データサイロ化とは?DX推進を阻む壁の正体
データサイロ化とは、会社の中にある部署やシステムが、それぞれ別々にデータを保管・管理してしまっている状態のことです。その結果、会社全体で大切な情報を共有したり、うまく連携させたりすることができなくなってしまいます。
この言葉は、農場に立っている穀物を貯蔵するための「サイロ」が、外部から孤立している様子に由来しています。つまり、データがまるでサイロのように、組織の中で孤立し、閉じ込められてしまっている状態を指しているのです。
多くの会社では、営業部やマーケティング部、経理部といった部署が、それぞれ独自のシステムやツールを使って日々の仕事を進めています。そのため、お客様の情報や売上のデータ、ウェブサイトに誰がアクセスしたかといった非常に価値のある情報が、あちこちにバラバラに散らばってしまいがちです。この状態は、せっかく苦労して集めたデータを有効に活用できず、まさに「宝の持ち腐れ」になってしまっているのと同じことだと言えるでしょう。
会社全体の視点でデータを分析し、経営の舵取りに活かしていくことが強く求められるDXの時代において、このデータサイロ化は、その歩みを止めてしまう深刻な課題なのです。
1-1. データがバラバラなだけではない!サイロ化がもたらす本質的な問題
データサイロ化が引き起こす本当の課題は、単に「データがバラバラに保管されている」という物理的な状態だけを指すのではありません。そのもっとも本質的な問題は「組織全体としてデータを最大限に活用し、ビジネスの価値を高める大きなチャンスを失っている」という点にあります。
例えば、マーケティング部が持っている「お客様がどの広告を見て商品に興味を持ってくれたか」という情報と、営業部が管理している「そのお客様が最終的に何を購入してくれたか」という情報が繋がっていないとします。この場合、どの広告が本当に売上アップに貢献したのかを正確に分析することができません。これでは、効果的な広告戦略を立てることは非常に難しくなってしまいます。
このように、それぞれの部署が持っているデータは、単独で見るよりも、お互いを組み合わせることで何倍もの価値を生み出す可能性を秘めているのです。
データサイロ化は、この新しい価値を生み出すチャンスを根本から奪ってしまうため、企業の成長を妨げる、見過ごすことのできない経営課題として真剣に捉える必要があります。
1-2. こんな経験ありませんか?データサイロ化が引き起こす身近な問題例
データサイロ化を「うちには関係ない」と放置してしまうと、日々の業務の中にさまざまな問題を引き起こす原因となります。
例えば、あるお客様がカスタマーサポートに「商品の調子が悪い」と問い合わせをしたと想像してみてください。しかし、サポート部門が使っているシステムと、営業部門が使っている顧客管理システムが連携していなかったらどうなるでしょうか。後日、営業担当者がそのお客様の状況を何も知らずに、新しい商品の案内をしてしまう、といった気まずい事態が起こり得ます。お客様からすれば「こちらの状況を全く理解してくれていない」と不信感を抱く原因となり、顧客満足度の低下に直接つながってしまうのです。
また、社内でも非効率な業務が増えてしまいます。マーケティング部がキャンペーンの効果を調べるために、営業部や経理部にわざわざお願いして、手作業で売上データを集計してもらう、といった光景は多くの企業で見られるのではないでしょうか。
これは、依頼する側もされる側も大きな負担となり、本来であればもっと創造的な業務に使うべき貴重な時間を奪ってしまう、非常にもったいない状況なのです。
なぜ放置は危険?データサイロ化がもたらす深刻な経営リスク
データサイロ化は、単なる日々の業務が非効率になるというレベルの問題にとどまりません。実は、会社の経営そのものを揺るがしかねない、非常に深刻なリスクをいくつも抱え込んでいるのです。データという、現代における最も重要な経営資源の一つを最大限に活用できないことは、変化の激しい市場において、企業の競争力を著しく低下させる直接的な原因となります。具体的には、スピーディーな意思決定の妨げになったり、大切なお客様からの信頼を失ってしまったり、目には見えないコストが増え続けたりと、その悪い影響はさまざまな側面に及びます。
