セブから佐世保へーー国境を越える経理BPOの移管。
2021年12月にドイツの旧ダイムラー社から分離・独立したダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービス・アジア株式会社様。長年の協業関係にある三菱ふそうトラック・バス株式会社様の顧客およびパートナーの皆様に、商用トラックのリースなどファイナンシャルサービスを提供しています。同社の経理課は、業務の一部をフィリピンのセブにBPOしていましたが、分離・独立を機に、その委託先をパーソルの佐世保支社へと移管。国境を越えた業務の引継ぎプロセスを、インタビュー形式でご紹介します。
海外委託から国内パートナーへ ── 言語と文化の異なる業務移管
ー 本日はよろしくお願いいたします。まず、BPO導入のきっかけとなった背景についてお聞かせいただけますでしょうか。
上野様:私たちはドイツのダイムラーの子会社です。2021年12月までは、乗用車を扱うメルセデス・ベンツ部門と、私たちのトラック部門が1つの法人の中に成り立っていました。当時はグループ全体の方針として、会計業務をフィリピンのセブにあるチームへ委託するプロジェクトが進んでおり、レポート決算業務や買掛金(AP)、売掛金(AR)など、多くの業務を網羅的に外部へアウトソースしていました。その後の法人分離を機に、乗用車部門はセブへの委託を継続しましたが、私たちはグループから切り離されたことで、新たな委託先を探す必要が生じました。その結果、現在お願いしているパーソル様との協業につながっています。
ー 当時、大変だった具体的なエピソードがあれば教えてください。
上野様:最も大きな課題となったのが、委託先であるセブとのコミュニケーションに使用する言語、つまり英語です。私自身も担当しましたし、もちろん社内には英語のできる社員も多くいますが、コミュニケーション上のハードルは決して小さくありませんでした。課題は言語だけではありません。日本の商慣習についても、いざ実務に落とし込むとなると、細かな解釈の違いや認識のズレが生じることも多く、コミュニケーションを重ねる中で、ストレスを感じる場面も、正直に言えば少なからずありました。
ー 導入の検討段階で、特にどのような点に苦労されましたか。
上野様:私自身はその決定の中心ではありませんでしたが、法人が分かれた際、本社としては「セブに代わり、同等の機能をインドに構築したので、今後はインドへ業務を移すべき」という意向があったと聞いています。しかしながら、私たちはすでにセブでの運用を通じ、言語や商慣習の違いが、業務上大きな障壁になることを痛感していました。そこで当時の社長が本社へ働きかけ「日々の請求書処理や入金管理など、日本語リテラシーが不可欠な業務は国内対応で」という体制を提案し、最終的に本社もその判断を受け入れ、現在の形に落ち着きました。
ダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービス・アジア株式会社
経理課
上野 大介さま
ゼロからの業務習得と並行した、困難な移管プロジェクト
ー BPO移管プロジェクトの担当者として、プレッシャーも大きかったのではないでしょうか。
上野様:セブでの運用をパーソル様に移管するにあたり、英語で運用されていたマニュアルなどの内容を日本語へ置き換え、そのうえで業務内容を理解いただくというステップが必要でした。この翻訳・移管作業は、非常に大きなチャレンジだったと思います。
さらにもうひとつ大きかったのは、2021年の法人分離に伴い、東京の経理部署では当社社員のほとんどが新規での採用となりました。そのため移管作業は、当社での実務経験がない新規採用者による、ほぼゼロからのスタートになったのです。我々の入金処理には独自の業務が多く、専用システムを使っている点も含め、まず自分たちが内容を把握することに高いハードルがあります。自分たち自身が理解を深めながら、同時に新たなパートナーであるパーソル様に業務を移管していく並行作業は、プレッシャーもあり大きな挑戦だったと感じています。
ー これまでの弊社との連携のなかで、特に印象に残っているエピソードを教えてください。
