デジタルセールスの基本と注目される背景
デジタルセールスとは、一言で表現するならば「最新のデジタルツールを最大限に活用し、営業活動をより効率的かつ科学的に進める、新しい時代の営業スタイル」のことです。
これまでの営業活動といえば、担当者がお客様の会社へ直接足を運び、名刺交換から対面での商談へと進める「フィールドセールス」が当たり前でした。
しかし、デジタルセールスでは、Web会議システムや顧客管理ツール(CRM/SFA)、さらにはマーケティングツール(MA)といったテクノロジーを駆使します。
これにより、例えば移動時間を一切かけることなく遠方のお客様とも商談ができたり、最も効果的なタイミングでアプローチしたりすることが可能になります。
これは単にツールを導入するということだけではなく、戦略的に営業活動を展開し、組織全体の生産性を向上させることを目指す、現代ならではの営業手法といえるでしょう。
1-1. 従来の営業手法との決定的な違い
従来の営業手法とデジタルセールスの間で違う点は「営業活動の基盤が、担当者の体力や経験に頼るアナログなものか、それとも客観的なデータを活用したデジタルなものか」という点にあります。
これまでの営業は、個々の担当者が持つ経験や勘に頼る場面が多く、どうしても「どれだけ多くの顧客を訪問できるか」という物理的な量が成果を左右する傾向にありました。
その一方で、デジタルセールスは、顧客が自社のWebサイトをどのように閲覧したかの履歴や、送ったメールを開封したかといった客観的なデータを詳細に分析します。
そして「どの見込み客が今、自社のサービスに最も高い関心を持っているか」を科学的に判断することができるのです。
これにより、成約の可能性が高いと判断された見込み客に対して集中的にアプローチできるため、営業活動の「質」が格段に向上します。
また、Web会議システムを活用すれば移動時間がゼロになるため、一人の営業担当者が一日にこなせる商談の件数も大幅に増加させることが可能です。
このように、活動の「量」と「質」の両面を同時に、かつ飛躍的に高められる点が、デジタルセールスが持つ決定的な強みだといえます。
1-2. なぜ今、多くの企業でデジタルセールスが求められるのか
現在、業種や規模を問わず、非常に多くの企業でデジタルセールスへの注目が急速に高まっています。
その背景には、私たちのビジネス環境を取り巻く、大きく分けて3つの決定的な変化が存在します。
1つ目は「顧客の購買行動の変化」です。
インターネットが普及した現代において、顧客は営業担当者に会うずっと前の段階で、自ら情報を収集し、複数の製品やサービスを比較検討することが当たり前になりました。
つまり、営業担当者が初めて接触する時点では、顧客の中である程度の意思決定が進んでしまっているケースが増えているのです。
2つ目は「働き方の多様化」です。
特にコロナ禍をきっかけとしてリモートワークが社会に急速に普及し、従来のような訪問を前提とした営業活動そのものが困難になりました。
非対面でのコミュニケーションが新たな常識となった今、オンラインで全てのプロセスを完結できる営業スタイルは、事業を継続する上で不可欠な要素となっています。
そして3つ目が「テクノロジーの進化」です。
かつては導入に莫大な費用がかかったITツールが、現在では比較的手頃な価格のクラウドサービスとして提供されるようになり、中小企業でも導入できる環境が整いました。
これらの避けられない変化に対応し、激化する市場での競争力を維持・向上させるために、デジタルセールスへの移行が多くの企業にとって急務となっているのです。
デジタルセールスがもたらす変革と組織の仕組み
デジタルセールスを組織に導入するということは、単に新しいツールを使い始める以上の、非常に大きな変革を組織にもたらします。
それは、営業活動が個人のスキルや経験に依存してしまう「属人的」な状態から、組織全体で安定的に成果を生み出す「仕組み化」された状態へと進化することを意味します。
例えば、トップセールスマンが持つ優れたノウハウや商談の進め方を、ツールを通じてデータとして可視化し、チーム全体で共有することが可能になります。
これにより、組織全体の営業レベルを底上げし、新人でも早期に戦力化できるようになるでしょう。
また、営業プロセスを細分化し、専門チームが連携して成果を最大化する「The Model」のような組織体制を構築することで、各担当者が自身の役割に集中でき、生産性を高めることができます。