さらに怖いのは、これらのリスクが一つひとつ独立しているのではなく、互いに影響し合って問題をより一層深刻化させてしまう可能性があることです。
ここでは、データサイロ化がもたらす代表的な経営リスクについて、なぜそれが危険なのかを具体的に掘り下げて解説していきます。ぜひ、ご自身の会社の状況と照らし合わせながら、その深刻さを確認してみてください。
2-1. 意思決定の遅れとビジネスチャンスの損失
データサイロ化がもたらす最も大きなリスクの一つが、経営における重要な意思決定の遅れです。市場のトレンドやお客様のニーズを正確に読み取り、ライバルに先んじて次のアクションを素早く決めるためには、会社全体に散らばっているデータをまとめて分析する必要があります。しかし、データがサイロ化していると、まず必要なデータを各部署から集めるという作業だけで、膨大な時間と手間がかかってしまいます。そして、ようやくデータが集まった頃には、市場の状況はすでに変わってしまっており、絶好のビジネスチャンスを逃してしまうことになりかねません。
例えば、競合他社がデータ分析を駆使して新しいキャンペーンを次々と打ち出し、市場のシェアを拡大している間に、自社はデータの収集と整理に追われてしまい、完全に出遅れてしまうのです。
その結果、過去の経験や勘といった曖昧な根拠に頼った判断しかできなくなり、企業の成長の機会を大きく失ってしまう危険性が高まります。
2-2. 顧客体験(CX)の質の低下と信頼の失墜
お客様に関する大切な情報が、部署ごとにバラバラに管理されている状況は、顧客体験(CX=カスタマーエクスペリエンス)の質を著しく下げてしまいます。
現代のお客様は、企業が自分のことをよく理解し、一人ひとりに合わせて一貫したサービスを提供してくれることを期待しています。しかし、データサイロ化が進んだ企業では、お客様との接点ごと、例えばウェブサイト、店舗、コールセンターなどで情報が途切れてしまいます。
具体的には、コールセンターに問い合わせるたびに、同じ説明を何度も求められたりすると、お客様は「この会社は自分のことを全く理解してくれていない」と感じ、強いストレスを覚えてしまうでしょう。このような残念な体験が積み重なると、お客様の満足度はどんどん下がり、ブランドへの愛着も薄れていってしまいます。
最終的には、もっと良いサービスを提供してくれる競合他社へとお客様が移ってしまい、一度失ってしまった信頼を取り戻すのは非常に困難です。
お客様が離れていくことは売上の減少に直結するため、これは極めて深刻なリスクと言えるのです。
2-3. 見えないコストの増大?非効率な業務による生産性の低下
データサイロ化は、従業員の皆さんの生産性を低下させ、普段は目に見えにくいコストをじわじわと増大させる大きな原因となっています。それぞれの部署が似たようなデータを別々の場所で管理していると、同じ内容を何度も入力する「二重入力」や、部署間でデータを渡すための手作業が頻繁に発生します。
例えば、あるレポートを作成するために、複数の部署からExcelファイルを取り寄せ、手作業でコピー&ペーストを繰り返して一つのファイルにまとめる、といった作業に多くの時間を費やしてはいないでしょうか。こうした作業は、新しい価値を何も生み出さないばかりか、人間が作業することで起こる入力ミスや計算間違いなどを誘発する温床にもなります。
従業員は本来、データの分析や新しい企画の立案といった、より創造的で付加価値の高い仕事に時間と能力を使うべきです。しかし、データを探したり、形式を整えたりする作業に追われることで、本来の能力を発揮できず、仕事へのモチベーション低下にも繋がってしまいます。
これは、人件費という形で企業のコストを静かに圧迫し続ける、非常に根深い問題なのです。
あなたの会社は大丈夫?データサイロ化を招く3つの根本原因
データサイロ化という問題は、ある日突然、何の前触れもなく発生するわけではありません。企業の組織構造や日々の業務プロセス、そして従業員一人ひとりの意識といった、根深い原因が複雑に絡み合って引き起こされるのです。多くの企業がこの問題に頭を悩ませているのは、表面的な問題への対処だけでは不十分で、その根本にある原因にまでしっかりとメスを入れなければ、本当の解決には至らないからです。