上野様:パーソル様への依頼という意味で最も大きかったのは、グループ全体で進めたSAPのアップグレードです。昨年から準備を進め、今年2月に導入しました。当初は「SAPからSAPへの移行なら、それほど負荷は大きくないだろう」と楽観的に考えていた部分もありましたが、実際にはまったくの見込み違い。私たち自身も対応に追われましたが、パーソル様のスタッフの皆様には、大きなご負担をおかけしました。現時点でも完全に安定したとは言い切れない部分も残っていますが、パーソル様の支えがなければ、ここまで業務を維持しながら導入を進めることはできなかったと感じています。今回のSAP刷新を通し、改めて多大なお力添えに感謝しています。
ー 弊社の対応で「パートナーとして頼りになる」と感じた瞬間があれば教えていただけますか。
上野様:個人的な考えですが「経理が威張っている会社には未来がない」と思っているんです。経理はあくまでバックオフィスのいち機能であり、かつ私たち自身がサービスプロバイダであるという意識を持つべきだと考えています。その相手は社内の営業やIT、オペレーション部門であり、その先にはお客様がいます。最終的には私たち経理も「お客様にサービスを提供している立場」として、日々の業務に向き合うべきです。
そうしたなかで、私たち経理にサービスを提供してくださるパートナーの存在は、とても心強いものです。パートナーとの関係性がうまく築けなければ、逆に負担が増えるケースもあり得ますが、パーソル様は、私たちがサービスプロバイダであろうとする姿勢をしっかりと受け止め、縁の下の力持ちとして支えてくださっている。日々それを強く感じています。
「当たり前が当たり前に回る」安心感。付加価値を生むことで見出す、パートナーとしての存在意義
ー BPO移管による最も大きな成果は、どのような点だと感じていらっしゃいますか。
上野様:「外注コストを上回る付加価値」を生んでくれているという点です。企業としてコストを意識するのは当然ですが、一緒に仕事を進めるなかで、単なる工数削減以上の成果を実感しています。特に買掛金(AP)領域では、スタッフの皆さんが会計や税務のルールに精通しており、時には私たちがアドバイスをいただくこともあります。業務を回すことで手一杯になり、見過ごしてしまいがちな点に対して「このやり方は違うのでは?」「ここは修正が必要では?」と、社員と同じ目線で気づきを与えてくれる。そうした働きかけは、まさに付加価値だと感じています。
ー スタッフの知識や経験について、そのほかに効果を感じる場面はありますか。
桜井様:ここ数年の経理業務の変化としては「インボイス制度」の導入が大きなトピックですが、制度の内容に関しては、むしろ「パーソル様のほうが詳しいのでは?」と感じることもあるほどです。また、設立から3年で弊社側は担当の入れ替わりが多かった一方、パーソル様は比較的メンバーが固定され、知識と経験がしっかり引き継がれている。最近では、「これまでどう対応していたのか」を私が伺う場面も多く、人が安定していることの心強さを実感しています。
ダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービス・アジア株式会社
経理課
桜井 希有子さま
ー BPOの移管は、担当者様にとって個人的にはどのような効果がありましたか。
二見様:私は売掛金(AR)を担当し、前身の会社時代から入金業務に関わってきました。当時はセブとのやり取りが多く、チャットで説明しても「電話して良い?」とすぐ返されるなど、言葉の壁を強く感じていました。その点、パーソルさんは指示の意図をしっかり汲み取って、まず理解してから進めてくださる。また、BPOの移管前は採用や育成を自分たちで行っていましたが、現在はパーソルさん側でも育成がしっかりと行われるようになり、負担が大きく減りました。業務をお任せできることで、自身は別の業務に集中できるようになった点も、大きな効果だと感じています。
ダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービス・アジア株式会社
経理課
二見 圭子さま