このセクションでは、デジタルセールスが具体的にどのようなメリットをもたらし、どのような組織の仕組みやITツールが必要になるのかを、分かりやすく解説していきます。
2-1. 営業の生産性を飛躍させる3つのメリット
デジタルセールスの導入は、営業組織に主に3つの大きなメリットをもたらし、その生産性を飛躍的に向上させることが可能です。
第一に「営業活動の圧倒的な効率化」が挙げられます。
Web会議システムを活用することで、これまで発生していた移動時間がなくなり、その貴重な時間を別の商談や、より質の高い提案資料の準備に充てられるようになります。
これにより、一人の担当者が一日に対応できる顧客数が格段に増えるだけでなく、交通費や出張費といったコストの大幅な削減にも直接繋がります。
第二に「データに基づいた科学的な営業の実現」です。
顧客のWebサイト上での行動データや過去の商談履歴などを分析することで、曖昧なものに頼ることなく、成約確度が特に高いと予測される見込み客を客観的に特定できます。
これにより、無駄なアプローチを劇的に減らし、限られた営業リソースを最も効果的な場所に集中させることが可能になるのです。
第三に「営業ノウハウの共有と属人化の解消」です。
成功した商談の議事録や、お客様から高い評価を得た提案資料などをツール上で共有することで、個人の成功体験が組織全体の資産となり、新人教育の効率化やチーム全体のスキルアップに貢献します。
2-2. 「The Model」に学ぶモダンな営業組織の役割分担
デジタルセールスの効果を組織として最大化するための代表的な組織形態として、今、世界的に注目されているのが「The Model(ザ・モデル)」という考え方です。
これは、従来一人の営業担当者が担っていた営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」という4つの専門部隊に分業し、連携させることで全体の効率を最大化する手法です。
まず「マーケティング」部門が、Webサイトの運営やオンライン広告などを通じて、将来顧客となりうる見込み客(リード)を集めます。
次に「インサイドセールス」部門が、電話やメールで見込み客にアプローチし、対話を通じて関心度を高め、具体的な商談の約束(アポイント)を取り付けます。
そしてバトンを受け取った「フィールドセールス」部門が、専門的な知識を活かして具体的な商談を行い、契約の獲得を目指します。
最後に「カスタマーサクセス」部門が、契約後の顧客をサポートし、サービスの継続利用や追加提案を促すことで、顧客生涯価値の最大化を図ります。
このように各部門がそれぞれの役割と目標(KPI)に専念することで専門性が高まり、プロセス全体の効率が大幅に向上します。
また、顧客情報が各部門でスムーズに引き継がれるため、顧客にとっても一貫性のある質の高いサービスが期待できるのです。
2-3. 成果を最大化するために必須となるITツール
デジタルセールスという仕組みを支え、その成果を最大化するためには、それぞれの目的に応じたITツールの戦略的な活用が絶対に欠かせません。
代表的なツールとして、まず「MA(マーケティングオートメーション)」が挙げられます。
これは、見込み客の情報を一元管理し、興味関心に合わせたメール配信などを自動化することで、効率的に顧客を育成するためのツールで、主にマーケティング部門が使用します。
次に、営業部門の活動の中心となるのが「SFA(営業支援システム)」です。
個々の案件の進捗状況や商談内容、次に行うべきアクションなどを記録・管理し、チーム全体の営業活動を「見える化」する役割を担います。
これにより、営業マネジャーは各担当者の状況をリアルタイムで把握し、的確なアドバイスや指示を出しやすくなります。
そして、顧客との長期的な関係構築に不可欠なのが「CRM(顧客関係管理システム)」です。
過去の取引履歴や問い合わせ内容、担当者情報など、その顧客に関するあらゆる情報を一元管理し、部署の垣根を越えて全社で共有するためのデータベースです。
これらのMA、SFA、CRMといったツールをデータ連携させ、マーケティングから営業、カスタマーサクセスまで顧客情報がスムーズに流れ、組織全体として最適な顧客対応を実現できるのです。
失敗しないデジタルセールス組織の構築ロードマップ
デジタルセールス組織を成功裏に立ち上げ、軌道に乗せるためには、戦略的なロードマップに沿って段階的に、かつ慎重に進めることが極めて重要です。