具体的には、データの自由な流通を妨げている「組織の壁」「技術の壁」「意識の壁」という、3つの大きな壁が存在すると考えられています。これらの壁は、長年の企業活動の中で、知らず知らずのうちに築き上げられてきたものであり、これらを取り壊すには相応の覚悟と努力が必要になります。
ここでは、データサイロ化を招いてしまうこれら3つの根本原因について詳しく解説します。自社にはどの壁が存在するのかを正しく把握することが、解決に向けた大切な第一歩となるでしょう。
3-1. 原因①:部門間の連携を阻む「組織の壁」
データサイロ化の最も根源的ともいえる原因として挙げられるのが、部門間のスムーズな連携を阻む「組織の壁」、いわゆるセクショナリズムです。
多くの企業では、営業、マーケティング、開発、経理といった部門ごとに、それぞれの役割と責任範囲が明確に分かれています。その結果として、各部門は自分たちの部門の目標達成を何よりも最優先するようになり、他の部門との情報共有や協力に対して消極的になりがちです。「このデータはうちの部署が苦労して集めた資産だから、簡単には渡せない」といった意識が生まれ、部門を横断したデータの活用がなかなか進まなくなります。
また、物理的に働くフロアが違ったり、普段のコミュニケーションの機会が少なかったりすることも、部門間の見えない溝を深める一因です。
このような、いわゆる「縦割り組織」の構造が、結果としてデータの流れをせき止めてしまい、部門ごとに閉じた「データのタコツボ」を社内に無数に作り出してしまうのです。
3-2. 原因②:システムごとにデータが孤立する「技術の壁」
それぞれの部門が、自分たちの業務を効率化するために、それぞれにとって最適なシステムやアプリケーションを個別に導入してきた結果、データがシステムごとに孤立してしまうのが「技術の壁」です。
例えば、営業部門は顧客管理のためにSFAを、マーケティング部門は見込み客育成のためにMAツールを、そして経理部門は独自の会計システムを、といった具合に、異なるメーカーの異なる仕組みを利用しているケースは決して少なくありません。
これらのシステムは、そもそもお互いに連携することを前提として作られていないことが多く、データの形式や構造もバラバラです。そのため、これらのシステム間でデータを統合しようとすると、専門家による開発が必要になり、多大なコストや手間がかかってしまいます。
また、会社で長年使われ続けている古い基幹システム(レガシーシステム)が、新しいツールとの連携を阻む大きな障壁となっている場合も多く、こうした技術的な制約がデータサイロ化をさらに助長しているのです。
3-3. 原因③:データ活用文化が根付かない「意識の壁」
これまで見てきた「組織の壁」や「技術の壁」が存在する背景には、実は、従業員や経営層の心の中にある「意識の壁」が潜んでいます。
そもそも会社の中に「データを上手に活用して、ビジネスをもっと良くしていこう」という文化や雰囲気が根付いていなければ、データを共有することの重要性は誰にも理解されません。過去の成功体験から「長年の勘と経験こそが一番だ」と考えている経営層や管理職が多ければ、データに基づいた客観的な意思決定へのシフトはなかなか進まないでしょう。
また、現場で働く従業員のレベルでも「データをどう活用すれば良いのか具体的にわからない」「データを分析できる専門スキルを持った人材がいない」といった知識やスキルの不足が、データ活用への意欲を削いでしまいます。
さらに「自分の持っているデータを他部署に渡すと、自分の仕事の価値が下がってしまうのではないか」といった漠然とした不安や抵抗感も、データ共有を妨げる心理的な壁となります。
このような意識を変革しない限り、いくら高価なツールを導入したとしてもデータは活用されず、サイロ化はいつまでも解消されないのです。
データサイロ化を解消へ!明日から始める4つの実践ステップ
データサイロ化という根深い問題を解決するためには、その場しのぎの場当たり的な対応ではなく、計画的かつ段階的なアプローチが絶対に必要です。その原因が「組織」「技術」「意識」と多岐にわたるため、それぞれの壁を一つひとつ乗り越えていくための具体的なアクションプランが求められます。しかし、何から手をつければ良いのか分からず、途方に暮れてしまう担当者の方も多いのではないでしょうか。
ここで大切なのは、いきなり壮大な計画を立てる前に、まずは自分たちの足元から着実に一歩を踏み出すことです。