ー BPOの移管後、現場の社員の皆様からはどのような言葉や反応がありましたか。
上野様:誤解を恐れずに言うと、日本人は相手を大げさに褒めること…「すごいね」「よかったね」と言葉にする文化は、あまりないように思います。ですので、社員から強い不平やクレームが出ていないという点は、むしろ非常にうまく進んでいる証左なのではないかと考えています。日々の業務が滞りなく進み「当たり前のように回っている」ことこそ、何よりの評価ではないでしょうか。
変化への対応力を強みに、未来を拓くパートナーシップ
ー 今回のBPO移管によるポジティブな変化を、他の部署や他の企業様に広げるとしたら、どのようなメッセージを伝えたいですか。
上野様:社内ではすでに他部署でもご支援をお願いしているところがありますが、たとえば私が別の会社で経理業務を担当している知人へ薦めるとしたら「経理を取り巻く変化への対応力」を推すと思います。会計や税制ルールは絶えず変化しており、オートメーションやデジタライゼーションといった潮流が急速に押し寄せている。正直、私たち世代だけでそれらすべてをキャッチアップするのは容易ではありません。
その点、複数の企業で実務を支援しているパーソル様は、業務に関する幅広い知見をお持ちです。そこに非常に大きな強みがある。今後も頼りたい存在ですし、同じ課題を抱える企業があるなら、そこは強くお伝えできるポイントだと思っています。
ー 今後の部門の運営やBPO利用について、弊社へのご要望があればお聞かせください。
上野様:お名前は差し控えますが、これはもう「主担当の方に辞めないでほしい」という一言に尽きます。外注は、依頼に対してスピードと正確性が求められるのが一般的だと思いますが、主担当の方はそこに一歩踏み込んで「本当にこの方法でよいのか」「電子帳簿保存法の観点では少し懸念がある」など、プラスの視点を添えてくださいます。その提案によって気づかされることも本当に多く、私はAIには詳しくありませんが、ある意味で「私にとってのChatGPT」のような頼もしさがあると感じています。
ー 二見様はいかがでしょうか。
二見様:海外拠点での運用では、担当者による品質差が大きく、正直苦労した経験がありました。でも、今のパーソル様は、どの方にお願いしても同じレベルのサービスを提供してくださる。その安定感が本当にありがたいです。人が入れ替わること自体は仕方のないことですが、私の担当業務は特に煩雑で、丁寧な処理が必要になる場面が多い。それでも安定した品質で支えてくださっていることに、日々感謝しています。ぜひこの強みを維持し続けていただきたいと思っています。
ー 桜井様からも、今後の展望やパーソルへの期待についてお聞かせください。
桜井様:私も、同じ想いがあります。これまで国内外含め、いくつものアウトソーシングを経験してきましたが、どうしてもその人個人の能力に依存してしまうケースが多かったんです。それだと、担当者が変わった瞬間にサービスレベルが落ちてしまう。何度もそうした場面を見てきました。
しかしパーソル様は、主担当の方が継続して関わってくださっていることもあり、メンバーが入れ替わってもサービス品質が大きく落ちたと感じたことがありません。これは他のアウトソーシングではなかなか得られないアドバンテージだと感じています。ですので、たとえ主担当の方が担当を外れることになったとしても、同じレベルの方が配置されると信じておりますが、このまま定年までいていただいても、もちろん大歓迎です(笑)。
担当者コメント
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
BPO第1統括部
オペレーションデザイン部 2課
ユニット長 沖田 和久
ダイムラー様の経理業務に立上げから携わらせていただき、法改定やシステム変更の際は「ダイムラー様の中での課題は何であろうか」「どういった運用が最適か」を考え、数多くの協議の場を設けながら運用をして参りました。それらを付加価値として評価いただき、ありがたいお言葉を頂戴できたことを大変嬉しく思います。
今後も法改正など様々な変化が起こっても、迅速に対応できるよう、いち早く情報を取り入れ、ご期待に沿えるよう尽力したいと考えております。