロアラウンドについても、社員の皆様からのフラットな相談窓口として、一緒にオフィスを作り上げていく存在を目指します。現状に満足せず、アップデートし続けて参ります。
野村不動産 恩田様:この素晴らしい眺望や立地の良さを、お客様にもっと伝えていきたいですね。静まり返った場所ではなく、会話が生まれ、活気のある空間にしていきたい。野村不動産とパーソルさんが一緒になって、お客様にも社員にも「ハッピー」を感じていただけるような、そんな素晴らしい体験ができる場所にしていきたいですね。
担当者コメント
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
BPO事業本部 BPO第1統括部
東日本スマートワークサービス部 スマートワーク運用3課 マネジャー
奥村 成雄
フルリモートから出社回帰、出社+リモートのハイブリット勤務にシフトされる企業が増える中、パーソルの受付BPOは来訪者様だけでなく、出社される社員様への価値提供を如何に広げていけるか?に拘り取り組んでいます。対面価値(人)の最大化と、省力化(改善策やDX等)を組み合わせて、ご来訪・出社される全ての方々に「感動体験」をご提供することをコンセプトにしています。
社員様が「出社したら仕事が捗った」「仕事がスムーズに進みモチベーションがあがった」と感じていただける環境を創り、野村不動産様のご発展の一躍を担う品質をご提供し続けます。パーソルのサービスを通して「野村不動産様のファン」が増え、「パーソルのファン」も増やしていけたら嬉しいですね。
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
BPO事業本部 BPO第1統括部
東日本スマートワークサービス部 スマートワーク運用3課 ユニット長
石井 奈津美
本社移転という大きなイベントに際し、受付コンシェルジュ・フロアラウンド業務について、提案から構築、運用に至るまで「付加価値の提供」にこだわってきました。
来訪されるお客様には「野村不動産の受付は素敵だったな」と、野村不動産グループ社員の皆様には「オフィスにくるといつも快適に働ける」と、ポジティブな気持ちを引き出せる存在であり続けたいです。
恩田様、浦田様には常に現場を気にかけ、一緒にプロジェクトを創りあげていただいており、感謝の気持ちでいっぱいです。現場課題の改善と+αの取組みを積み重ねて、野村不動産様が目指される姿の実現に向け、今後も伴走いたします。
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
BPO事業本部 BPO第1統括部
東日本スマートワークサービス部 スマートワーク運用3課
村田 智子
受付コンシェルジュ・フロアラウンド対応は「高品質」を提供するため、とにかく接客対応の基礎を徹底的に、繰り返し練習しました。根気強くひたむきに反復練習をするメンバーの自主的な姿に、幾度となく救われました。お客様・社員様、すべての方々に「何度も来社したい、また会いたい」と思っていただけるよう、皆様のハッピーのために、今後もメンバーとホスピタリティを追求していきます。
恩田様、浦田様には細かいことまで耳を傾け、常に現場の声を大事にしていただき、ありがとうございました。