何よりもまず、自社の営業活動の現状を正確に把握し、どこに課題があるのかを分析した上で、明確なゴールを設定することから始めます。
その上で、設定したゴールを達成するための理想の営業プロセスを設計し、そのプロセスを動かすために必要な役割分担やITツールを定義していくのです。
また、どんなに優れた仕組みを構築しても、実際にそれを使うのは現場の営業担当者です。
彼らが新しいやり方にスムーズに移行できるよう、必要なスキルセットを育成するための研修や、変化に対する不安を解消するための丁寧なコミュニケーションも欠かせません。
多くの企業が陥りがちな「高価なツールを入れただけで満足してしまう」といった典型的な落とし穴を避け、着実に成果に繋げるための具体的なステップが必要です。
このセクションでは、ゼロからデジタルセールス組織を立ち上げるための具体的な4つのステップと、不可欠なスキル、そして注意点と回避策について詳しく解説します。
3-1. ゼロから始める組織立ち上げの4ステップ
デジタルセールス組織をゼロから立ち上げる際は、以下の4つのステップに沿って計画的に進めるのが最も効果的です。
まず「Step1: 現状分析と目標設定」です。
現在の営業活動における課題をデータに基づいて洗い出し「月間の新規商談数を1.5倍にする」「成約率を5%向上させる」といった、達成度がわかる数値目標を設定します。
次に「Step2: プロセス設計と役割定義」です。
先ほど紹介したThe Modelなどを参考にしながら、自社の製品特性や顧客層に最も合った営業プロセスを設計します。
そして、マーケティング、インサイドセールスといった各役割の担当業務や責任範囲、部門間の連携ルールを明確に定義します。
続いて「Step3: ツール選定と導入」です。
設計したプロセスを最も効率的に実現するために最適なMA、SFA/CRMなどのITツールを選定し、導入します。
ここで重要なのは、最初から多機能で複雑なツールを選ぶのではなく、まずは必要最低限の機能からスモールスタートできるものを選ぶのが成功のコツです。
最後に「Step4: パイロット運用と改善」です。
いきなり全社で一斉に導入するのではなく、まずは意欲の高いメンバーで構成された小規模なチームで試験的に運用を開始します。
そこで見つかった課題や改善点をもとに、プロセスやツールの設定を柔軟に見直していきます。
この小さな改善サイクルを何度も繰り返すことで、自社に本当に最適化されたデジタルセールスの仕組みを堅実に構築できるのです。
3-2. これからの営業担当者に求められる必須スキルセット
デジタルセールスが主流となる時代において、営業担当者には、対人スキルに加えて、全く新しいスキルセットが求められるようになります。
その中でも最も重要になるのが「ITリテラシー」です。
SFA/CRMやWeb会議ツールなどを単に操作できるだけでなく、機能を深く理解し、自身の営業活動をより効率化し、どう活用できるかを自ら考え、実践する力が不可欠です。
次に「データ分析・活用能力」も欠かせません。
顧客の情報を分析し「どの顧客に、どのタイミングで、どのように提案をすれば心に響くのか」という仮説を立て、次のアクションに繋げる力が成果を左右するようになります。
また、お客様が抱える本質的な課題や潜在的なニーズを的確に引き出す「ヒアリング能力」と、最適な解決策を導き出す「仮説構築力」も、これまで以上に重要になります。
画面越しの限られた時間の中で顧客との信頼関係を築き、心を動かすためには、より一層、論理的で分かりやすいコミュニケーション能力が求められるのです。
3-3. 導入で陥りがちな落とし穴と具体的な回避策
大きな可能性を秘めたデジタルセールスの導入ですが、その過程にはいくつかの陥りがちな落とし穴が存在し、注意が必要です。
最も多く見られる失敗ケースが「ツールの導入そのものが目的化してしまう」というものです。
最新の高機能なツールを導入したことに満足してしまい、実際の営業活動で十分に活用されることなく、高価なデータ入力ツールとして形骸化してしまうのです。
これを避けるために、導入前に目的を経営層から現場の担当者まで、チーム全員で明確に共有し、具体的な運用ルールを定めておくことが不可欠です。
もう一つの大きな落とし穴が「既存の営業担当者からの心理的な反発」です。
長年慣れ親しんだやり方を変えることに対して、ベテランの担当者ほど、新しいツールの習得やプロセスの変更は大きな負担となり、無意識の抵抗感を生むことがあります。