ここでは、データサイロ化の解消に向けて、明日からでも始められる4つの実践的なステップをご紹介します。これらのステップを順番に進めていくことで、複雑に絡み合った問題を一つひとつ丁寧に解きほぐし、会社全体でのデータ活用の実現へと近づくことができるでしょう。
4-1. ステップ1:現状把握と課題の可視化から始める
データサイロ化解消の記念すべき第一歩は、自分たちの会社の現状を正確に把握することから始まります。まずは社内にあるデータを整理する「データの棚卸し」を行いましょう。
具体的には「どの部署が」「どのような目的で」「どんな種類のデータを」「どのシステムやExcelファイルで」管理しているのかを、一つひとつ丁寧にリストアップしていきます。この地道な作業を通じて、社内にどれだけデータが散在し、サイロ化してしまっているのかを客観的に認識することができます。
次に、そのサイロ化によって「どのような業務の非効率が発生しているか具体的な課題を洗い出し、誰の目にも明らかなように「可視化」します。この現状把握と課題の可視化は、なぜデータサイロ化を解消しなければならないのか、という目的意識を社内全体で共有するための、非常に重要な土台となるのです。
4-2. ステップ2:全社横断でのデータ活用方針を策定する
現状と課題が明らかになったら、次のステップは「データを活用して、会社として最終的に何を目指すのか」というゴール、つまりデータ活用方針を策定することです。この方針は、特定の部署だけで決めるのではなく、必ず経営層を巻き込んだ会社全体のプロジェクトとして進めることが成功のカギを握ります。
例えば「需要予測の精度を高めて、在庫ロスを30%削減する」といった、具体的で測定可能な目標を設定することが重要です。そして、その目標を達成するためには「どの部署のどのデータを連携させる必要があるのか」といった、データガバナンスと呼ばれる方針を定めます。
この方針が、今後のデータ基盤の構築やツールの選定におけるブレない指針となり、関係者全員が同じ方向を向いてプロジェクトを進むための羅針盤の役割を果たしてくれるのです。
4-3. ステップ3:データ統合基盤(DWH/CDP)の導入を検討する
会社全体としてのデータ活用方針が固まったら、それを技術的に実現するための「器」となるデータ統合基盤の導入を検討します。
データ統合基盤とは、社内に散らばっているさまざまなデータを一箇所に集約し、分析しやすいように整理・保管しておくための特別なシステムのことです。その代表的なものに、DWHやCDPなどがあります。
DWHは、主に経営分析や意思決定のために、さまざまなシステムのデータを時系列で大量に蓄積することに特化した、いわば「データのための巨大な倉庫」です。
一方、CDPは、お客様に関するあらゆるデータを統合し、マーケティング施策などに活用することを目的としたプラットフォームです。
自社のデータ活用方針や「何を達成したいのか」という目的に合わせて、最適な基盤を選択することが非常に重要になります。
4-4. ステップ4:専門家の知見を借りる近道も|データ基盤構築・運用支援
データサイロ化の解消は、決して簡単な道のりではありません。特に、データを統合するための基盤を構築したり、それを安定して運用したりするには、データベースやクラウド、セキュリティなど、多岐にわたる高度な専門知識と技術が求められます。もし、社内にこれらのスキルを持つ人材が不足している場合、無理に自分たちだけで進めようとすると、プロジェクトが途中で頓挫してしまったり、想定外のコストや時間がかかってしまったりするリスクがあります。
そのような場合は、外部の専門家の知見を借りることも、ゴールへの近道となる有効な選択肢です。
専門の支援サービスを活用すれば、自社の状況に最適な基盤の選定から、設計、構築、そして運用開始後のサポートまで、一貫した支援を受けることができます。これにより、失敗のリスクを最小限に抑え、より早くデータ活用の成果を手にすることが可能になります。
まずは情報収集の一環として、どのような支援が受けられるのか、具体的なサービス内容を資料で確認してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
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