この回避策として、デジタル化によってもたらされるメリットを説明し、スモールステップで導入を進め、変化に対する心理的なハードルを下げてあげることが効果的です。
デジタルセールスで持続的な事業成長を実現する
ここまで解説してきたように、デジタルセールス組織を構築することはゴールではなく、むしろ、新たなスタートラインに立つことを意味します。
一度仕組みを作って終わりにするのではなく、常に変化する市場や顧客のニーズに対応しながら、組織を柔軟にアップデートし続ける姿勢こそが、本当の成功の鍵を握ります。
そのためには、日々の営業活動から得られる膨大なデータを分析し、改善を繰り返すサイクルを組織の文化として根付かせることが不可欠です。
しかし、自社のリソースだけでは、最適なプロセス設計や効果的なデータ活用、そして何より組織変革を推進することが難しい場合も少なくありません。
そのような場合には、外部の専門家が持つ豊富な知見を借りることも、組織の立ち上げを加速させ、失敗のリスクを低減するための非常に有効な手段となります。
この最終セクションでは、デジタルセールスを成功させ、事業成長を継続させていくための根本的な考え方と、次の一歩を踏み出すための具体的なアクションについてご紹介します。
4-1. 成功の鍵はデータに基づいた改善サイクルの徹底
デジタルセールスという仕組みを用いて持続的な成果を上げるための重要な鍵は「データに基づいた改善サイクル」を組織全体で徹底的に、そして継続的に回し続けることです。
PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったものです。
この一連の流れを繰り返すことで業務を継続的に改善していくためのフレームワークとなります。
デジタルセールスの文脈においては、まず設定したKPIを達成するための具体的なアクションプランを立て(Plan)、それに沿って日々の営業活動を実行します(Do)。
次に、SFA/CRMに蓄積された客観的なデータを見て、計画通りに進んでいるか、目標と実績の間にどれくらいの差があるのかを冷静に確認します(Check)。
もし、ここで「インサイドセールスからの商談化率が目標より低い」といった課題が見つかれば、その原因をデータから分析し、具体的な改善策を実行します(Action)。
このサイクルを、一部の管理者だけでなく組織全体で回し続ける文化を醸成することこそが、成長し続ける営業組織を作るための唯一の王道といえるでしょう。
4-2. 専門家の知見を活用して組織の立ち上げを加速させる
デジタルセールス組織の立ち上げは、多くの企業にとって全く未経験の挑戦であり、自社内の知識やリソースだけで全てを進めるには限界があるのもまた事実です。
特に、最適な営業プロセスの設計、適切なITツールを選定する作業、そして人材育成や組織変革のマネジメントには、高度な専門知識と豊富な経験が求められます。
手探りの状態で進めた結果、多くの時間とコストをかけたにもかかわらず、期待した成果が全く出ない、という最悪の事態は何としても避けたいところです。
そこで非常に有効な選択肢となるのが、私たちのような外部の専門家やコンサルティングサービスの活用です。
経験豊富な専門家は、様々な業界の多くの企業の成功事例や失敗事例を熟知しているため、典型的な落とし穴を事前に回避し、具体的な道筋を示してくれます。
もちろん初期投資はかかりますが、結果的に組織立ち上げのスピードを加速させ、リスクを低減できるため、長期的な視点で見れば「未来への投資」になるといえるでしょう。
専門家と二人三脚で進めることで、社内にノウハウを蓄積しながら、確実な一歩を踏み出すことが可能になります。
4-3. 新規事業立ち上げ支援サービスのご紹介
ここまで、デジタルセールスの基本的な考え方から、具体的な組織の構築方法までを詳しく解説してきましたが「理屈はわかったけれど、具体的に何から手をつければ良いのか分からない」と感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
そんな営業部門の責任者の皆様のために、デジタルセールス組織の立ち上げを成功に導くための、より実践的なノウハウを凝縮したソリューション「新規事業立ち上げ支援」のサービス資料を、今回無料でご用意いたしました。
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